想定より遥かに時間がかかるプロダクトづくり―アルプ伊藤浩樹×湯浅エムレ STARTUP INSIGHT #2

本連載では、毎月スタートアップ経営者をゲストにお招きして、起業家の生の声からインサイトを得ていきます。第2回のゲストは、SaaSやサブスクリプションビジネスに特化した販売管理・請求管理SaaS「Scalebase」を提供しているアルプ代表取締役CEOの伊藤浩樹さんです。(聞き手=ベンチャー・キャピタリスト 湯浅エムレ)
※本記事は、4月29日に配信されるPodcast「STARTUP INSIGHT」を書きおこし編集したものです。(anchor spotify

ピクシブの社長から、起業家へ

湯浅:今日は、販売管理・請求管理SaaS「Scalebase」を提供しているアルプの伊藤さんにお越しいただいています。伊藤さん、よろしくお願いします。

伊藤:よろしくお願いします。

湯浅:伊藤さんは、2017年にピクシブの代表取締役社長兼CEOに就任され、そのあとご自身で起業されているという珍しいキャリアではないかと思います。なぜアルプを創業しようと思われたのでしょうか。

伊藤: ピクシブに入社したとき、まだ50人くらいの規模だったんです。それを150~170名ぐらいまでグロースさせたタイミングで社長に就任しました。事業は順調だったのですが、経営をやればやるほど、自分でゼロイチをやってみたいという想いが止めきれなくなりました。起業したのは2018年ですが、そのときは外部環境も整っていて、一緒に創業したいメンバーも決まっていたので、起業するなら今だと思ってチャレンジしたという経緯になります。

湯浅:ちなみに、創業メンバーとはどのように出会われたんですか?

伊藤:出会いは、約10年前の2013年です。ヤフーの現社長である小澤(隆生)さんが始められた「すごい豆まき(2/3の節分にとにかく豆を大量に撒く)」というお祭りイベントの幹事を私が務めていました。そこで学生側のボランティアを取りまとめていたのが、当時学生だった竹尾(正馬)君と山下(鎮寛)君だったんです。この2人が飛びぬけていた。そこから仲良くなって、「いつか一緒にやるなら彼らだな」と僕が勝手に確信を持って、2018年に動き出したということです。

湯浅:「すごい豆まき」で出会って5年間関係を温めて、晴れて一緒に起業したということですね。

伊藤:そうですね。当時は、毎月ピクシブに入社するように誘っていたのですが、それがだんだん「いっそ自分たちでやるか」と状況が変わってきて、2018年8月を迎えるという感じです。

(左から、竹尾氏、伊藤氏、山下氏。創業時の写真)

3人が揃って見つけた“解きがい”のある課題

湯浅:そうして仲間と出会われたわけですが、テーマとの出会いはどうだったのでしょうか。toCサービスのピクシブとアルプでされているtoBの「Scalebase」は、毛色もかなり異なると思いますが、どういう風にこのテーマと出会って、これに人生を賭けようと思えたのでしょうか。

伊藤:ピクシブもずっと有料会員の月額課金から収益を上げていましたが、ユーザー管理や決済基盤に苦しんできたんです。収益向上のための施策を打ちたくても、そもそもシステムの構造上できないとか、やろうとすると半年かかるとか。そういったことが多発していました。

自分たちでいざ何をやろうか考えていて、この課題が思い浮かんだときに3人のテンションが揃ったんです。決済基盤を自社でつくるのさえ難しい中で、汎用性高いソリューションにして価値提供するのは難易度が高い。でも、確実に課題として世の中に存在しますし、かえって解き甲斐がある、と。

企業のビジネスモデル、またその根幹を担う決済や請求は、放っておくと確実に複雑になっていくんですよ。5年後か10年後かわからないですけど、その複雑な決済を柔軟に解きほぐし、事業を支えるソフトウェアが必要になるに違いない。この認識を誰が説得するわけでもなく3人が揃って持てた。3人が一致してそう思えることなら、10年諦めずにできるだろうし、これに賭けてみようぜ、というので始めた感じですね。

湯浅:ある意味ピクシブでユーザー側としてペインやニーズを感じていたということですよね。でも始める前には改めて世の中にニーズがあるか検証されたのでしょうか。それとも、もう「飛び込んじゃえ」で始められたのでしょうか。

伊藤:まずは飛び込じゃえで飛び込んで、その後から徹底してヒアリングをしました。最初の半年で100~150社はヒアリングしたと思います。

当初はもっと簡単に歓迎されるかなと思っていたんですが、全然違いましたね。お客さんの反応も意外と渋かったですし、開発の方もオペレーションが難しすぎて、どうやっても汎用性の高いソフトウェアにならないんじゃないかと思うことも多々ありました。なので、最初の半年は、何だったらつくることができるのかを模索していた感じです。

ピクシブの課題感からすればそのままBtoCの決済基盤をやるべきだと思っていたのですが、ヒアリングを重ねて、BtoB事業者向けの課題を先にすべきだというのがわかってきました。それは、マーケットの大きさ、解決のしやすさ、お客さんのペインなどを総合しての判断です。その転換は結構早くて、最初の2~3ヶ月ぐらいだったと思います。

そこからは1社ずつ丁寧に、しっかり課題を吸い上げながら、それこそ膨大なソフトウェアの仕組みをゼロからつくらないといけないので、試行錯誤しながら進めてきました。これが最初の1年の過ごし方です。

想定とは段違い「とにかく時間がかかる」

湯浅:伊藤さんは元々ピクシブで170名の大きな組織を社長としてマネージされていたわけですが、その時代と起業されてからの最初の1年はいろいろ違うと思うのですが、何が最も違いましたか?

伊藤:いろいろありますが、やっぱり「事業を作るということはとにかく時間がかかる」ということです。今創業して3年半経っていますけれども、まだつくり上げられたとは思えてないですね。ユーザーがミニマルで使えるものをつくるだけでも、ものすごく時間がかかりますし、さらにその上のレベルの、ユーザーに「これが無いと駄目だ」と思ってもらえるものをつくるのは、想定とは比べ物にならないくらいの労力がかかりますし、こういうと当たり前ですが、当初とは全然違う解像度で価値を訴求し続けないといけないというのは、ものすごく大きい学びでした。

シードの頃から出資いただいているDNX Venturesの倉林(陽)さんにも、最初お会いした時から、「業務システムの領域は特に時間がかかりますよ。そこに焦らず腰を据えて、耐えられますか?」というお話をされたのですが、本当にその通りでした。

僕自身は、「まあ、時間かかりますよね。そういうものですよね。」という浅はかな態度でいたのですが、レベルが違いました(笑)もっともっと長期の目線でないといけないし、それを見越した組織設計や資金調達もしていかないといけない。多角的な要素が求められるというのは、やってみて初めて分かりました。

湯浅:その時間がかかる時期を経て、今年2022年1月にシリーズAで12.5億調達されました。私がVCの仕事を始めたのが2014年なのですが、当時はシリーズAの規模感は、1億~2億でも大きいほう、最近でも数億の前半くらいが一般的な調達額だと思います。なので、12.5億というのはかなり大型な調達に成功されたと思って見ています。先ほどの話で、想定より時間がかかるという話が出ましたが、シリーズAまでの期間は、当初想定と比べてどうだったのでしょうか。

伊藤:率直な印象では、思っていた時間の倍はかかっています。それを「遅い」と言いたいわけではなく「やはりこれくらいはかかるな」ということです。

時間はかかりましたが、一方で腰を据えて、時間をかけられる環境があるということも大事です。その点、アルプは恵まれました。様々な株主、投資家の方、しかも強い投資家の方たちに支えられて、初期から「一緒に長い時間軸で挑戦しよう」という前提でやらせていただいているので、変に焦ることもなく、価値を積み上げてこれました。

湯浅:たとえば、こういう状況になったら、シリーズA調達に動こうなど、マイルストーンを予め設定されていたのですか?

伊藤:今回のシリーズAは、リードしていただいたGCP(グロービス・キャピタル・パートナーズ)の高宮(慎一)さんといろいろお話させていただくなかで、「今、大きくやるべきじゃないか」と決まった感じです。高宮さんとはもともと懇意にさせていただいて、お互い「今だよね」という議論から、こういうファイナンスをして、次にこういうチャレンジをしたい、というストーリーを一緒につくりながら進んできました。

なので、最初の問いに戻りますとマイルストーンの設定をしていたわけではありません。また、僕が会社がこういう状況になったので投資しませんか、と声をかけて回ったというわけでもなく、横で一緒に座って実現してきたような感覚があります。

(シリーズA調達の際のアルプ経営陣とVCの集合写真。前列左から2人目が伊藤氏)

調達前からVCとトコトン議論する

湯浅:ちなみに、どのぐらいの期間シリーズA投資家と一緒に議論したり、構想を練っていくということをやっていたんでしょうか。

伊藤:2021年8~11月の3~4ヶ月ぐらい話していました。なかでも高宮さんとは、「高宮さんに始まり高宮さんで終わった」くらいに話しました(笑)。

湯浅:主にどんなことについて話すんですか?

伊藤:まず現状どうなっているのか。それから、2025年や2030年にどうなっていたいのか、という未来の話ですね。Scalebaseを進化させていく過程で、どういうインダストリーで、どのセグメントに、どう展開していくのか。単価はどうなっていればいいのか。どこまで現実的なところまで落とし込んでいくのか、そのヒントをどうやってつくっていくのか、といったことを話していました。現実的かどうかは別として、「こうなったらいいよね」というところから、具体までを話し続けていた感覚があります。

そこの議論のテンポが合っていたというか、気持ちよかったですし、本当に目の前のことに追われる時期に、強制的に「2025年、2030年をどう迎えたいたいのか?」というツッコミを入れてもらえるのが有難かったです。

シリーズA前後のフェーズで一番難しいのが、目の前のMRR(月次経常収益)、ARR(年間経常収益)を積み上げていくことが大事だったり、カスタマーサクセスやチャーンレートも大事だったり。そのうえ、組織拡大のための採用もやらなくてはならないとなってくると、とにかく目の前のことに集中して今をどう過ごすのかだけで手一杯になるんです。

そういう中で、強制的に高宮さんから未来についての問いが入ってくるのがすごく有難かったんですよね。

それがペースメーカーになって未来への芯がつくられていきましたし、しかも僕が1人で未来像をつくって「どうですか?」と意見を仰ぐわけではなくて、一緒につくっている感じで進めたのが良かったなと思います。

湯浅:足元がすごく忙しいなかで強制的に将来のことについて考える時間を定期的に持つためにも、シリーズA投資家とかと早い段階から話を始めるのがいいということなんですね。

伊藤:そうですね。起業家側として、入ってもらいたい投資家の方がいるのであれば、一緒に考える時間を意図的につくれると、そのあとが格段にやりやすくなるのではないかと思います。いざファイナンスが始まる頃には大体もう関係はできている、というのがいいんじゃないかなと思います。

湯浅:実はVCの目線でも全く同じで、「こういう状態でもう資金調達しています」という形でお越しいただくよりも、何をマイルストーンにして、まず何から取り組んでいくのか、みたいなところから一緒に議論していきたいんです。その過程でVC側の理解も進みますし、これまで見てきたベストプラクティスを共有したり、こういうやり方もあるんじゃないかみたいなところもお話して、そこが擦り合ってきたタイミングで、調達のプロセスにかけると、もうあとは早かったりするんですよね。なので、事前の議論はすごく大切だと思っています。

終わりなきPMF

湯浅:もうひとつ伊藤さんにお聞きしたいのは、よくシリーズAでは、PMF(プロダクトマーケットフィット)しているかどうかが一番の試金石だと言われたりもするんですけど、PMFを意識したことはありますか?

伊藤:あったりなかったりという、すごく曖昧な答えになるんですけれど。まず今目指している領域においては一定PMFしていると思っています。ただ、その領域はどんどん拡張されていくんですよね。

例えば、一定規模のトランザクションを持つお客様には刺さっていますが、より大規模で数百億円のトランザクションを扱っている事業者に価値提供したいとなるとPMFできていないとなります。

なので、「このタイミングをもってPMFしました、以上」という終わりは無いものだと捉えています。そこをジリジリ増やしながら、まだこれからのところに対してしっかり投資していくということを意識しています。というので、回答になっていますでしょうか?

湯浅:おっしゃる通りで、セグメントごととか、もしかしたらユースケースごとにじわじわとPMFしている範囲を拡大していく感じだと思います。その次にお聞きしたいのが、何をもって、このセグメント、あるいはこのユースケースではPMFしたと見なすのかということです。見ている指標とかはありますか。

伊藤:実はシリーズAの資金調達を通した議論で見えてきたことが大きくてですね、それまでは、どのセグメントもごちゃ混ぜで「できることは全部やります」と頑張って対応してきた感じです。それが、ターゲティングが明確になっていくにつれて整理されてきました。

例えば、スッとScalebaseが導入できて、そのまま利用して特に要望もないようなフェーズのお客さんがいらっしゃる。一方で、大規模な事業者様だと、「こういう機能がほしい」という要望は多分にあります。なので、そこは明確に分けて、それぞれの攻め方とか、サクセスの在り方を変えています。

どこが不明で、どこが不明じゃないのかがクリアになってきたので、結果的にセグメント議論できるようになってきたという感じですね。

湯浅:セグメントについての理解が深まる瞬間があるんですね。

伊藤:そうですね。月単位でどんどんリリースが増えていく中で、セグメントの変化をすごく感じた時がありました。

「キャリア価値の最大化」のために会社は何ができるか

湯浅:組織についてもお伺いしたいのですが、伊藤さんはピクシブ時代に50人から170人までの急拡大をマネージされていたわけです。一方アルプは、今社員数40人と規模が違いますが、アルプの組織をつくるにあたり、これまで意識されてこられたのは何でしょうか。

伊藤:一貫して大事にしているのは、当人の「キャリア価値の最大化」です。その人がアルプでフルスイングをすることで、キャリアの価値が最大化されることを大切にしています。そのフルスイングの集合体がアルプのアウトプットなので、最大化されればされるほどアルプにとっては良いはずですし。

あとは、「その人にとってアルプは最高な環境か?」「その人の課題をアルプは解決できるのか/願いを叶えられるのか?」を意識して、採用や組織の拡張を続けてきました。採用プロセスでも、入社後コミュニケーションでも、そういうことを強く意識をしていましたし、これからもその強みは変えたくないです。

採用において頭数を揃えればいいといった意識は全くなくて、バイネームでアルプがどこまでその人の役に立てるかを考えます。入社後にアルプでどう価値を生み出してもらうかは僕が考えることなので、それは僕が引き取ってやりますし、そういう関係性で今までやってきています。

湯浅:その人がフルスイングしやすい環境というのはどうやって、つくるのでしょうか。

伊藤:ひとつは、情報がフェアに提供されて、サプライズが無いようにしています。組織内に知らない情報があるのは当然ですが、事業や意思決定をしていく上で知っておくべき情報がすぐそばにあるとか、アクセスしやすい場所にあるということです。

我々だったらNotionとかに貼ってあるんですけど、それだけでは届きません。積極的にそれが提供されているということが大事だと思っています。

それから、組織において仕事がやりにくくなる「あるある」な要因を潰す仕組みをつくっています。例えば、コミュニケーションパスが増えてやり辛くなるとか、トップダウンで頭ごなしに否定されたりとか、ネガティブなフィードバックが来てやりにくいとか、そういうことです。

そもそも僕自身がすごくデレゲーション(権限委譲)するのもそうですし、その際も完全に任せきるとか、そこを経営陣が積極的にやっていくようにしています。まだまだ足りない部分もあるんですけど、ひとつひとつやってみて、改善してということの繰り返しですね。

焦らない。軸を定め、腰を据えて戦い抜く

湯浅:ここまでシリーズAまでの道のりをお伺いしてきましたが、恐らくリスナーの中でも、これからシリーズAを目指すという起業家の方やスタートアップの方が多いと思います。伊藤さんが振り返ってみて、シリーズAをこれから目指す方に何かひとつ伝えるとしたら、何でしょうか?

伊藤:良いアドバイスかわかりませんが、明確に言えるのは「焦らない」ことです。特に他社の動きやいろいろな情報に踊らされて、自社の思想に寄らない意思決定をすることは全く意味がありません。

BtoB SaaSは横比較しやすいので、我々も周りの成功事例や成長スピードを見て、こうしなきゃ、ああしなきゃと気持ちが焦ることがたくさんありました。他が気になる気持ちは経験者として分かるのですが、自分たちの領域や事業構造からして、「時間軸はこう。こういう戦い方をして、顧客にここまで刺さらないと意味がない」というところをしっかり持って戦い抜くことが大事です。

たとえば、我々は創業1年ちょっとぐらいの2019年10月に最初のプロダクトをリリースしています。それによってお客様のフィードバックをたくさん貰えるようになりましたし、結果今につながっているのでいいのですが、もう半年、もう1年潜ってプロダクトのマチュリティをより高めて出すという意思決定もあったなと思います。

2019年の僕は耐えること、沈黙することに対する恐怖があった。ニュースやリリースを全く出していない状況で、会社のモメンタム(勢いや評価)をどう上げ続ければいいのか、単純にすごく不安だったんですけど、今上手くいっている会社を見ても、潜るときには皆ちゃんと潜っているし、しっかり固めている会社ばかりですよね。

意思をもって早くやることはいいのですが、「拙速であることは全然良くない」という学びもありましたし、中でも他社に引っ張られる意思決定は誰のためにもならないなというのは、上手くいっている例、上手くいっていない例も含めて見て感じることです。

湯浅:素晴らしいですね。他社は気になってしまうものだと思いますが、焦らず顧客とプロダクトに向き合っていくのが、実は急がば回れで、結果的に良いプロダクトをつくれますし、それができれば事業は加速していくので、まずはそこをしっかり頑張っていきましょうということですね。

伊藤:そうですね。そのためには株主や投資家の方々ともしっかり目線を合わせる必要があります。そこがズレると、やれとにもかくにも売上を積み上げようとか、やれ次の調達のためにどうするとなってくると思うんですよ。同じ目線に立てる投資家、株主をまず集めることもそうだし、それができるようにしっかり調達することがすごく大事だというのが、その次のアドバイスかなと思います。

事業グロースのための価値提供を行う

湯浅:最後に、今シリーズAを迎えて、これから事業もどんどん加速していく段階だと思うんですけど、最終的にアルプ、Scalebaseは何を目指すのか、将来の構想をお伺いできますか。

伊藤:Scalebaseというプロダクトは、いわゆる継続収益ビジネスの契約請求管理を行う業務システム、販売管理SaaSをやっているんですけれども、プロダクトビジョンとして「意思決定と実現を繋ぎ、経営をスケールさせる」ということを標榜しています。

これは、業務としてあらゆる意思決定や施策を実現しやすい基盤を提供するということと共に、それによって事業や経営を飛躍的にグロースさせていくそうした価値提供をするシステムなんだというところを謳っています。

足元では、まだまだ業務オペレーションの効率化にフォーカスしていますが、事業グロースのための価値提供はできると思っています。例えば、プライシングの最適化のためのシミュレーションを使い勝手のいい形で導入することだったり、既存顧客のアップセル、クロスセルの可視化、LTV(ライフタイムバリュー)最大化の可能性がある場所の可視化だったり、あとはチャーンの抑制だったり、そういったところを、我々が持っているデータアセットを活かして価値提供できると思っています。

オペレーション効率化を超えて、Scalebaseがあることで事業成長する、「事業成長させたいから入れていこう」「一緒に歩んでいこう」となるような経営システムに進化していきたいなと考えています。

湯浅:まさにその思想がプロダクト名「Scalebase」に入っているんですね。

伊藤:そうなんです、そういう意味ですごくこのプロダクト名も気に入っています。

湯浅:かっこいいですよね。本日はアルプの伊藤さんにいらしていただきました。本当にどうもありがとうございます。

■一問一答

Q:休みの日の過ごし方 

伊藤:3歳になる息子と毎週か隔週で博物館に行っています。息子がカンブリア紀の恐竜とアンモナイトやウミサソリ、アノマロカリスなどの古生物にハマっていて、全国の博物館や自然史博物館に一緒に行って化石を見るのが最近の週末です。

Q:家の中で、妻(元VC、現スタ―トアップ経営者)とビジネスの話はしますか?

伊藤:込み入ったことは言いませんが、ちょっとした相談事は頻繁にしています。そこはすごくお互い支え合っているというか、どちらかというと僕が一方的に支えられているんですけれども、この4年間本当に助けてもらってばかりですね。。

Q:好きな本

伊藤:ライト、ついてますか』という本を愛読しています。1987年発刊なのですが、読むたびに発見がある名著です。ものの考え方について色んな角度で解いていて、要は「問題」は、誰にとっての問題かで定義や捉え方が変わるということが書いてあります。

組織のことでも、事業のことでもそうなんですけど、「問題/課題があります」というときいつも、「誰にとっての」が全部隠れているんですよ。そうすると議論がものすごく発散してしまう。誰にとって――お客さんの問題なのか、社内の問題なのか、誰が、どういう背景でそれを考えているのかみたいなことを考えることで、議論の質やものの捉え方が変わります。そういうことを教えてくれる本で、僕自身は毎年読んで気づきがあります。社内でも、今分からなくてもいいから、1回読んでみて、何回か読むなかで噛みしめてほしいと勧めています。

Q:最近買ってよかったもの

伊藤:デザインファーム「THE GUILD」の共同代表の安藤剛さんが作られた、PREDUCTSという、ミニマルかつ機能的なデスクです。リモートワークが捗るのもありますが、モノなのに、サービスのようにアップデートするんです。そのものづくりの姿勢がめちゃくちゃ面白い。いわゆるオフィスデスクなんですが、思想がサービス的で拡張性を前提に設計されています。プロトタイプでモジュールをつくると、ユーザーにどんどん配ってフィードバックもらったり。「買って終わり」ではない関係性は、SaaSとか無形商材ならつくりやすい。モノの世界でつくり切るのは難しいと思っていたのですが、その概念を変えてくれました。デスクでも、こういうアップデートのデリバリーの仕方があるのかとか、コミュニティのつくり方とかが勉強になって、ものすごいファンです。いろいろな方にお勧めしています。

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