XR、IoT、クラウドAI… 今後10年間で起きるイノベーションとは?〜亀山敬司×國光宏尚×田中良和×仲暁子×岡島悦子

本記事は、G1サミット2019「時代の先を読む開拓者たち~大放談3.0~」の内容を書き起こしたものです。(全2回 前編)

岡島悦子氏(以下、敬称略):まず壇上の皆さまには前もって質問をさせていただきました。「先々5〜10年ぐらいのスパンでテクノロジーはこんな風に変わるから、こんな未来観があるよね」といった将来の仮説ですね。また、それに向けて今はどんな変革や地殻変動が起きていて、その流れのなかで皆さんご自身はどんなことを仕掛けているのか。まずは、そうしたお話を伺っていきたいと思います。では、仲さんから。

「アルゴられた生活」は本当に幸せなのか?

仲暁子氏(以下、敬称略):これから起きる長期的な変化については、『サピエンス全史』(河出書房新社)を書いたユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』(河出書房新社)という最新作を読んで考えたことがあります。本によると、人はもともと神至上主義だったそうです。だから、たとえば「この人と結婚するべきなのかな」とか「仕事、どうしよう」とか悩んだときも、昔は「神に聞け」となっていた、と。「神様、どうしよう?」って。それで神が啓示を与えてくれるわけですね。

そういう時代のあとは、ニーチェが「神は死んだ」と言ったように人間至上主義になり、「自分に聞け」となった。それは何かというと、答えを得るために自分の心を探索するわけです。「自分は、本当はどう思ってるんだろう」的な。それでセラピーのようなものも生まれたりしました。ただ、自分との対話というのは結構大変なんですよね。自分でも答えを持っていなかったりするので。

最近はデータ至上主義のようなものが生まれて、アルゴリズム、平たくいうと「アプリに聞け」みたいな話になってきたというんです。たしかにそれは真で、たとえば最近はドライブに行くときもGoogleに道順を聞いたりします。車に搭載されているカーナビには新しい道路情報が入っていなかったりするけれど、Googleマップはいつも最新だし、かつ早く着く裏道が分かったり、混み合っている状況をリアルタイムで教えてくれたりします。これはもう自分の意思ではなくてアプリやアルゴリズムに聞いている状態ですよね。

この前、面白いことがありました。ドライブで裏道を進んでいたら前方に私たちとまったく同じルートを選んでいる車があったんです。それで私たちはその後ろにピタッと付いて30分ほど走り続けていたんですが、それって要するに前方の彼らもまったく同じアルゴリズムに従って動いていたということですよね。運転しながら「私たち、アルゴられてない?めっちゃアルゴられてるじゃん」なんて話になって(笑)。

日々の生活を振り返ると、そんな風にアルゴられてるシーンってたくさんあります。「食べログ」もそう。お店の推薦まではしませんが、トライ&エラーを通して自分で決めるのではなく、蓄積されたデータのなかから最適なお店を選んでいる。アプリで健康を促進したり成人病を防いだりするというお話もそうですよね。「これを食べたら血糖値が良くなる」という情報に従うのも、あえて言うなら、すべてアルゴられている。「これってペットみたいだね」って。だから、果たしてペットの人生が幸せなのかといった大きな問いが、今は出てきている段階なのかなと思います。

岡島:仲さんにとって、それは幸せではないと?

仲:どうなんですかね。ペットは生まれた瞬間からすべて与えられていますよね。ワクチンも打たせてもらうし、ご飯も食べさせてもらうし、お散歩にも連れて行ってもらえる。だから、幸せだとは思うんですけれども。

岡島:うちの娘は今9ヶ月で、そういう状況です。すべて与えてもらって守られて。

仲:だから子どもの状況という話なのかもしれないですね。そういう子どもの状態がずっと続いていく。だから、それが幸せなのかどうか、これからの5~10年で人が思想的な立ち位置から考えるべきポイントなのかなと思います。

岡島:ベーシックインカムになると、多くの人は与えられるだけの状況になりますよね。

亀山敬司氏(以下、敬称略):全体がそうなるからね。経済的に上のほうにいる人間もデータに操られているという意味では同じだから。アルゴられてるっていう意味では。

仲:そう。全員アルゴられてるんですよ。

國光宏尚氏(以下、敬称略):中世もそういう感じですよね。結局、ほとんどの人がキリスト教による秩序のような世界のなかで神を信じていた。で、それが幸せか不幸せなのかという問いかけが、今からもう少し先に、また出てくるという。

仲:そこに答えはないんですが、とにかくそういう状況になる。ただ、ラクかもしれないですよね。「アルゴリズムがそう言っているから、この人と結婚した」なんていう話になれば。

國光:そこで自由意志に任せはじめた途端、たとえば出生率も結婚率も下がるんでしょね。親が「とりあえず結婚しとけよ」なんて言っていた時代はそれも高かった。世界的な傾向として、人は自由意志に任せると決断をしなくなる。少子化問題にはいろいろな側面があるけど、とにかく、ほとんどの人は自分で意思決定をしないんです。一方で、多くの貧しい国では出生率が高い。だから、そこはいろいろな問いかけが出てくるかもしれない。

「IT業界」と「米中冷戦」は密接に結合している

田中良和氏(以下、敬称略):僕の最近のテーマは米中冷戦です。米中冷戦とIT業界は密接に関連しているというか、米中冷戦というのはもうIT業界の話だから。去年、個人的にウケた話があります。世間では「ファーウェイは危ないかも」なんて話がメディアでもよく書かれていましたよね。でも、ファーウェイが広まったらヤバイという空気のなかでソフトバンクの通信障害が起きた。ソフトバンクはエリクソンの通信機器を使っているんですが、その機器のOSアップデートか何かに失敗して10カ国ぐらいで通信キャリアがふっ飛んだ、と。ファーウェイが危ないと思ったらエリクソンが危なかったという。「そっちが止まってんじゃん!」って(笑)。

國光:しかもテロかと思われたりして。

田中:そう。「テロか!?」ってことで一時ざわついたんですが、単なるアップデート失敗だった。でも、これは逆に言うと悪意がなくてもOSアップデートごときで止まるという話ですよね。じゃあ、悪意があったら何が起こせるのか。もう果てしない話になる。去年の通信障害ではその実証実験が行われたようなもので、「こういうのは危ない」という風になるなと思ったのが去年面白いと感じたトピックです。

岡島:ああいうことがあっても「エリクソンだから大丈夫」と思われていますが、ファーウェイでOSアップデート失敗となったら、ちょっと受ける印象も違うというか。

田中:そう。そもそもイデオロギーの話だったはずなんですけれども、結局は信頼関係の話になるじゃないですか。ファーウェイがOSアップデートで止まったら、「こいつら何かやったのか?テロか!?」となる。結局、信頼の基盤がない人たちにITの基盤を渡していいのかという議論になるんです。その意味で、IT業界と米中冷戦は密接に結合している、と。

國光:通信ならまだしも、キャッシュレスとか信用とか、あるいはUberのようなサービスまで含めてすべてのデータを取ることができるようになったら、もう軍事的な観点も含めた議論になりますよね。

田中:エリクソンやファーウェイでも困るけど、ある日突然Uberみたいなサービスが停止したら混乱しますよね。あるいは、水道や電力のクラウドを中国企業がやっていて、それで「ちょっとOSアップデートに失敗したから3日間電力が止まります」なんて話になったら大変じゃないですか。「本当か、お前ら!?」と。

岡島:デジタルの活用というのは、これまでのカジュアルな領域から、今はたとえば医療系ですとか、シリアスなエリアにどんどん広がっていますよね。ライフサイエンスに関わる領域でそういうことが起きると本当にまずい。

田中:さらにその先でもう1つ、面白いと思うことがあるんです。国にはそれぞれ規模がありますよね。ただ、ある程度はデータの量がないと成り立たないサービスってあると思うんですよ。たとえば人口が小さな国で交通関連のサービスをつくろうとしても、データが足りなくてAIで最適化されないから成り立たないというような。となると、いくつかの国はデータを集合させたうえで、同じAIシステムやクラウドをつくらないとコストが合わないなんて話にもなると思います。だからイデオロギーの違いがセキュリティ問題になった次は、ある程度の国が集合してインフラを共通化するようになる。その意味では、ブロック経済のデータ版みたいなことがこれから生まれるのかなと思っています。

さらに言えば、それで中国圏と欧米圏みたいなものに分裂したあと、次の主戦場は第3国になるというか、新興国に対するインフラの供給戦争がはじまると思うんですね。その品目は昔であれば原発だったりしたけど、今どきは原発をつくられるよりアフリカ全土で水道のクラウドを握られたりするほうが危ない。明日水道が止められたら困るじゃないですか。だから、ナショナルセキュリティに関連するような領域を含めて、ありとあらゆるものをクラウド化させて、たとえば南米なんかに売りつけるという戦争ははじまると思うんですよね。そここそが次のテーマとして面白くなると思っています。

岡島:経済圏の覇権争いみたいなものが、地図のうえでも見えてくるような。

田中:そう。昔はドルを広めたりする戦いだったのが、今後はそうしたインフラを広める戦いになるのかな、と。もちろんドルを握られても困りますけど、水道や電力や交通インフラを一発で止められるのもクリティカルなので。

岡島:そのなかで田中さんはどうするの?

田中:僕はそういうことに関わらず、VTuberで頑張ります(会場笑)。ただ、うちの会社の話と関係なく、これはビジネスチャンスなのかなと思うことはあります。今はサプライチェーンの分断というか、「中国のモノをアメリカに輸入するな」みたいな話になったりしていますが、そうなると今度はクラウドの分離みたいなものがはじまると思うんですよね。「中国でつくっていた半導体をアメリカでつくろう」なんて言って中国のテクノロジーをすべて排除していくと、今度は西側ですべてつくらなきゃいけなくなる。だから日本企業としては西側の下請け企業として再度頑張ろう、みたいな(会場笑)。「今までは中国に発注していたけど、ちょっと危ないからベトナムか日本かな。じゃあ、安いから大田区に発注しておこう」と。

岡島:また自前主義的な話に戻るという感じですか?

田中:信頼できない国に発注できないという議論にはなると思います。ただ、こういうことを言うと、「田中さんは世界の分断を煽っているんですか?」なんて言われますけど、別に煽っているわけじゃなくて、解説しているだけなんです。

今後10年間で「XR」「IoT」「クラウドAI」の市場が大きくなる

國光:僕としては、今はVRやARのようなXRとブロックチェーンの2つがど真ん中という感じです。「gumi 國光 note」で検索していただけると分かると思いますが、その辺についは長編ポストもしていますから読んでみてください。ただ、テクノロジーで重要なのは時間軸なんですね。意外とそこを無視して話す人が多いから話がややこしくなるんですけれども。AIが人の仕事を奪うというのは事実です。ただ、その時間軸はというと、ここから5年はそこそこで、5~10年後はめちゃくちゃ進む。それで10年ほど先は今の単純作業、つまりものづくりやサービス業におけるほとんどの仕事がなくなると考えています。

そういう、ここから先の10年で起きる大きなイノベーションを僕は「Web3.0」と言っています。パラダイムが大きく変わる瞬間がある。今までの10年は「Web2.0」でした。具体的には、スマートフォン、ソーシャル、クラウド。面白いのは、そうしたテクノロジーが同じ時期に密集して出てきた点です。iPhoneが出たのは2007年、AWSやクラウドが出たのは2006年、そしてTwitterやFacebookが伸びてきたのは2007年です。ここ10年間で重要だった3つのテクノロジーは、だいたい2007年前後に出てきました。

じゃあ、これからの10年間で何が起こるかというと、まずデバイスとしてはスマートフォンなんてなくなるに決まっている。未来のインターフェースは、空間すべてがデバイスになるという意味でARグラスやコンタクトレンズ型のARデバイスになると考えています。これは来年か再来年ぐらいにアップルが出してくるから、そこからAR時代がはじまる。また、そういう時代になるとすべてのものがネットにつながります。IoTですね。さらにクラウドベースのところでAIが使えるようになるというクラウドAI。この3つです。XR、IoT、クラウドAIが大きくなるというイノベーションが今後10年で起こる。で、さらにその先で起きるイノベーションがブロックチェーンなんだと僕は考えています。だから、今後10年のXRと、その先の10年のブロックチェーンという2つを、僕は今がっつり見ています。(後編に続く)

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