『MBA 問題解決100の基本』――問題解決スキルが「常識化」する時代の必読書

新書本書は、東洋経済新報社より昨年1月に刊行された『MBA100の基本』、同12月の『MBA生産性を上げる100の基本』に続く、「100の基本」シリーズの第3弾である。ビジネスパーソンが日々直面するであろう「問題解決」のスキルについて、ベストプラクティスと目される企業や経営者の知見を100項目、コンサルタントや学者、経営者らが唱えた短いフレーズとともに紹介していくものだ。

問題解決の基本的なステップを表す『What-Where-Why-How』、課題設定の際の原則である『問題とは一言で言うと、目標(あるべき姿)と現状とのギャップである』(ノーベル経済学賞受賞者のハーバート・サイモン教授)といった基礎編から、品質の問題に関する『品質問題の85%は、マネジメントに責任がある』(TQCで名高いエドワード・デミング博士)、モチベーションの問題に関する『人間とは、本来弱いものだ。だが、信念とか使命感で行動するときは、なぜか果てしなく強くなる』(ダイエー創業者の中内功氏)などの個別テーマ・発展編に至るまで、紹介されているフレーズは多岐にわたる。

『100の基本』というタイトルどおり、いずれも基本的、本質的なものばかり。1項目あたり2~4ページとコンパクトにまとまっていることで、どこからでも読み進められ、またスラスラと通読できるというメリットは、このシリーズに共通するものだ。

少々手前味噌な話になるが、この「100の基本」シリーズは予想を上回るヒットとなっている。通常のグロービスの書籍よりも若い世代の人にリーチしているという。実際、ビジネスパーソンが大勢立ち寄る都心ターミナル駅近くの大型書店だけでなく、特段「MBA本コーナー」などのない中規模以下の街の書店にも、何冊も並べられている光景を見かけるほどである。

私がグロービスに入った2000年代前半は、「問題解決」をテーマとした本といえば、著名な戦略コンサルタントによるもので装丁もハードカバー。いかにもMBAに通おうとするようなマネジメント候補生を対象としている感があった。しかしそれ以降、たとえばグロービス経営大学院の科目『クリティカル・シンキング』の開講数は年々右肩上がりで推移してきているし、『世界一やさしい問題解決の授業』(渡辺健介著、2007年)、『イシューからはじめよ』(安宅和人著、2010年)といったロングセラーもある。MBA、問題解決といったワードに関心を寄せる人の範囲が、確実に広がってきていることを実感する。

ティッピングポイントという概念がある。物事が普及するときにそれまでは少しずつの変化だったものが、あるしきい値を超えると急激に大きな変化となっていく、そのしきい値のことだ。ビジネスパーソンにとっての問題解決のスキルについても、一昔前の「一部の人のもの」という状態から、いよいよこのティッピングポイントを超えて急激に常識化してくる(あるいは、既にもう超えてしまっている)のではなかろうか。「知っていると周囲に差をつけることができる」から、「知らないと差をつけられてしまう」存在になってくると思われる。

これから新たに学ぶ人には、手軽にわかりやすく問題解決スキルの全体像をつかめる、既にある程度の知識がある人には、忘れていたり理解が漏れたりしているところを確認するために、きっと役立つオススメの1冊である。

『MBA 問題解決100の基本』
グロービス(著)、東洋経済新報社
1620円

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