変革の難所:専門外の分野でどう動けばいいの? 

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前回は「自分はどう動いたらいいのかわからない」という難所に対して、「社会的証明」というカチッサーを活用した乗り越え方を考えた。今回は同じ難所に対し、「権威」というもう1つのカチッサーを使った対応法について考えてみたい。

急成長を遂げてきたあるベンチャー企業の場合

創業来急成長を遂げてきた某ベンチャー企業のE社長は、市場環境が変化し始めており、早急に組織基盤の整備にとりかからないと組織がもたないと感じていた。しかし、その課題に対する他の創業期メンバーのスピード感に温度差を感じていた。E氏は元来情に熱い人間でもあり、ここまでずっと苦楽をともにしてきた仲間を厳しく詰めることがよいことなのか、コミュニケーションの仕方も含めどうしたらよいのか迷っていた。

さて、このような状況下で、もしみなさんがE社長の立場ならどうするだろうか?

企業変革の難所4:自分はどう動いたらいいのかわからない

「自分はどう動いたらいいのかわからない」という難所に対するもうひとつの対応法は、「権威」を活用することだ。これは、人は専門家の指示を仰ごうとする傾向にあるという人間の心理にもとづく。

幾何級数的なテクノロジーの変化に代表されるように、今の時代、経営者にも十分理解できないマクロ要因や判断に迷うことがたくさんある。「自分の考えに自信がないときは特に、専門家の意見をほかのすべての要素に優先させている」という研究結果が示すように(*1)、わからない中でも少しでも納得できる決断をするために、ある特定領域で深い専門性をもった専門家の意見はより影響力を増す時代になっていると言えよう。

冒頭のE社長は、自分が正しいのか相談できる人、自分に助言してくれる人を求めていたが、巷に流行っている経営経験もない人間をコーチ役にするのには懐疑的だった。そして、自分よりもはるかに経営経験があり、かつ自分が尊敬できるタイプの異なる大先輩経営者複数名をメンターにもつことを決めた。

VUCAな時代、どんな専門家が信頼されるのか?

では、最も自信のありそうな物言いをする専門家の提案や助言は、いつも強い影響力をもつのだろうか。興味深いことにスタンフォード大学ビジネススクールの教授らの実験結果は少し違っている。最も説得力があるのは「専門家自身が確信を持てないなかでする提案や助言である」という面白い結果だった(*2)。これはどういうことだろう? 

情報源がもつ専門知識が一定の不確実性をもつ時代においては、「誠意をもって専門家が確信をもてない点も示すことで、かえって相手からの好意が増す」と解釈できるようだ。いまの時代、複雑な事象を完璧に説明できることなどできないという事実は、正解のない経営の世界と通ずるからなのかもしれない。

 

(*1)Engelmann, J. B., Capra, C. M., Noussair, C., & Berns, G. S. (2009). “Expert financial advice neurobiologically "offloads" financial decision-making under risk. PLOS ONE, 4(3),c4957.doi:10.1371/journal.pone.0004957

(*2)Karmarkar, U. R., & Tormala, Z. L. (2010). “Believe me, I have no idea what I’m talking about: The effects of source certainty on consumer involvement and persuasion.” Journal of Consumer Research, 36(6),1033-1049

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