最近、国内メガバンク3行が立て続けに大規模なリストラ計画を発表して話題となりました。背景には、長期化するマイナス金利や人口動態など、さまざまな環境要因があると思われますが、急速なテクノロジーの発達もその1つでしょう。
なかでも、AIを用いた融資審査を銀行が導入するというニュースは、よく目にします。融資を申し込んできた顧客のデータを分析し、融資の可否や条件等をごく短時間に判断できるというものです。なるほどこれが有効に機能すれば、銀行にとって相当な業務効率化になると言えるでしょう。
もっとも、企業の財務データを入手して融資の可否の判断のためにスコア化するという作業自体は、決して最近のものではなく、以前から行われていました。その分析の際の着眼点は多岐にわたりますが、中でも基本となるのは自己資本比率や流動比率といった「安全性分析」の指標と呼ばれるものです。
安全性分析とは?
(視聴時間:37秒)非常にざっくりとまとめてしまえば、銀行が融資判断の際に着目するのは「この企業は貸したおカネをきちんと返せるか」、すなわち返済能力です。それを財務データから見る際には、
- 借入金が(企業の規模に比べて)多すぎないか
- いざ返すことになった際に十分なおカネ(またはおカネにすぐに替えられそうな資産)を持っているか
がポイントです。前者をみる指標の代表例が自己資本比率(自己資本÷総資産)、後者が流動比率(流動資産÷流動負債)や当座比率(当座資産÷流動負債)となります。
ところが、こうした安全性分析は財務諸表のデータに基づくものですから、そこに現れない要素は別途考慮する必要があります。たとえば、優れたビジネスアイデアなど財務諸表に出てこない価値を持った資産を持つのであれば、安全性の指標は悪くとも返済能力は十分あるかもしれません。あるいは逆に、実は不良債権をたくさん抱えていたといった事情があれば、安全性指標は良くても貸してはいけないという判断になるでしょう。
これまでは融資担当者の調査力がこうした点を補っていたわけですが、AI融資審査がそれにどう取って代わるのかは注目です。たとえば、日頃の営業におけるおカネの出入り、ネット上の企業の評判、同業他社の業況といったデータから推測を行うと考えられますが、そこはAIのこと、人間の常識的な仮説の範囲外の材料を使って推測するかもしれませんね。