小売のゲームチェンジ!「リアル」と「EC」のデータをどう融合し活用すべきか?~メルカリ小泉×ヤフー小澤×マルイ青井×gumi-gumi軍地

本記事は、G1経営者会議2018「小売のゲームチェンジ~次の主戦場とその勝ち方とは~の内容を書き起こしたものです。(全2回 後編)

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小澤隆生氏(以下、敬称略):「小売」というのはインターネットの出現ですとか、テクノロジー全般によって販売方法も大きく変わってきたと思います。それこそ二次流通、あるいはデータ活用といったところで、これからも相当、ものづくりの段階から意味が変わってくるのだと思います。

それで、今は小売も売り買いだけではない商売になってきました。リアルでもそうですが、テクノロジーによって、たとえば貯まったデータをどう生かしていくのかといった話にもなってきました。特に金融はそうしたテクノロジーとの結びつきが強いということが、すでに証明されていると思います。

青井さんから見て、売り買いだけじゃないポイントとしてはどういったものがあるとお考えでしょうか。現在もすでにいろいろ展開していらっしゃると思いますが、小売としての広がりというのは、テクノロジーによってどのようになっていくとお考えでしょう。

D2C時代のリアル店舗は「売らないお店」へ

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青井浩氏(以下、敬称略):D2Cなんかは、これからものすごく広がっていくと思うんですね。大量生産・大量販売の時代はマスマーケットがありました。消費者からみると流行やブームがあって、「皆が欲しいというものが、私も欲しい」という時代だったと思うんです。特に1970~80年代は。

けれどもバブル崩壊後は、どちらかというと「私が欲しいものが、欲しい商品」という風になっていった。これはサービスでも同じだと思います。じゃあ、その「私が欲しいもの」って何か。趣味・志向もありますが、もう1つ、サイズや体形というすごく客観的な指標もあります。

ただ、そのフルサイズに対応している商品ってどれほどあるのかというと、ほとんどないわけですね。マスでつくるためにはスケールメリットを出さなければいけない。だから、どこかの平均、一番数が多いところを中心にしてつくっていかないと、在庫ロスが出て利益が出なくなっちゃうという考え方があるためです。

ですから、そこでマスカスタマイゼーションしていこうという動きもありますけれども、一方ではD2Cでパーソナライズしていくという動きもあります。そこで、規模は小さいけれども、それぞれの商品・サービスの専門家の方が、今まで置き去りにされていて、自分に合ったサイズや体形がなかった人に向けの商品をつくっていく。当然、そういったものはこれから支持され、伸びていくと思います。

で、そうなると必ずしも店舗で在庫を持っていなくてもいいわけですよね。というか、持っていると非効率になって利益が出なくなっちゃう。それなら店舗ではサイズだけ測って、あとは生地や素材だけを見てもらってから、ネットで発注してもらえればいいですよね。でも、ここで最初の話に戻りますが、売上を立てることが前提のお店では、そういう商売ができません。あるいは、そういう人たちにテナントさんとして入ってもらうことができないという話になります。

それで当社は今、「売らないお店」と呼んでいるんですが、それをやるために売場を消化仕入れ方式からテナント方式へ変えています。そうすることで、いろいろ新しい商品に対応しているようなお店と一緒にできるようにしよう、と。

「リアル店舗」と「EC」のデータをどう融合して活用すべきか?

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小澤:店舗が売上を立てないで、じゃあ何を得るのかというと、今のお話を私なりに解釈すると、データだと思うんですね。好みを顕在化する。その方のサイズを顕在化する。で、それを1度データベースに入れたら、「あとはインターネットで注文してもいいですよね」となるわけですね。これ、ZOZOの前澤さんがおっしゃっていることにも近いかもしれません。

店頭というのはひょっとしたら最もデータを集めやすいところなのかもしれません。人が介在することができますし、ファッションであれば実際にそこで測ることもできますし。結局、今はまだインターネットで顕在化していないものがあるんですね。どんなにインターネットが頑張っても、今は95対5でリアルのほうが大きい。特にコモディティや日用雑貨といったものは、どうしてもインターネットでなく、コンビニさんやスーパーさんで買われることが多いので。ですから、たとえば小泉さんが何を買っているのか、どういった好みをお持ちなのかというデータを最も集めることができるのは、実は店舗でございます。

では、そうして集めたデータをいかに活用していくのか。その意味でもデータを活用するための店舗というのは非常に興味深いと思いました。結局、小売におけるアマゾンとリアルの一番の差というのは何か。たとえば私がアマゾンでは、ヤフーショッピングでもいいですが、何を見ているかが分かるんですね。小澤が何を見ていて、何を買っているか、逐一分かるのがインターネットです。

一方、まったく分からないと言っても過言ではないのが、データを取っていないリアルです。なので、リピートを促すとき、それを分かっているアマゾンはメールを送ります。しかもオウンドメディアで送るからタダ。でも、それが分からないリアルの小売は、初めてでもリピートでもチラシを撒かざるを得ない。

これはもう歴然たる差があって、そこはインターネットのほうが強い。これはデータの差にほかならないということなのかなと、私自身は日ごろから考えていました。そうしたデータを、メルカリはどうやって取っているんですか?あるいは何に使っているんですか?

小泉文明氏(以下、敬称略):うーん、まだぜんぜん使えてはいないという感じですね(笑)。ただ、データに関して言うと、僕らのところも小澤さんのところもそうですけれども、モバイルペイメントのところがうまくコマースと結びついていったとき、どんな社会になるのかという話があると思います。

これは中国を見ていても感じることですが、日本でも現在は「オンラインからオフライン」のような感じから、少しずつ「オフラインからオンライン」になっていますよね。この流れが、おそらくはここ1~2年、日本で大きな波になるのじゃないかなと思います。そこで小澤さんが言ったような店舗ですとか、オフラインの人たちを、どうやってオンラインのほうへ引っ張って1つのIDのなかで完結させていくのか。そこにデータがどう絡むのか。そこでメルカリのデータをどう生かしていくのかというのが、次の流れとして考えることだと思っています。

小澤:オフラインの会社様とのお取組みは、すでに何かあったりするのですか?

小泉:今はまだないですね。たぶん、モバイルペイメントが広がる過程でそうしたものが増えていくと思います。とにかくここはムーブメントをつくっていかないとデータが貯まっていきませんから。結構、‘Winner takes all.’じゃない部分もたくさんあると思っているんですよね。ですから、これからどんどんデジタル化していったとき、消費がどんな風に変わっていくのかというのは、ここ1~2年の面白いところじゃないかなと思っています。

小澤:やはりオフラインというのは総じてデータが貯まりづらいです。そこで今は一生懸命、Amazon Goや、中国だと盒馬鮮生(フーマ)あたりが、お客さんに、まずは「ログイン」してもらうという観点でやっているわけですね。まず来ている人が誰かを特定する。で、その人が何を手に取ったか、何を買ったか、どういう動線で何を見たかという、インターネットでは当たり前のように20年前から取ることができているものを、リアルでも取ろうとしている。

それはカメラやセンサーといったものが、かなり良くなってきたからできるんですけれども、いずれにせよ、小売に関するデータの獲得という点では、オフラインのほうはずっと、仕方がない理由によって遅れていました。重要なのは、このオフラインとオンラインのデータをがっちんこさせて、どうやって消費行動につなげていくのか。あるいは、ものづくりに生かしていくのかということかと思います。

私もインターネット業界でデータを日々見ておりますが、消費またはものづくりにおけるデータの活用方法というと、今まではおそらく紙でアンケートを取ったり、フォーカスグループインタビューを行ったりして、まずデータを取ってきたのだと思います。ただ、それが徹底的に活用し尽くされているかというと、非常に難しい状況なのかな、と。

じゃあ、そこでメルカリやヤフオク!が持っている2次流通のデータを、どう使うのか。これは、おそらくリテーラーさんやメーカーさんにとっては、宝の山である気もします。そこで何かできることがないのか。やはりデータが勝敗を握ってくるのではないかというのは、今のお話を伺っていても思うところでございます。

このあたり、ファッション業界ではどうでしょう。ファッション業界ではなんとなく、データというよりはトレンドというような、まあトレンドもデータなのかもしれませんが、ファッション業界はデータ活用についてどう捉えたらいいとお考えですか?消費者が多様化していくなか、先ほどは「最近の世代はInstagramに同じ服で出るのを嫌がったりする」というお話があることも伺いました。我々からすると「じゃあ出なきゃいいじゃないか」と思うんですが(会場笑)、とにかく、そんな風に多様化している状況のなか、我々はデータをどのように捉えたらいいのかな、と。

これからのブランドは「原点回帰」すべきである

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軍地彩弓氏(以下、敬称略):今は変数の時代だなと思うんですよね。今までファッション業界というのはだいたい2年前から仕込まないと生地が用意できなかった。なぜ流行色があるかというと、ああしないと生地が用意できないんです。急に「白」と言われても。「え、白なんか用意してないよ」と生地屋さんが言ったら終わりなので、なんとなくメーカーの都合でつくっていたんですね。

でも世間では、たとえば何かの雑誌が黒を特集したとしても、「黒なんてみんな普通に着ているじゃん。それ、トレンドなの?」という話になっちゃう。ミラノやパリのファッションショーを見ていても分かりますけれども、今は共通の流行がほとんどないんですね。なんとなくスポーティーなものが増えたり、ヴァージル(・アブロー)の「OFF-WHITE」が出てきたり、ビッグシルエットやロゴものが流行ったりというのはありますが、大きな視点のトレンドはほとんど存在し得ない。それよりも、なんというか、その人の「着たい」というモチベーションにつながるようなライフスタイルをつくりあげていくというほうが効果的なのかなと思います。

たとえば東京だと、今年の夏はふわっとしたワンピースを着ている子が多かったんですね。それは、彼女たちのなかに「ストレスからフリーになりたい」というのがあったから。それで、今までのようなキッチリとしたタイトスカートではなくて、ゴムのパンツやスカートが増えていたり。そういう人の機微みたいなものが、トレンドというか、大量に売れるもののキーになってきたりするのかな、と思っています。

GUさんなんてその辺の見極めがすごくうまくて、調査をしたうえで仕掛けを講じて秋の売上をあげていたりします。ですから、全体の流れはあってもピンポイントではつくり込まないというような流行のつくりかたになってきている。結局、ファッションにおけるデータ活用となると、売れているものを追随することになっちゃうんですよね。そうではなくて先を予測するということでないと、ファッションというのは追いつかない。

なので、これからは2極化するようになると思います。1つは目の前で売れているものを大量につくるような流れ。たとえばメルカリさんで売れているもののデータを小泉さんにいただいて、「今これが売れているらしいよ?」ということで、ZARAさんのように2週間で店頭に出せるようになれば、それはすごく効率的かもしれません。ただ、もう一方では、自分たちのものづくりの信用性みたいなものを、メーカーがもっとつくり出していくような流れをつくっていかないとダメなのかな、と。

今はGucciがすごく売れていますけれども、Gucciってどんな風に合わせてもめちゃくちゃ派手なんですよ。ロゴや柄が。だからシーズンによって何が変わったか分からない。でも、派手なものが好きな人はずっと付いてくるんですね。そこに信頼性がある。

ですから、ブランドにとってもサステナビリティが大切というか、毎回コロコロ変わる流行より、ブランドとしてきちんと信用され、愛されるような要素を増やすこと。そうしてファンやユーザーとつなげていくというファンビジネスの方向に、ある程度は切り替えていくようにしないといけないんだと思います。「今回バロックで。次はソリッドで」なんていう風に、たとえばCÉLINEも今年デザイナーが変わってスタイルが大きく変わったりしたんですが、そうしたブランドに紐づくような形ではない方向に今は変わってきているのかなと思います。

小澤:メーカーなりのアイデンティティをつくるためにどういう努力をしていくのか、と。あるいはそこでデータを使うのかどうかは分かりませんが、やはりだいぶ変わってきた感じが、変わってきたというか、戻るんですかね。

軍地:原点回帰だと思っています。1回は荒れ野原になって、もう終戦直後みたいなイメージで。それでもう売れなかったりして。

小澤:情報過多がゆえにメーカーとしては原点回帰をしていく、と。

軍地:ものづくりの原点に戻って、「なぜ服をつくっているのか」「なぜ人にサービスを提供しているのか」というところに立ち返ったほうがいい、と。

小泉:今のお話を聞いて思ったんですが、レクサスさんは最近、店舗に車を置いていないんですよね。これって結構衝撃的だな、と。自分たちの商品を置かない。もう完全に“空気”を売っているというか。今「ファンづくり」というお話がありましたけれども、今は自分たちのポジションをどう取るのかについて考えるということを、企業がすごく求められているというか、どこに“張る”かが問われている時代なのかなと思っています。

メルカリにはかなりいろいろなブランドが出品されていますけれども、たとえば10万円のコートでも、売れている10万円のブランドと、売れていない10万円のブランドがあるんですよね。で、その違いは、まだあまり言語化できていないというかデータとして見ることはできていないんですが、その辺は今後かなりやっていきたいことの1つです。

軍地:今はコム・デ・ギャルソンとかY’sとか、ものすごく高くなっていて。

小泉:その辺はめちゃくちゃ高く売れていますね。

小澤:その辺を言語化して、データを活用しながらメーカーさんと将来何かできたらいいかもしれないですね。青井さんにも何かメッセージがあれば伺いたいと思います。

青井:最後に1つ。私たちはこれから「売らないお店」というのをつくりたいと思っています。売らないお店って何か。1番分かりやすいのはApple Storeです。商品は売っていますけれども、Apple Storeでは売ることではなくAppleを体験してもらうことがメインになっているんですよね。Appleをよく知ってもらって、それでお客さまの生活を豊かに楽しくしてもらうというのが趣旨であって、その意味では体験を提供しているお店なわけです。

「売らないお店」もそれです。先ほどお話ししていたD2Cと同じで、そこで売らなくてもいいんです。お客さまのサイズを測ったうえで、あとでネットにてお買い上げいただければいいです、と。一種のショウルームのような、データの収集型のお店ですね。そういう、「売らないお店」というのを一緒につくっていきましょうというかたには、ぜひこの指止まれで、ご一緒したいなと思っています。

小澤:まずはここまで、ご登壇者の皆さま、ありがとうございました(会場拍手)。では、ご質問のある方は挙手いただければと思います。

質問1、食品などは、CtoCの小売ではどのようにファンを獲得すべきか?

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小泉:実は野菜ってメルカリでめちゃめちゃ売れているんですよ。僕も買っています。野菜はかなり中間で取られることが結構ありますけれども、メルカリなら売れなければ負担はゼロですし、売れたら10%ですから。

じゃあ、どうして売れるのかなということを考えてみると、メルカリでは出品者と購入者を相互に評価し合うんですよ。互いにレーティングをする。そのあたり、おそらく今まではイオンさんやセブン-イレブンさんが企業努力で信用を付加していたと思うんですが、メルカリでは、ある意味、それが互助の関係になっています。ユーザー同士が互いにレーティングをして、そのなかでガバナンスを効かせよう、と。

ですから、その評価が高い人の野菜は結構売れているんです。それも、ある意味ではファンが付いているという話なのかなと思っていまして。そんな風に、スマホ1台で、野菜だけじゃなくていろいろな商売ができるというのは、これからどんどん広がっていくんじゃないかなと思います。

質問2、スマホを使った決済や消費のさせ方について、中国から学ぶ点、日本ならでは戦い方とは?

青井:やっぱり中国はデジタル化が世界で1番進んでいるのかなと思います。「アフターデジタル」という言葉もありますけれども、デジタルが当たり前で、そのなかで、たとえばリアル店舗はどんな風に役割を変えていったらいいのか、と。デジタルという大前提のうえで進んでいますから、すごく先端的だと思いますね。

ただ、その背景にはやっぱりAlipayですとか、国が一体になってデジタル化が進んでいるというように、中国ならではの事情があると思うんですね。なので、我々も盒馬鮮生なんかを見ると「すごい。こういうの、できないかな」なんて憧れちゃう面もあるんですが、背景がまったく違うのであれば、その辺はあまり真似をしても仕方がないのかなと思っています。

一方で、先ほどのD2Cのお話もそうでしたけれども、日本では1人ひとりの消費者が豊かになってきて、人が欲しがっているもの、皆が欲しがっているものではなく、自分が欲しいものを求めるようになってきました。そうした個性化といった部分では日本が結構進んでいると思いますので、その辺に新しい流通というか、デジタルも踏まえた流通をつくっていくことができると、すごく面白くなるのじゃないかなという気がします。

軍地:青井さんがおっしゃっていることともう1つ、私自身もWeChatなんかを使っていて感じたことがあるんですけれども、やっぱり中国ではWeChatやAlipayに、プラットフォームがすごく集約されてるじゃないですか。それは政府の方針もあると思いますが、とにかくそれでユーザーがすごく集まりやすくなっている。

でも、たぶん日本の電子決済システムはこれからまた分散化しちゃうのかな、と。サービスも、Origami、LINE Pay、あるいはApple Pay、どこに紐づくのか。日本の悪いところでもあると思うんですが、何かがはじまるとき、皆がコンペティティブに動き出してしまって、それが大きな動きをつくりづらくなっているということは感じます。それで消費者も利用するものがバラバラになっちゃう。

そのあたり、「もっと収束していけばいいのに」ということは強く感じます。中国だと情報発信もコミュニティもSNSもペイメントもWeChatに集約されていたりしますし。もしかしたらこれからメルカリさんがそうした存在になるかもしれませんが、とにかく日本もプラットフォームをもっと集約していく。中国から学ぶとしたらそこなのかなと思います。

中国は今がバブル期なので、皆が同じモノを手にしたり、大量生産・大量消費といったことがありますけれども、仕組みとしては同じだと思うんですね。ですから、同じ仕組みのなかで消費者に伝えるものを日本の成熟した情報に変えていけばいいのかなと思います。

小澤:中国の状況なんかも拝見して思ったことを少しだけ。AlipayとWeChatPayを見ていると、消費者のデータが今までと違うのは、リアルを含めて「誰が」「どこで」買ったか、あとはPOSまでつながれば「何を」買ったかということに加えて、WeChat等による情報発信が加わって、さらには金融が加わったというところで、どんと広がったという点だと考えています。

今までは、どちらかというとネットはネットで、リアルはリアル。しかもリアルの場合は「誰が」という点で、どうしてもそのお店で閉じられていました。でも、それがユニバーサルに接続されて、そこでさらに情報発信の仕組みもできあがると、送客につながります。これが非常に画期的というか、エポックでした。

それがあることによって実際に消費者を動かしているんですね。決済という手段だけではなく、送客にもつながっている。結局、ビジネスは送客によって生まれますから。それができるかどうかで大きく違ってくると思います。で、アリババよりもWeChatのほうが送客寄りだとは思いますね。LINEさんとかはその辺を多分に意識していらっしゃると思います。

小泉:中国におけるデータの扱いかたに関しては皆怖がっているようなところがあると思うんですけれども、日本でも同様だと思うんですね。ですから、データを集めることで社会に対してインセンティブが生まれるよう、僕ら事業者が設計をしないとなかなか根付かないなと思っています。その辺のコミュニケーションが大事だと思います。

質問3、「売らないお店」にした場合、販売スタッフのモチベーションはどうすればよいか?

青井:僕が「売らないお店」というものをビジョンとして掲げるとき、一番心配していたのはそこでした。私たちの社員には現に今この瞬間も売っている人たちがいるわけで、その人たちがどう思うのか。それで、以前何人かの販売スタッフに少し話を聞いてみたのですね。「こういう風にしたらいいと思うんだけど、どう思う?共感できる?」と。そうしたら、「すごく共感できます」と言うんです。思った以上に、皆、「売上さえなければ」と(会場笑)。「もっといい接客ができて、もっとお客さんに喜んでもらえるのに」って。

で、「お客さんも同じですよね」と言うんです。「お客さんも、私たちが“売りたい”となると怖くなって引いちゃうので、その瞬間から楽しくなくなっちゃう」と。「だから売らなくて良ければ互いに、お客さまも私たちも両方すごく楽しくなって幸せになりますよね」ということを言われました。

ただ、今ご質問いただいた通り、今販売しているスタッフの努力なり成果なりを測る、唯一に近い指標が売上なんです。売上というのはすごく強力な指標なんですね。ですから、それに替わる客数なりNPS(Net Promoter Score)なり、自分たちに合った売上以外の指標をきちんと設けたうえで管理していけるような、そうした開発が重要になると考えています。

軍地:現場でお洋服を売る方々の評価となるインセンティブに関して言うと、今はショップスタッフの方がInstagramをはじめSNSにあげたものから生まれる売上というのがすごく増えているんですね。それで、たとえばBEAMSさんが紹介して売上が3倍になったアイテムがあったりして。ですから、販売員さんの役割として、SNSにアップして、その洋服がどんな風に良いかを書くというところにも、きちんとインセンティブを出しましょうという話はよくしています。

今までは売上だけがインセンティブ。でも、もしかしたら今後は、たとえば企業イメージが高まったら、そこで販売員さんも含む全スタッフに収益を分け与えていく。そういったところまで含めて、販売員さんの評価方法を変えていくべきだと思っています。ストライプインターナショナルさんですとか、いくつかの企業ではすでにそうした取り組みもはじまっていますので、そういう流れはあるのかな、と思います。

小澤:では、最後に大変恐縮ではございますが、小売の大先輩であられる伊藤さま(伊藤順朗氏:株式会社セブン&アイ・ホールディングス 取締役常務執行役員)からお話しをいただければ、と。小売の今後がどうなっていくかというのを、おおいに語っていただければと思う次第でございます。

伊藤順朗氏:ご指名ありがとうございます。青井さんから小売の原点として、「仕入れて、並べて、売る」というお話がありました。やはりこれだと思うんですよね。それは経済の営みなんですけれども、そのなかには楽しさというものもあるのだと思っています。昔は「市」というのがあって、それはモノを買う場なんだけれども、出会いの場でもあった。それをネットの世界で実現していらっしゃるのが楽天さんであり、アマゾンさんなんだと思います。

ただ、そこに本当に楽しさがあるのかなというと、正直、私はオールドエコノミーの人間だからかもしれませんが、新しい出会いはないのかな、と。便利ではあります。私もスマホで頼んでしまうものはたくさんあります。けれども、そこに新しい出会いがないという部分について、きちんと取り組んでいくことが我々の使命なのかなというのが1つあります。

それともう1つ。リアルの店舗はデータが取れていないというお話がありました。なので、今は画像認識等でいろいろやろうとはしていますが、そこは限界があるかなと思いつつ、私どもは現在、セブン&アイ・データラボというのをつくっています。そこで自分たちのデータとともに、いろいろと協力してくださる企業さんのデータと合わせて、何ができるかということに取り組んでいます。

ただ、そこで私はいつも言っているんですが、‘So What?’なんですよね。「それが分かって、それで何をするんだ?」と。データだけを取って、「こういうことが分かりました」となっても、「それはいいんだけど、それで何になるの?」と。そういうところを考えながらデータを分析するように言っています。

小澤:突然お話を振ってしまったにも関わらず、ありがとうございました(会場拍手)。途中、ネット系の2社の名前が出ておりましたけれども、ヤフーもがっつりやらせていただきますので、データの使い道まで含めまして、もう、私どもはがっつり、楽しさを追求していこうと思っていたところでございます(会場笑)。

いずれにしましても、ネットも手段の1つでございます。データの集めかたも使いかたも含めて、ネットもテクノロジーも、最終的にはモノを買っていただくための、つくったモノを売るための、1つの手段。それが非常に優秀で、自動的に活用できて、しかもコンピュータの力を借りると、ひょっとしたら感性に頼る人よりも正確な分析ができる、と。そういうことで、最終的にはまさに楽しさだったり、正しさというものをつくるための手段である、と。最後の伊藤さまのお話を含めて、今回はそのようなパネルだったと思います。では、ご登壇いただきました皆さま、そして伊藤さま、本当にありがとうございました(会場拍手)

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