交渉ではWin-Winをもたらす価値の違いを発見せよ 

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『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本』から「価値を創造する『違い』とは」を紹介します。

Win-Winの妥結点を目指す価値創造型の交渉(全体のパイを大きくし、お互いの取り分が増える交渉)では、交渉者間における、同じ事柄に対する価値(Value)の置き方の差異に着目することが最も重要な課題となります。基本は、「自分は大事に思っているけど相手はそれほど重視していないこと」と、「自分にとってはそれほど大事なことではないけど、相手は重視していること」を複数、可能ならばより多く見出し、お互いにそれを交換し合うのです。そうすることで、お互いの最終的な利得(得るもの、取り分)が増えるというのが近年の交渉論の基本中の基本です。世の中には自分の美意識よりも金銭が大事な人もいれば、その逆の人もいます。仕事が大事な人もいればプライベート重視の人もいます。誰ひとりとしてすべての価値観が同じという人はいません。だからこそ、どのような人ともWin-Winの妥結点を目指す価値創造型の交渉をし得るという点は認識しておきましょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇ ◇ ◇

価値を創造する「違い」とは

「交渉相手との価値の違いを見つける」と一口に言いますが、その「違い」は大きく分けて二つの観点から見ていくとよいでしょう。

一つは、ある論点に対して、お互いがどのような価値を感じているのかの違いです。よく言われる例としては、ある姉妹がオレンジを取り合ってお互いに譲らずケンカになってしまったという話があります。二人でよく話し合ってみると、実は姉はマーマレードを作るためにオレンジの皮が欲しくて、妹はオレンジの中身を食べたかった。それが分かれば、姉が皮を妹が中身を取ることで仲良くオレンジを分け合うことができたという結末です。つまり、一見して双方が同じ一つのモノを取り合っているように見えて、実はお互いが欲しいモノ、すなわち価値を感じている対象は違うというケースがありうるのです。この例は、その違いを発見するには、相手の意図を詳しく知ろうという意識と率直なコミュニケーションが必要であることを示す教訓ともなっています。

もう一つは、既に互いに認識している複数の利害関心の中で、それぞれがどの程度の優先順位を置いているか、その重み付けの違いです。こちらの方が先の例よりも、ビジネスの現場ではより頻繁に出てくるかもしれません。

冒頭ストーリー(注:本稿では引用せず)で言えば、ソフトウェアの日本での販売権という大ぐくりの論点の中に、細かい論点として初期費用やロイヤリティーの料率と並んで、日本での独占販売を許可するかどうか、ソフトの日本語化作業をどちらが行うかという点があることも明らかではありました。ただ、交渉の途中では必ずしも論点間の優先順位の差は意識されず、論点ごとに押し合いをしていた格好です。交渉終盤になって、若槻が「アイ・ラボ社は自社での日本語化について主張はしているものの、実はさほど重視しているわけではない」一方で、「エデュート社は日本語化を自社でやることを非常に重視している」という差に気付き、妥結に導いたのです。

交換できる価値の違いの代表例

交渉当事者双方から見て実は価値の違いが見えてくるという視点は、代表的なものとして以下があります。フィッシャー、ユーリー、パットンの『新版ハーバード流交渉術』では、実際の交渉の場で現われ、Win-Winに持って行けるような利害の相違の例として、

●形式 vs. 実質
●経済的側面 vs. 政治的側面
●対内的側面 vs. 対外的側面
●象徴的側面 vs. 実際的側面

などが挙げられています、それぞれ実際のビジネスシーンでは以下のような例が該当するでしょう。

●「形式 vs. 実質」……共同で作った著作物について、一方は「著者」として名前が出ることを望み、もう一方は印税収入の確保に関心がある場合
●「経済 vs. 政治」……種類株式で、優先株などは投資家の経済的側面を重視する意向に合わせ、黄金株(買収関連で拒否権を行使できる株式)などは経営への関与度の強さ(政治的側面)を重視する意向に合わせたものと言えるでしょう
●「対内 vs. 対外」……ある組織で誰がリーダー的役職になるか争いになったとき、対内重視の役と対外重視の役に分けて就くことがしばしばあります
●「象徴 vs. 実際」……リ-ダーを巡る争いで、一方は組織のまとめ役的に内外問わずセレモニー等で表面に出、もう一方は実務の意思決定を主にやるといった分担になることもしばしばあります

(本項担当執筆者:書籍・GLOBIS知見録編集部 研究員 大島一樹)
 

 

『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本』
グロービス経営大学院  (著)
1600円(税込1728円)

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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