千葉の停電で改めて知る、デジタル化が進んでも残る「ラストワンマイル」

昨年を振り返りますと、例年にも増して台風の被害が大きかった年でした。被災された方々には謹んでお見舞い申し上げます。

本コラムでは、主に千葉県で大規模な停電をもたらした台風15号のケースから、これからの時代におけるテクノロジーの活用場面について考えてみます。当事者以外の多くの人々にとって今回のケースは、結果として発生した被害の大きさもさることながら、台風通過直後の時点で予測された被害見込みや認知そのものが過小だったことが驚きとなりました。

何らかの自然災害が起きたときに、たとえば道路の冠水の様子や看板などが風で飛ばされる様子がSNS上に動画でアップされるのは、最近は割とよくあります。また、電力会社であればスマートメーターの普及、通信会社であればほぼ空白地なく行き渡った無線基地局網、物流会社であれば翌日配達の一般化というように、インフラ系企業のネットワークの充実ぶりも、近年さまざまな場面で実感するところです。

そのため、たとえ報道のテレビカメラが入っていなくても、スマホを持つ誰かがいさえすれば状況がほぼリアルタイムで共有されるだろう。あるいは、インフラ企業ともなれば、物理的な完全復旧までには時間がかかろうとも、実態を把握して応急的な処置をするくらいであれば迅速に可能だろう――多くの人にとってそうした予断があったのではないでしょうか。

しかし現実には、倒木で電線や道路が寸断されたことが、連鎖的に大規模で復旧しにくい被害をもたらしました。中山間地域で幹線道路が塞がれれば救助・支援のための移動も滞ること、広域停電が続けば水道など電力以外のライフラインにも影響が大きいこと、携帯通信網がダウンし停電が長期化すれば個人発の情報発信も限られSNSで可視化されないこと等々、改めて思い知ることとなったのです。

さて、防災の話とは関係なく一般に、何らかのモノを供給する際に一人ひとりの消費者に届く最終区間のことは「ラストワンマイル」と呼ばれ、eコマースや物流の世界でよく使われます。

ICT技術の発達やデジタル化がどんなに進んでも、モノを届けるという物流機能は絶対に残ります。特に、工場や港湾等から最寄りの集配センターまでの区間は大量輸送などで効率化できますが、最寄りの集配センターから最終消費者までのラストワンマイルは多頻度で小口の配送にならざるを得ず、効率化しにくいのです。そのうえ、物流従事者の高齢化や人材不足などが課題とされてきました。

今回の災害とその復旧の長期化は、単に物流業界の枠にとどまらずインフラ全般において、特に比較的人口密度の低い地方の「ラストワンマイル」の重要性を改めて知らしめたと言えるでしょう。

しかし悲観的な見方ばかりではありません。経営共創基盤(IGPI)CEOの冨山和彦氏は、著書『AI経営で会社は甦る』などで、これまでデジタル化の波を牽引してきたGAFAに代表されるG(グローバル)の風に対して、これからはローカル重視のLの風が吹き始めると説いています。

*参考:『AI経営で会社は甦る』――デジタル革命の最終章は日本企業が有利になる

また、これまでのデジタル革命の主領域はSNSなどネット内でのカジュアルな世界(Cの世界)だったのが、人の命に関わり安全規制や環境規制などの厳しい監視を受けるシリアスな世界(Sの世界)へ移っていくと言います。

今回浮き彫りになった、地方のライフライン保守や物流などは、正にローカルでシリアスな世界です。確かに課題は多いですが、だからこそビジネスチャンスでもあると言えます。デジタル化やロボティクスなどの活用によって、機能を強化し新たなイノベーションを起こす「伸びしろ」が豊富な領域として、大いに期待したいものです。

【参考図書】
テクノベートMBA 基本キーワード70
グロービス、嶋田 毅 (著)、PHP研究所
1650円 

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