フリーランスがMBAで学ぶべき理由―経営言語を理解し、クライアントの事業戦略のパートナーへ

フリーランスとして複数のデジタル関連の新規事業に関わるデザイナーの横田泰広さんは、公務員を2年で退職して独立。グロービスに通い始めたのは、フリーランスになった24歳から。クリエイティブ系のフリーランスが、なぜMBAを取得しようとしたのか。横田さんに狙いや成果をうかがった。(取材・文=村上敬)

デザイナーにも経営の言語が必要

――横田さんは2017年、24歳のときにグロービスの単科を受講されました。なぜ経営大学院で学ぼうとされたのですか。

横田:僕は大学が文系で、公務員時代もデザインのキャリアを積んでいたわけではありません。独立後はフリーランスの仲間とシェアオフィスで働いていましたが、まわりは専門的な教育を受けた人や有名事務所で働いた経験のある人ばかり。そうした人たちと一緒に仕事をする中で、「自分はどうやって能力開発すればいいのか」という問題に突き当たりました。プロジェクトを通して実践的に学んだり、独学でインプットするだけでは、おそらく限界がある。そう考えてグロービスで学ぶことにしました。

――デザインの勉強ではなく、なぜ経営の勉強を?

横田:デザインの仕事はクリエーションにフォーカスが当てられがちです。しかし、本当にバリューがある仕事は何かと考えると、デザイナーもプロダクトやサービスの目的や意図に立ち返り、そこにコミットすることが求められるはずです。意志決定の元は、経営判断。デザイナーも経営に関する知識を身につけたり、経営の言語でクライアントと会話ができるようになったほうがいいと考えました。

「目の前の仕事をこなす」ことから、戦略的なキャリア観への転換

――学び始めて、印象はいかがでしたか。

横田:最初に受講したのは「クリティカル・シンキング」でした。受けてみて、自分なりの武器が手に入った気がしましたね。それまで仕事して判断が求められるときはネットで調べたり勘でやっていたのですが、頭の使い方の基礎を教わって、なるほど、物事はこういう段取りで考えていけばいいのかと。

実は僕はグロービス受講とほぼ同じタイミングで、業務システムを開発する会社にUXデザイナーとして転職しています。会社に属したのは、組織の考え方や組織でないと得られない成長を経験してみたかったから。フリーランスにこだわらずに様々な働き方をしてみると学びにもつながると思います。ただ、この時は4カ月で辞めてすぐにフリーランスに戻りました。グロービスで視野が広がり、またフリーランスで挑戦してみたい仕事が増えてきたからです。

――2回目の独立。1回目とは何か違いましたか。

横田:自分のキャリアを戦略的に捉えられるようになりましたね。以前は、「そこに仕事があるからやる」という目の前の仕事をこなす感覚。クライアントの出す要件を受け入れて、クライアントの納得を獲得すればそれで十分でした。

しかし、グロービスで経営戦略を学んだあとは「自分はこのプロジェクトで、そのビジネスに何を提供しているのか」「逆に自分は何を得られるのか」を考えながら仕事を選べるようになった。ですから、2回目のフリーランスのときのほうが、仕事への納得感や充実感は高かったです。

――1年後、本科に進みます。なぜさらに深く学ぶ気になったのでしょうか。

横田:単科はあくまでも基礎であり、本科の発展科目は、単科の複数の基礎科目で学んだことを組み合わせて実践的に使っていきます。そのカリキュラムが魅力で本科に進みました。フリーランスは自分の能力を頼りにやっていくので、能力開発に制限はつけなくていいと思います。

――たとえばどのような発展科目に興味があったのですか。

横田:「ベンチャー戦略プランニング」は面白かったですね。5~6人のグループに分かれてベンチャーの事業プランを作成して、ユーザーヒアリングをしたり、MVP(Minimum Viable Product)を検証します。そういったプロセスを経て、最終日にプレゼンテーションをします。

フリーランスの仕事は、ジョブディスクリプションが明確であることが多いです。裏を返すと、フリーランスが事業の上流から下流まで関わることは難しい。一方、「ベンチャー戦略プランニング」では上流から下流まで一気通貫で経験できました。しかも、そういったプロセスを異業種の人たちと一緒にやれたことが印象に残っています。

――年齢や職種的に異色な存在だったと思いますが、浮いたりはしなかった?

横田:最初に「クリティカル・シンキング」を受けたとき、大企業の部長級の方と同じホワイトボートで一緒にやりました。その方の考え方を聞いて僕は「さすがだ」と唸らされたし、おそらく僕のほうからも若い世代やフリーランスだからこその考え方を提供できたのではないかと思います。そのとき自分と立場が違う人たちと関われることに魅力を感じたので、本科でもそこは気になりませんでした。実際、みなさんオープンマインドで、若いからとかクリエイティブ系だからと色眼鏡で見る方はいませんでした。

グロービスでできた人的ネットワークは、仕事でも役に立っています。不動産関係のサービスを立ち上げるときに家探しの課題についてインタビューする必要があったのですが、個人的な話なので近しい人には聞きづらい。そこでグロービスの仲間にお願いしたら、快く引き受けてもらえました。直接一緒に仕事をするというより、お互いに挑戦を応援するような関係性ですね。

グロービスでは、そうした「弱いつながり」がたくさんできました。家族や会社の同僚のように日常的に関係があるのは強いつながり。それに対して、たまに会うだけだったりオンラインでつながっているような関係は弱いつながりと呼ばれ、そのネットワークが情報の流通を推進するとされています。グロービスは3カ月に1回クラスが替わるため、弱いつながりが次々に生まれていく。弱いつながりをつくる偶発性が計画的にビルトインされている、非常に優れた仕組みだと思います。

「学び続けるもの」という感覚がインストールされる

――現在はフリーランスの仕事を法人化して継続しつつ、スタートアップに所属して正社員としても働かれています。活躍の場がさらに広がっていますが、グロービスで学んだことがどのように役立っていますか。

横田:グロービスの学びは、「勉強したから、これができるようになった」というものではありません。個別のスキルも身につきますが、それ以上にビジネスに有用な考え方の型ができたり、自分の視線が一段上がったことが大きい。たとえば自分で納得できる仕事をしたいと思ったとき、「この目標設定で正しいのか」「目標達成のために他にどんなオプションがあり、どれを選ぶべきか」を高い視座で考えられるようになったのは、グロービスで学んだおかげです。

その効果か、最近クライアントのリピート率が上がって、二度三度と発注してくれるようになりました。フリーランスは傭兵的に次々と仕事をこなすスタイルと、パートナーとして事業計画に組み込まれて長くつきあうスタイルがありますが、僕は後者が好き。クライアントとそのような関係性を築けるようになったのは、自分の視線が上がって経営者と同じ目線でコミュニケーションできるようになったからではないでしょうか。

――最後に、今後の展望を教えてください。

横田:実は1科目残していて、まだ卒業していません。ただ、もともと自分のペースでやればいいと考えていたので、特に問題はないです。そもそも卒業したからと言って学びが止まるわけではありません。グロービスで学ぶと勉強するのが当たり前になるといいますか、「学び続けるものだ」という感覚がインストールされます。なので、今後も学びは継続するつもりです。すでにプログラミングの勉強を始めていて、さらに英語にも挑戦してみたい。

仕事面では、自らリーダーシップをとって新しい事業を立ち上げてみたいです 。僕は働く形態にこだわりはなく、成長曲線の高い場所に身を置ければいい。起業はこれまでもしてきたので、起業という形にもこだわりませんが、自分で事業を立ち上げることでまたどんな成長ができるのか。いまから楽しみです。

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