事業計画を顧客や投資家に納得してもらうにはどうすればよい?

事業計画書に書くべきことは?

プランニング(事業計画書)とは、ここまで検討してきたビジネスモデルとストーリーをロジカルに表現し、ドキュメントに落とす方法とも考えましょう。双六のように長く曲がりくねった道を通ってきた際に踏んだプロセスを思い出してください。事業計画書に記載する内容は、これまで踏んできたプロセス上ですでに検討済なので、その材料を組み合わせて表現すれば良いのです。

よく「新規事業のビジネスプランを描きたい」という相談を受けますが、ビジネスプラン自体は材料があれば比較的簡単に書けます。実は新規事業を創る際に何よりも描きたいのは、「プランよりモデル」なのです。ビジネスモデルが出来上がれば、ビジネスプランはスラスラと書ける状態になっているでしょう。

実際はビジネスモデルにより、ビジネスプランのアジェンダは異なるため、目次に決まった項目や順序はありません。最も良い方法は、自分でビジネスモデルを描いて見ることです。「これは必ずやりたい!」というビジネスモデルを自分なりに描いてみると、「これは必ず伝えたい!」という要素が思い浮かぶはずです。それ自体が事業計画書の各頁タイトルとなります。とは言え、いきなり事業計画を書いたり伝えることが難しい方に向けて、押さえておきたいポイントを紹介します。

事業計画書は論理思考そのもの

事業計画におけるロジックとは、シンプルに言えば、記載している「主張」の「根拠」が事業計画書内のどこかで必ず語られている状態を作ることです。目的は同じですが、手法が異なる2つのアプローチ方法を紹介します。

1)ビジネスモデルから考える
これが最も自然体の事業計画書の目次設定です。下記はビジネスモデルの図鑑としてヒットした『ビジネスモデル2.0図鑑』にも掲載されているCASHという現金化アプリのビジネスモデル図(出典:ビジネスモデル図解ツールキット)です。ビジネスモデルの描き方は様々ですが、このように要素間の関係を1枚で示したモデルを用意することでビジネスを俯瞰することができます。

ビジネスモデルを考えるためには、何となく俯瞰するのではなく、個々の要素について綿密に考え込まれたものでなければなりません。CASHのビジネスモデルに登場する要素は、大まかに利用者と事業(アプリ)と事業者があり、それぞれの関係性が矢印で描かれています。これら一つひとつを眺め、聞き手の立場で質問したい内容を思い浮かべてください。ビジネスモデル図では多くを語っていませんので、聞きたいことは出てくるはずです。それ自体が事業計画書で語るべき内容となります。例えば、以下です。

・ビジネスモデルの概要:簡単に言うと誰のどんなニーズに対して、どのような価値を提供するビジネスなのか?
・市場規模とターゲット顧客:そもそも市場全体をどんな顧客セグメントで分け、なぜ選んだのか?他はなぜ選ばなかったのか?全体とターゲット顧客はどの程度の市場規模が想定されるのか?
・ターゲット顧客像とニーズ:利用者(ターゲット顧客)の具体像(ペルソナ)は?具体的にどのようなニーズ(悩みや不満、あるいは「してあげると嬉しい」こと)があるのか?
・提供価値:アプリは、上記顧客ニーズに対して、どのような価値(収入や利便性、スピードなど)を提供するのか?
・提供価値を届ける仕組みや機能:ユーザーの価値(収入や利便性、スピードなど)を高めるために、どのようなオペレーションを設計しているか?
・ユーザーを取り込む仕組み:まず知ってもらう、ユーザーになってもらうために立ち上げ期にどのようなマーケティングを行うのか?
・他の代替サービスとの違い:他にも近しいサービスがある中で、このサービスを利用するのはなぜか?どこが優れているのか?
・収益構造と予測財務諸表:ユーザーからの課金方法や、予定しているユーザー数の増加に伴う売上増加シミュレーションは?一方でコストの変化は?
・理念や経営メンバー:事業者は、この事業を通じて社会にどのような存在価値を示していきたいのか?こういった事業を運営できるスキルがあるメンバーなのか?

以上のように、ビジネスモデルを見ながら聞きたい項目が並びます。各項目2〜3枚に分けて説明するとして、これだけでも事業計画書は20〜30ページになります。また、投資家の立場に立つと、「当社はアイテムをどのように現金化するのか?」が語られていないことに気づくでしょう。聞き手に応じてビジネスモデルを補足することや、伝える順序を変えることも大事です。

2)論理構造のフレームから考える
もう1つの方法は、論理的に考えるためのツールを活用することです。論理構造をピラミッド型に可視化し、資料作成に活用していく「ピラミッド・ストラクチャー」という方法はコンサルティングファームなどでも標準的な考え方です。「イシュー」を考え、それを伝えるための「枠組み」を考え、「根拠となる情報から適切な答え(解釈・主張)を導く」ことを、整理していきます。

『新版 考える技術・書く技術』より

事業計画書において、伝えたいメインメッセージは「このビジネスを採用すべきだ」です。採用の捉え方は、顧客であればそのサービスを利用することであり、投資家であれば投資の意思決定であり、パートナーであれば協業を意思決定する、と相手にとって採用のされ方は異なります。ピラミッドの下段の内容から「だから何が言えるのか?」の答えが上段にあり、上段の内容を「それって具体的には?」と考えた際に答えが揃っていることで、聞き手の納得感がグッと高まります。

事業計画を伝える際のポイント

事業計画のアジェンダが揃うと、最後はプレゼンテーションで伝えるための方法を検討します。聞き手の関心に重点をおき、ストーリーとして流れている「順番」で語ることが大事です。その際、以下のようなパターンも参考になります。

・CREC法で主張とそれに対する根拠を簡潔に説明する
Conclusion(結論)→Reason(理由)→Example(具体例・事例)→Conclusion(結論)

・ベンチャー企業が資金調達の際に意識したい順番に説明する
印象的なプレゼンテーションは、冒頭に驚くような数字を明かしたり、時に挑戦的であり、数字で始まり数字で終わる、など聞き手を退屈にさせないことが大事です。

例1) Traction(顧客獲得需要を表す定量的な証明)→Team(経営チーム)→Product(優位性のある技術やサービス)→Vision(理念やビジョン)
例2) Traction →Problem(市場の課題)→Solution(提供価値/解決方法)→Team →Repeat Traction

ここまで、戦略ストーリーを事業計画に落とし込み、最後は伝えるポイントについて示してきました。では「ストーリーが描けない!」「事業計画が組み立てられない!」といった時にはどうすれば良いのでしょうか。

その場合は、ビジネスデザイン・ロードマップで進んできた道を遡り、再度コンセプトやビジネスモデルのユニークさを検討しましょう。ときにはスタート地点まで戻ることも必要かもしれません。双六のように行ったり来たりすることは、ビジネスをデザインする際に必要な要素を押さえるだけでなく、最終的にはリスクを最小化するためと思ってください。中途半端なビジネスモデルで市場に飛び出し、大失敗するという愚を犯さないためにも、チェックリストとしてビジネスデザイン・ロードマップを意識されると良いでしょう。

新しいビジネスをデザインするということは、本来とてもワクワクする作業です。少しでも効率的にビジネスデザインを進めることができ、結果多くのビジネスがデザインされることを期待しています。

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