昨年の後半以降、仮想通貨の取引が急速に盛り上がってきています。代表的な仮想通貨銘柄である「ビットコイン」の取引価格は、昨年夏までは30万円程度で推移していましたが、8月以降に50万円台に乗り、11月には100万円の大台を突破したかと思うと12月には225万円にまで達しました。その後、価格が急落する場面もあり、現在は170万円強で推移していますが、昨年前半に購入していたとすれば、わずか半年で約7倍に値上がりしたことになります(価格はいずれもbitFlyer社の取引所のもの)。
これだけの急激な価格上昇には「バブルではないか」との疑念がつきまといますが、一方で、これから仮想通貨を投資対象に組み入れるだろう潜在的な投資家は多いので、今後も投資資金の流入によって相場上昇は当分続く、といった見方もあります。値上がりするにせよ値下がりするにせよ、かなりリスクが大きい(振れ幅の大きい)投資対象だと言えそうです。
サンクコストとは?
(視聴時間:57秒)さて、投資において気をつけておきたいのは、「サンクコスト」という概念です。サンクコストとは「既に発生していて戻ってこない」コストのことをいいますが、なぜこれに気をつけるべきかというと、合理的に考えるならば現在の意思決定において考慮に入れるべきではないのに、ついつい心理的に引きずられて判断を誤ってしまうからです。
仮想通貨投資の例で考えてみると、買った時に支払ったおカネがサンクコストに当たります。今後この仮想通貨を売却するかそれとも保有し続けるかの意思決定をする際、本来であれば、買った時のおカネを考慮に入れるべきではありません。あくまでも「これから値上がりしそうか、それとも値下がりしそうか」の予測に絞って決めるのが合理的です。
ところが、たとえば1ヵ月前に200万円で買って、今180万円だとしましょう。合理的に考えるならば、今の180万円を基準として値上がりしそうならば継続保有、値下がりしそうならば売却とすべきです。ところが、ついつい「買った時の200万円」が頭の中に残り、これと比べて「今売ると損だな」とか「せめて200万円まで戻るのを待とう」といった判断をしてしまう、というわけです。
この「サンクコストが意思決定に与える影響」は、金融商品に投資する場面ばかりではありません。「これだけ頑張って来たのだから」と将来の見込みが無いビジネスからなかなか撤退できない、などというケースもサンクコストにとらわれていると言えるでしょう。
もっとも、組織における意思決定では、過去に支払ったコストがムダに終わることが確定すると責任者にペナルティが及ぶ、となりがちです。こうなると、会社としてはサンクコストだから切り離して意思決定すべきなのに、責任者にとっては(自分の将来に実害が及ぶという意味で)サンクコストではないので無視できないという構造になってしまいます。組織としてサンクコストにとらわれないためには、過去の「犯人探し」をしないという姿勢も重要なのです。