今年のバレンタインデーを巡っては、ベルギーの高級チョコレートメーカー「GODIVA」が、日本経済新聞に「日本は、義理チョコをやめよう」というコピーの全面広告を出して話題となりました。これに対して、お手頃価格のチョコレート菓子「ブラックサンダー」で有名な有楽製菓が、ツイッターアカウントで「引き続き『日頃の感謝を伝えるきっかけ』として義理チョコ文化を応援いたします」などと応酬したことも、盛り上がりに拍車を掛けました。
「バレンタインは、純粋に気持ちを伝える日」「儀礼ではない、心からの感情だけを、これからも大切にしたい」といったGODIVAの広告を読むと、「なるほど」と納得する部分もある一方で、これまで義理とはいえチョコを買っていた顧客に「もう買わなくていい」と言わんばかりのメッセージを出して、広告として大丈夫なのかと疑問に思う人もいるかもしれません。
こうした広告表現の意図を読み解くカギとなるコンセプトの一つに「ポジショニング」があります。ポジショニングとは、自社の商品を主に買ってもらいたいターゲット顧客に、他社商品と比べてどんなふうに違うと認識してもらうかということを指します。
■ポジショニングとは?(視聴時間:52秒)
ポイントは、単に機能や品質の良し悪しではなく、あくまでもターゲット顧客の視点に立って競合との差、それも自社商品を買おうと思ってもらえるような差を見せることにあります。言いかえれば、たとえ顧客にとって魅力的な面を見せたとしても「競合の商品も同じように良いね」と思われてはうまくないですし、競合商品と明確な差を印象付けたとしても、それが顧客の購買意欲につながらないのでは、やはりいけません。
GODIVAのポジショニングは、(いろいろな見方はありえますが一例として)「高級感に満ちていて贈り物にふさわしく、かつ比較的多様なところで売られていて入手しやすいチョコ」と言えるでしょう。このポジショニングだからこそ、冒頭の広告コピーも生きるわけです。もし、高級感のない、いかにも「義理」に使われそうなチョコがこう言ったのでは文字通り自爆ですし、一方でいかに高級感たっぷりのチョコでも、本当に希少で知る人ぞ知るような存在ですと、日本の習慣を見下して切り捨てるような嫌味な印象が強くなってしまうように思われます。
これに対して、ブラックサンダーのツイート「義理チョコ文化を応援します」や、パッケージに「一目で義理と分かるチョコ」と書いた限定商品も、やはりブラックサンダーなりのポジショニング「安くて大衆的だが、独特な工夫が凝らされていてユーモラス」に、ちゃんと沿った展開なのだと分かります。
皆さんの会社の商品についても、ポジショニングがどうなっているか(どうあるべきか)、それに沿った広告展開はどうしたらよいか、考えてみてはいかがでしょうか。