企業変革を促す6つのカチッサー効果とは? 

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環境が激変するなか、企業は常に変わり続けなければ生き残れない。企業の変革は、その組織に属するメンバー一人ひとりの行動変容が促せるかどうかにかかっている。しかし、行動変容が必要な理由をいくら並びたてても、それだけでは行動が変わらないことはみなさんも実感されているはずだ。人の行動変容は、その過程のなかでいくつもの難所が存在する。その難所を乗り越えてはじめて変革は成し遂げられるのだ。

では、その難所を乗り越えるにはどうすればよいのか。心理学の研究によれば、人間は何か行動を起こすとき、あるトリガーとなる特徴が整うと、“無意識に”その特徴に対して反応することが実証実験で明らかになっている。これをカチッサー効果(*1)と言うが、このメカニズムを打ち手のなかに組み込むのだ。

本シリーズでは、これら科学的に実証されている社会心理のメカニズムに基づき、私が数々の企業変革/行動変容のケース(成功も失敗も)を見てきたなかで有効だと実感している具体的応用例について紹介してみたい。

グロービス経営大学院で「パワーと影響力」を受講された方には、企業変革におけるカチッサーの具体的活用法と考えていただければよいだろう。

行動変容プロセスにおける難所とは?

これまで多くの企業の変革のお手伝いをしてきた経験から、行動変容には分解すると以下の4つの難所が存在すると私は考えている。

1.  なぜ「今」自組織が変わらなければならないのか腹落ちしない(危機感、納得感の欠如)
2.  なぜ「自分自身」から行動を変える必要があるのか納得できない(こうなった責任は自分にはない、上司や他部門が悪いといった他責意識)
3.  自分はどう動いたらいいのかわからない(新たな行動のイメージがもてない)
4.  頭では理解していても一歩踏み出せない(自己効力感の欠如、不安)

これらの難所を乗り越えるためには、どういった心理のメカニズムが有効なのだろうか。

難所を乗り越えるための心理のメカニズムとは?

"人間の心理"といったアートで語られがちな世界を科学的にとらえることで、戦略立案フェーズで用いられる様々なフレームワークと同じように、実行フェーズでも再現性を高めることができる。経営においては、実行フェーズにこそたくさんの難所が立ちはだかり、これを乗り越えない限り経営の成果は出せないのだ。

そこで有効な心理のメカニズムが、先のカチッサー効果だ。これは今から30年以上前に、ロバート・チャルディーニが実証研究を重ねた結果明らかにしたもので、以下の6つの原理として整理されている。

1. 稀少性(手に入れにくいものほど欲しくなること)
2. 好意(好意を持つ相手ほど賛同したくなること)
3. 返報性(恩恵を受けたら報いなくてはならないと感じること)
4. 社会的証明(他人の行動を指針とすること)
5. 権威(専門家に指示を仰ごうとすること)
6. コミットメントと一貫性(自分のコミットメントや価値観と一貫した行動を取ろうとすること)

次回から、行動変容のプロセスにおける難所とそれを乗り越えるためのカチッサー応用例について、順番に見ていく。


(*1)テープレコーダーの再生ボタンをカチッと押すと、そのあとにサーという音が続くことから、ある刺激に対して無意識に反応してしまう現象を指す(ロバート・チャルディーニ著「影響力の武器」誠信書房、2007年)
 

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