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“やらされ感”をなくして戦略的に進めるべき!これからの日本企業の「コーポレートガバナンス」とは?

投稿日:2020/03/10

目次

本記事は、G1経営者会議2019「コーポレートガバナンス〜サステイナブルな企業経営の在り方〜」の内容を書き起こしたものです。

秋山咲恵氏(以下、敬称略):それでは今日は、投資家、社外取締役、経営者、さまざまな立場の皆様からいろいろな切り口でお話をいただきたいと思います。

日本でも最近は、スチュワードシップ・コードを含めてコードができて、それに上場企業がどんどんコンプライして、社外取締役、女性取締役の比率、委員会設置会社が増えたり、仕組み的にはだいぶ浸透が進んでいます。一方で、「これ、ガバナンスはどうなっているのだろう」と思うような不祥事やイシューが起きているということも現実です。多分これは、日本におけるコーポレートガバナンスが形式論から実質論に入っていく時期にさしかかってきたのかなと思っているのですが、まず、水野さん。投資家の立場から、今、この状況をどういうふうに見てらっしゃいますか。

コーポレートガバナンスの「目的」を議論すべき

水野弘道氏(以下、敬称略): GPIFは年に1度、委託している運用会社に「ESG(環境・社会・ガバナンス)であなたが重要だと思っている項目をリストアップしてください」と聞きます。日本株アクティブを除くすべての運用会社が、あまねくESGを重要課題として挙げてきます。日本株のアクティブのマネージャーだけがコーポレートガバナンス関連の項目だけを選ぶのですね。

これは何を示しているかというと、投資家側の日本企業のコーポレートガバナンスに対する長年のフラストレーションの表明だと私は思っています。なので、それは現実として認識してもらう必要がある。ただ一方で、コードが改訂するたびにものすごく細かくなっていきますが、企業側もそのリストをなんとかやらなきゃいけない。これ、逆にここまでくると、「コーポレートガバナンスって何のために強化する必要があったのだっけ」というのがみんな分からなくなっているのではと懸念しています。

私は最近、欧米のコーポレートガバナンスの会議でもはっきりと「コーポレートガバナンスで目的のないものには意味がないのではないか」と言っています。だから、“corporate governance without purpose is meaningless”で、要するにコーポレートガバナンスそのものが目的ではないので、まさにツールというかシステムですから、それを良くすることによって何をしたいのかということを、そろそろ議論しないとまずいかなと思っています。

秋山:「目的は何?」という話ですね。じゃあ、程さん、今の話も受けつつ、程さんはこれまでコンサルタントとしていろいろな企業の経営に関わられて、今は社外取締役として参画されている企業もありますが、今の日本企業の現状は何がイシューだと思ってらっしゃいますか。

役員をどこまで「執行」と「監督」に分けてよいのか

程近智氏(以下、敬称略):私は今、上場している会社の取締役を2つ、非上場の会社の取締役を2つやっています。そのうちの1つが、パフォーマンスやガバナンスを高めようというスチュワードシップ・コードサイドの企業で、もう一つがコーポレートガバナンス・コードを守りながらやっていく企業です。両社とも模索中なので、悩むというよりは、顕在化する課題に対してどのように対応するかで手一杯で、そもそも自分たちのコーポレートガバナンスをどのステージまでに上げていこうかということに非常に悩んでいます。

具体的に言うと、いつの段階で議長を社外にするか、社外取締役を過半数にするかなどが挙げられます。例えば、うちの会社はコンサルティング会社で2001年に上場したときに数年かけて、役員は社内から1人、社外から10人にしました。ですから「執行」と「監督」を完璧に分けています。多くの日本の企業、特に製造業が悩ましいのは、どこまで執行と監督に本当に分けていいのか。特に製造業だと、技術のことも知らないと社外取締役も「これだ」という判断ができないし、そこまで本当にやるべきなのかという議論もあると思います。

秋山:ちょっと追加でお伺いしたいのですけど、ある意味、日本企業は、先を行っている会社と、そこまで行っていない会社のばらつきの幅が大きいというご指摘だと思うのですけど、その幅はどこからきているのですか。

程:そもそも竹中平蔵先生が始めたガバナンス・コードというのは2000年の初めの頃からあったものです。それなりに早い企業は導入して、いい意味でも悪い意味でも、たくさん勉強したじゃないですか(笑)。失敗もたくさんしないといけないと思うのですよね。

水野:私は今のところが本当に今回のディスカッションのテーマだと思っています。「コーポレートガバナンス改革が進んでいると思われた企業で不祥事が起きました」とよく議題になるのですけど、その「進んでいる」ということの測り方が、形式的な基準になっています。しかし、「コンプライアンス」と「ガバナンス」を混同している場合があります。

秋山:今の議論の流れでも結構ですし、伊藤さんにお伺いしたいのですけども、「形式的な議論ではなくて、実質的にボードの雰囲気が変わることもある」というようなお話を伺っていますが、そのあたりをお話いただけますでしょうか。

トップの姿勢が変わったことで「取締役会」が大きく変わった

伊藤順朗氏(以下、敬称略):2016年に弊社の体制が大きく変わり、そこで取締役会も大きく変わりました。かつては非常に結論ありき、決裁だけ仰いで短い時間で終わった取締役会が、今は2時間半ぐらいの枠を取って、それでも十分に議論が尽くせないぐらいの議論百出な形になっています。社外取締役には実業家、大学の先生、コンサルタント、監査役には弁護士、会計士がいて、それぞれ多様な分野の方々から我々が気づけない意見を今はたくさんもらいますが、以前はその方々から何も意見がありませんでした。何でそんな風に変わったかと言いますと、経営側、特にトップの姿勢が変わったからだと考えています。

秋山:社外取締役が積極的に議論するようになると当然、執行イシューについても一緒に議論するというフェーズにいらっしゃるのかなと思います。その状態で、先ほどご指摘があった「執行と経営の分離にはいろんなステージがある」という部分は、今、どういうふうに考えていますか。

伊藤:今12人の役員がいて、社内が7人、社外が5人です。社内の7人は全員が執行、社長以下です。かつては本当に営業報告的な議論ばかりでしたが、今は具体的な戦略のことも入っていますし、もちろん、ガバナンスのことも入っています。ただ、コーポレートガバナンス・コードにコンプライしていこうと思うと、取締役会で協議すべき項目がたくさん出てきますので、それだけでものすごい時間が取られています。一方では、以前からやっている業務執行、あるいは戦略的なことも議論するので、時間はいくらあっても足りないような状況です。

取締役会の構成が7対5なのですが、いわゆる手を上げて多数決になるような議論はありません。ただ、社外の方たちに対して情報の非対称性をなくすべく、我々の小売業について今起こっている状況や、競争環境などをご理解いただこうと思うと、ものすごい労力は必要になります。ただ、幸いなことに、社外の方たちは、そんなディテールのことには入ってこなくて、「こういう見方もあるのじゃないの」というような気づきを与えるような質問が多いです。これが消費者目線で「あの商品はおいしい、まずい」とか言われ始めると、もう、どうしようもないと思います。しかし、そういう議論はなくハイレベルな議論がされていることは間違いないと思います。

「日本型の社外取締役」がどうあるべきかを議論すべき

水野:こういう欧米の単語が日本に入ってきたときに、日本語の翻訳とのミスマッチをちゃんと議論せずに普及させてしまって、日本はいっぱい失敗していると思います。私、「ガバナンス」がそうだと思っていて、今も実はこの中でしゃべっていても、「監督」と「執行」と「経営」という言葉がかなり自由に使われているのですよ。だけど、私がずっと腑に落ちないのは、監督と執行の分離と言ったら「じゃあ経営は誰がやっているのですか」という話になるし、経営と執行と言われたら、「CEOは言われたことを実行しているだけなのですか」というふうになって、どうもしっくりきてないのですよ。ただなんとなく曖昧に使っていて、それをちゃんと、「うちはどういう役割分担なのだ」ということを最初に分けた上で、どの形がいいかを議論しないとだめだと思うのです。

あと、社外取締役会の役割ですけど、2通りあると思っていて、ひとつは、社外取だけど専門性を付加してくれるような役割の社外取も欲しいときありますよね。例えばその分野の研究者であるとか。それともうひとつ、いわゆる一般的な知見や経営の常識的なもの、あるいはマルチステークホルダーモデルで、顧客や株主の意見をそのボードで言ってくれる人と、2つの役割があると思います。欧米の場合は、基本的には、社外取はどちらかといえば「株主の利益代弁者」という大前提があります。ところが日本の場合は、そういうふうに思っている経営者が少ない。だから、欧米ではそういうことがあるっていうことを理解した上で、日本型の社外取締役はどういう人がふさわしいのか、それぞれの企業に応じて考えてもらいたいなと私は思っています。

「社外取を入れて良かったですか?」と聞くと「私たちの気づかないことを指摘されました」と答えますが、それはそのぐらいすると思いますけど、仕組みとしてはそれでは物足りないと思います。もう少し深いところまで、コンセプトレベルまで企業で話し合って欲しいと私は思いますし、そのためにコーポレートガバナンス・コードも、スチュワードシップ・コードも、コンプライ オア エクスプレインになっているわけだから。あれはべつに「ノー」って言ってもいいのです。ただ、そのかわり、説明しようと思ったらエネルギーがかかるから、よっぽどちゃんと考えた上じゃないと説明できないからよく考えてくださいね、というだけです。個人的な意見としては、日本企業の半数ぐらいはコンプライせずにエクスプレインを選ぶほうがガッツがあるし、「一生懸命考えたな」って感じがしていいなと思います。

秋山:伊藤さんが企業サイドなので、自社の事例でも結構ですし、企業側としてコメントをいただければ。

伊藤:さっき言った3年前まで形骸化していた取締役会が変わってきたというのは、まだプロセスだと思っています。将来的にどっちに持っていくのかは、まだ判断できていません。最終的には経営、執行、監督が分かれればいいのかもしれません。ただ、一方で、いくら形が変わっても、私どもの場合だと、まだ役員もそうですし、社員たちの意識が変わっていません。今、取締役会評価なんかもやって、自分たちの役員会のあり方を見直しして、それを今年から事業会社のほうにも落として、「自分たちの役員会がこれでいいのか」を考えさせるようにはしています。しかし、まだトップダウンのマネジメントのスタイルが入ってしまっているので、それを変えるにはものすごい時間がかかるのではと思います。

秋山:水野さんは日本企業に対して、現状、投資家として何を期待されますか。

日本の経営者の問題点は「説明能力の低さ」

水野:GPIFはずっとESG投資の活動を通じて「私たちにとって大事なのは、日本経済そのものが持続的に成長して底上げされることです」と言ってきました。だから私たちのパフォーマンスを上げるためには、日本の経営者たちの活躍にかかっているということなのです。

もうひとつ、日本企業の経営者を見ていて私が残念だなと思っているのは、やっぱり「説明能力の低さ」だと思います。今の話を聞いていて、「社外取との議論が活発になっています」ということですが、確かにそれによっていいディシジョンが起こるとは思いますが、それよりも、執行の人たちの説明能力が確実に上がる面で効果が非常にあると思います。

秋山:ジェンダーダイバーシティと環境の部分については、伊藤さん、御社の取り組みを紹介していただけたらと思います。

伊藤:ジェンダーのほうは女性活躍推進を皮切りに、今、さまざまな取り組みをやっています。環境については、企業の規模が大きいということもあり、CO2の排出量では小売業ナンバーワンになってしまっていますので、それをどうやって減らしていくか。今年、「GREEN CHALLENGE 2050」ということで、2050年までにCO2の排出量、あるいはプラスチックの使用量を大幅に減らすと目標を立てて進めているところです。私は元々CSRを担当していて、その当時は投資家からCSRに関するインタビューや面談などはこなかったのですが、去年おととしぐらいから、そういった申し込みが増えてきています。また、我々もIR活動は以前からやっていますが、いわゆる本当のシェアホルダー、SRと我々は呼んでいますが、こういったミーティングや面談は今後積極的にしていこうかなと考えています。

程:今の話に関連して、今後はESG的な質問も増えてくると思います。「本当にESGがしっかりしている会社って時価総額は上がるの?株価は上がるの?」というのは健全な問いだと思います。

水野:株価に対するESGの影響ですが、これは起きます。なぜ起きるかというと、本来、会社の価値というのは、株式会社はゴーイング・コンサーンです。未来永劫続くキャッシュフローのディスカウントしたバリューが、今の株価だという理論であるとすれば、20年後30年後に大きく企業価値に影響を及ぼすようなリスクファクターをプライスインしないとしたら、これは投資家の怠慢です。

ただ、今まではコンセプトとしては分かっていたものの、いつ気候変動リスクが実際のリスクになるかはみんな分からなかったのでできませんでした。最近はそれもフィジカルリスクアナリシスといって投資家がやり始めましたので、株の場合は、将来のキャッシュフローを評価すると言っている以上、10年後のリスクも当然プライスインされなくてはいけません。実際問題、今までこの議論は過去のパフォーマンスを見て「プライスインされている、されていない」と議論しているけど、はっきり言ってそれはナンセンスなのです。

伊藤:我々、小売業で商売をやっていると、お客様を選ぶことはできないですが同様に、株主の方を選ぶこともできません。企業としても、今後、緩やかですが株主政策というのを持って、どういう方たちに株を持っていただきたいかを真剣に考えて、リレーションを深めていきたいと考えています。

秋山:日本企業がこれから強くなるためにフォーカスすべきイシュー、あるいは取るべきアクションというものについてのコメントをいただきたいと思います。

程:社外取締役として、あまり事業の中身を知らないと、やれることは「社長を替えよう」とか「子会社を売却したほうがいい」とか、そういう表層的な意見を言うだけになってしまいます。しかも、社内に実行できる人材層が薄いケースも多い。だから一言でいうと、年功序列型を変えない限り、ガバナンスだけを強化しても成功しないと思います。できる人をもっと早く上げるとか、外の人も採用できるようなモビリティを業界内、業界間で高めない限り、なかなか機能しないと思います。

水野:イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏が気候変動問題のことを語るときにいつも“tragedy of the horizon”と言います。彼は銀行のレギュレーターですが、銀行の貸出金のタームよりも、気候変動とか、そういう問題が起こるタームの方が長いので、みんな自分の融資期間だけを考えて何もせずにいると、ある日突然大変なことが起こる、と言っています。このことは、企業経営のガバナンスの役割でもあると私は思っていて、社長のタームを超えたサステナビリティの課題を社内で提議することが大切だと思います。

もうひとつは、企業は戦略的にESGを進めてほしいと思っています。ESGは3年前は正直、欧米の運用会社だと懐疑的な人が多かったんです。ところが今会うと、すべての運用会社が「ESGは重要だ」と言います。しかも欧米の運用会社に「ESGってどう思いますか?」と聞くと、「大変重要で、私たちは20年前からそれが社是です」くらい言うわけです。ところが、日本の運用会社に聞くと「やらざるをえないと思っています」と言います。このマインドセットの違いを本当になんとかしないといけない。だから、このサステナビリティ・イシューとは戦略的なものだと思って、“やらされ感”をなくさないと勝てないと思っています。

秋山:それでは会場の皆さんからの質疑応答に入りたいと思います。

Q1、日本だと創業家がオーナーになってトップダウンの会社が多いが、それをどう評価するか?

水野:ちょっとひねった答え方をさせてもらいますけども、今の株主資本主義がアメリカで問題になっているひとつの理由は、株主がオーナーとしての考え方を持っていなかったことだと思います。投資家的な考え方だったと思うのですよ。オーナーと投資家の一番の違いとは、オーナーは会社で起きたことは全部自分の責任と捉えるし、ある意味、自分の財布と会社の財布は一緒だと。だからオーナーが本当に何かやると言ったときに、みんなは反対しづらい。だけど、サラリーマン社長だったらオーナーシップもないから、みんなも反対するし、株主もバンバン変わりますよね。だから、やっぱり、それぞれみんながオーナーシップ意識をもって、長期にやらないとまずいのではないかなと思っています。

Q2、未上場企業の経営者が心がけておくべきこととは?

水野:上場・非上場の話でいくと、私もプライベート・エクイティ・ファンドのパートナーをずっとやっていたので、未上場会社のオーナーを経験していますが、私が思う一番の違い。それは未上場の場合は、自分のステークホルダーがはっきりしているので、1時間かけて説明して分かってもらえなければ、2時間かければいいわけです。ところが、上場すると不特定多数の株主で、いつ買ったかも分からない株主も混ざっている中で説明しようと思うと、それにふさわしい説明能力が必要とされる。だから、限られた情報の中で説明するという力が必要になる。それをやるためには、外から見たときに、「ボードが私の代わりにちゃんとこの経営を監督してくれているな」と思われるようなボードにしておくと、説明が楽になると思います。

Q3、オーナーでない経営者が、もっとリスクを取ってアクセルを踏むためにはどうすればよいのか?

伊藤:アクセルを踏むために、そのリスクが何なのかを取締役会できちんと議論をしていくことが大事だと思います。そこで社外の方たちからさまざまな観点から「他にはこういうリスクはないのか」と指摘を受けることがまず大事です。

水野:オーナー企業といったときに、「創業者=経営トップ」というのをオーナー企業と言っていると思いますが、オーナー企業と似たように、うまくリスクを取らせたり、ファンクションしている会社もあって、それは例えばプライベート・エクイティに買われた会社です。これは何が違うかというと、当然オーナーが経営をしていないのですけど、オーナーシップが明確です。今みたいな場合で言うと、リスクが取れなくなる原因のひとつは、オーナーシップが不明確になっている状態です。

欧米の投資家は、日本企業のキャッシュが積み上りすぎるのを問題視しています。逆に言うと、彼らは「リスクを取るな」って言うときもあるけど、「取らなさすぎじゃない?キャッシュを使えないのなら、さっさと返しなさい」とも言うわけです。その両方を言われると、経営陣もちゃんとリスクを取れる環境に自然になると思うので、投資家側もそういう役割を果たさなきゃいけないなと思います。

秋山:ありがとうございました。それでは時間がきてしまいましたので、このセッションは終了にさせていただきたいと思います。素晴らしいパネリストのみなさんからたくさん示唆を共有していただけたと思いますので、ぜひ、みなさんの経営にも生かしていただきたいと思います(会場拍手)。

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