VUCA時代に求められる、ビジネスパーソン・リーダー像とは~嶋田毅×君島朋子×西恵一郎

本記事は、GLOBIS知見録YouTubeにて公開している【特別シリーズ座談会】「キーワードから読み解く VUCA時代のリーダーとは」#1 VUCA時代に求められるリーダー像の内容を書き起こしたものです。

嶋田毅:最近「VUCA(ブーカ)」という言葉が非常に流行っています。VUCAとは、「変化が速くて、不確実で、複雑で、曖昧」このような時代のことです。そのような時代にビジネスパーソン、ビジネスリーダーはどんなふうに変わっていかなければいけないか。グロービス経営大学院の教員によるパネルディスカッションで議論していきたいと思います。

このシリーズは5つのトレンドに着眼しながら議論をしていきたいと思っています。第1に「テクノロジーの指数関数的な変化」。10年前、こんな時代が来るとは想像もしなかったわけですが、どんどん変わっている。第2に「地政学的な変化」。たとえば米中の関係とか、グローバルで見たときの人口動態とか、こういったものもどんどん変わっていく。第3に、「SDGs」。持続可能な開発目標が定められていて、それに従った企業活動を求められている。第4に、「エンゲージメント」。人間と組織の関係、こういったものもどんどん変わりつつある。そして最後に「人々の価値観とか幸福観」。いろいろなものが多様化していく中ですが、こういったものもどんどん変わっていくだろう。

さらにいうと最近世界が小さくなったということもあって、金融恐慌やパンデミックなど世界で起こることが、日本に影響を及ぼす機会や可能性が非常に増している。本当にどんどん難しくなる時代ではあるんですが、そういった中で、まずビジネスパーソンはどう変わるべきなのかということを議論したいと思います。いま私、5つぐらいキーワードを挙げましたけれど、特にその中で気になっているトレンド、あるいはこんなふうにビジネスパーソンは変わっていかなきゃいけないと思う点などをお話しいただいてよろしいでしょうか。では、君島さんから。

VUCA時代 ビジネスパーソンに求められるものとは

君島朋子:まずは「指数関数的な技術の進化」ということですよね。特に最近はAIだったりロボティクスだったり、機械が出来る領域がどんどん広がっていると思います。AIだと、もう機械がやるというよりは「機械が考える、機械が判断する」ほうですね。判断するといっても勝手に判断しているわけではなく、予測をしているわけですけれど、予測をしてくれる、そして、ロボティクスでかなりいろんなことができるようになっていく。これは単純作業を人がやっていくという世界がだんだん終わりに近づいている、単純作業を人間が担わなきゃいけない部分がどんどん減っていると思うんです。HBS(ハーバード・ビジネス・スクール)からバブソン大学に行かれたトーマス・ダベンポート教授がおっしゃっている「5つの人間がやっていく領域のアプローチ」というのがありますけれども、その中で「ステップアップ(Step Up)」と言われた、機械ができないことを人間ができるようにならなければいけない、ということが求められるようになってきている。それから「ステップ・アサイド(Step Aside)」と彼は言っていますが、機械と違う領域にすみ分けなくちゃいけない。たとえばクリエイティブな領域だったり、ヒューマンタッチが必要な優しさや思いやりだったり、人間らしい心が必要な領域、こんなところに寄せていかなきゃいけない、ということを5つのうち2つで言っていますけれども、そういうところに人間が力を向けていかなければいけないというのが大きな変化かなと思っています。

嶋田:すでにわれわれの時代ですら、親の時代にはなかった職業に就いている人が数十%と言われているので、それがさらに進化する。自分の子どもが自分の年ぐらいに何やっているんだろうって想像もつかない、こんな時代ですよね。ただ、そういったものを見越しながら変化することは本当に必要だと思います。西さんはいかがですか?

西恵一郎:いま言っていただいた5つのテーマっていうのは、考えなくても生活はできると思います。ただ、ビジネスリーダー層などトップマネジメントに近づけば近づくほど、5つのテーマは本当に経営に与える大きな影響を今後もたらすんじゃないかと考えています。経営を考えていく上でどういう振れ幅があるんだろうと考える上では、「テクノロジーってどこまで進化するんだろう」とか、「テクノロジーを使って経営ってどこまでできるんだろう」とか、地政学はグローバルという観点で「世界ってどういうシナリオが起こり得るんだろう」とか、SDGsで「社会や環境、人権に対して、企業やお金ってどのぐらい動くんだろう」とか。いまから影響がすごく出てくる領域なので、知らなければいけないのだけれども、その深刻度というのは上に行けば行くほど深刻だし、経営との距離がある人ほど、遠いテーマのように感じることがあります。さっきの人のテーマもそうかもしれないですね。マネジメントをする立場に立つと、ぜんぜん違う価値観を持った方々とか、ぜんぜん違う多様な方々っていうのを率いて成果を出さなきゃいけないけれど、メンバーであればそういう人もいるよねっていう(程度の深刻さで済んでしまう)。だから本当に問題意識によって、その5つの変化の深刻度・重要度はすごく変わってくるかな、と感じました。

嶋田:当然ですけれど、より上の立場に行くほど考えておかなければいけないシナリオというんでしょうか。「こういう未来も起こるかもしれないし、こういう未来も起こり得るかもしれない」ということを考えなくてはいけない。その振れ幅の中で、我々は今の段階で何を備えておくべきなのか、そういった発想が上に行くほど求められる。ただ、下の人も当然ある程度変わっていかなければいけないなと思います。特に若い人だと、どういう心持ちを持っておけばいいんでしょうか。

 西:たぶん「勉強をしている」っていう感覚でさっきのテーマを学んでいくと、あまり身につかない気がします。「覚えなきゃいけない」とかじゃなくて、身近なテーマでもいいので、やっぱり「自分ごと」として考えていく。別に5つ全てを考えなくてもいいと思うんですよね。自分が関心のあるところからひとつでもいいので、身近な部分で考えていく。たとえばテクノロジーでもいいですし。恐らく地政学だと結構遠くなっちゃうので、SDGsのどこかの項目でもいいと思います。そういうことを考えていって、自分の企業や身近に起きていることから考えていくと、つながりを理解していくっていう意味ではいいでしょうね。

 嶋田:自分ごと化しないと、いくら考えてもなかなか意味がないと。

 西:そうですね。勉強になっちゃいます。

 嶋田:お勉強というわけじゃないですからね。これから起こり得ることで、別に答えもない中で。とはいえ、少し自分ごと化して考えることが若い方であっても必要になってくる。特にこれだけ変化が速い時代ですから。君島さんはどうでしょうか、そういった「自分ごと化して考える」ことについて。特に若い方について。

 君島:2つあるかなと思っています。ひとつは、さっき西さんが言われた「多様な人がいる」という話。若い方であっても、直面する機会は増えるのではないかと思っているんです。今までは若い人というと、リーダーではなく、みんなが「言われたことをやっている人」というイメージがありました。言われたことをやっている人であれば、みんなある程度似たようなことをやっていくだろう、同じようなことを考えていくだろうという前提があると思うんですけれども。今後はみんな同じことを考えて、みんな同じように動くという仕事が求められるのか、というとそうではないかもしれない。さっきの話で、たとえばクリエイティブなことをやろうと思ったら人と違った方がいいかもしれません。人の心を想像して、思いやりとかヒューマンタッチとかを出していこうっていう仕事であれば、逆に、相手の人は自分と同じじゃないかもしれないし、「横の人とは違うサービスを自分がしてあげたほうが喜ばれるかもしれない」みたいな、個に対する想像力がいっぱいあった方が、むしろ若い方であっても成功するし、自分の思うとおりの仕事ができるんじゃないかと思うんです。そう考えると、「自分とは違う人と働いているかもしれない」「お客さんも、相対している人も、みんな自分とは違うことを考えているかもしれない」、そのように想像しながら仕事をしなければいけないという機会は、若い人にも多いのかなと思っているのです。なので、いろんな人がいる、ということへの想像力は、若い人にもすごく求められているのかなと思っています。

それともう1つ。「自分ごととして引き寄せる力」と先ほどおっしゃっていたこと。あれは、若者の方が強いのではないかなと思って。自分の近くにないことでも近くに感じる力というのは、むしろ若いときのほうが強いかもしれないと思っています。うちの子どもが学校で海のゴミ問題を勉強してくるのですけれど、うちの近くには海がないので、海のゴミをあまり見たことがないんですよね。けれど、「太平洋ゴミベルト」みたいなものを、すごく実感をもって考えているんです。「このぐらいの量たまっているらしい」とか、「上を歩けるらしい」とか。そういう「上を歩けるんだ」とか、「1個がこのぐらいなんだ」とか、「船が当たったとき、こうなったらしい」とか、そういう話からすごくリアルに「そっか、上を歩けるんだ」と想像しているんですね。我々が「太平洋ゴミベルトは何平米ある」と言うよりも、よほどリアルな感じでゴミを身近に引き寄せて、「そんなの、家にあったらこうなっちゃうね」みたいな感じで考えているんです。だから、「ああ、すごい想像力だなあ」と思います。引き寄せる力というのは若いうちの方があって、すごく遠い物事でも、若いうちにいろいろ近づけておくことで、どんどん対応できる幅が増す人になるではという気がしています。

嶋田:さっき君島さんのほうで、いろんな価値観の人がどんどん出てくるし、その価値観の多様化っていうのは今後も進むだろうという話、一緒に働くっていう意味ではなかなか難しい側面がありますけれど、逆に見るとビジネスチャンスがそこで生まれるかなという見方もあると思っているんですよね。昔からアービトラージというか裁定というのはまさに富を生む源泉だったりします。たとえば昔、インドではコショウなんて見向きもしなかったけれど、それをヨーロッパに持っていったら金よりも重い価値がある、みたいなことがあったように、ひょっとしたらそこかしこで価値観の差が生まれて、だからこそ、そこにビジネスチャンスが生まれる、みたいなことも結構起こるんじゃないかなっていう気がしているんですよね。まさに同じものをみんなが求めるんじゃなくて、微妙な差があるからこそ、そこに何かしらのアービトラージのチャンスが生まれる。だから私は、若い人もそこでビジネスを見つけたら、自分で何かマネタイズできないかなとか、しっかり考えていく。非常に面白い時代がやって来ているということを若い人には伝えたいかなという気がしますね。

西:なるほど。いまのお話を聞いて、さっきの5つのテーマって結局「差」を生むテーマだと思っていて。水って高い所から低い所へ絶対流れるじゃないですか。人も、悪い組織から良い組織に流れるんですよね。SDGsでも地政学でもいいんですけれど「こういうことが起きたら、こういうふうになるよね」ということを準備していた企業、そういった情報を有効に使っている企業が勝ち抜いていくし、そういう企業に人は流れていく。結局、そういう原理原則みたいなことが、5つのテーマの中にすごく散らばっているので、それを利用するとまさにアービトラージ(差異)で、ギャップをうまく利用し、もっともっとうまくやれるチャンスというのが本当に詰まっている感じがしますね。

嶋田:そうですね。自然のことわり自体がそんなに変わるわけではないので、水が高い所から低い所へとか。それを正しく理解した上で、しっかり考え抜いて、「どんなことをすれば人は寄ってくるのか」とか「どんなことをすると自分たちの商品が受け入れられるのか」ということは、しっかり押さえておきたいポイントといえるかもしれませんね。

VUCA時代 リーダーのあるべき姿とは

嶋田:では特にそうした時代において、人を率いていく、あるいは後押ししていくリーダーが持っているべき資質、ここについて少し議論してみたいんですが。時代が変わっても普遍的にリーダーとして持っておくべきものもあると思いますし、時代の変化に合わせて柔軟に変えていかなきゃいけないものもあると思います。そのへんについて、「ここは不変だ」「ここはもっと変えていったほうがいい」といった話を、お聞かせいただければと思います。

君島:はい。変わらないものと変わるものっていうことですけれど、まず、変わらないけれど強化される、もっと必要になっていくと思われるものからひとつ挙げさせていただきます。これから、さっき申し上げたみたいにAIが、ロボティクスがどんどん活躍していく。それで、人とだけじゃなく、AIとロボティクスと、機械と働かなければいけなくなっていく。そういうことも考えると、より機械にできないことを人間がやり、機械に人間が出来ないことをやってもらう、ということができるのが大事かなと思うんですね。そうすると、昔からリーダーとして必要だったと思いますけれども、きちんと論理立てて物事を考えて整理をする力、さらにいえば、機械にできない「イシュー」を設定する力。「イシュー」とグロービスでは言うんですけれども、「いま何が解決すべき課題なのか」「いま、どの課題に向かってみんながチャレンジすべきなのか、取り組むべきなのか」という課題を設定する力、設定したらそれを論理的に解いていって、機械にも実現できるようなところまで論理的に整理をしていく力、これはもっともっと必要になってくるかなと思っています。

嶋田:たしかに多様な人たちと協働する上でも「私はこう思います。なぜなら…」というのが今まで以上に重要になるのは、まったくその通りかなと思いますね。西さんはいかがですか。

西:やらなければいけないことはそんなに変わらないと思うんですが、やらなければいけない内容や程度は結構変わると思っています。特に人々の共感をつくらなければいけないということに対するリーダーの役割とが、すごく大きくなったと思うんです。先ほどの多様であるとか、いろんな選択肢を働く人が持てるようになってきたことによって、働く人も働く場所、働くリーダーを選ぶという時代になっていると思うんですよね。そうしたときに、「このリーダーの話には共感できる」とか、ストーリーに対する共感ってすごく大事だと思っています。さっき言ったようにテクノロジーもすごく進化している、環境のことについても考えなきゃいけない、いろんな世界でいろんなことが起きている中で、「自分と会社ってどうしていきたいんだ」という点を定めていくのは難しいと思っています。かつ、それを自分の原体験に近い形で話せないと、その人らしさは伝わってこないんだろうなと。「いろんな多様なテーマを自分と紐づけて、ストーリーで語って共感をつくっていく力」というのはすごく難しいけれど、それができる人に、人々とか投資が集まってくるのかなと感じています。その点がすごく変わってきたところじゃないですかね。

嶋田:そこはさっきの論理思考力も出てきますし、当然ですけれどヒューマンスキル、あるいは俗にいう人間力とでもいうのか。「この人の言うことだったら、とりあえず付いて行っても大丈夫かな」と思えるぐらいの姿勢であるとか、その人の自己鍛錬の度合いだとか。そういったものがますます重要になってくる気はしますよね。

西:そうですね。働くモチベーションが「お金のために」とかじゃなくなってきているし、「自分の自己実現のため」になると余計そうなりますよね。

嶋田:やはり、そういう共感力っていうものがますます重要になってきそうですね。これからの時代、君島さんの論理思考力と同じで、ますますその重要度が増していくと。私も、人間力というとビッグワードではありますが、先ほども言いました、「この人だったら付いて行ってもいいかな」と思える、その人の原体験に根ざした未来に対する洞察であるとか。あるいは常日頃から積極的に情報にアンテナを張って、いろんなものを収集しているとか。あと、単純に打たれ強いとか、誠実だとか、何かあっても逃げないとか、そういったことがますますリーダーには求められる気はしますね。

では一方で、「ここは今までとは少し違って、変えていけばいい」っていう点は、どんな点を思いつかれますか。

君島:ひとつは、「自分とは違う人を相手にして話している」という前提が必要になるかなと思っています。先ほどの西さんの共感力という話で、共感したことを発信してみんなを引き寄せないと、リーダーとして誰も自分の組織に来てくれないかもしれないと考えると、きちんと自分が共感したことを発信できないといけない。発信するときに「相手は自分と同じことは考えていないかもしれない」という前提で、きちんと「自分はこういう体験があってこう思っているから、こう考えている」みたいなことが、これは論理性にも通じるんですけれど、整理して発信できないといけない。前提として「同じ体験があるんだ」とか「同じ世代として同じ背景を共有しているんだ」というのは、もう成り立たないのです。

時事問題の話題を出すと、最近オリンピック委員会の女性の話がありましたね。あれはおそらく、あの世代の方の価値観としてはまったく普通のことだったと思いますし、その世代で(平等に)女性が委員会に入っているなんていうことは、おそらくなかったわけですから、まったく不思議のない話だったのでしょう。でも、「もう聞き手はそういう世代ではなく、そういう世界に生きていない」ということを想像の上でしゃべらないと、「うーん、何でこういう話になったのかな」と、いらない不信を呼んでしまって、ぜんぜん違う文脈で理解されてしまうわけですよね。ぜんぜん違う人たち相手にきちんと通じる話をしなくてはいけない、その前提で話を組み立てなくてはいけないっていうところは、おそらくこれまで、日本の企業社会が同質的な人を前提に作ってあって、同質的な人を前提に発信してきたところから、大きく違っていくことだろうなと思っています。

嶋田:西さんはいかがですかね。変えていかなければいけない点。

西:変えていかなければいけないのは、リーダーとしての意識の部分。経営者がトップマネジメントとして最終責任を負いながらやっていて、他の人はどちらかというと「ついていく」。比較的、部門長、課長、部長などの形で、「役割を与えられているからやっています」「上から落ちてきた目標を頑張ります」という思想で働いていて問題なかったことが、従来は多かったと思います。これからは部長であっても「自分が経営者である」という意識で働いていくのがすごく大事になってきていて、人事制度も含めて、そういうふうになってきている。「権限は与えます。でも、結果をちゃんと出してほしい」、「自分がどういうことをしたいか、というプランがあれば、人的リソース、お金のリソースなど必要なリソースをいろいろ使っていいよ」と。でも、逆にプランがない人にはお金も人もついてこない時代になる。自分で経営する感覚でやっていって結果を出していく。経営者のつもりで仕事をする機会も増えてくるし、そういう人が、社会でより求められていく時代になってきたなと感じるので、マインドがそこから変わっていくというのは大事かもしれないですね。

嶋田:マインドを変えるためには、当然だけれど時間の配分も変えなきゃいけないし、日常からの言動も。ある意味形から入っていくという側面もあるでしょうし、そのあたりを変えていかないと新時代のリーダーにはなり得ない、という話ですね。

西:そうですね。昔はホールディングスがあって、ホールディングスの下にカンパニーをつくって、「この人たちが経営者だよね」ということだったと思うんですけれど、それがさらに細分化されて、事業部ごとに責任者=経営者として活動することが求められるイメージがありますね。

嶋田:そうですね。やはり、みんながさらにリーダー的な視点を持たなきゃいけなくなってくるというのでしょうか。マネジャーとリーダーは微妙な使い分けをされたりしますけれど、通常マネジャーと呼ばれる人でも、本当に組織のトップのリーダー的な振る舞いがより求められるようになっていく感じですよね。極端に言えば、昔は単純作業の監督みたいなことをしている人も多かったわけですけれど、さっきもあったように、単純作業の監督のような仕事はだいぶ付加価値が落ちていく。企画力であるとか、それまでなかった物事を生み出す力、あるいは、先ほどもあったように差異から何か富を生み出す力とか。いろんな情報なりに意味づけをするとか、そういったものをどんどんつくっていく。まあ、いままでももちろん重要だったのでしょうが、それこそがある意味、仕事の本質になっていくんじゃないかなという気がしています。

他にどうでしょう。変えていかなきゃいけない点、相変わらず強く持っておきたい点。

君島:どっちにあたるかなと思って考えていたんですけれど、多様なアイデアを出す力というか、いろんな意見を言う力。考える力もそうだし、言う力もそうですね、両方もっともっと必要になってくるかなと思っています。本当は今までも必要だったのかもしれないんですけれども、組織の中でいろんなことを言う人が重宝がられていたわけではないのでは、という気がします。そうすると、今後は必要になってくる。変えていくべき力のほうかもしれませんね。どんどんいろんなアイデアがないと、世の中が変わったときに何が受けるのか、何をしたら価値だと思ってもらえるのか。これらはどんどん変わるはずですよね。それにキャッチアップして、いろんなアイデアが組織の中で出てこないといけない。いろんなネタが出てきて、それが表明されなければいけないと思います。けれど現実、そんなにいろいろみんな思いつこうとしているか、思いついたらそれを会社で言おうとしているかというと、そうでもなくて。言われたこと、上から与えられたことをやっていくっていうのが仕事だという認識が多いかなと思います。そうじゃなくて、自分がアイデアを出して、それを表明してつくるんだという、西さんがおっしゃる「みんな経営者」というのに似ているかもしれませんね。そういう発想がもっともっと要るかなと思います。

嶋田:そうですね。言われたからやるんじゃなくて、「やりたいからやる」とか「やるべきだからやる」とか、そういう発想を組織のてっぺんのリーダーだけではなくて、特にミドルのリーダーぐらいの人が持てる組織は強いなと思いますね。

西:ベンチャーの経営者って自分がやりたいことを強烈に思って、形に落としていくじゃないですか。ビジネスパーソンとして働いていると、そういうことに対する意識はどんどん弱くなっていく。だけど、ここからは、「自分のやりたいことって本当は何だろう」とか「自分が成し遂げたいことは何だろう」っていうことがちゃんとあって、「それがこの会社でできるんだったら、自分はここで働きたい」と、発想が逆になっていく人のほうが強いと思います。そういうことができる人は、君島さんが言ったような世界観とか、嶋田さんが言ったような「そういう人がミドルにいると強いね」という。こういう育成って、日本企業ではまだ難しいなと感じていますが、そういうことにチャレンジできる会社は、もっともっと強くなる感じがします。

嶋田:グロービスの宣伝をするわけじゃないんですが、われわれはよく「志のMBA」と言っていて、「志」というものを非常に鍵に置いているわけですけれど。「世の中をこう変えたい」とか、自分が30年たったときに「あのとき、ああやってよかったな」みたいな、そういった志の高さというのを、ミドルの方であってもひとりのリーダーとして高く掲げることで、さっきもあった「人がついてくる」とか「その志に共感してくれる」とか、そんなことも起きるんじゃないかと思いますね。志というのもある意味、ある程度分解していけば、それを高く持つとこともスキル化できると思うので、ぜひ、そういったところも学んでいただければと思います。

本日、あっという間の短い時間ではあったんですが、このVUCAの時代、5つぐらい大きなトレンド、今日は触れきれなかったテーマもありますが、今後これに触れていきますので、そういった時代においてビジネスパーソンやリーダーがいかにあるべきか、今日はわれわれが話をしましたが、これは視聴されている皆様も、ぜひ自分ごととして、その中で自分はどういう生き方をこれからしていくべきなのか、何をすれば自分が生き残っていけるのか、そんなことをしっかり考え抜いていただければと思います。

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