なぜ大根の価格は下がりアイスクリームは上がるの?価格弾力性から考える

12月前半、野菜の価格が全般的に下がったというニュースが多く出ました。例えば大根の卸売価格が平年比で単価が48%に落ちた地方もあるようです(青森合同青果のツイートより)。一方で、同じ食品でも、価格が上がった品目もあります。例えばアイスクリームは、11月からメーカー各社が来年の値上げを相次いで発表しています(日本経済新聞、12月10日より)。

なぜ、同じ時期に同じ食品なのに、ある品目は価格が下がり、別の品目は価格が上がるのでしょうか。ビジネスで価格を考える際に、忘れてはいけない視点が「価格弾力性」です。価格弾力性とは、価格の変動によって、ある商品の需要や供給が変化する度合いです。

■価格弾力性とは?(視聴時間:54秒)

大根の例では、価格弾力性はどう影響したのでしょうか。2018年は、秋前まで天候不順が続き、野菜の生産に不向きな時期が続き、生産が少なく供給もひっ迫していました。しかし秋になって温暖な気候が続き、生産者にとっては生産の好機が到来しました。そのため、この時期に大根の生産・収穫が進んだと考えられます。

多くの農家が一気に収穫すれば供給が増え、商品がだぶついて価格が下がる圧力がかかります。一方で、冬本番まで待つと収穫時期を逃し、売上確保が難しくなる事情があります。実際に、同時期の大根の市場入荷量は平年の151%まで増えたそうです(同ツイートより)。このように、安値の背景には、気候や収穫時期に制約があるため供給を急に減らすことが難しい、供給の価格弾力性が(短期的には)低い事情がありました。

また一方で、大根が安くなっても、消費者は大根ばかりを急にたくさん食べるわけでありません。そのため、大根が多く安く供給されても、大根の消費量は一定以上には伸びず、在庫も十分で安値が続きやすい状態になったと考えられます。つまり、大根のような一般的な農産物の場合、需要の価格弾力性が低い傾向があります。

このように、大根の場合、供給・需要ともに価格弾力性が低く、気候などの要因が重なると短期的には価格が急に上下する商品特性を持っていたと考えられます。

アイスクリームの場合、価格弾力性はどう影響したのでしょうか。この場合、背景には供給側の原材料の高騰、物流など人件費の上昇というコスト要因があったようです(同新聞より)。

これは、供給の価格弾力性とは別の要素で、供給曲線自体がシフトしたものと整理できます。つまり、コスト増のため同じ価格では以前より利益が少ないので、企業が供給する意欲を失い、どのような価格でも供給量が以前より少なくなる状態です。このままでは事業の魅力が薄れてしまうため、各メーカーは価格を自ら高く設定することで供給を維持する状態を作ろうとしました(供給の価格弾力性)。これは同時に、値上げで需要が減るリスクを取っても、一定の利益を維持しようと狙った動きともいえます。

このとき問題になるのは、値上げの結果、どのくらい需要が減ってしまうかです。正確な判断は難しいものですが、アイスが暑い季節の必需品であると考えれば、多少価格が上がっても、それほど大きく需要は減らないかもしれません(需要の価格弾力性がある程度低い)。また一社だけ値上げすれば需要が他社に流れてしまいますが、今回は各社が一斉に値上げしています。これらを組み合わせて影響は限定的と考え、各メーカーが今回の値上げに踏み切った可能性があります。

まとめると、価格弾力性が供給側ではそれなりにある一方で需要側ではある程度低いとみなされた結果、価格が上がる状況が生まれたと考えられます。

価格弾力性を価格戦略にどう活かすか?

価格弾力性を理解することで、自社の商品・サービスの価格がどう変化するかを予測するヒントが得られます。そのためには、供給・需要の両面で、実際の価格弾力性がどの程度なのか、あらゆるデータを収集し正しく認識して価格戦略に活かすことが重要です。

例えば、価格弾力性を競合以上に精緻に把握して、トータルの利益が最大化できるよう(値上げも含め)価格設定を行う、あるいは(農産物の例のように)不利な事態が起こることを想定し、価格変動リスクを回避するような商品・サービスのポートフォリオをあらかじめ持つ、などの方向性が考えられます。

また同時に、価格弾力性を完全に無視することは出来ませんが、なるべくその影響を受けない状況を作ることも1つの戦略的方向です。理想的には、商品・サービスの差別化を実現し代替が難しい存在になれば、価格動向から受ける影響は小さくなります。食品の例であれば、産地限定のブランド確立や希少な材料使用による差別化などを考える余地があるかもしれません。

また、価格弾力性はその商品のスイッチング・コストにも影響を受けます。他社に切り替えると、追加的な費用や新たに学習し直す負担が大きく発生する場合、顧客はあえて他社商品に切り替えようとはしません。食品の例であれば、宅配会員制などの顧客の囲い込みが成功すれば、価格動向から受ける影響は小さくなります。

 

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