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OsidOri宮本敬史氏×中山知則氏「お金で苦労する人をなくしてユニコーンを目指したい」

投稿日:2019/11/19

グロービス経営大学院が主催するビジネスプランコンテスト「GLOBIS Venture Challenge (G-CHALLENGE) ~失敗したっていいじゃないか。ガンガンに行こう!~」。2018年度大賞となったOsidOriの共同創業者である宮本敬史氏と中山知則氏は、お金を管理しながら将来設計ができるウォレットサービスを展開、競争の激しいFinTech業界の中で着実に事業を成長させています。2人で創業した背景や、ユーザーに寄り添ったコンテンツを作る秘訣などを伺いました。聞き手は、受賞者のアカウント担当を務める髙原康次です。

お金で苦労する人をなくしたい

髙原:なぜOsidOriのビジネスを始めようと思ったのでしょうか?

宮本:もともとFinTech系のキャリアを歩んできたこともあり、FinTech領域で起業したいと思っていました。そのうえで、「お金で人が不幸にならない」「自分の人生をちゃんと歩いていけるようにしたい」という想いがあり、このビジネスの切り口ができました。

髙原:何か原体験があったのですか?

宮本:うちの両親はお金に対する考え方の違いから、夫婦喧嘩が絶えなかったんです。たとえば、ゴルフに行きたい父と子育てに関わって欲しい母が口論になり、父がお金で解決しようと3万円をバンって出し、母がぶち切れてビリビリに破ったこともありました…。働き始めてからは、仕事の一環で母子家庭の家計を見ることがあり、お金で苦労している方が多いことにも気付きました。こういった経験から、「家族のお金」を捉えていこうと思い始めました。

それと、いまは共働き夫婦世代が多くて、それぞれ複数の金融サービスを活用することが多い。僕は職業柄、金融機関の口座がいっぱいあります。仮想通貨も、クラウドファンディングも、ロボアドバイザーも、証券もある。だけど、家族にすべて共有しているわけじゃないから、僕が死んだ瞬間に家族が資産を把握できず途方に暮れるかもしれない。何があっても大丈夫なように「可視化」しておきたいというのがありました。

髙原:たしかに、遺産相続のときに困りますもんね。可視化さえできれば安心ですね。

宮本:可視化すると同時に、お金を活かしてほしいですね。結局、お金ってそれ自体に価値があるわけじゃないんですよ。お金のベースがあることで、夫婦がそれぞれ進みたい方向に進んでいける。OsidOriでは、可視化して活用できるようにすることで、夫婦で前向きなコミュニケーションができるようなサービスをつくっていきたいんです。例えば、旅行するという楽しみのために、お互いが協力して貯められるような仕組みを作っています。

ビジネスプランコンテストの最終選考で落ちて、本気になった

髙原:起業に踏み切ったきっかけは?

宮本:やっぱり大きかったのは2年前のGLOBIS Venture Challenge(グロービスが主催するビジネスプランコンテスト。略称G-CHALLENGE)だと思います。もともと起業したいっていう想いはあって、踏ん切りをつけるためにグロービスに入ったんです。だけど、家族ができ、子どもができ、年収も上がり…何一つ捨てられなくなってしまって…。

そんななか、メンバーを探してG-CHALLENGEに申し込み、一次審査に通ったことで、やっとエンジンがかかった。それなのに決勝で見事に負けて。悔しくて、そこから本格的に動き始めました。

髙原:共同創業者を集めることは、成功するベンチャー企業にとって極めて重要なことなのですが、お2人の出会いは?

宮本:FinTech研究会です。あすか会議のパワーモーニングで、僕がFinTechのテーマでディスカッションメンバーを募集したんです。それが好評だったので、「じゃあ、クラブ活動でもやるか」ってFinTech研究会を作り、グロービスの公認クラブにしてもらいました。今、メンバーは1,000人ぐらいいます。

FinTech研究会を始めた頃、メンバーから「そういえば、宮本さんとこの会社が入っているビルにウェルスナビも入っていますよね。そこで中山さんというグロービス生が働いていますよ」って言われて。「じゃあ、FinTech研究会に入ってもらおうか」って、ランチに誘ったのがきっかけです。その後、彼は幹事メンバーになり、会を盛り上げてくれました。

そんなこともあり、G-CHALLENGEに応募する際、メンバーとして真っ先に考えたのが彼でした。FinTech研究会のメンバーは、大企業で働いている方が多い。だけど、ベンチャーって今日と明日でぜんぜん温度が違うので、臨機応変にスピーディに動いていくには、経験している人がいいだろうと。それで彼に「やる?」って声をかけたら「やる」って。

中山:「とりあえず名前貸して」みたいな。

宮本:そうそう。メンバー1人だと弱すぎると思って、名義貸しから入ったっていう。

中山:もともとG-CHALLENGEには興味がありました。ただ、一緒にやるのは誰でもよかったわけではありません。FinTech研究会の数カ月の活動の中で、彼のことを「いい人」だなって思っていたので、乗りました。

髙原:いい人とは?

中山:今でも意見の衝突はよくありますが、ちゃんと話をして着地点を見つけようとする姿勢が彼にあります。それは一緒に事業を進めていくにあたって重要だと考えているので、「いい人」だなと表現しました。

宮本:結局、彼は昨年4月、僕は5月末に仕事を辞め、6月に起業しました。

中山:今でもウェルスナビのサービスもメンバーも好きですが、ゼロイチをやりたかったので、躊躇なく辞めました。もともとウェルスナビに入ったのも、自分でゼロイチをする前にその成功体験を積んでおきたかったから。サービスリリース前のタイミングで入社したのですが、マーケットシェアを半分以上取ることができ、そこへだいぶ貢献できたと感じていました。なので、今度は本当のゼロから自分で頑張ろうと。

G-CHALLENGEに落ちたあと、ビジネスプランをブラッシュアップし、福岡銀行グループのイベントに出して複数の賞をいただきました。そこで結果が出たというのも、起業を後押しする1つの要素になったと思います。

髙原:昨年11月には、G-CHALLENGEに再挑戦し、大賞を受賞されましたね。2人でやっていく上で、難しかったところはありますか。

宮本:あまり思い浮かばないですね。2人の間で大きなストーリー像は相違ないんですよ。もちろん、デザインとか資料の作り方とか、感性に関わるような細かい点ではあります。ただ、2人ともFinTechのBtoBビジネスをやっていたので、「金融ってこうなるよね」っていう方向感でズレることはないんです。

髙原:スタートアップのビジネスの進め方についても共通認識があった?

中山:創業した頃に東京都が開催するASACのアクセラレーションプログラムに採択されて、そこでベンチャーの進め方のお作法をしっかり教えてもらいました。同時に、田所さんの『起業の科学』とか、磯崎さんの『起業のエクイティファイナンス』を座学として読んだりもしましたね。

お金を管理しながら将来設計ができるウォレットサービス

髙原:OsidOriのプロダクトの特徴を教えてください。

宮本:主に共働き夫婦をターゲットにした「ウォレット」と言われるサービスです。アプリの中でお金の管理や貯金ができるほか、家族間でお金の仕訳ができようになっています。

1つの口座に2人がお金を入れ合って管理している夫婦なら、その口座を2人で見られますし、夫は家賃、奥さんは食費…と言った感じに分担制にしている夫婦なら、クレジットカードの引き落としと連動させて取引単位で共有できます。

たとえば、2人で行ったレストランのお会計を夫のカードで払ったけど、この取引は家族画面に振り分けたいと思ったら、シュッとスワイプすると、家族ページのほうに飛んでいき、2人で見られます。

中山:結婚したばかりの比較的若いダブルインカムの夫婦は、3分の2が分担制でお金を管理しており、そのうち約半数は共通口座を持っていますが、残りの半数は共通口座を持っていないというデータもあります。

宮本:実際、インタビューをしていても分担制の方は多かったですね。それに対して、Excelで管理したり、領収書を見せ合ったり、クレジットカードの明細で見せたくないものに黒線を引いて共有したり…けっこうアナログな対応をしている人が多かった。だから、スワイプで簡単に取引を共有することには、意義があると思っています。

他にも名義や口座単位で共有したり、家族間で見せるところと見せないところを切り分ける仕組みを持っています。共通のところには「目標」があって、それは2人で管理をしていこうというような、前向きな機能にしています。

グロービスのコミュニティーを通じて大量のインタビュー

髙原:リアルな声やデータはどうやって集めたのでしょう?

宮本:いろんなサイトにデータがあるんですよ。とはいえ、最後はやっぱり聞かないと分からないので、Webアンケートを300~400人分、ユーザーの本当の気持ちに迫っていくためのデプスインタビューは150人くらいにしました。

髙原:デプスインタビューは、どんな感じで進めるのですか?

宮本:初めは課題の深掘りです。「なぜ、そういうアクションをするのですか?」ってヒアリングしていきます。そこから、ある程度仮説をつくったあとに、今度は試作品をつくって、実際に動かしてもらいながら、ヒアリングを重ねていきました。インタビュールームがなくても、Zoomを使えば同じような環境でインタビューできます。相手に画面を共有して、実際に触ってもらいながら「ここでこうやったらどう思います?」「なんでそこを触ったんですか」というようなインタビューをしましたね。

髙原:グロービス生も協力してくれたそうですね。

宮本:特にFinTech研究会のメンバーが中心となって、定量的なアンケートやデプスインタビューに答えてくれました。それと、法人向けのビジネスモデルを考えるにあたっては、各業界で働くグロービス生に、業界特有の考え方や進め方、将来の方向性を教えてもらったり、人をつなげてもらったりしましたね。

エンジニアと共創する

髙原:エンジニアはどうやって出会ったんですか?

宮本:元同僚に声をかけたり、エージェント経由で集めましたが、初めは苦労しましたね。僕自身がエンジニアじゃないので、きれいにコードを書けてるのか、進捗がどうなっているのか、分かんなくて。結果、思っていたようなものができないこともありました。

ですが、最近はすごく体制が良くなりました。いままでのエンジニアは、「これだけやったから、あとは協業企業側の課題でしょ」みたいな、チームというより決められたタスクで動く方だったのですが、今お願いしている方はプロジェクトを推進していくという視点を共有し、一緒に考えていただけています。もちろん、我々自身もエンジニアリングのことを勉強して歩み寄っているつもりです。

髙原:なんの勉強が役立ちましたか?

宮本:プログラムを機能させるためのロジックです。「これはロジック的に通すのが絶対難しいな」って思えるかどうか。それができればこちらは無茶なことも言わないですし、相手が言うことが妥当かどうかも判断ができるので。

中山:エンジニアには基本的に自由に進めてもらいますが、「この目標を来月までに達成したい。制約条件は●●と××と△△。他は自由です」として、きちんと目標と全体感を握る。キックオフ後も、「この部分実装できそうですか」「スケジュール、大丈夫ですか」みたいなところをしっかりコミュニケーションするようになりました。

髙原:コミュニケーションの頻度はどうされているのですか?

宮本:Slackを使っているので、ここでやり取りを日々確認しています。「コミュニケーションがうまくいってないな」って感じたら、集まって、話しあって、お互い腹落ちしたら元の仕事に戻る、という感じですね。

家族の将来を作っていけるサービスへ

髙原:今後、どうやって成長させていく予定ですか?

宮本:少し先になりますが、このアプリケーションから金融取引ができるようにしたいと考えています。「今月はお金が余ったから投資しよう」と思ったら、すぐにそのまま金融の取引ができる。

法人向けですと、このサービス自体をそのままホワイトラベルで企業に出そうと考えています。例えば「OsidOri for 〇〇銀行」みたいな、提供先の銀行ブランドで家族向けアプリを作ることを想定しています。

髙原:夢は?

宮本:OsidOriを、本当の意味で家族の将来をつくっていけるようなサービスにしたいです。たとえば、夫婦の月末の収支精算や夫婦の取り決めを表示させたり、未来をある程度予測した上で「こうしてみては?」と提案したり、同じような年収の方と比較したときに、「ちょっとまずいですよ」とアラートを出すとか、専門家の方にアドバイスもらえるようにするとか。貯金や投資なりをする、あるいはリスクをヘッジする保険に入るような動線をつくっていきたいです。

中山:僕たちのビジョンは、「誰もがお金に困らず、生きたい人生を歩める世界を作る」です。誰もが最適な金融サービスを無理なく使える世界へ向け、まずは幸せな夫婦・家族につながるような、未来志向の体温あるサービスを作っていきたいです。

髙原:直近では5500万円の資金調達を果たされ、グロービスのアクセラレーションプログラム「G-STARTUP」にも参画されるなど、飛躍する準備は整ってきましたね。

宮本:「ミレニアル世代の家族向けはマーケットが小さい、ユニコーンなんて無理」って、よく言われます。確かに、家計簿機能だけ扱うサービスならば、そうでしょう。ですが、OsidOriはあらゆる金融サービスがアプリ内ですべて完結する画期的サービスであり、世の中を大きく変えていく可能性を秘めています。そこをしっかり作り上げていきたいです。

髙原:応援しています。ありがとうございました。

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