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最近、コンビニエンスストアの24時間営業が話題になっています。発端は大阪府のあるオーナー(フランチャイジー)が人手不足などを理由に24時間営業を止めたところ、本部側の企業(フランチャイザー)から多額の違約金等を求められたことです。その後、「うちも同じ悩みがある」というオーナーがどんどん発言するようになり、社会問題として注目を浴びるようになりました。
その間、フランチャイザー側の企業の株価は、日経平均の高騰に反するように下落するという事態も起こりました。一方で、世耕弘成経済産業相自らコンビニトップを集めて会談を開き、それに対して財界から「経産省が介入すべき問題なのか」という声も出ました。今回はこの問題を題材に、「適切な問い」の立て方を考察してみましょう。
という問いかけの仕方が、善悪二元論的な議論を誘発しやすい点も要 注意です。
では、「そもそもコンビニは必要なのか?」はどうでしょう。これはさらに後退しています。もちろん、時には「そもそも論」をすべき場面もありますが、これだけコンビニが社会的インフラとして根付いている現在、その存在の是非そのものを改めて議論するのは生産的とは言えません。
「コンビニのオーナーの労働環境や待遇を改善することは可能か?」はどうでしょう。これは現時点で世間から注目されている問題を踏まえると、最初のものよりは悪くない感じです。実際、フランチャイジーからは、24時間営業のための人材確保の難しさや自らの身体的・精神的疲労を訴える声が上がっています。さらに、ドミナント出店(あるエリア内に何店舗も出すことで物流やスーパーバイザー訪問の効率を上げたり認知度アップを図る方法)による同ブランド他店との競争による利益低下や、フランチャイジー側にやや不利な契約条件(弁当などの売れ残り分を負担するなど)への不満が大きいからです。
ただ、これは議論をフランチャイザー対フランチャイジーの役割分担や取り分などの条件に矮小化してしまう可能性があります。つまり、その他のステークホルダーである顧客や地域の視点、アルバイトの視点、メーカーやPB品の下請け業者などの視点が抜けてしまいかねないのです。たとえばアルバイトの視点が抜けたまま深夜営業を規制すると、「深夜アルバイトで稼ぎたい」と考えるフリーターや外国人労働者に不利になるという見方もあるでしょう。あるいは、コンビニ全体の売上げが下がれば、下請け企業にとってもダメージになります。
「コンビニのあり方に経産省が介入するのは妥当か?」はどうでしょう。これはこれで大事な論点ですし、実際に最適な状態に至る上で、経産省がどの程度のリーダーシップを発揮するかは重要なポイントにはなりそうです。しかしこれもやや問題を矮小化してしまう可能性があります。なにより、「あるべき姿」以前にプロセス論が先走りすることは、通常、あまりいい結果につながりません。