G1U-30フォーラム2016
第2部全体会「日本・世界を動かすリーダーになるためには Ⅱ ~日本を代表するリーダーたちの挑戦~」
リーダーの在り方はひと括りにはできない。一方で、根底で通じる普遍性も垣間見える。日本を代表するリーダーたちは、どのようなリーダー像を描き、どのような行動を通じて周囲を動かしてきたのか。動き(ダイナミクス)に生命の本質を見出す研究を通じて「生命とは何か」を問い、新たな定義を求めてサイエンスとアートの架け橋となり人々を惹きつける池上高志氏。28歳での衆議院初当選から7年、自民党農林部会長として鋭い言葉と現場からの声を武器に「儲かる農業」の実現に向け“聖域なき農政改革”に挑む小泉進次郎氏。独立直後のエリトリアで人権活動家としての使命を見出し、“巻き込む力”によって周囲を動かし、世論を動かして世界各国の政府へ政策提言・ロビイングを行うHRW日本代表の土井香苗氏。自身の挑戦とともに活躍の場を広げる3名のリーダーの生きざまを、星野佳路氏が聞く。(肩書きは2016年11月5日登壇当時のもの)
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星野佳路氏:最初に僕が皆さんに質問を投げかけたいのですけども、それぞれの分野で活躍してらっしゃるときに、または今のポジションにつくまでの間に、恐らくいろんな先人の方々で素晴らしい方々いらっしゃったと思うんですよね。こういう「リーダーシップ」のあり方ってすごいなとか、またリーダーシップってこういうことをいうんだっていうふうに思った瞬間がそれぞれあると思うんですけど、それをちょっとシェアしていただいて、同時にどんなことをしてるときにどうだったなんてこともお話しいただきたいと思っているんですけども、じゃあまず土井さんから。
「使命感」と「仲間」が自分のリーダーシップを支えてくれる
土井香苗氏:ヒューマン・ライツ・ウォッチという国際的な人権のNGOの日本代表をしております土井といいます。ヒューマン・ライツ・ウォッチは世界90か国で活躍しておりまして、本当にさまざまなことをやっているのですが、今日は「リーダーシップ」ですね。1人写真を持ってきました。これ、八尋弁護士ですね。方九州の弁護士さんなんですが、実はハンセン病という病気あります。ハンセン病の被害者の人たちが起こした全国裁判っていうのがあるんですが、それの中心にいた弁護士さんですね。
これは実は全国で被害者たちが立ち上がって裁判起こして、この八尋先生が中心になって起こしている福岡で1番最初の判決が出まして、その人たち判決で勝ってすぐ東京に上ってきて、そこにいたのは小泉首相だったんですけれども、小泉首相が控訴断念っていうのを発表しました。ハンセン病の人たちを必要なく収容所に閉じ込めていたという政策の誤りを認めさせ、かつそれで法律もつくって被害の回復っていうのをやったっていうのがあるんですけれども、私、実は前職は弁護士です。八尋先生に限らないんですけれども、こういうハンセン病の被害者の人たち、ハンセン病で収容所に入れられていた人たちを、まずは八尋先生たちは掘り起こすっていうところから始めるんです。
こういう被害者たちは声がない。そういう問題があることさえ世の中には知られてないんですね。これ1人1人に会いに行って、問題を掘り起こして、その人たちの被害者の声を聞いて、何をしなくちゃいけないか弁護士だから分かります。そこから始めて、裁判も起こす、メディアも動かす、政治も動かす。本当に掘り起こしから始めて制度まで変えちゃうという社会改革のやり方、そういったものをハンセン病の裁判では見せてもらったんですが、弁護士の世界では別にハンセン病に限ったことではありませんので、肝炎の訴訟もありました。薬害エイズの訴訟もありました。原爆症の訴訟とかいろいろあるんですけど、訴訟そのものが目的なんじゃなくて制度を変えることが目的なんですね。そのために訴訟も使うんですけれども、私が今やっていますNGO活動、日本での活動もそうなんです。世界での活動もそうなんですが、裁判を使えることと使えないこととありますけれども、いずれにしても完全に見捨てられている被害者たちの声というのを拾い上げて制度まで変えるっていうのがリーダーシップのあり方ですね。それ八尋先生が1つ体現されたと思います。
星野氏:これは使命感からくるんですか。
土井氏:使命感以外、誰も強制しないし、やって特に個人的な得はありません。
星野氏:ビジネスの世界からなんで悪いですが、そんな儲かる話じゃないですよね。
土井氏:逆にお金がかかりますね。いろいろ活動するのに。
星野氏:そうするとそれはやっぱり使命感からきていて、それを周りに世の中をこう変えようっていうようなことをしつこく言っていくっていう、この原動力っていうのはどこから来るんですかね。
土井氏:ひたすら使命感。はい。使命感のかたまりであることが必要なんですけど、プラスただどんな人間も恐らく使命感だけで、周りははっきり言って四面楚歌なんで。というか無関心のかたまりなんでそれだと心が普通の人間は折れるんですよね。なので必要なのは仲間ですね。
星野氏:仲間。なるほど。
土井氏:はい。「使命感」と「仲間」がいれば前に進んでいけると思います。
星野氏:なるほど。使命感と仲間が自分のリーダーシップを支えてくれるっていうようなお話。じゃあその政治の世界で小泉さん、すごいリーダーシップを見た経験とか感じた瞬間とか。
「吉田松陰」と「坂本龍馬」のリーダーシップの違い
小泉進次郎氏:今まで歴史の中を見たときに、この人にとってリーダーにとって大切なことだなっていうのはいくつかあるんですけど、例えばまず日本のことから振り返ると、僕はよく吉田松陰と坂本龍馬の違いっていうのを言うんですね。それはどういうことかというと、僕は地元が横須賀なんで、横須賀は黒船が来てそこに開国が始まった街ですけど、黒船が来たときに、どう反応したかっていうのが対照的なのが吉田松陰と坂本龍馬なんです。坂本龍馬はどう反応したかっていうと、「黒船が来た。変わらなきゃいけない。日本を変えるんだ」ですよね。これ坂本龍馬なんです。
吉田松陰。「黒船に乗せてって」って言ったんです。これすごいことだと思いませんか。命懸けですよ。それ幕府にばれたら打ち首ですから。密航して小さな小舟で黒船まで行って「乗せてくれ」って言って断られたんですよ。だけどここでこの2人の黒船が来たときのリアクションの違い。そこに坂本龍馬の発揮したリーダーシップのスタイルと「これで変えるんだ」っていうところと、吉田松陰が「こんなものがあるのか」と。「この船を送ってきたその先に何があるのかを見たい」という強烈な好奇心。
星野氏:どっちがいいっていうわけではないってことですよね。
小泉氏:どっちがいいじゃないです。ただその1つのことがらが起きたときにどうリアクションをするかっていうところで、かなりリーダーシップの分岐点があるなっていうふうに思います。これが1つです。
チャーチルに学ぶ、リーダーは「楽観的」であれ
もう1つは、僕はリーダーっていうのは「楽観的」じゃないといけないと思っているんです。その楽観的じゃなきゃいけないっていうところを体現したのはチャーチルだと思いますね、イギリスの。あのチャーチルは、世界の誰もがヒトラーが勝つと、これでイギリスは落ちるとそういったときにどんな言葉を発したかというと「今が最良のときである」って言葉を言ったんですね。イギリスが後世から振り返ったときに、あのときに立ち向かったイギリスの国民の力、あのときが最良のときであるときっと振り返られるであろうという、世界がもうイギリスは終わるというときに、今が最良だといえるこのリーダーとしての楽観主義、オプティミズムですよね。これを絶望の中でも光を見せたっていうところが、僕はリーダーとしてすごく大切なことをチャーチルは教えてくれているなと思っています。
もう1つが僕はリーダーにとって大切だと思うとこの1つが「決断の鮮度を上げる」こと。リーダーっていうのは決断をすることの連続ですから、その決断のときにいかに自分がクリアなマインドで、ストレスができる限り軽い状態で、その決断が間違った決断にならないようにするには、決断をするときの鮮度をいかに保つかってことが大事なんです。これは今日テレビ関係者の皆さんもいるから分かると思いますけど、テレビって出ると消耗するんです。結果として消耗品なんです、出る人は。そのときに消耗させないためにはその適切な頻度とか出る回数とかそういったことが大事で、この決断の鮮度を保つためにいろいろ考えて動いている人はオバマ大統領で。オバマ大統領は何をやっているかというと、自分の着る服のスーツの色を決めています。それはネイビーとグレーしか着ない。それはなぜかといえば、日々大きな決断をしなければいけない中で、小さな決断でストレスがかかることを防ぐためです。今日は何着ようか。このスーツにどのネクタイを合わせようか。そういった組み合わせとかで迷うこと決めるときにエネルギーを使うことは大きな決断をしなきゃいけないエネルギーを削ぐわけですから。そこを考えてやっているっていうのは、僕はすごく学んでるところがありますね。
星野氏:チャーチルの話にちょっと戻りたいんですけど、確かにビジネスの世界でもリーダーっていうのはピンチのときには楽観主義ですね。それで業績がいいときにはむしろ警告を発する側に回れっていうのはよく言われることで、そういう意味ではピンチだったのかもしれないですね。
小泉氏:「何かやりたい」って言ったときに、「ああそれはこういったことがありまして」ってできないことリストっていうのを挙げる人がいっぱいいるわけですね。そういう人たちに勝っていくためには、できないことを考えるよりもどうやったらできるかを考えるっていうこの意識を僕自身も持ってなきゃいけないし、周りにも浸透させなきゃいけないわけです。そのときに必要なのは楽観主義ですね。
多様性の世界では「リーダーシップ」はいらない?
星野氏:おもしろいですね。楽観主義。リーダーは楽観的でなくてはいけない。そうなのかもしれないですね。池上先生。
池上高志氏:正直に言っていいですよね、これ。
星野氏:もちろんです。
池上氏:まず、「リーダーシップ」っていうのはいらないですよね。
星野氏:いらない。おもしろいですね。
池上氏:科学の世界では僕のやっていることは何かっていうと「中心を抜く」ってことが全てなんですよ。だからいかに中心を抜くか。
星野氏:中心を抜く?
池上氏:だからドーナツをつくらなくちゃいけなくて、そいつがすげえ重要で、今までの社会の進化っていうのはとにかく技術があったから変わってきたわけですよ。例えばインターネットがあったりナビゲーションがあったり携帯があったり、すごく変わったじゃないですか。あれは何をみんな動いているかっていうと、あるいはブロックチェーンができて動いていることっていうのはとにかく中心をなくして、リーダーとかこいつだから信用できるっていうことがない世界をつくろうとして頑張っているんです。それが多様性の原理であって、多様性の原理がこれから出てきてブロックチェーンに支えられるような世界っていうのは何を目指しているかっていうと、こいつだから信用できるっていうことではなく、世界が計算とかそういうことで成り立ってるからこそ信頼できて、だから多様性が担保できるんだっていう世界なんですよ。
俺が見てきたヨーロッパの世界っていうのはもう多様性がそこにあるわけですよ。地下鉄乗ったら分かるようにありとあらゆる人種がいて、そのときに誰かが信用できるからこいつに頼っていこうとかそういうことじゃないんですよ。全体の多様な、だから日本だからこそリーダーシップが言われるっていうのは僕のすごいナイーブな印象で、そうじゃなくて、まず多様性の原理があってそこからどうするかってことを考えたい。そのことが僕のやってる自己組織化とか、つまりそいつのキャラクターじゃなくて全体のシステムとして立ち上がる何かってことを目指して考えていこうっていうのが僕の考えているリーダーシップ。
星野氏:つまり仕組みとかまたはそのシステムが自己制御していくっていうようなそんな概念?
池上氏:弱点をつくっちゃうじゃないですか。真ん中があると。そいつがリーダーなんだから、そいつがいろいろ決めているからそいつってことですよね。そうじゃなくて、ドーナツ型でネットワークで今見たようにトランザクションをブロックチェーンにしたら、信用とかないわけですよ。その代わりにシステムそのものの中に信用が埋め込まれているわけだから、だからこそ個人が立てるわけじゃないですか。個人のこいつはすごくえらいし信用できるからみたいなそういうことじゃなくて、それをつぶせるかっていうことが科学の進歩だし技術の進歩なんですよ。だから一見無関係に見えて、そういった政治の世界とか経済と全然関係ないナードな人たちがつくっている技術っていうのはものすごい関係があって。多分僕の見ているとこでは世界はそっちの方向へ向かっているから、いかにしてリーダーらしさがなくなってくかっていうとこが1番ポイントじゃないかと思いますけど。
星野氏:なるほどね。先生がいるんで、もうこのセッションは今大混乱に陥って。誰ですか池上先生を呼んだのはこのセッションに、っていうふうに思っているけど。
小泉氏:すごい卓袱台返しが返ってきましたね。リーダーシップを考える会でリーダーシップはいらないっていう。
星野氏:さっきのチャーチルの話に戻りたいんですけど、日本っていうのはそういう意味では今どっちかっていうと絶好調っていうよりも、これからどうなるんだろうっていう不安を持っている人のほうが圧倒的に多いんだと思うんですよね。この不安を持っている日本をどうしていくかってことを考えたときに、今こそいいリーダーですね。逆にいうといいリーダーを選ばないと、結構やばいんじゃないかっていうような危機感さえ持っているんですけど、そこは政治の世界だとそういう失敗は許されないところに日本は来ているなっていう感覚はあったり、次のリーダーを選ぶときに考え方みたいなのは決まってきていたりするんですか。
小泉氏:さっき星野さんの話ですごく大切だなと思ったことの1つに、「事実っていうものをしっかり捉えて伝えていく」っていうところは、すごく重要な時期にきてるなと思っています。最近僕よく言うのは、もちろん日本の最大の課題は少子化そして高齢化人口減少、これは構造的な最大の課題なんですけど、だけど仮に今日から明日から人口が維持できるっていう出生率2.07のレベルまで、今の1.3か1.4ぐらいから跳ね上がったとしても日本の人口は間違いなく減るんです。少なくとも1億人には減るんです。だから2,000万人は減るんですよね。それが分かっているとしたら、もう減ること嘆くのやめませんかって僕は言ってるわけです。1億2,000万人イコール日本っていうのが、ものすごく頭のなかに当たり前に思っているけども、1億2,000万人将来のことを悲観する国よりも、未来に対して楽観と自信を持っている6,000万人の国のほうが僕は強いと思ってますから。そうすると今この日本に必要なことは、何度も言いますけど、人口が減っても大丈夫だという楽観だと思うんです。その楽観を生むためには、減ることは不可避だということの事実をちゃんと受け止めた上で、じゃあそれでも豊かさをこれから次の世代にも繋いでいくためには何ができるのかっていう、できないことじゃなくてできることを考える、これがこれからの政治に問われていることじゃないかなと僕は思っています。
「リーダーシップスキル」は訓練可能か?
星野氏:なるほど。ちょっと次の話題にいきたいと思っているのですけど、今日は後半でお話ししたかったのは、リーダーシップスキルっていうのを皆さんいろんなとこで見てきたり、必要かどうかっていうのは別として、「あいつリーダーシップあるよな」っていうふうに思っている人もいると思うんですよね。それってここにいる会場の人たちは、少なくとも堀さんや僕は次世代のリーダーになってほしいと思っているし、こういう人たちが日本の将来を背負っているんだと思っているんですけど、リーダーシップスキルっていうのは訓練可能かどうかっていうことをちょっと皆さんにご意見いただきたいんですね。
つまり「あいつってリーダーシップあるよな」みたいに、もともとその人にくっついている性格、生まれ持った性格のように捉えられていることもよくあるんですよね。そこがすごく大きな要素なのか、それとも若いうちに何らかの努力をしたりすることによって、リーダーシップというのが自分に身につくもんなのかどうかっていうのは、土井さんどうですか。世界を見ていたり周りを見ていたり自分自身を見ていたりして、自分自身の経歴なんかですね。
土井氏:そうですね。生まれ持った部分っていうのは確かに大きいのかも。でも私リーダーシップを身につけようとか思ったこと実はなく、それを学ぼうと思ったことも実はなく、それについて研究したことももちろん一切ないので、かなり感覚で言うんですけど、私は自分のことをよく「偶然できてしまったリーダー」とか言うんですけど、要するに問題があるもんですから、さっきはハンセン病の話したんですけど、私は実はバックグラウンドは難民の問題なんですが、日本に逃げてきた世界の難民、いずれにしてもああいうものを見てたり聞いたり、あるいは自分で会って話したりしたらどうにかしなきゃいけないと思いますよね。私からしたらどっかのリーダーがいて解決してくださるのであれば、別に私がわざわざしゃしゃり出ていく必要は全くないんですけど、やるしかないということでやり始めたということであるのです。ということで偶然が生み出したリーダーなんですけど、やってみたら結構できたっていうところがあって、別にみんなこれぐらいできるのかなとか正直思っていたんですよ。でも最近いろんな人にちょっとリーダーシップ持ってやってみてってお願いすると、すんごい優秀なのにどうしてもできない人とかいるんですよね。というのを見てこれは1つのスキルであって、私がIT苦手とか、そういうのと同じようにリーダーシップ苦手っていう人がいるんだなと思いまして、これ全体的な能力とあまり関係ない、その人のやっぱり才能という部分はあるんでしょうね。と思いますが、しかしもちろん学んでいくというかブラッシュアップすることはできますよね。私もちっちゃなプロジェクトから始めて20年間も毎日現場でリーダーシップを発揮、ある意味させられてるもんですから、だんだんだんだんノウハウもついてきたっていうところはありますね。楽観力なんて本当そうです。
星野氏:なるほどね。そうすると意外にじゃああんまりスキルとして意識して勉強しようでもなかったんですね。
土井氏:なかったです。だけど小泉さんのおっしゃっていることにはものすごい共感して、特にその楽観力というか希望ですね。やっぱ特に私たちみたいな人権とか社会問題に立ち向かおうっていう人の場合は、誰から見ても「できないよそれは」ってまず言われるんですよ。できる問題なんだったら既に解決しているんですね。解決してないのはいろんな理由があって解決しない理由はてんこ盛りなんですよ。これを解決しようといったらみんな「いいことだね、だけどできないよ」っていうふうに言われるので、私は絶対できると思うと。まず自分、そう言うことですね。仮にできないかもと思っていても絶対できると思うと絶対言って、人々がこの人ができるって言っている限りはできるだろうと本当に周りの人が信じてくれるまでの希望拡散力って言うんですかね、楽観を拡散する能力っていうのはそれだけじゃ駄目なんですけど、それだけだと裸の王さまになっちゃうので。とはいえ内容はなきゃ駄目だけど、楽観力必要ですね。そういうのってやっぱもちろん訓練できるけど…。
星野氏:もともと土井さんはそもそも楽観的な性格だったってこと?
土井氏:私は全然楽観的じゃありません。だから試験勉強とかもすごい心配になっていっぱいやるタイプ。よって某東大に入れたんですけども。
星野氏:心配性の人ってのはそうかもしれないですね。
リーダーに必要なのは「言葉の力」
小泉氏:そこは僕も同じなのは、楽観的であることと最悪のことに備えるっていうのは、セットだと思うんです。最悪に備え最善を尽くすっていうのがやっぱり必要なことで。だけどその中で、リーダーとして間違いなく必要なことは「言葉の力」ですよね。自分の言いたいこと、伝えたいこと、ビジョンを、どうやって的確にそして簡潔に伝えきることができるか。その中において必要な1つは、これをやらなかったら駄目になるよっていうふうに、危機をあおって人を動かすのではなくて、こうすればもっとよくなるよっていうふうに未来の希望を語ってく。このロジックを自分の中で常に意識しなければいけなくて、それが多分楽観力だと思うんです。その中でいうと、今の星野さんの質問でいうと、リーダーシップって訓練可能なのかっていうと、言葉の力においては訓練可能な範囲があると思います。
例えば、僕自身、初当選28歳でしたけど、そのときもう本当に世襲の批判もすごくて、自民党みんな大嫌い。民主党の政権交代のときが初選挙ですから。そのとき本当に立ち止まってもらえない、名刺ももらってもらえない、破かれる、肩はどつかれ足踏まれ、世襲反対と言ってペットボトルは投げられる。演説カーから手振ってて、こっちに寄ってきてくれた人が、ああ握手してくれるのかなと思ったら唾はかれるとか。そういった世界でいた中で本当に悩んだのは、どうしたら聞いてもらえるんだろうかと思ったんですね。それでやったことは自分の演説を全部録音することだったんです。それでポケットにICレコーダー入れて自分の演説を録って、それで夜寝るときにベッドの中に入ってイヤホンで聞いてたら、驚くほどよく眠れるんですよ。ええ。
星野氏:おもしろいですね。
小泉氏:つまらないから。それで聞いてみて気づくんです。自分の声って自分じゃ分かんないってことに。そして自分の話し方って自分が思っている以上に早口でリズムがなくて1文が長い。これじゃあ聞かないなと思ったんです。そこに気づいてから自分でものすごく意識が変わったんで、ぜひ皆さんにはどんなスピーチの本とかYouTubeとかそういったものを見たり読んだりするよりも、自分の話し方を見聞きするのが1番の勉強だと思ったほうがいいです。その中では意識してできることは、言葉と言葉のあいだで迷ったときに「あ~」とか「え~」とか「う~」とか言わないことです。
星野氏:なるほど。
小泉氏:それは訓練すれば絶対できる。僕もそれは最初怖いから、言葉選びで迷ったときに言葉と言葉のあいだに「あの~」とか「え~」って。これが言い過ぎる人は言葉よりも「え~」とか「あ~」を何回言うかなってことを意識しちゃうんですよ、聞く側って。こういう部分は間違いなく訓練すればできます。ただとっさのときにどういうアドリブをするかとか、その場の雰囲気によって話の始めにユーモアから入ったほうがいいか、それとも最初からど真ん中の直球投げないとこの場は持たないなっていう空気を読むとか、そういったところっていうのは多分いろいろ教えてもできないところっていうのもあるんだろうなっていうのは思いますね。
1番パワフルなメッセージとは、最もシンプルなメッセージ
星野氏:だけどすごく大事なコミュニケーションの部分に関しては、僕もかなり訓練可能な部分だと思っていて。世界にはいろんな演説をリスト化して聞いてそこから学ぼう、みたいなこともやっている授業もあるぐらいですからね。私も基本的にはリーダーシップはスキルの部分だと、相当カバーできるっていうふうに思っているので、ぜひやっていただきたいなと思っています。
先生ちょっとリーダーシップっていうのをあんまり大きく捉えるのをやめまして。先生授業やっていますよね。授業やっていると人に影響を与えなきゃいけないじゃないですか。教えたりなんかしてその人が変わっていくとかって。その程度のリーダーシップと今日は思っていただきたいと思っていまして。
池上氏:若いころは海外の国際会議に行ってもなかなか聞いてくれないじゃないですか。誰も知らないし。で、僕は別にそういった意味でスキルを自分で身につけたことはないけど、言ってるうちにだんだん聞いてくれるようになるわけですよ。それでうまい具合になったら、じゃあとにかく高志の話聞いてみようっていって、みんながこっち向くようになるじゃないですか。政治の世界だとそういったスキルが重要だと思うんですけど、性善説に立っているかもしれないけど、いいこと言っていればそれはその分野にコミュニティに受け入れられてリーダーになれますね。そうじゃなかったとしたら、政治なんか大したもんじゃないですよね。
小泉氏:いいこと言っても伝えてもらえないんですよ。例えばテレビとかだったら、1分話して5秒か10秒伝えてもらえるかどうかですから。
池上氏:メディアの問題だってことですよね。
小泉氏:そう。だけどメディアの問題だっていったらこの世界は戦っていけないんで。そういった中でもちゃんと言いたいことが伝わるようにするには、1分話すんじゃなくて、5秒の中で自分がどう切られても伝わってくれるっていうところを話す能力を持たないとやっていけないんです。だからいいこと言っていれば伝わるっていうのは、1つは政治の世界では通用しない。
1番パワフルなメッセージっていうのは、最もシンプルなメッセージですよ。そこの力っていうのを考えないといけなくて、ときにそれが間違っちゃうと専門性ある難しい言葉を使っていると頭よく聞こえるから、そっちに行っちゃう人っているじゃないですか。それは政治家としては本当に気をつけなきゃいけないことで、誰もが分かる、畑で働いて畑仕事をしながらラジオを聞いているおじいちゃんやおばあちゃんから、トラックで運転しているドライバーさんから、こういう場に来るような皆さんまで含めて1発でみんながどういう意味ってことを考えるまもなくスッと入ってくる言葉は何かっていうのを考え続ける。そこっていうのが僕は大事だと思っているんで。
池上氏:いいたいことが常にシンプルな言葉で表されて、それが回るっていうんだったらすごく理想的だけど、そうじゃないですよね。
小泉氏:まず聞こうと思ってもらえるきっかけをつくんなきゃいけないわけです。それでそのきっかけをつくるためには、最初に分かりやすい言葉をどうやってつかえるかっていうこともあって、その言葉を使うと賛否両論が生まれるときがあるんです。だけど賛否両論が生まれなかったら関心も持ってもらえないから、さっき土井さんが人権の問題を含めて戦っているのは無関心だといったけども、そこは政治も同じで1回違和感であってもそこを違和感として捉えてもらえなかったら、話を聞いてくれるところまでいかないんですよ。
星野氏:やっぱり小泉さんが言っているのはマーケティング上のコミュニケーション、広告的なキャッチーなコピーみたいなことをおっしゃっているんだと思うんですけど、確かにビジネスの世界のリーダーシップ、リーダーシップっていう正しい表現じゃないのかもしれないですけど、分かりやすさっていうのは問われますよね。
僕は社員に対して意外に伝わる、回るっていう表現でいうと、伝わるものは聞きたいことを話してあげるとすぐにスッと入るじゃないですか。だから聞きたいことを話しているときが、1番評判よかったりするんですよね。そこら辺もスキルの1つだなと思っていてあんまり本質的なことじゃないのかもしれないんだけど、やっぱ人間は自分が信じているものを聞くと安心して賛成しやすいですからね。そこから入っていってちょっと違う本当に伝えなきゃいけないことを伝えていくっていう、信頼してもらってから伝えるなんてのが大事なんじゃないかなと思っていますけど、お2人は全然違いますね。生きている世界が。だって5秒で言わなきゃいけなくて誰に対しても分かる言葉じゃなきゃいけない人と、そんなこと全然気にしなくてよくて、誰にも分かんない言葉で言っていいっていうか、むしろすごく長くて難しくても分かる人がやっぱり世界的には支持してくれるって。
池上氏:俺は100年先を考えているからですよ。
小泉氏:僕も先のこと考えてないわけじゃないですよ。
星野氏:今度の選挙のことを考えている人とそれから100年先のことを考えている人。
小泉氏:そうじゃない、そうじゃない。ちゃんとその次の時代を考えています。
星野氏:違いますか。次の時代ですね。すいません。
池上氏:でも100年先の例えばジョン・ケージっていう音楽家がいて、謎の音をつくったりするんです。ピアノの上にものを置いてピアノを弾いたりして。新聞記者が来て「おまえこんなことやっててもなんにもなんないし、音楽でもなんでもない。どうすんだ」って言ったら、「俺はとにかく100年後にカーネギーホールを満員にすることが目的だから、関係ねえんだよ」って言ったら、20年後にはカーネギーホールはちゃんと満員になっていた。見ているのはそっちの方向じゃないですか。
土井氏:やっぱり小泉さんは100年後を考えている政治家だと思いますね。でも政治家全員考えているわけじゃないですよね、おっしゃる通り。考えたいけど4年後以上は考えられない。当選するか本当にそこにかけてかなきゃいけない人もいるし、当選することは可能性としては相当あっても考えない人もいるし、とは思います。
星野氏:そうですね。
小泉氏:生き抜くための、例えば僕らが生きている世界っていうのはジャングルの中に生きているようなもんですから。
星野氏:ジャングル。
小泉氏:そうなんですよ。まさに生き抜くサバイバル。どの言葉を選んだかによって全部を失う可能性がある世界で生きていて、なおかつその中で背負っているものは国民の生命や財産であり文化でもあるわけです。そのときに、いいこと言えば伝わるって言うんじゃなくて、伝わるようにするにはどうすればいいのかっていうことを徹底的に考えないと、1時間講演するところを全部テレビが撮っていたって、どこを使うかってことを考えて撮られているわけですから。この中での発信の仕方はおのずと違うんです。
池上氏:分かりました。僕は多分違うところがあるとすると、結構、国民とか賢いと思っているんですよ。だからそこまでアホじゃなくて、いろんな技術も持っているし、なかなか自分で分かる力も持ってるから、僕はどちらかというと政治家の労働を軽くして、もっとすげえことにその頭を使ったらいいんじゃないかと思ってて。今言ったことは確かにスキルとしては重要だけど、結構国民のレベルも賢くなっているし、みんなもっと高いことも結構分かると思うんですよ。だからいかに自分の労働を軽くして、もっとすげえことを考えるかって本人も小泉さんだったら絶対やってもらったほうがいいんじゃないかと僕は思うんだけど。
使命感はサイレントな共感を生む
星野氏:今日僕はちょっとこのお3方はいい事例だと思うんですけど、土井さんのやってらっしゃる使命感っていうんですかね、使命感はやっぱり共感を得やすいですよね。
土井氏:でも使命感は今、話を聞いていて思ったんですよ。使命感っていうのはサイレントな共感は生むんですよ。けれども一方で相手にしなきゃいけないのは、私の場合は政治なんですよ。やっぱ制度を変えないと社会問題とか人権問題っていうのは解決しないんですね。でもまさに小泉さんがおっしゃったように、私はあなたの言っていることをなんにせよ5秒で話さないといけないんです。いかに素晴らしいことを言ってることが分かっても、国民に5秒で説明できて共感を得られるような代物じゃないと、私は解決に力を貸すことが原則はできないんですというのが政治家の立場なんでね。そうするとLGBT、子どもの虐待とかどれもこれも5秒じゃ伝わらないようなイシューばっかしなんですよね。ということで非常に共感は生むんだけど、果たしてそれを日本の政治システムに載せていくのは簡単じゃない。簡単にいえば民主主義なんですよ。多数決。
星野氏:同時に関心がないことが多いから関心を高めてかなきゃいけないんですよね。
土井氏:それで人が聞きたいことを聞くとみんなうれしくなるって言って、みんな自分のことについて語ってもらえれば、共感をすぐするんですよね。だから要するに多数決なんで、多数の人が問題にしていることは当たり前なんですが非常に政治の訴状に載りやすい。でも人権の問題っていうのは多くの場合は少数者の人の問題だから今まで放置されてきたので、そこが非常に構造的に私の場合は難しい。だからリーダーシップを発揮して解決っていうそういう簡単なレシピはないんですけど、さっき言った楽観力をもって、あと私の場合はやっぱ人々を巻き込むことがすごく重要なんですね。
星野氏:なるほど、さっきの仲間ってとこですね。
土井氏:そうですね。政治の話をさっきから聞いていると政治っていうのはいろんな既得権益者がいて、もう既にがんじがらめ。そこをどうやって突破してくかみたいなことかなと。私の場合は荒野。何もない。まずは人々にこの問題の存在を認識してもらって、じゃあ一緒に解決しようという人をまずは募らなきゃいけない。ちょっとは抵抗勢力もいるんですよ、やっていくと。でもそんながんじがらめの抵抗勢力じゃないです。そこをどう乗り越えてくか、いずれにしても楽観力を持って人を巻き込めるか。そこが使命感をどうやってマテリアライズするかっていうところのポイントかなというふうに思います。
小泉氏:さっきの池上さんが100年後って話をしていましたけど、僕らももちろん考えるんです。2100年の日本はどうなっているのかって。そうすると100年後の日本を考えましょうっていう言葉を発するか、それとも今2016年で、今年生まれた女の子の赤ちゃんが今の平均寿命通り生きると2100年まで生きます。その翌年からが22世紀です。つまり100年後の世界を考えるということは今年生まれた赤ちゃんが、どんな人生一生を送るのかを考えることなんですって言葉に変えてくっていう作業なんです。だから決してこの100年後っていう言葉を使わないで100年後のことを目の前のところから考えてもらうきっかけや言葉を使ってくっていうところに僕らは考える必要性があるので、そこだけ誤解なく分かっていただきたい。
星野氏:ありがとうございます。だいぶ時間がたってきて残り16分ぐらいなので、ぜひ会場から質問を。
~質疑応答~
質問者A:やっぱり僕はリーダーシップって必要だと思っていて、マーチン・ルーサー・キングって必要なかったかとか思うとやっぱ必要と思うし、ガンジーだって必要だったと思うし。だからリーダーシップが必要ないってことじゃなくて、やっぱりもっと本質に向き合うことが大切だってことを問題提起されたかったんじゃないのかなと思っていて。リーダーシップって必要だと思うんですけど、絶対。
池上氏:僕はでも、まずリーダーシップを個人のプロパティに還元し過ぎなんじゃないかと思って。だって生態系とかでキーストーンってあるんだけど、ある海岸でヒトデがあまり数いないんだけど、ヒトデをとっちゃったら途端に全体の生態系が半減しちゃったんですよ。だから何気ないように見えても実は全部で重要なことがあって、でもそいつは関係ないしドミナントな生物がいるからリーダーシップ関係ないかっていったら、ヒトデがいるからそいつがリーダーになれてるわけですよね。世界は要するに関係性の中で成り立っていて。
星野氏:そうですね。個人じゃないかもしれないですね。周りがそいつをリーダーにして。
土井氏:ちょっと違う観点かもしれないですけど、私、人権をやっていると、独裁者っていうのは人権侵害いっぱいするんで。独裁を倒すっていうのはちょっと言い方がよくないんですけれども、独裁をどうやって独裁じゃなくするかっていうのも非常に大きなテーマなんですけど、独裁者はものすごいリーダーシップあるんですよね。いろんな意味で。なのでリーダーシップがいいとは限らないと思います。非常に悪いリーダーシップがものすごく多いと思うので、やっぱりここで提起されているのは日本・世界を動かすよいリーダーというか、よい日本よい世界を動かすリーダーはということで、よいリーダーシップに限って恐らく議論しているんだろうなと。悪いリーダーシップだったらないほうがいいですよ、それは。
星野氏:そうですね。どんどん会場の質問に行きましょう。
質問者B:私、先ほどテレビで発信するためにはっていうお話を聞いて、本当にその通りだなと思ったんですけども、例えば芸人だったら、自分が発信してそれにおもしろかったら人が食いついてくるんですけども、小泉さんにお伺いしたいんですけども、政治ってそうじゃないと思うんですよ。私、小泉さんものすごい賢い方だなと思うんですけども、テレビで拝見していて、あえてばかなふりをされているんじゃないかなと。
星野氏:あえてじゃないんです。
質問者B:やっぱり数の論理じゃないですか。数の論理の中で自民党の中とかで、ばかなふりをしてのらりくらりしたりとか、そういうことをしないと私、政治って昇り詰められないと思うんですよ。ばかなふりになることを私ちょっと賢いのでできないので。今ちょっと笑っていただきたい。
小泉氏:おもしろいね。政治の世界で今の質問すごくいい質問なの。政治家の中でこういう言葉があります。「あいつはばかになれないから駄目だな」。これ結構みそでね、理屈を超えてばかになることが大切なことがいっぱいあるんです。もしかしたらそういうところを感じ取ってくれたのか、本当に僕がばかなのかよくわからない。そこはすごい大切なとこです。
星野氏:意識しているところはあるんですか。少し自分を本当の自分じゃない自分を表現して。
小泉氏:まずそのリーダーっていうのは置かれている環境を自分で認識しなきゃいけないですよね。僕の場合、置かれている環境は、35歳で今この農業林業の政策の責任ある立場にいる中で、仮に「俺について来い」っていうリーダーシップをこぶしを振り上げて旗持って言ったときに60歳、70歳の今まで農業林業だけを専門にしてきたベテランの先生方が付いてきます?
質問者B:いや、こないです。
小泉氏:こないですよね。そうするとリーダーシップって「俺についてこい」じゃないんですよ。「自分には分からないことがいっぱいあって教えてください」なんですよ。それは僕の言葉からすると羊飼い型リーダーシップだと思うんだけど、「こっちついてこいよ」じゃなくて「はいこっちだよ、こっちだよ、こっちですよ」っていうふうに1番後ろから、あまり引っ張らないけど、だけど僕が行きたいとこってこっちなんですということは、1番後ろからいくような。これはこの農林部会という立場になって自分がこのジャングルで生きてくためには、このあり方しかないと思ったんですよ。だからこれは何がいいかじゃなくて、生きるためには何の手段をとるべきかというサバイバルです。
質問者C:ビジネスの世界も政治の世界も栄枯盛衰あると思うんですけども、素晴らしいかに見えたリーダーが道を誤るときとか大きく失敗しちゃうのはどういうときかと。それを避けるために何ができるかっていうのをぜひご意見いただきたいと思います。
質問者D:小泉さんに聞きたいんですけど、先ほど星野社長がおっしゃったように、自分の考えていることとか迷ってることを出すっていうのはすごい重要なことだと私も思うんですけど、とはいっても土井さんや小泉さんがおっしゃったように、危機的な状況になったときに楽観的になれるっていう力もすごい重要だと思うんです。ただ頭の中にある9割ぐらいはこれやばいなって絶対気づいていることなんですけど、でも1割の希望を考えてそれを発信するときと、その絶妙なバランスがすごい難しいなと。私自身社長をやってて思っていまして、そのバランスがどのように考えられてるのか教えていただきたいなと思って。
小泉氏:頭の中に戦国時代を思い浮かべると、1つの言葉の間違いでもう切られて死んでるわけですよ。だけど今の世界で政治家だって1つの言葉を間違えて、いきなり刀で首切られないですよね。その時代を思えば戦国時代も政治があって、政治のない時代はないんですよ。だけど今の政治とその当時の政治を考えたら、自分が置かれている立場なんて大したことがないっていうぐらいどこかで思ってます。それがやっぱり楽観を生む1つの力になるかなと。あとは?
星野氏:失敗を防ぐ方法でしたっけ?
小泉氏:失敗は防げません。失敗は防げないけども、致命傷になるかどうかだと思います。傷は負うし、骨は切られるときもあるけども、心臓まで突かせない。そこの部分っていうのが多分発想としては必要だなと。
星野氏:いつもやっぱ慎重ですか、そういう意味では。
小泉氏:だけどそれも慎重かつ大胆にっていうのはやっぱり必要なんですけど。
星野氏:どっかで大胆じゃなきゃいけない。
小泉氏:いけない。ここは絶対譲らないってものはないといけなくて。それはやっぱり最後の答えだと思いますけど、結局今やっていることは職業なのか生き方なのかどっちかだと思うんですよ。僕は自分の中で政治の道を選ぶっていうことは、職業の選択ではなくて生き方を選んでいると思うので。だからそこに土日のオフとかそういったことがないわけです。そうなることが結果としてどんなことだって負えるっていう覚悟が決まるっていうふうに思います。
星野氏:土井さん、さっきの楽観主義とそれから自分の悩みを率直に伝えたりとかっていうののバランスってどうですか。
土井氏:私はやはり悩みはなるだけ言わないです。
星野氏:言わない。なるほど。
土井氏:私のやっている社会改革のエリアは、とにかくできないことができないよ、って人々は思ってますから、私はどうやって人々ができるととにかく思うか。場合によっちゃ勘違いかもしれないっていうかほとんど勘違いのほうが多いかもしれない。ほとんどは変えられないんですよ、短い時間では。ただ長いスパンで見れば必ず変えたほうがいいことなので間違ったことじゃない。なので失敗も今1年後には実現しないかもっていう失敗であって、100年後には実現する。例えばさっき言った独裁とかでも、どんな独裁も1,000年続く独裁ないんですよ。恐らく100年続く独裁もほとんどないという意味でも、なにごとも変わらないように見えても変わります。ということで変わらないねとか私が言った瞬間に、本当に変わるのがまた20年遅れちゃうからやっぱ言わないですね。
星野氏:なるほど。土井さんは今、実は北朝鮮に挑戦しつつありまして、またその話も非常におもしろいんで別な機会に聞いていただきたいと思ってます。では次の最後ぐらいになりますけど、こっち女性1人お願いします。
質問者E:リーダーっていうのは自分と向き合う時間っていうのが自然と増えてしまうんじゃないかと思うんですけど、その自分の心と時間とをうまくコントロールするための工夫とかお心掛けていることがあれば教えてください。
質問者F:池上先生と小泉さんにお聞きしたいんですけど、最初にリーダーの議論が結構白熱したのが、リーダーシップの定義が全然違うからだと思っていて、責任をとるのかとかビジョンを示すのかとか、いろいろリーダーシップで定義が出てると思うので、お2人のリーダーシップの定義を最後に聞きたいと思います。
星野氏:ではまず最初に土井さんから、自分のコントロール、時間のコントロール。
土井氏:私は自分と向き合っていません。さっき小泉さんが言って、なるほどねと思ったんだけど、私も「人権活動家」って「あなた何?」って言われたらそういうふうに言うことにしているんですけど、それはやっぱり職業じゃなくて生き方なんですよね。そうすると、自分と対話する必要があんまりない。生き方、日々生きていることそのものが自分と向き合っているともいう。
星野氏:ナチュラルなリーダーなんですね。ありがとうございました。じゃあ池上さんからいきましょうか。
池上氏:僕はやっぱりその人じゃなくてアイデアをおもしろいから売ろうってことが大事で、その人が前に出ちゃったらリーダーにはなれないんじゃないかと。
星野氏:アイデア。
小泉氏:リーダーシップが求められる立場とそうじゃない立場っていうのがある中で、僕はやっぱりリーダーシップを発揮しなければいけない立場の人に求められることは、さっきの自分とどこまで向き合うかってことと通ずる答えなんですけど、今やっていることが仕事なのかそれとも生き方なのか、どっちで自分が立ってるかってことによると思います。僕は政治の道っていうのは職業ではなくて生き方だと思っているので、そうなると自ずと全てにおいての軸が定まってくるんですよね。
池上氏:それは政治だけじゃないです。僕も自分の生き方だと思ってます。
星野氏:私はちなみに仕事だと思ってますけど。生き方はスキーヤーになろうと思っていますから。最後の質問1つ。
質問者G:皆さんがリーダーシップの定義をお話されたんですけれども、皆さんのリーダーシップの自己認識の始まり、自分がリーダーあるいはリーダーシップとってかないといけないなって思われたきっかけは?
小泉氏:1番思ったのはどんな好きなことが仕事に変わったとしても、自分の好きなことが仕事に変わった瞬間に、そこにストレスや犠牲や悩みって伴うと思うんです。だとしたら最大のストレスや悩み、犠牲であっても自分が前向きに終える分野に行きたいと思った。それは日本のためにという仕事は自分にとってはかけがえのないものであって、そのためだったらどんな犠牲だってそれは誇らしいもんだなと、そこですね。
池上氏:僕はやっぱりやりたいことをやるためには、どうしても必要なときがあると思うんですよ。自分のやりたいことがあるからってことで、別にリーダーじゃなくてやりたいことを通すためにはやっぱり必要。
星野氏:やりたいことを持つってことが大事だってことですかね。
池上氏:自分のやりたいことがあるからそいつを通すためにはやっぱりいろんなことを。
星野氏:影響与えないといけない。
池上氏:いけないじゃないですか。自分から離れて使命感とか言うのは結構嘘っぱちなんじゃないかと実は思っちゃうんですけど。だってやっぱり自分のやりたいことがあって、そいつをやるためにってことのほうが正直じゃないですか。そこから結果として。
星野氏:自分のやりたいことっていうのは自分にとってはメリットになるってことですか。
小泉氏:分かりますよ。僕なんかも日本の力って信じていますから。
星野氏:3人の全く違った生き方の人たちが今日揃っていただいて、結局リーダーシップは何だったのかってことがよく分かんなく終わってしまったんですけども、これで終わりたいと思います。どうも皆さんありがとうございました。