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組織で仮説検証する場合の落とし穴とは?

投稿日:2017/12/23更新日:2019/04/09

『ビジネス仮説力の磨き方』から「実践しながら検証するためのカギ」を紹介します。

個人ではなく組織、チームで仮説検証する際には、それならではの難しさが生じます。ビジネスのあらゆる場面に言えることですが、参加者の知識やモチベーション、目的の認識などがバラバラで、それゆえに非効率が発生したり、スピード感にずれが生じてしまうのです。スピード重視の時代にこれでは勝てません。それゆえ、仮説検証の中心に立つリーダー(必ずしも職場の上司ではなく、そのプロジェクトの推進者)は、仮説検証に当たってこうしたギャップを埋める作業をする必要が生じます。事前にすべてを埋めることは難しいかもしれませんが、早い段階でこれを解消することが、チーム全体の生産性を大きく左右するという意識を持つべきなのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

実践しながら検証するためのカギ

スピードが求められる時代だからこそ、走りながら(テストしながら)仮説を検証していくということのメリットはおわかりいただけたと思います。次に、その際の具体的なコツについて簡単にご説明しましょう。

実は、仮説検証は、仮説を立てた本人が一人だけでやるぶんには、それほど難しくはありません。その仮説が生まれるに至った背景や前提条件も当然わかっていますし、どのような情報が手に入れば仮説を検証できたと言えるかの勘所もつかみやすいからです。

難しいのは、チームで動く場合です。外部の人間を巻き込む、あるいはチームに自分自身が参加していない場合などは、その難しさはさらに増します。彼らは、往々にして図に示したような状態に陥るからです。

これでは、効果的な仮説検証はできません。しかし実際には、新商品のテストマーケティングなど、皆がテストであることを明確に意識している状況でもない限り、こうした状況に陥りやすいものなのです。

仮説を説明し、意識してもらう

したがって、仮説検証の責任者は、まず関係者に、なぜそのテスト(必ずしも「テスト」とは銘打たれてはいないことに注意)に取り組み、何を期待しているのかを適切に共有することが望まれます。なお、言うまでもなく、日常の活動は多かれ少なかれ仮説検証的要素がありますから、意識せずとも常日頃から励行するようにしたいものです。

さて、具体的には、可能な範囲で、費用対効果も意識したうえで、以下を関係者間で共有したいものです。

・仮説立案の背景(理由や根拠)
・意味合い(全社における位置づけ、メンバーにとっての意味など)
・仮説検証のために必要な情報の種類

そのためにはまず、初期の段階では会議を頻繁に開き、リアルタイムの数値や情報を用いながら、建設的な議論をすることが必要です。毎週必ず月曜日には集まるなど、打ち合わせをルーチン化しておくことが有効です。ある調査結果によれば、意思決定の質の高いチームは、常日頃から定期的にミーティングを開いているとされます。

二つ目の項目の「意味合い」の共有は、メンバーの動機づけ、チーム意識を向上させるうえでも重要です。自分のやっていることに望ましい意味づけがあれば強く動機づけられますし、他者との関連性を認識すると安心感や一体感が生まれるからです。

たとえば、アパレルショップで新しい売り場作りを実験するならば、「この新しいレイアウトにはこういう意味があって、結果がよければ全店舗に展開する。その点を念頭に置いて、効果や問題点を意識的にチェックしてほしい。もしここで重要な予兆を見逃してしまうと、後々こんな事態につながりかねないので、注意してほしい。具体的には……」などの説明を店舗のスタッフに行い、意識を高めるといった具合です。

現場に近い人であればあるほど、日々の業務に忙しいものです。それゆえどうしても、自分の手の届く範囲で物事を考える、あるいは短い時間軸で考えるといった「作業者のメンタリティ」に陥りがちです。だからこそ、日常から目線を多少上げてもらうためにも、仮説とその検証によって達成しようとする目的の範囲や、中長期的な影響についてていねいに説明する必要があるのです。そしてそのことは、個々人の動機づけにもつながります。

自分の意見が経営に反映されるのを見ること、あるいは自分自身の視点が広がり、スキルが高まるのを実感することは、多くの人にとって嬉しいものです。事実、第2章でも言及したウォルマートは、パートタイムの従業員にも一定の裁量を与えることで彼らを動機づけし、高い生産性を実現しました。

なにより重要なのは、チームとして新しいチャレンジを楽しむという感覚を持つことです。
皆さん経験されていることと思いますが、喜びや楽しみはチームで増幅されます。新規事業などは、膨大な「To Do」リストや作業量の前に、そうした感覚が鈍り、仮説検証マインドも弱くなりがちです。人間は弱いものです。そして弱いからこそ頭を使い、組織で動くよう進化してきました。組織を常に活性化することで、仮説検証のパワーも高めたいものです。

仮説のロックインを防ぐ

さまざまな施策がそもそも「仮説」にすぎない、言い換えれば、やみくもに一つの仮説にこだわり続けるのではなく、状況を見ながら修正していくべきということも折に触れ再認識してもらうことが必要です。残念ながら、世の中には、必ずしも仮説検証マインドが強い人ばかりではありません。上長や権威者からの方針や指示を絶対的なものとして受け入れ、疑問を持たないようなメンバーばかりでは困りものです。

例としては、一部マスコミの「視聴率至上主義」あるいは「反○○至上主義」や、デベロッパーなどに見られる「土地至上主義」も、仮説にすぎない前提を絶対視しすぎているように思われます。某プロスポーツチームの「有名選手をひたすら集めることが人気とキャッシュをもたらす」も行きすぎたドグマでしょう。

ある仮説や狙いを大きな組織的運動につなげるためには、そのような位置づけにせざるをえない場合もあるのはわかりますし、いったんそれが経営者のバックボーンとなってしまったあとでは、経営者自らがそれを否定しにくくなる事情も推察できます。何かをすぐドグマ化するのは人間の性、とも言えます。しかし、私は、疑いもなく何かを信じ込むことは、莫大なエネルギーを生み出しうる一方で、極めて危険な状況だと思っています。

イギリスの経済学者アルフレッド・マーシャルは「冷静な頭脳と温かい心」(a cool head but a warm heart)を併せ持つことの重要性を説いています。自分自身を信じる一方で、客観的、メタな視点から自分自身を冷静に眺める――難しいことではありますが、ぜひ意識し、それをスタッフにも共有したいものです。

(本項担当執筆者:嶋田毅)

『ビジネス仮説力の磨き方』
グロービス経営大学院/嶋田毅  (著)
1600円(税込1728円)

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