【IPO記念インタビュー】CaSy(カジー)、DXで起こした家事代行業界のイノベーション

CaSy 上場2022年2月22日に上場を果たした株式会社CaSy。創業者の加茂雄一氏、池田裕樹氏、胡桃沢精一氏(現在は離職)の出会いは、2013年グロービス経営大学院の「ベンチャー・キャピタル&ファイナンス」のクラス。そのなかでCaSyのビジネスプランをつくり、現在に至っている。当時、クラス担当講師だった山中礼二がIPOまでの道のりを聞いた。(全2回、前編)

IPO成功の最大の要因

山中:今日はいろいろお話をお伺いできるのを非常に楽しみにしてきましたが、まずはIPOおめでとうございます。

加茂、池田:ありがとうございます。

山中:最初にお伺いしたいのは、上場まで到達した最大の要因です。何だと思われますか。

加茂:グロービスで学んでいたから、というのが前提にありますが(笑)、内的要因としては、我々は起業経験がなかったため、家事代行のキャストの方や株主の方、先輩経営者など周りの方の話を素直に受け入れることができました。それでPDCAを回してきたことが、今のCaSyをつくっていると思います。

池田:外的要因としては、家事代行業界そのものが伸び続けているということが参入のタイミングも含めてすごく良かったです。時間の使い方をもっと大事にしたいと考える方が増えてきていますし、それに伴って家の中のことを外部にサポートしてもらうことが一般化してきています。それがここまで成長を続けてこられた要因の1つだと思っています。

CaSy

入学当初は考えていなかった「起業」

山中:ありがとうございます。今日は上場までの道筋をお伺いしたいのですが、まず、お2人がグロービス経営大学院に入学されたスタート地点に戻りまして、なぜ入学を考えられたのかお聞かせください。起業は入学時から考えていたのでしょうか。

加茂:当時は監査法人で会計士をしていまして、ベンチャー企業の社長様とお話しする機会が多かったので、経営者の考えを知りたくて、グロービスに入りました。起業を考えていたわけではありません。

池田:私も起業は、あるとしたら「あこがれ」みたいなもので視野には入っていませんでした。入学した理由は、ちょっとした「焦り」みたいなものからです。日々仕事をする中で「もっと成長しなければ」と感じていましたし、成長できる選択肢をいろいろ考えたうえで、グロービス経営大学院の入学を選びました。

山中:大学院で「ベンチャー・キャピタル&ファイナンス」という科目を受講され、加茂さん、池田さん、そして胡桃沢さんという3人のチームを結成されたわけですが、どうしてこの3人を選ばれたのでしょうか。

CaSy 加茂雄一氏

加茂:“たまたま同じテーブルに座った”というのが本当に最初のきっかけです。ただ、そのチームが続いたのは理由があると思っています。感覚的な話になりますが、議論をしていて「前に進んでいる感」が強くありました。根本のところでは近しい価値観を持ちながら、それぞれがそれぞれの視点を生かしていて、「この3人だったら、いろんなことができるんじゃないか」という思いはありました。

池田:それに加えて、クラスに対する熱量が同じレベル感だったと思っています。クラス初日の終了後に、胡桃沢とだけですけれども、食事をして帰ったんです。そのときに「やるんだったら本気でやりたい」という話をした記憶があります。

ITで家事代行業界に革命を起こす

山中:そのなかでなぜ家事代行産業を選ばれたのか興味があります。家事代行は決して新しい業界ではなく、戦前から日本では「家政婦派遣」という産業があり、1983年にミニメイド、1988年にメリーメイド(ダスキン)、1999年にベアーズが2時間で4,980円というサービスを始めて、「家事代行」という言葉をつくりました。

その後、大きなイノベーションはなく進んできたように思うんですけれども、2014年というタイミングで、なぜ、この産業にイノベーションを起こそうと思われたのでしょうか。

加茂:家事代行は、100個くらいビジネスのアイデアを出していく中で、101個目くらいのアイデアです。なぜそこに行き着いたのかというと、これはグロービスで大事にされている「志」にも関わってくると思うんですけれど、前に出した100個のアイデアを(クラス担当講師の)山中先生にぶつけていく中で酷評されたわけですよね、0点とか、1点とか(笑)

山中:(笑)

加茂:そこで山中先生に「『ビジネスを通してどういう人を助けたいのか』、『どういう世界をつくりたいのか』というところをちゃんと内省して具体化したほうがいい」というフィードバックをいただいて。そこを考えたときに、身近な人から助けられるようなサービスにしようと決まりました。

我々3人とも共働きで子供がいて、私は妻が妊娠して、ちょうど家事代行サービスを使い始めたときでした。単純に掃除や料理をこなしてくれるということ以上に、「時間を創ってくれる」というのに惹かれました。そのおかげで家庭に笑顔が増えていったので、このサービスを通せば、同じような悩みを抱えている家族をサポートできるんじゃないか、と。

そのうえで、テクノロジーを活用すれば、伸びしろがある業界だと思って、家事代行業界を選びました。

CaSy インタビュー

山中:みなさんの志と、選んだ産業が非常に整合しているという意味で、ファウンダーマーケットフィット(起業家の想いや経験と市場が一致していること)も非常に良かったのではないかと、振り返ってみて思います。

同時に、テクノロジーを使えば、イノベーションのチャンスがあるというふうに思われたわけですね。そのチャンスがあると感じられたのは、どのあたりでしょうか。

加茂:マッチングの部分です。ここを従来はコーディネーターの方がやっていました。コールセンターに電話をかけると、日程調整をしてくださるんですけれども、それは家事代行スタッフが来る日程ではなくて、コーディネーターという営業の方に来ていただく日程になります。

コーディネーターの方がまず家にいらしてインタビューを1時間半くらいされる。それを会社に持ち帰って、「このスタッフどうですか」とメールや電話でお知らせしてくださる。依頼から実際にスタッフが来てくれるまで結構手間がかかっていたんです。

当時、メルカリだとかUberだとか、シェアリングエコノミーのサービスが出てきたので、より効率的にマッチングしていけるんじゃないかと考えました。

山中:当時のビジネスプランに、「既存の家事代行のサービスを受け始めるまでのプロセスが非常に長い。それをテクノロジーでギュッと短縮するビジネスをつくる」という趣旨のチャートが描かれていました。今回、上場時の目論見書に同じチャートが貼ってあって胸が熱くなりました。

顧客満足度4.9点、サービス品質へのこだわり

山中:2014年に立ち上げられて、ヒト・モノ・カネどれも大変だったと思うのですが、最大の苦労は何だったのでしょうか。

池田:いっぱいありますね(笑)。最初苦労したのは、自分の伸びしろをどんどん伸ばさないといけないということです。初期は本当に人がいなかったので、やらなければいけないことが山ほどあって…。前職はNTTデータでプロジェクトマネジメント業務をメインでやっていました。けれども、創業初期は自分でプロダクトをつくったり、カスタマーサクセスをやったり。「未経験だけれど、事業を回していくうえでは必要なこと」を、知識を得ながらやるのが初期は本当に苦労したなと思います。 

加茂:どれを選ぼうかなと思っているんですけれど…(笑)。一番初期は、その中でも「カネ」ですね。当時は管理体制が結構ざっくりしていたので、資金ショートしかけて役員報酬を数カ月止めたこともあります。それは当時CFOを兼務していた私の責任ですが、それ以降は社内の管理体制もきちんとするようになりました。今では上場承認をいただけるほどの体制を構築できたので、いいきっかけだったと思っております。

山中:ひとつ今日、ぜひお伺いしたいと思っていたのが、サービスの品質に対するこだわりです。顧客満足度の高さが5段階評価で4.9点と、非常に高いスコアが継続的・持続的についているかと思います。この品質の高さに対するこだわりはどこから来ているのでしょうか。

加茂:私たちがユーザーだったこともあって、家事代行キャストが高いモチベーションで働いていることを重視しています。その方が、家に入れていただくお客さまも気持ち良いのではないかと考えています。なので、働き手が根底に高いモチベーションを維持して、そのうえで「スキルの向上」や「お客様のためにどうしたらいいか」を考えられるようにしています。

山中:高い従業員満足度(ES)が、高い顧客満足度(CS)につながるということですね。どうやってモチベーションを高めてきたのでしょうか。

加茂:「マズローの欲求5段階説」を使って、報酬や安全性から、ひとつひとつ積み上げていって、自己実現のところも目指せるような仕組みをつくっています。

(マズローの欲求5段階説)

創業当時は、キャストから「普段、家事をしていても『ありがとう』と言われないけれど、CaSyで働くとお客さんから感謝されて、すごく嬉しい」という声を聞いて、1件1件「5点おめでとうございます」とメールをしたりしました。

もう1つの大きな取組みとしては、取締役の白坂(ゆき)がキャストとつくったクレド(行動指針)があります。白坂は、元リンクアンドモチベーションで組織人事開発コンサルのプロ。キャストを巻き込み、キャスト自身が自分たちの目指すクレドを決めました。

後編につづく(2/24公開予定)

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