BMXライダーから挑戦し続けるビジネスパーソンへ、50代でありえないおじさんになるために

人生100年時代。70代まで働くことを想定した場合、40代、50代はどうキャリアを築いていけばよいのでしょうか。活躍するビジネスパーソンの姿から、そのヒントを探っていきます。今回は、アスリートからビジネスへ軸足を移し、さらに40代半ばにして海外でのキャリアをスタートさせようとしている、植山周志さんにお話を伺いました。

世界でオンリーワンになる

田久保:植山さんは、BMXライダーとして国内外の大会で45回も優勝されたんですよね。

植山:はい。ですが、各国ナンバーワンが集うXgamesという大会で決勝に残らないと、ライダー1本で食べていくことはできません。僕も出場しましたが、もうレベルが違い過ぎて…。精神的にボコボコにされましたね。

だから別の目標を作ったんです。トップにはなれないけど、他の人がやってない技をやって海外の雑誌やビデオには出ようって。テーマは「鬼コギ、ぶっ飛び」です(笑)。そうすると、本当にビデオと雑誌に出られるようになり、グローバルで知られるライダーになりました。

田久保:目標を立てクリアしていくのが上手ですよね。実は、「目標設定力」は人生を活性化し続けるための1つのキーなのではないかと思っています。

植山:確かに、僕は自分が思い描いたことを現実にすることが得意だと思います。

ただ、僕が載った雑誌をスポンサーに見せると喜んでくれるけど、お金はくれない。結局、食べていくために、新卒でCTC(伊藤忠テクノソリューションズ)に入社しました。

しばらくして、パソコンでビデオが作れるソフトが出てきたので、BMXのビデオを作って売ってみたんです。そうしたら、スポンサーを回るよりも簡単に、大きな金額を得られました。ずっと「アスリートとして食べていきたい」と思っていましたが、その頃から「アスリートの皮をかぶったビジネスパーソンでいる方が面白いんじゃないかな」と思うようになりました。

ビデオを2本作った後、それをきっかけにケーブルテレビで毎週15分の自分のBMXの番組を持つことになって、企画、出演、撮影、CG作成など、色んなことやりましたね。

「自分の人生を変えたい」と本気で思った

田久保:アスリートとビジネスパーソン、二足の草鞋で頑張っていたと。

植山:CTCで5年くらい働いたあと、そのケーブルテレビ関連の会社に移り、輸入販売代理業務を立ち上げたりして5、6年働きました。債務超過だったので、最後の1年間は資金繰りに奔走する日々を送っていました。最終的に清算して解散したんですけど、会計がわからないことへの挫折感がありました。

次にスタートアップの立ち上げに参加したんですが、社長から毎日「論理展開ができていない」って怒られていました。悔しくて、論理思考の本を読んでみたけど、全くできるようにならない。それを見た友達が「グロービスのクリティカル・シンキングを受けてみたら」と教えてくれ、グロービスの門をたたきました。その頃から、大会に出るのもやめました。

田久保:バイクに対する未練はなかった?

植山:全然ないです。バイク雑誌には毎月出ていたけど、40歳のときに出たい雑誌は何かと考えると、日経ビジネスだった。だからアスリートから切り替えなきゃと思っていたのに、社長からは「あほ」って言われ続けて…。「自分の人生変えたい」って真剣に思ったんです。

田久保:過去の栄光にすがらないのは、本当にやり切った感の頂点に達したからなんでしょうか。

植山:BMXで学んだことの1つが、「チャレンジし続けることが価値」ということ。上手い人も下手な人も、周りが盛り上がるのって、上手いことをそつなくやったときではなく、チャレンジしたとき。だから、ビジネスでもチャレンジをしたかった。特に僕は学歴も社歴もすごくいいわけではなかったので、余計にチャレンジし続けなればいけないと今でも思っています。 

勝手にアウトプットをして成果を出し続ける

会社には黙ってグロービスに通っていました。ある朝、社長が怖い顔で「あの提案どうなってるのか?」って聞いてきたんです。ちょうどマーケティングのクラスを受けた後だったので、ポジションマップをホワイトボードに書いて説明したら、拍子抜けしたように「そうか、それならいい」って(笑)。そういう風に仕事がすごく変わっていくのが面白かったです。

田久保:Excelの本も出しましたよね?

植山:何かの勉強会で「植山さんExcel詳しいね、今度教えてよ」って言われて、せっかくなので集客してみたんです。僕、グロービスに入学したときは「賢い人」と「賢くない人」の1軸で考えていたんですが、そのExcelの講座には有名企業で働く賢い人たちがたくさん聞きに来てくれました。それで、もう1軸あると気付いたんです。

縦軸に「Input」と「Output」と「勝手なOutput」があって、上に行くほど人が少ないから目立つんですよ。つまり、本当に大事なのは、勝手にアウトプットして成果出しまくることなんだと。エラーが起こると賢い人たちが突っ込んでくるけど、回数を重ねるうちに教える内容が良くなり、賢い人側に行けるんです。

田久保:お金も取れるようになってね。

植山:グロービス在学中は無料で教えていたけど、卒業してからは月1回、有料のExcel講座を始めました。始めに無料でたくさん教えたことが、最高の練習になった感じですね。そうしたら、インプレスから「本書きませんか?」って言われて、本を2冊出しました。

日本を実験台にしてグローバルへ展開する

田久保:次はどこの会社へ行ったんでしたっけ?

植山:ニキビケアのプロアクティブ売っている、ガシーレンカーという会社です。Webでプロアクティブをどう売るか考える仕事が、僕のやりたいことにすごくマッチして。毎週アメリカ人のCEOと日本人の部長の1on1があるんですけど、部長は英語が話せないから僕が代わりに資料を作ってCEOに提案しまくって。そんな風にどんどん自分の仕事を広げていきました。

そのあとシマンテック、そしてドロップボックスへ行きました。以前転職活動したときは50社ぐらい面接して全然決まらなかったんですけど、ガシーレンカーぐらいから転職活動しなくても声がかかるようになりましたね。

田久保:短期間でどうやって成果を出したのですか?

植山:ドロップボックスでは、日本で成功したことをアジアやドイツに展開しました。データは各国だいたい同じなので、日本を実験台にして分析してインサイトを出し、仮説を作り、最終的なコピーライティングは現地の人と作ります。そうすれば、非英語圏でも大きなインパクト作れるんです。

田久保:創業者から手紙までもらっていましたよね。それでも辞めて次に行くのは、「50でありえないジジイになるため」だと(笑)。

植山:本当はね、上司の上司が辞めて部署の方針が大きく変わり、「あなたの居場所はない」って言われたんですよ。「他の部署に場所はある、外で探すなら退職金が出る」と言われて。そのタイミングで、今度行く会社から日本の立ち上げを頼まれたので、「インターナショナルでやりたい」って言ったら、「シドニーに引っ越すってどう?」って提案されました。

僕のやりたいことリストに「サンフランシスコに移住」って書いてあるけど、シドニーでもいいやと。英語圏に移住して家族をもっとグローバル目線にしたいと思っていたので、退職金をもらって移住するのはベストシナリオ。色んなことが、僕が操作できないところに動いて行って、面白い。

田久保:そういうのを「セレンディピティ」って言うんだよね。MBAそのものもは、別に実はきらきら光るものではないんだけど、これでレバレッジ効いて大きく飛躍していくという。

人生100年時代をどう生きるか

田久保:この前の卒業式で、ある教員が言ったんです。日本人は平均的に43、44歳で「自分の給料とポジションは上がらない」と認識する。今は60歳定年、65歳まで再雇用だけど数年のうちに70歳まで延びる。例えば43歳で諦めるってことは、27年間開き直ったサラリーマン人生が行われるということだと。それでいいのかと。かっこいい50代、60代になれと。

植山:70歳まで働くんだったら、ピークを70歳に持っていきたいですよね。43歳で給料マックスだとしたら、その後はコストカットしか考えなくなる。そうすると限界がすぐにくるわけで。逆に収入アップは青天井ですから、そっちを考えたいですよね。

田久保:いい会社でいいトラック乗っている人でも、冷静に自分が常務になる確率を考えて「無理だ」と思った瞬間に「今もらっている800万を大事にしよう」みたいなマインドになっていく。これがほとんどの人の傾向だと思うんですよ。若いころにチャレンジする病気にかかった人はいいけど、途中から変えられないのかなって。

植山:おすすめは、「やりたいことリスト」を作ることですね。世界中を家族と旅行するとか。普段は「目の前の仕事をどうこなそう」ということに多くのエネルギーを費やしていると思うので、意識的に視野を広げてみるといいと思います。次に、やりたいことを実現するために具体的にどうしたいいのかを考え、さらに日々をどう過ごせばいいのかを考え、行動するようになったら素晴らしいですよね。

田久保:思い描いて、やるべきことをルーチンに落とす。ルーチン化っていうのは、唯一人間がトレーニングできるものだと思います。

ところで、海外移住するとなると、子供の学費とか心配になりませんか。

植山:Excelでシミュレーションしまくっています。P/LとB/Sを作って、毎月の収支や資産の変動を妻にレポートしています。

田久保:妄想することも大切ですが、同時に人生の裏側を支えるシミュレーション力も大事なのかもしれないですね。それから、植山さんは今、MITの講義をオンライン上で受けられるMicroMastersプログラムを受講していますよね。

植山:統計とデータサイエンスを学んでいます。グロービスで学んだ回帰分析を、コロンビア大学のMBAを出たガシーレンカーのCEOに見せたとき、褒められたんです。つまり、意外にできる人は少ない。さらに突き詰めて二項分布とかも学ぶと、もっと強力になる。最近の僕の仕事はサービスをどうグロースさせるのかを考えることだから、統計を知っているのは本当に強い。勉強すると仕事の質も変わってきますよね。

田久保:まずは妄想し、堅実なシミュレーションをしながらも能力開発を続けることが、人生100年時代のキャリアを考える上での肝と言えそうですね。

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