二次流通、D2Cによる「小売」成功の秘訣とは?~メルカリ小泉×ヤフー小澤×マルイ青井×gumi-gumi軍地 

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本記事は、G1経営者会議2018「小売のゲームチェンジ~次の主戦場とその勝ち方とは~の内容を書き起こしたものです。(全2回 前編)

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小澤隆生氏(以下、敬称略):「小売」といえば、今ゲームチェンジの最たる状況にあるのはご承知の通り。アマゾンが世界を席巻している一方、ユニクロをはじめとした製造小売という業態も登場して久しく、今はその様相もだいぶ変わってきました。では、コンビニやドラッグストアまで含めてさまざまな業態がひしめくこの小売という世界が、テクノロジーによって今度どうなっていくのかということを、今日は壇上の素晴らしい方々と議論したいと思います。

壇上で純粋な小売というと青井さんだけなのですが、その青井さんも先ほどは控室で「私たちも小売じゃないですけどね」というお話をなさっていて(会場笑)。ただ、我々からすると最も小売的ですし、まずは青井さんに小売の今と未来について、丸井グループの現況も含めていただきつつ、お話を伺いたいと思います。

モノからコトへの変化に「小売」はどう対応すべきか

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青井浩氏(以下、敬称略):じゃあ小売を代表しまして、というわけでもないんですが(笑)。お店を持ってモノを売ったりしていますから、一応小売なのかなと思います。で、今はどうなのでしょう。現在はゲームチェンジがいろいろな形で起こっていると思うんですね。

そもそも、モノを仕入れてお店で仕入れて売るのが小売だったと思うのですけれども、長期的にはモノからコトへ、消費のトレンドが変わってきています。面白いなと思うのですが、今はインバウンドもそうなんですよね。たとえば中国の方も数年前までは「爆買い」だったのですが、今は日本人も知らないような地方のすごく面白いところを訪れ、文化や料理を体験するといったことにお金を使うという風に変わってきました。まずは、そうしたモノからコトへの変化に小売がどう対応するか。

シェアリングエコノミーも広がってきました。メルカリさんもある意味ではシェアリングエコノミーだと思うんですが、シェアリングってモノを所有しないだけではないんですよね。所有しないということは買わないということですから、小売としてはすごく大きなチャレンジになると思います。

あとは、当たり前ですけれどもEコマースという変化。店舗でなくても買えるので、そのEコマースも少しずつ、いわゆる「ニューリテール」のようになって完全にデジタルが一体化してくると、「じゃあ、Eコマースが当たり前の時代の店舗は何をすればいいんだっけ」と。そんな風に変わってくると思うので、とにかく今は大きく、しかも長期的なチャレンジがいろいろ促されていると感じます。

小澤:ありがとうございます。いずれにせよ、従来の小売というのは仕入れて売って、その差額で儲けるビジネスだったわけです。でも、それはとうの昔、上流に行ったり下流に行ったり、製造販売ということで垂直統合したり、あるいは売ったタイミングで今度は金融のほうへ行ったりするようになったりしてきました。

それで仕入れ販売はコモディティを中心に売り買いの差額がどんどん薄くなり、さらにはインターネットによって商圏までなくなってきた。そうなると、もう上か下、もしくは両方に行くしかないといったことになってきました。どこまでを小売と定義するのかと考えるうえでも、今は上や下と切り離せなくなってきています。特にマルイさんは早くからカード事業にも進出していて金融での利益も非常に大きいと思いますので、そこはまた後ほど聞いてみたいと思います。

さて、小売というのはファッションの領域でもかなり激しく変わっていると聞いております。そこでファッションの面から、または小売全般という視点でも構いませんが、続いては軍地さんにお話を伺いたいと思います。

軍地彩弓氏(以下、敬称略):私は学生時代から今に至るまで、ファッションの世界に4半世紀ほど関わってきました。編集者という立場でファッションを見てきたのですけれども、私がファッションに関わりはじめたのは1980年代。当時はちょうどバブルで、今はまたバブルがまた来ていますけれども(笑)、当時は4万9000円のスーツについて「安い」って、私は書いていたことがあったんですね。

1985年頃の話です。ジャケットとパンツを合わせて10万円を超えるものを、今より給与水準がずっと低い時代に買っていました。シェアリングもせずに。でも、今はファストファッションがあって、姪っ子なんて見ていると390円のニットを買っていたり(笑)、「メルカリで100円だったよ」なんて言っていたりして、ずいぶん時代が変わったなと思います。

私は当時、「ViVi」というファッション誌をやっていたんですが、ファッション誌が情報を大量に与えて皆を統一化していたんですね。それで、たとえば誌面で紹介した通りの「安室ちゃんファッション」を全身にまとった子が、「ViVi」発売翌日に渋谷109を歩いているなんていう状態でした。そういうことを毎回やっていたんです。大量の情報を与えて大量にモノを売るということを、ずーっと、2010年頃までやっていました。

でも、そのあと突然モノが売れない状況になります。そこは売り方・買い方の変化というのもあるのですけれども、消費者の変化がすごく大きかったと思います。1980年代から90年代にかけては、ショッピングの熱狂のような時代があったと思うんですね。いわゆる中流と言われる方々がすごくたくさんモノを買っていました。

それでファッション誌は毎シーズン、今(11月下旬)はもう次の春夏の話をするんですけれども、「春夏はこれが流行ります」と。するとメーカーさんもそれに合わせて仕掛けていきます。トレンチコートを1万着用意して、それで「軍地さん、これ、目一杯宣伝してください」って。当時はそれを煽ると買ってくれる人たちがいたんです。でも、今トレンチコートを1万枚仕込んでいたら本当に赤字になっちゃうというか(笑)、炎上するというか、売れないです。

トレンチコートはすでに去年買っているんですよ。それでも今まではメーカー都合で対前年比という数値だけを目標にして、「ずっとずっと消費者は買ってくれる」と。去年買った人もまた買ってくれると考えていたわけですが、今は消費者の立場からすれば「え、トレンチコート、もう持っているんですけど」ということになります。

今までは、むしろ前年のことを否定しながらモノをつくっていた。でも、今はユーザーの方の立場からすれば、前年買ったものを否定されるほうが不信感になったりします。すると、次は消費者が「買わない」という消費行動をとります。今はそこで、それこそメルカリさんが出てきたり、シェアリングが出てきたり。最近は断捨離ということも言われるようになってきました。クローゼットをできるだけ縮めてスペースを有効活用しよう、と。

なんでしたらショッピングの時間も縮めて他のことに有効活用したいということで、皆さん、スマホに時間を使ったりするわけですね。私も最近、スマホを触っている時間は1日平均7時間というのが分かって、「すごい。人生の1/3はスマホを触っている」と思ったんですけれども(笑)。とにかく、それでウィンドウショッピングをする時間もいらなくなってきて、それがECに変わってきたり。

そうなったときに小売は何ができるかということを、私自身はずっと見てきました。ですから、現在の変化というのは消費者の変化ということを見間違えないようにしないといけないなと実感しています。

小澤:会場にはモノをつくっている方も、「たくさん売ろう」という商売の方もいらっしゃると思いますが、一様に消費者のほうを見なければならないということでございます。では、消費者のそうした変化はなぜ起きたのか。インターネットの出現もあるとは思いますし、ひょっとしたらバブル崩壊後の経済低迷期、なんとか自分のなかで辻褄を合わせるように変化していったのかもしれません。軍地さんからご覧になって、消費者の変化というのは何によって起きたとお考えでしょうか。

「スマホの登場」が消費の変化を起こした

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軍地:単純に、スマホだと思います。情報を得る方法が大きなものから個人の片手に収まるものへ変わって、今は雑誌もドコモのプラン等でスマホからすべて得ることができますから。もちろんSNSもあります。私は雑誌屋でもありますけれども、今一番の苦境に立っている紙媒体がダメというより、伝え方の問題として、雑誌ではもう伝わらないということになってしまっている。マスというものが伝わりづらくなっているのだと思います。

今の若い子にはInstagramのタイムラインがあります。彼らにとっての雑誌は、あのタイムラインになるわけですよね。そこで誰々ちゃんが着ているものを見ている。その「誰々ちゃん」も昔なら女優さんやセレブだったのですが、今はもっと身近な、フォロアー1万人にも満たないような、マイクロインフルエンサーと言われるような子たちの真似をしたいという風になってきました。

そうなると、雑誌が勢いで「黒が流行ります」なんて言っても嘘になっちゃう。自分が見ている人が黄色を着ていれば黄色が売れます。スマホによって情報伝達がそんな風に変わっていったというのは大きいのかなと思います。

小澤:昔はテレビや雑誌ぐらいで情報のソースが少なかった。たとえば「地方に行けば行くほど巨人ファンが多い」というのも、実際に見る機会がない方々は電波で届くテレビを通じて巨人ファンになっていたということですね。そういうことがファッションの世界にもあったということかと思います。でも、そうした時代に比べて今は情報ソースがすごく多様化した。それで目の前にいる誰々ちゃんの着ているものが、インターネットを通じて、スマホを通じて、幅広く手に入るようになった、と。じゃあ、そういう時代にマーケティングはどうしたらいいのかというのは、のちほど改めて伺いたいと思います。

そして、メルカリは小売にとって敵なのか、味方なのか(会場笑)。一体その辺はどうなのかというのをご本人に聞くのもアレですし、のちほどまた青井さんに聞いてみたいとは思います。ただ、私がヤフオク!の責任者であることは一切無視して(会場笑)、「一体メルカリはどうなんだ」と。「メルカリは消費を減らしているじゃないか」という非難が、たくさんあると聞いております(会場笑)。そのあたりも含めて、小売におけるメルカリとはどういった存在なのか、社長自身がどんな風にご覧になっているかというのを伺いたいと思います。

「二次流通」は小売の“脅威”ではなく“味方”である

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小泉文明氏(以下、敬称略):すごい話づらいところから入りましたね(笑)。実際、消費トレンドの変化というお話のなかでメルカリの存在はよく取りあげられますけれども、大きくは2つあるかなと思っています。

まず、最近はブランドのなかでも高いものが売れるようになってきました。たとえば、この季節に10万円のコートを買ったとします。そのとき、おそらくそのコートはファンも多く、ストーリーがきちんとあるから、メルカリなら5万円でリセールできる、と。「それなら私は実質5万円を負担しているだけだから、買おう」と考えるわけです。

輸入自動車や不動産であれば、二次流通があることによって一次流通でも高いものを買いやすいということがあると思います。でも、今はメルカリの存在によってファッションでもそうした現象が起きているんじゃないかなということで、これはすごくエポックメイキングな変化じゃないかなと思っています。

それともう1つ。今は二次流通の動きまで見ないと一次流通の動きが分からなくなってきています。軍地さんのお話にもありましたけれども、今はファッションのトレンドがつくりづらくなってきている。特に若い子に聞くと「Instagramに同じ服を2回も3回も載せるのは、もう恥ずかしい」と。だからメルカリで売ったりする。

あるいはファッションも「皆と一緒はダサい」といった時代のなか、たとえばファストファッションを買いに行くとどうなるか。今は商品サイクルも短いから、あるとき迷って買わなかったものを「やっぱり買おう」と思って再度お店に行くと、もう売っていなかったなんていうことがたくさんあります。それで「あのとき買いたかったから」と思ってメルカリを見ると、それが定価より高く売られていたりするなんていうケースがあるのですね。

メルカリのなかで1番売れているブランドはユニクロです。結局、経営者として合理性を求めると「在庫はなるべく持ちたくない」という話になると思うのですけれども、それは消費者からしてみると「欲しいときにない」ということになります。ですから、いわゆるヒット商品を自分たちから生まなくしているという構図になっているんじゃないかな、と。その意味で、2次流通まで見ないとプライシングや需給バランスが分からないということが起きているんじゃないかなと思っています。

なので、「メルカリは小売の脅威」ということは言われているかもしれませんが、うまく使うと1次流通の値段も高めることができるし、在庫の量も最適化できると考えています。そんな風にして、共存できるような形になっていくんじゃないかなと考えていますね。

小澤:ヤフオク!の責任者として申し上げます。二次流通は小売の味方でございますから(会場笑)。製造業の味方でございます。今、メルカリさんは取扱高がおよそ5000億円で、ヤフーは1.5兆円ぐらい。でも、全消費というのは150兆ぐらいですから、全体の1%ですよ?で、それがあることによって消費者の背中を押しているわけですからね。仲良くやっていきましょう、と(会場笑)。「箪笥の肥やしになるな」と思いながら高いものは買わないということですよね。

小泉:そうですね。今、日本では1年間で7.6兆円ぐらい、箪笥にしまわれるか捨てられるかする消費があるそうです。なので、かなりもったいないことが起きているんじゃないかな、と。

小澤:青井さんがおっしゃっていた3つのうちの1つはシェアリング、特にファッションもやっているお立場からして、メルカリの存在というのはどんな風にご覧になっているんでしょうか。

青井:もう完全に、二次流通はメーカーさんの味方でもあるし小売の味方でもあるし、皆の味方じゃないかなと僕は考えているので、今のお話にも完全に賛成です。我々のなかでも「洋服を売っているだけでいいんだっけ?」という話は前々からありましたから。日本は洋服のリサイクル・リユース率が世界一低いんです。3割前後しかない。ですから、売っている立場として「下取りや二次流通といったところまで手掛けなければいけないんじゃないか?」と。それで、お客さんに店頭まで服を持ってきていただいたらクーポン券をお渡しして、それでまた買っていただくようなことはかなり前からやっていました。

それをリアルでやっていたので、メルカリさんのように大きくできなかったというのはあります。ただ、それを差し引いても、やっぱり役割分担したほうが、そういうことをもっと大きなスケールでできると思いますし。サステナビリティの視点で考えてもCircular Economy(循環型経済)をつくっていくことが我々にとっては重要ですから、あまり小売の敵か味方かといったことを考えるより、皆が良くなるような方向に進んだらいいんじゃないかなと思います。

小澤:自動車や不動産は二次流通を前提とした販売になっていますが、なぜファッション等がそうなっていなかったのか。二次流通の仕組みがなかったから、あるいは面倒だったからという側面があります。でも、メルカリが出てきたことによって、一応ヤフオク!も出てきたことによって(会場笑)、ひょっとしたら50%や70%、下手をすると定価を超えるようなことが起きてくる。

では、そこで一次流通を行っている会社が二次流通まで意識した売り方をするのか、しないのか。たとえばZOZOタウンでは売ったものが1クリックで買い取ってもらえるような仕組みがあったりします。一次流通の会社として、そうした二次流通があるという前提に立つかどうかは、ひょっとしたら製造者にとっても重要なポイントになるような気がします。

それは、繰り返しになりますが自動車や不動産ではすでにありました。変なものではございません。そこで、改めて軍地さんにファッションという点で深掘りをしてみたいと思います。ファッションで今何が起きているか、もう少し教えていただけますか?

ファッションにおけるゲームチェンジは「D2C(Direct to Consumer)」である

軍地:私は今、「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」というクラウドファンディングサービスのなかでもファッションに特化した「CLOSS(クロス)」というサービスで、顧問やメンターをしていたりします。また、「東京ファッションテクノロジーラボ」というところでもメンターとして、テクノロジーを使ってこれからデビューしようとする学生の手伝いをしていたりします。で、そうしたテーマで先日はNewsPicksの記事でも「今年のファッションにおけるゲームチェンジはD2Cである」ということを書きました。

去年、経産省のアパレル・サプライチェーン研究会というものに出席して強く感じたことがあります。先ほど言った通り、メーカーさんのものづくりスパンは、とにかくシーズンごとに新作を買わせる仕組みになっていて、今はそのループが止まりません。それでオーバーストアが起こるわけですね。欠品が出ないようSKU(Stock Keeping Unit)を整えて、お店に商品を置かなければいけないから量をつくらないといけないのです。

実は、Tシャツ1着をつくるためのコストは価格の3割以下、デパートによっては下手をすると15%と言われています。原価率をそこまで低く設定しないと、セールで50%ぐらいにまで割り引いたとき、きちんと利益が残らないという仕組みのためです。

そのために、ユーザーは倉庫や輸送のコスト、あるいは小売側が店舗をたくさん運営するため、多めに生産していたことで発生した余剰の廃棄処分にかかるコストまで払っていたわけです。でも、すべてユーザーに課されていたそれらのコストが、今は少しずつ、いろいろと暴かれるようになってきました。裏側の、たとえば大量廃棄しているところだったり、バングラディッシュの工場の様子だったり、いろいろなものが見えてきて、ユーザーがその服の本当の値段、リアルコストはいくらかということを考えるようになったんですね。

それで、たとえばアメリカでは「Everlane」(エバーレーン)というブランドも出てきました。彼らはトランスペアレンシーを掲げ、商品にどんなコストがどれほどかかっているかをすべて出しています。そのうえで原価率を30%、もしくは50%近くにまで高めて、できるだけ生産者に利益が回り、かつユーザーに余分なコストを払わせない仕組みにしている。

そうなると店舗を出すのが一番リスクになるので、丸井さんの横で言うもアレなんですけれども(笑)、だから「ネットで売っていこう」と。それで注文が来た量だけ生産すればいいというのが、彼らのD2Cになります。そうすれば無駄のないものづくりができるし、ユーザーも無駄にモノを買わなくていい。それによって大量生産・大量消費を抑えることができるという仕組みがでてきました。

今手伝っているCAMPFIREでも「ALLYOURS(オールユアーズ)」というブランドがそうしたD2Cモデルで去年5000万円ほど集めています。彼らが最初につくったのは退色しないジーンズと水を弾くジャケット。そうしてCAMPFIREでは、どんな風に、どんな思いでその商品をつくったかという、小泉さんがおっしゃっていたストーリーの部分を丁寧に説明していきました。「大量廃棄を生まないようなものづくりをしたい」といったことを思いとともに伝えて、それに賛同した人たちがファンになっていったんですね。

コミュニティのセッションでも同じようなお話があったと思います。それでファンになった人たちがALLYOURSの商品を買いたいと思うようになると、シーズンや店舗に関係なく「彼らから買いたい」という流れが生まれてきた。それで彼らは今、ユーザーさんを集めて試着会なんかも行うようになっています。で、それまでは無店舗でやっていたのですが今はすごく話題になって、たった1年で毎日ファッション大賞の候補にまでなりました。

今はそういったゲームチェンジャーが出てきています。とにかく、消費者は「もっと“物語”のある商品が欲しい」「捨てることにならないものが欲しい」「不要なコストを払いたくない」と考えている。それがサステナビリティにつながる考えだというところまで意識しているメーカーさんは、すごく伸びているような印象があります。

小澤:たしかにD2Cというのは大きな流れの1つになってきています。私が今着ているのは気仙沼ニッティングさんという会社のセーターなんですね。御手洗瑞子さんという素晴らしい方が、気仙沼のお母さんたちを集めて手編みセーターを編んでくださっていて、それを直販で買わせていただきました。私の体に合わせて注文してから編んでくださるんです。高いですよ、私のは10万円ぐらい。でも、気仙沼のいろいろなものまで含めて買わせていただいています。

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で、このD2Cについてもう少しお聞きしたいと思うのですが、たとえば気仙沼ニッティングのセーターも、たくさん売れたらいいんですけど生産量はお母さんの手編みの量に依存するのですよ。D2Cは大量生産・大量販売できないぶん、スケールはどれぐらいいくのかな、と。ユニクロのようにブワッとやるところと比較して、マーケットサイズってどうなるのかしらというのがあります。

Appleが好きな方は多いと思いますが、あれは1つのプロダクトでブワッと売れたりしますよね。消費者が多様化している一方で、「とはいえ皆さんApple製品使っているじゃないですか」という話もある。もちろん1対0の議論ではありませんが、それにしてもD2Cにおける成功の定義は、小売なりメーカーさんとしてどこにあるんでしょうか、と。金額としてバッといくものなのか、それとも金額じゃないということなんですかね。

「D2C」における成功の定義とは「正しさ」である

軍地:そこは、もうざっくり言うとメーカーさんの人柄によるのですよね。そこで左右されちゃうので。たしかにスケールアップするのは難しいかもしれません。ただ、ALLYOURSに関して言えば去年だけで5000万円、もっとかな?集めていて、「あ、こういう風にやって集まるんだ」って。D2Cって、もっと小さなビジネスで100万単位を積み上げるようなものなのかなと思っていたんですが、意外とスケールしてきたことに少し驚きました。今はデベロッパーさんからもいろいろ声がかかっていて、たぶん店舗もつくることになると思います。

ですからメーカーさんの人柄に左右される部分はもちろんあると思うんですが、他方ではユニクロさんのほうもすごく伸びています。ストーリーがあるものをつくる人たちがいる一方、ユニクロさんもなんだかんだ言って、ものづくりはしっかりしていますから。先ほど2次流通でユニクロが一番多いというお話があった通り、ユニクロはリセールしてずっと使ってもなかなかヘタレない。だから、コモディティのものも本当に真面目につくっていれば絶対にスケールします。

じゃあ、そこで両者に共通しているのは何かというと、「正しさ」ということだと私はよく言っています。メーカーとしての正しさを持ってやっているか。そこで違いがあるとすれば、「たくさん売るための正しさ」をきちんと追求しているか、「1人のお客さまに対する正しさ」をきちんと追求しているか。

でも、いわゆる大手ファッションブランドは、どちらかというともっと機械的に、たとえば前年比で量的に見ていたり、それこそSKUやP/Lという指標でモノをつくっているところがすごく多い。それで、人間の数より服の数のほうが圧倒的に多くなってしまっている、と。なんでしたら今は消費額でもビューティーがファッションを抜いているんですが、ファッションは生産量がすごく多いんです。1人が35着ぐらい着てもまだ余るほど、大量につくられ、そして廃棄されているんですね。

でも、本来はユーザーに対して何が正しいかということを、自分のテリトリーのなかできちんと見極めていないといけない。サプライチェーンを守るために、機械的にものづくりしていてはダメだということですよね。

それともう1つ、モノをつくっている人たちをリスペクトして、きちんと対価を払わないといけない。地域の生産地、それこそ縫製工場ですと今は年収150万円です。もう東京では暮らせないですよね。生活はギリギリです。こうなると第2次産業の工場が国内でつぶれていく。そこで「メイド・イン・ジャパンだ」なんて言ってみても、たぶんこのままでは続かないです。

ですから、今までないがしろにしていたような生産地に対しても、これからは対価を払わないといけない。そういうことを、生産者はもちろん消費者が気づきはじめているという状況に、今はあるのかなと思っています。

小澤:今は商品としての「正しさ」が大切になっていて、そして売り方というのがだいぶダイレクトになってきた、と。本当に良いものがあれば、売り場としてはインターネットを使えばなんとか売れるという状況へ、小売の棚がかなりの販売量を占めていた状況から変わってきたのかもしれません。

一方、商品の正しさというのは極めて定性的です。特にファッションであればなんとなく分かるんですけれども、商品の正しさって相当に定性的だと思います。

それで考えてみると、メルカリでは二次流通として正しい値段がつくと思うのですね。ひょっとしたら、メルカリから見た良い商品というのがあるのかもしれません。じゃあ、メルカリではどんな商品が売れているのか。それはまさに商品の正しさの、1つの基準かもしれません。その辺についてはどうご覧になりますか?

小泉:僕が将来やりたいことの1つをお話しさせてください。正しさというのは僕も大事だと思いますし、そこで生産者に正しくペイバックしていきたいという意味で言うと、まず、基本的には価値がある商品だから2次流通でもぐるぐる回るわけですよね。

ただ、そこで儲かっているのは僕らだけなんですよ。それは僕としてもちょっと違和感があります。なので、できれば2次流通のなかで2回3回と、売れるたびに1次流通の人にペイバックしたいなっていう思いがあって。

軍地:それは本当にうれしいですね。

小泉:これ、著作権的な考え方かもしれません。そういう社会を描かないと、サステナビリティってすごく大事なんですけれども、やっぱりお金を回さないと話がはじまらないと思いますので。だから、できれば将来的には1次流通の人に還元していきたいな、と。そうすることによって、もしくはそれが見えることによって、1次流通の方々がちゃんと継続的にビジネスできる環境を整えたいなという思いはあります。(後編に続く)

1961年生まれ。慶應義塾大学卒業。1986年株式会社丸井(現:株式会社丸井グループ)入社。常務取締役、副社長等を経て、2005年4月より代表取締役社長に就任。丸井グループは、小売事業とフィンテック事業を両輪とした事業展開で、お客様に豊かなライフスタイルを提供する企業グループ。すべてのステークホルダーと進める「共創経営」の実践により、様々なビジネスモデル革新に取り組む。米国金融専門誌「InstitutionalInvestor誌」による2016年の「日本のベストIR企業ランキング」においては、小売業Best CEOカテゴリーで、セルサイド部門1位、バイサイド部門3位にランクイン。

早稲田大学商学部卒業後、大和証券SMBCにてミクシィやDeNAなどのネット企業のIPOを担当。2007年よりミクシィにジョインし、取締役執行役員CFOとしてコーポレート部門全体を統轄する。2012年に退任後はいくつかのスタートアップを支援し、2013年12月株式会社メルカリに参画。2014年3月取締役就任。

モデレーター

1999年に創業した株式会社ビズシークを2001年に楽天株式会社に売却。その後、2003年にビズシークの吸収合併により楽天に入社、オークション担当役員に就任する。楽天イーグルスの立ち上げなどに携わった後、2006年には退社して小澤総合研究所を設立。スタートアップベンチャーへの投資やコンサルティング業務を展開。2009年から2012年までは楽天の顧問をつとめる。2011年、株式会社クロコスを設立、2012年に同社をヤフー株式会社に売却し、ヤフー(株)に入社。2013年よりヤフー(株)執行役員としてヤフーショッピングを担当、2018年4月よりヤフー(株)常務執行役員 コマースカンパニー長に就任し、eコマース、トラベル事業、金融事業を管轄。(株)一休取締役会長、アスクル(株)取締役、PayPay(株)取締役、バリューコマース(株)取締役、(株)ユーザーローカル取締役他

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