この記事は、特別セミナー「踏み出す勇気を生む『7+1の習慣』~人生を変えた『行動力』の源泉とは~」(2016年9月5日登壇当時のもの)の全文書き起こし記事になります。
<動画の全文書き起こし>
安藤美冬氏:みなさん、こんばんは。私の新刊がみなさんのお手元にあると思いますが、これは後ほどゆっくり読んでいただくとして、今日は40分で「7つの習慣」をざっと説明しながらお話をしていきたいと思います。私は20代、集英社という出版社で働いておりまして、今から6年前に会社を辞めて独立をしました。本当にそれからいろいろあったんですけれども、こうした書籍の執筆の他、連載を5媒体ぐらい今もっている状況で、日本と海外を今はちょうど半分半分です。このお手元にある本は7月27日に発売したのですが、こうした書籍を今は頑張って何冊か書いているような状況です。
社会人3年目の人生のどん底期で出会った『7つの習慣』
そもそも、私がなぜフランクリン・コヴィー・ジャパン公認の『7つの習慣』を書くことになったかというと、私は実は今から10年前、社会人3年目のときに人生のどん底期におりました。当時私は26歳だったんですけれども、それなりの大学を出て、600倍とも1,000倍ともいわれる新卒入社の高い倍率を勝ち抜いて集英社という出版社に入ったんですが、所属して初日、具体的にいうと2日目から上司に目をつけられまして、「おまえはどうして、そう生活態度がだらしないんだ」とか、「スーツを着れないんだ」とか、「服をちゃんと着れないんだ」とか、「時間を守れないんだ」とか、いろんなことを怒られまして、私にとって思い描いていた輝いた社会人生活とはほど遠いような状況でした。結局その当時は広告部というところで1ページ180万円の広告を泥臭く売る仕事をやっていたんですけれども、3年目にして抑うつと診断をされて休職することになります。
実はこの『7つの習慣』に出会ったのはちょうどその頃です。私自身がこの本の冒頭にマイナス習慣として、私の最悪な社会人だったころの習慣を7つ紹介しているんですけれども、その習慣、たとえば具体的にいうと遅寝遅起きとか、タバコとか、あとは活躍してる人を温かい目で見られずつい嫉妬してしまうとか、かといって自己主張をいつもしてるわけではなくて、肝心なときにノーと言えず、どうでもいいときにイエスと言って当たり障りなく振る舞ってしまうこととか、そういった、おそらく誰にでも多少経験があるかもしれないマイナス習慣まみれだった自分が、もしかしたらこの1冊の本によって変わるかもしれないと希望をもったのが今から10年前です。それまではこうした自己啓発系の類いの本は心から嫌いで、成功したアメリカ人が成功した人にだけインタビューした本が東京のOLである普通の私に参考になるわけがないと、一度は書店を素通りしようとしたんですけれども、やっぱりこの本が気になって手に取ったのが最初です。それから、ひとつひとつの習慣を自分なりに実践をしてきて現在に至ります。
1、「マイナス習慣」を見直す
本日のセミナーでやることは3つです。その3つとは、まず「7つの習慣」の実践に入る前にマイナスの習慣を見直していくということです。マイナスの習慣は、今申し上げたように私のほうで7つ参考として挙げています。なぜマイナス習慣が最初に見直しが必要かというと、そもそも私たちは自分のこの肉体と精神という器を持っています。その器がどのように機能するかということには、最近だと「ジョコビッチの生まれ変わる食事」とかで、それこそどんな食事を摂るかとか、どの程度運動しているかとか、あるいは周囲の人間関係とどれだけ健全なつながりをもっているかとか、そうした仕事以外の取り巻く環境についてもビジネス書なんかで言及されるようになりましたけれども、とにもかくにも自分の器をまずいいものにするために、遅寝遅起きを含めたマイナスの習慣を洗い出してみて、それをひとつひとつ潰していこうということです。
2、「7+1の習慣」を学ぶ
そして2つめは、「7+1の習慣」を学ぶということがあります。コヴィー博士の元祖の『7つの習慣』、みなさんも多くは読まれたかなと思うんですけれども、第1の習慣は“Be Proactive(主体的である)”というところから始まります。ただ、今回私はコヴィー博士のオリジナルではなく、あくまで私自身の超訳した「7つの習慣」、もっと言うと日本人の私たちにもっと身近に感じられるような、私自身のアレンジ版の「7つの習慣」をお話をしていきますが、さらにその習慣にプラス1、コヴィー博士が言う「自分のcalling(天職)、天の声を聞いて、心の声に従って天命を生きなさい」という第8の習慣も含めたぜんぶで「8つの習慣」というのをお話していきます。
3、「ベビーステップ」を今日から踏んでいく
最後は「ベビーステップ」です。私も大学で教えていたり、今はオンラインサロンをやったり、全国をまわりながらいろんな人たちの前でお話をさせていただくと、ついつい質問にあがるのはこういったことなんですね。「私も安藤さんのようにフリーランスとして自由に働きたい。できれば今年中に会社を辞めたいんだけれども、そのためにはどのような準備が必要か」っておっしゃる方が多いです。もちろんそうした正しいステップを踏んでいけばフリーになることっていうのは誰でもできるんですけれども、ただ、いきなり大きなステップを踏もうとすると、たとえば「上手くいかないんじゃないか」という抵抗心が湧いてきたり、大きな一歩のために踏まなきゃいけない手順を考えると呆然としてしまったり。なので、大事なのは小さなステップを今日から踏んでいくことです。今日の一歩、明日も一歩、またその次も一歩ということで、ベビーステップを踏んでいくことです。
行動は「点」であり、行動力は「線(連続した点)」である
今回の私の本の中でも「行動」という言葉がキーになります。この行動というのは実は私自身が考えるにはひとつの点でしかありません。たとえば私自身のマイナスの習慣のひとつが「なんでも長続きしない」ということがありました。何かをしなきゃいけないという不安や焦りから行動していたために、あらゆる思いついた行動が長続きしませんでした。たとえば早起き。「4時起きですべてが上手く回り出す」というビジネス書が流行れば4時起きをしてみるんですけれども、その日の会社の会議は居眠りをしてしまって怒らて、逆に評価を下げてしまったとか、あとはスポーツジムが家の近くにできて、「ここだったら自分も運動して、いい体つくれるかもしれない」と思って入会するも、マシンの扱いとかそういうことがハードで、お風呂ばっかり入って結局1万6,200円を無駄にしてしまうとか、そういった思いつきの行動っていうのは結局点でしかないと。
じゃあ、「行動力」って何かっていうと、これは連続した点、つまり線なんですね。習慣にしてはじめて行動というのは行動力にまで昇華すると私は考えています。つまり、点の行動ではなくて点を毎日打ち続けてそれを線にしていく、つまりこれは行動を習慣化するということです。それがあって、はじめて行動力になるということ。
ただ、私自身も行動力の本を書きましたが、行動力があるかというと分野によります。たとえば今、私、ダイエットをやっていまして、この1年間でなんと8キロ太ってしまって、気を抜くと今日もちょっと危ないんですけれども、その8キロのダイエットを、なんとか体重を元に戻したいと思って糖質制限を先月から始めたんですが1週間で終わってまして、結局、今、点の行動に落ち着いています。ということで、どうしても自分にとっての続けられる分野と続けられない分野がある。それもぜひみなさんの中で洗い出してみてください。「生活習慣は比較的続くけれども、英会話とかの勉強になると続かないなあ」とか、そういった得意・不得意があるんじゃないかなと思います。マイナス週間を見直すっていうこと、まず、「この7つ+1の習慣に入る前にマイナス習慣が大事だよ。ぜひ洗い出してみてください」っていうことを今日はさっとお話をしたいと思います。
「口癖」はその人を映し出す
まず、第1の習慣です。コヴィー博士の言う“Be Proactive(主体的である)”というところで、私はこのように言い換えています。「すべては自分からはじまる」。この本の中にもいくつか「第1の習慣を具体的にどのように実践すればいいのか」っていうことが書いてあるんですけれども、その中で簡単なものを2つご紹介したいと思います。まず1つは、みなさんの「口癖」です。口癖というのはその人を映し出します。たかが口癖、されど口癖です。たとえば本にも書いていることなんですが、「とりあえず」「まあまあ」「一応」この3つの口癖はよくありがちなんですけれども、簡単に言うと先送りしてしまったり、先延ばしにしたり、「とりあえず」の人生を生きてしまうNGワードです。この口癖っていうのは、私自身は普段の言葉が自分の人生をつくると思っています。実際に、「来年海外に移住したいんだけれども、どのようなステップを踏めばいいですか」って、たとえばそういった質問があったとしても、「とりあえず今、SEの仕事で収入が安定しているので」とか「一応英語の勉強を始めたんですが」とか、そういったことが面白いぐらいに続いていきます、人というのは。だいたい「会社を辞めたいんですが、どうすればいいでしょう」といったときに、その会社を辞める予定の年数も聞くことが多いんですけれども、3年以上の期間を答えた人でその後3年以内に辞めるっていうのは非常に少ないと思います。やっぱり3年以内の短い期間でまず辞めるというのを決めていること、さらには「とりあえず」とか「一応」「まあまあ」といった口癖をなるべく使わず、具体的な言葉、具体的な事象、英会話でたとえば「TOEIC何点とります」みたいな、そういった具体的なことが出ていくというのがひとつのその人の行動力を測る指標です。
本当の「自分の感情」に気づいていますか?
2つ目なんですけれども、これは男性の方に今日は声を大にして伝えたいことなんですけれども。実は自分の行動を左右するのは、感情の部分とか時間に対してどのような精神性をもっているかというのがすごく大事なんですね。私も本当にこの数年でようやく自分の感情とかに気づき始めているんですけれども、普段はかなりポジティブなタイプで、あんまり落ち込んだりしなかったんですね。でも、「自分の感情を感じないようにしている」のと、「感情が安定している」っていうのは、これは大きな違いがあるのわかりますか。「あの人はいつも冷静だ」「あの人は感情にのみ込まれない」。でも、本当にやりたいこととか、本当に負けたくないこととか、何か情熱的なものっていうのはものすごい感情に出てくるんですね。なので、自分が今いったい何に対して悔しいとか嬉しいとか楽しいと感じているのか、そういった感情に気づくために私がおすすめしているのは「感情日記」です。感情日記については本の中に詳しく書いていますので、ぜひそれを実践してみてください。
3年サイクルの人生計画を立てる
そして第2の習慣「人生のゴール地点を決める」です。この「人生のゴール地点を決める」で非常に大事なワークを1つ挙げます。「3年サイクルの人生計画を立てる」ということです。たとえば会社でいえば、10年先っていうと、このマーケットがいったいどうなっているのかとか10年先まで綿密に企業で事業計画を立てるっていうと、実は変化の早い時代においてはあまり意味がないと思っています。これ、私たち個人も同じ戦略がとれて、「5年後こうしたい」「10年後こうしたい」っていうことは私は意味がないとバッサリ思っています。じゃあ、なぜ3年かっていうと、日本のことわざで「桃栗三年柿八年」とか「石の上にも三年」という言葉がありますけれども、3年というのはひとつの物事をなす最小単位だと私自身は考えています。実際に2010年で会社を辞めてから、3年ごとに区切って自分の3年サイクルを立てています。具体的にもう少し説明をすると、まず3年後の自分っていうのを設定します。私のいちばん最初の3年でいうと、「日本国内でオンリーワンのポジションをとる」っていうのが3年後の設定でした。その3年が経って、今ちょうど次の3年目にいるんですけれども、もう次の3年後、どう立てたかっていうと、「日本と海外を行き来しながら仕事をする」っていうことです。みなさんの中でも、仕事であれ、キャリアであれ、プライベートであれ、いろんな人生計画を立てていただきたいんですが、そのテーマっていうのは「大テーマ」と呼んでいます。大きなテーマ、大テーマが3年後の自分、できれば1行に完結にやる。
1年目が「種まき」、2年目は「水やり」、3年目は「収穫」の時期
じゃあ、その3年間をどう使うかっていうと、平たくいえば1年目が種まきの時期、2年目は水やりの次期、3年目は収穫の時期です。たとえば私が2サイクル目の3年計画で立てた「日本と海外を行き来しながら仕事をする」ということ、具体的に1年目にはどうしたかっていうと、いろんな情報を集めていきました。自腹を切って海外に行って、現地で頑張っているフリーランスの方や起業家の方、会社員の方、いろんな人に会いにいきました。シンガポール、カンボジア、ジャカルタ……アジアが中心だったんですけれども、そうしてコネクションをつくっていって、そうした様子をSNSで投稿していきました。これも戦略的に投稿していったんですけども、そうしていくうちに2媒体、旅系のWebマガジンと雑誌から連載のオファーが来まして、2年目、水やりの時期に入ります。そうやって連載を書いていくと、今度はその連載に自社のサービスを載せてほしいっていうことで、いろんな会社、たとえば「GoPro」のカメラとかの新商品の発表でハワイに呼んでいただいたり、オランダ航空の仕事で広告でオランダに行ったり、そういうことが発展していって企業とのつながりや具体的な仕事になっていって、3年目に至ります。3年目はちょうど現時点なんですが、先ほど言ったように英語留学の本を出版したり、あとは内閣府の「世界青年の船」という仕事で、海外の青年たちに英語でリーダーシップ研修をする、そういったスタッフで業務契約をしたりっていうことで具体的な仕事で動いていきます。
そうやってまず種をまいて、たくさん1年目に行動した中でちょっと動きのありそうなものを2年目で取捨選択します。芽が出るものもあれば、種のまま腐ってしまうものもあります。「あの人との縁は意外と育たなかったな」とか、「この人といろんなプロジェクトをやろうって動いたけど、さして前に進まなかったな」というようなものは2年目ですべて取捨選択して切り捨てていきます。そうやって1年目はとにかく行動する。2年目は育ったものに対して一生懸命時間とエネルギーを注いでいく。3年目はそれを具体的な形として刈り取っていくということ。本にも書いていますが、非常にこれが大事なものなので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
「選択」「集中」するものを自分のルールで決める
そして次が第3の習慣「マイルールで選択と集中をする」です。「マイルール」っていうのは平たく言うと「自分のルール」です。この本の中で紹介しているもののひとつは、私はずっとSNSに数年間随時接続の状態だったんですけれども、ここ1年はオフラインの環境を意識的にとっていまして、今は1日3時間、携帯のデータ通信をオフにしてネットに一切つながずに、静かな時間というのをとるようにしています。たとえばこういうものです。「週に3回までしか会食は入れない」とか、そういった自分の中のルールというのを決めています。つまり、第2の習慣で自分がいったいどこに向かっていきたいのかという方向性を決めていきます。その方向性があれば羅針盤をもった船と同じで迷いにくい。個人の人生も同じです。でも、せっかく方向性が決まったのに、つまり3年後の自分というのが決まったのに、日々の中でいろんな人と人付き合いをしたり、残業をしたり、まわりの人の期待に応え続けていったり、時間は限られていますので、自分の中できちっと選択と集中をしていくルールをつくりましょうというのが第3のものになります。
この中でひとつ具体的に紹介したいのは、第2領域の分野をいかに増やすかということです。スティーブン・コヴィー博士の7つの習慣でも、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域があったのを覚えてますでしょうか。「重要なもの・重要でないもの」「緊急のもの・緊急でないもの」ということの2つの軸から自分の身の回りのことを見直しましょうということです。その第1領域、第2領域、第3、第4の中で大事なのは、緊急ではないけれども重要な第2領域です。たとえば英会話の勉強をするとか、今のうちに人脈をもっておくとか、ソーシャルメディア等々リアルでの人のつながりをつくっておくとか、そういった自分の第2領域をいかに増やしていくかっていうことです。
一歩踏み出す時の足かせになるのが「不義理」
そして第4の習慣、「つながりをプラスのかけ算にする」というのがあります。これもいろいろあるんですけども、実は第1の習慣、第2の習慣、第3の習慣までは私的成功、プライベートな成功の領域に入ります。つまり自分ひとりで完結できることです。で、この第4の習慣以降はパブリックの成功の領域として、相手がいて成り立つ領域に入ってきます。ただ、大事なのは、相手がいる成功、たとえば職場でいい人間関係をもつというのも第4の習慣にかかわってくるんですけれども、パブリックな成功っていうのは私的成功があってはじめて行ける領域なんです。なので、第1の習慣が私的にはいちばん大事な習慣だと思っているんですけれども、まず他人軸ではなくて自分軸から、自分が今日から変えられることからつなげていくっていうことをぜひ覚えていただきたいと思います。
この「つながりをプラスのかけ算にする」ということ、ひとつ面白い事例かなと思うのは、人に謝罪することです。実は謝ることっていうのはすごく大事です。「ごめんなさい」って人に謝ったり、あるいは今謝らなければいけない人だけではなくて、たとえば10年前にちょっとしたいさかいを起こしてしまった友達に連絡して「謝ってください」って言われたら結構ドキッとすると思うんですね。でも、これ、私流の持論で、コヴィー博士が言っていることではないんですけれども、実は人が大きく自分を変えたいと思って自分を変えようとする一歩を踏み出すときに足かせになるもののひとつが、過去に残してきた悔やんだこととか不義理をしたことだと私は思っています。
実は、集英社にいたときにすぐに辞められたわけじゃないんですね。このへんは長くなるんで割愛しますけれども、いろんな人に助けられながら、2年ぐらいかけて会社をようやく辞める決断をしていくんですけれども、実はこの間にやったことのひとつが「謝罪行脚」でした。私は30代になってやっと「人とのつながりを大事にしなきゃいけない」とか、「会社はきちんと辞めなきゃいけない」とか、「仕事相手に丁寧に接しなきゃいけない」ってわかってきたんですけど、20代の私はまったくそういう人間ではなく、すぐ人にケンカを売ったり、すぐ怒って感情をむき出しにしたり、約束を破ったりっていうことも平気でやっていました。そういう自分が本当の底から平気だったかというと、そうじゃないんです。実はみなさんにもひとつやふたつあることだと思うんですけど、誰かの心を傷つけてしまったり不義理をしてしまったっていうことは、ずっと心を痛め続けているんですね。この痛みから私は解放されたかったし、この痛みを解放してはじめてものすごい力で前に進めるんじゃないかということで、謝罪行脚はとても勇気がいったことなんですけれども、それこそ10人弱ぐらいの人たちに電話をしたりメールを書いたりしながら、ほとんどの人と実際に会いに行きまして、「あの時はごめんなさい」っていうことを言い続けました。それが自分の過去に置いてきた痛みみたいなものをものすごい解放できた瞬間だったんですね。ぜひ、ここも第4の習慣を読んでいただけたらと思います。
そして第5の習慣です。これは「目の前の人の伴走者になる」ということで、共感というのを軸にしています。コヴィー博士はこの共感というキーワードに加えて“No Deal”という言葉も大事にしています。“No Deal”というのは「取引しない」ということですね。たとえば、今までの自分であれば相手が負けて自分が勝つか、あるいは相手が勝って自分が負けた感じになるか、そのどっちかしかありませんでした。もしくはケンカになってお互い負けた感じになるか。でも、いちばんいいのは相手も勝って自分も勝って、まわりがハッピーになることです。そのためには「イエス」が大事なのかといったら、決してそうではないんですね。これ、仕事のオファーの場合もそうですが、「ノー」を突きつけていくこと、「この条件では私は取引できません」ということを突きつけていくこともまた大事になります。この第5の習慣も非常に人とのつながりがポイントになっていくので、ここでも実はいろんなエピソードを本の中に書いているんですけれども、ここはあとの対談にもつながってくるかもしれませんので、飛ばさせていただきます。
「気の合わない人」ほど大事にする
そして第6の習慣です。「異なるものこそ力になる」というところのポイントでお話をしたいのは、人間関係というのは同質なものと異質なものというのがあります。2種類に分けると「気の合う人」と「気の合わないなと思う人」がいます。でも、私自身は実は大事にしているのは「気の合わない人」です。6年前に集英社を辞めるときに私がやっていたことのひとつが、3,000人の人に会うということをやってました。毎月150人、1年8か月で3,000人の人に会うということを自分に課して、こういった学びの場にも出かけて全員と名刺交換をして、ひとりひとりに24時間以内にメールを送るとかということを自分に課してやっていたんですけれども、実はその経験を経ていろんな人のつながりの中で感じたのは、自分がこの6年間でいろんなブレイクスルーを経験する中で、実は大事な人のつながりというのは、私に対して反対意見をぶつけてきた人や、私とまったく性格やものの考えが異なる人が何気なく言った一言やアドバイスが、実はすごく大事だったということに気づくんですね。なので、今、私はメンターと呼べるような人が6人ぐらいいるんですけれども、たとえば出版のメンターとか、あとはお金のメンター、感情のメンター、いろんなメンターが6人いるんですけれども、その中で3人ぐらいは私とまったく違うタイプのメンターを揃えています。そうすると、しばらくは耳の痛いことがあります。たとえば、自分が肩書きをひとつに決めずに、メディアで発信をしながら、SNSで発信をしながらいろんな仕事をしたいということを、あるメンターのオフィスで熱く語ったときに、さんざんぼろっかすに言われました。「そんなことをやっても、ひとつの仕事は中途半端になるぞ」とか、「やっぱり人は肩書きを見るんだから、肩書きを決めなきゃ仕事が来ないぞ」とか。でも、言うことをぜんぶ聞いたわけでも聞かなかったわけでもなかったんですけれども、実はその反対意見をもらったことが自分のその後の発信とか自分の打ち出し方っていうことにものすごい大事な影響をもらっています。
3方向の力のバランスを意識する
また、このメンターは人間関係の中でいうと「上から引っ張りあげていく力」です。じゃあ、上から引っ張りあげてもらう力さえあれば人は幸せに働けるのか、生きていけるのかっていうと、実はそうじゃありません。これもあるメンターに教えてもらったことなんですけれども、人間関係には3方向の力があってはじめて機能すると教えてもらいました。ひとつは上から引っ張る力です。もうひとつは下から支えてもらう力。そして3つめは水平方向の力。具体的にいうと、上から引っ張りあげる力っていうのは、今申し上げたように先生やメンターや上司やその道の専門家、あと年上の人、そういった人たちです。下から支えてもらう力っていうのは、会社でいえば後輩たちとか、あとはブログでいえば読者、企業のサービスのユーザー、お客様、そういった人たちに支えてもらう力があります。
上から引っ張り上げる力が強ければ、たしかに大きな仕事をもらったり、チャンスは巡ってきます。私自身も実はこの3つの力の中でいちばん強かったのが、上から引っ張りあげてもらう力でした。独立してまだ1年経っていないころに、ITジャーナリストの佐々木俊尚という方にツイッター上で見つけてもらって、「フリーランスで肩書きを決めずにSNSの発信で仕事をしている面白い女性がいる」っていうことで、ちょうど5年前の8月、ツイッターで紹介されたことがネットで大いに湧きまして、フォロワーさんが1日で700人増えて、その2か月後には佐々木さんと対談をして、その対談を見たNHKのプロデューサーが「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」というテレビ番組のキャスティングで引っ張りあげてくれて、さらにそのNHKの番組が決まったのを見た「情熱大陸」のディレクターの女性が、「情熱大陸」のオファーを来たということで、実はずっとつながっているんです。
じゃあ、上から引っ張りあげてもらう力だけで上手くいくかというと、ぜんぜんそうじゃないですよね。やっぱり下から支えてもらう。これ、立場が下っていうことだけじゃないです。お客さんとか読者、非常に大事です。支えてもらい、さらにいうと、志を同じにした仲間がいるかどうか。たとえば、みなさんも大事なコミュニティ、仲間だと思います。そうした力が3つ揃ってはじめて正しい方向に動くっていうこと、これ、ポイントです。だいたい最初は偏っています、ひとつかふたつに。3方向の力をバランスよく、「自分は水平方向の力はあるけれども、下から支えてもらう力が足りないな」っていう人は、ちょっとそれを意識してみるとか、「水平方向の力が足りないな」っていう人はもっとコミュニティのつながりを強化していくとか、そういったバランスが非常に大事になると思います。
心の声に耳を傾けて「自分のいちばん大事なもの」を見つける
そして第7の習慣は、「器を磨き続ける」ということで、「昨日より今日の自分を刷新する」ということを紹介しています。これも本に詳しくありますし、対談のところでもお話をできるかなと思いますので、第8の習慣、ここを最後にお話したいと思います。第7の習慣は自分の器ということを大きくしていくために、平たくいうと肉体を磨き、つまり運動をしたり、精神を磨き、読書や瞑想をして情緒を磨き、あと知性ですね、そういった4つのバランスを整えていきましょうということを書いています。これは「最大限に自分を生きる」ということで、具体的には「自分のいちばん大事なものを見つける」ということです。心の声に耳を傾けて、自分にとっていちばん大事なことは何かということを探していくことになります。具体例がちょっとユニークでして、家系図をつくるということを出しているんですけれども、自分のルーツを知るというのもひとつありかもしれません。
あるいは、自分の心の声を聞くということで、いろいろ方法はあるんですけれども、私自身が5年前に祖父を亡くしたんですね。その祖父は山形の実業家で、小さな建設会社の社長から会長職まで全うした実業家だったんですけれども、その本業の傍らで、世界ではじめて大気を奉る神様ということで「空気神社」という観光名所を山形につくったり、大前研一さんの講演を山形ではじめて開いたり、五百川方言集という方言集を自費出版したりということで、個人の活動もすごくやってきた方でした。でも、私自身は祖父の背中を見ながら「なぜこんなに祖父はいつも何かのために頑張るんだろう」って、実はちょっと疑問だったんです。「小さな山形の小さな片田舎で、なんでこの小さな町のために尽力するんだろう。それよりも、もっと私たち家族と過ごしてほしいな。おばあちゃんとの時間を過ごしてほしいな」なんて思っていたんですが、5年前に祖父が他界したときに、祖父の通夜の場ではじめて私にとっては全身に電流が走ったような気持ちで、祖父の生き様っていうのがようやく腑に落ちた瞬間がありました。小さな町で町おこしをやるとか、自分の我を押し通していろんなことをやっていくというのは、軋轢もいろいろとあったと思います。それでも、自分がこの生まれ育った町のために何かをやりたいという志のために一歩一歩を踏み出してきたその過程は、祖父にとって一片の悔いもなかったということが、祖父の死を前にしてはじめて感じたことなんです。恥ずかしながら、私は5年前はまだフリーランスになって半年で、ぜんぜん仕事がなくて、お金も入ってこなくて、額面で1,000万ぐらいあった恵まれた会社勤めだった私がフリーになって、肩書きもよくわかんないし、何をやりたいのかもわかんないし、まわりの人たちからはいろいろ反対されるし、自信をすっかりなくしてました。「本当は私、迷っているし、仕事がないんだよね」っていう弱さを人に伝えることができたら、もっといろんな展開があったのかもしれませんけれども、「美冬って会社辞めて何してんの?」とか「どんな仕事やってんの?」っていう質問が何よりも怖くて、人前に出ることからも逃げて、ずっと引きこもっていたのがそのころの私です。だからこそ、そのときに弱さに立ち向かえなかった分、自分の祖父が残した生き様を私が受け継いだ気持ちで、やっぱり今も怖いですし、迷いもありますし、「自分はどうしていけばいいのかな」っていう不安はものすごくあるんですけれども、それでも最大限に仕事を通じて自分を表現していこうという気持ちに立ち返って一歩一歩進む、それが行動力の源泉になっています。なので、ちょっと深いというか重い話になったかもしれませんけれども、みなさんの本当の核にある思いが何なのかというところをたどるルーツとして、ぜひ第8の習慣も参考にしていただけたらと思います。
最後に「ベビーステップ」。ぜひ今日から踏めるステップというのを考えてみてください。どんなものでもいいんです。たとえば、めちゃくちゃくだらないですよ。私、吉野家が苦手だったんです。松屋は入れるんです。わかります?なんでか。松屋ってテーブル席じゃないですか。でも、吉野家ってU字型なんですよね。あれで私が牛丼食べている姿を男性たちに見られるっていうのがすごい恥ずかしくて、でも松屋はテーブル席かカウンター席が多いんで誰にも見られないっていうことで、実は松屋は入れたけど吉野家が入れなかった。でも私、好きなんです、結構あの味が。で、どうしても吉野家を食べたいけど、いつもスルーしてたんです、店舗の前で。恵比寿駅でウロウロしては「やっぱ入れない」って。男性客を見て「恥ずかしい」ってなってたんですけど、この行動力の育て方を書き上げたあと私が自分に課したのは、まずはベビーステップでコンフォートゾーンを抜け出していくことだと。今までの自分の殻を破るんだということで、ちゃんと実行しました。中目黒の吉野家に入りまして、食べずに持ち帰ったんですけども(会場笑い)。食べられなかったんですけども、でも、実はそのあと、成田空港が24時間営業してる吉野家がテーブル席で、そこでゆっくり食べられたんですが。昨日までの自分ができなかったことをぜひ今日決めて、ベビーステップというのを踏んでいただけたらと思います。ありがとうございました。
<対談>
松林博文氏:今、聞きたいことが2ついきなり出てきたんですけれども、1つめは、安藤さんが目指している次の3年後っていうのが、今、急に聞きたくなったんですけど。
安藤氏:実は私、3年サイクルの今年3年目で、結論からいうと、もうちょっとしたら考えます。今は3年目のサイクルの結果を出すことに全力を尽くしているので、10月ぐらいに入ったらちょっとチラつくかもしれません。
松林氏:なるほど。そこはオーバーラップしないんですね。
安藤氏:はい。まったく考えないんですよ、私。今を生きています。
松林氏:なるほど。「言っていることとやっていること、若干違うんじゃないか」という意見があるかもしれないんですが、そんな感じなんですか。
安藤氏:要は、3年前に立てた3年後を今生きているわけです。今3年目なので日本と海外を行き来するっていうことの収穫の時期なので、今、それにめちゃくちゃ尽力をつくしていて、次の3年っていうのはだいたい年の終わりに考えていくので、これから次の3年を考えます。
松林氏:なるほど。じゃあ、収穫期にはもう収穫に徹すると。
安藤氏:徹する。だから、今だったら本を書きまくって。
松林氏:ここに来る前に何人かファンのみなさんに実は質問したのですけれども、「安藤さんがやることを選ぶときの基準は何なんですか」っていう質問があったのですけれども。
安藤氏:基準ですかねぇ。「自分が本当にやりたいことをやる」ってことじゃないですかね。というのが、よくある質問で、「今まで独立してからいちばん辛かったことは何ですか?」って。私、辞めたことでもなく、忙しかったことでもないんですよ。辞めたあとに、先ほどもちょっと言いましたけど、21世紀の働き方っていうのは肩書きをひとつに決めず、ひとつの組織にもとらわれずに、ひとつの仕事にもとらわれずに、ふたつ以上の仕事、ふたつ以上の肩書き、ふたつ以上の組織って確信していたんです、そうなっていくって。でも、世の中は、まだ6年前はそうじゃなかった。少なくとも今よりもそうじゃなかったから、話をするたびに「中途半端だ」って言われていたわけです。あのときがいちばん苦しかったんです。自分はここに行きたい。でも、まわりの人に理解されないという葛藤ですよね。何百回も思いましたよ。「再度就職すればどんなに楽になるだろう」とか、「わかりやすく編集プロダクションでも起業したら、どんなに何者かになれて楽になれただろう」って。なので、先ほどの答えでいえば、みなさんも、私たち3年後を考えるときに、本当に自分のやりたいことでないと無駄になりますよ、3年間。
たとえばですけど、結構罠があって、社会貢献とかね、たとえば、まわりの人が認めたり褒めてくれたりすること、本当にやりたきゃやればいいんです。でも、私は3,000人の人に会ってフリーで活躍している人、活躍していない人、成功した人、失敗した人、いろんな人に密かにリサーチをしながら会っていたんですけれども、失敗した人のパターンっていうのを分析していくと5パターンぐらいあるんですが、そのうちのひとつは「自分らしくないことをやる」。なので、褒められないかもしれない、上手くいかないかもしれない、でも、それを本当にやりたいかどうかっていうところを突きつめることですよね。
松林氏:あと、ぜんぜん別の切り口で、今おっしゃったように、これからの仕事ってどんどんなくなっていくっていうことをいろんな人が言っているんですよね。たとえば僕は日本企業に就職したんですけれども、なんと、ずっといろんなバイトをやってきたんですね。ですから、1社正社員だったけれども、隠れていろいろなバイトを、例えばテニスのコーチをやったり、ECCの英語の先生をやってきたから、むっちゃよかったんですよ。だから、バイトと本職がだんだんわかんなくなってきて、それで自費留学して、会社辞めて、自分で海外行ってきたっていう中で、これ、表現難しいんですけど、1社とひとつの職業だけっていうのも生き方としてはありなんですけれども、マルチでいろんなことをずっと並行していくと見えてくることもあるんで、それは推奨しているんですけれど、そんな意味で何かおすすめを。
安藤氏:まず、マルチプルにいくつかっていうことで、私はよく「100万人中の1位になる方法」ということを言っているんですけれども、ひとつの分野、ひとつの仕事で100万人中の1位、たぶん本当にこれになったら一生食べていけますよね、その人って。国体選手かオリンピック出場ぐらいできる。でも、ひとつの分野で100万人中の1位っていうと、ものすごい競争率じゃないですか。私の場合、自分がフリーランスになるときに考えたのは、100人中の1位の分野を3つ掛け合わせるっていうことだったんです。つまり、「100人中の1位、100人中の1位、100人中の1位」も「100万人中の1位」なんですね。要は3つの分野をもつこと。たとえばそれは出版の知識だったり、人脈だったり、ソーシャルメディアの発信だったり、それはみなさんの中でもぜひ考えてもらいたいのですけれども、だいたい複数を掛け合わせていくことが、ナンバーワンじゃなくて自分のオンリーワンの戦略をとるっていうことは、これ、企業がたぶんやりはじめてることでもあるし、個人の戦略でも置き換えられるんじゃないかなと。そのうえで旅をしてください、ぜひ。
松林氏:そうですね。
安藤氏:それはなぜかっていうと、たとえば先々週までセブに行ってまして、フィリピン英語留学本のPRで、その前ミャンマー、今週からスリランカに行くんですが、このあたりの途上国って平均年齢20代なんですよね。フィリピンで20何歳、平均年齢すごく若い。日本でいうと40代後半ぐらいですか、平均年齢は。やっぱり、そうやっていろんな海外を、特にこれから盛り上がっていく東南アジアとかおすすめなんですけど、見ていると、彼らの未来に対する希望のエネルギーもすごいし、実際にタイムマシン経営ってよく言いますよね、日本で今流行ってるものが、セブでようやくスムージーとかスーパーフードとか流行り始めたりしてて、みなさんだったらものすごいビジネスのアイデアも思いつくと思うんです。逆に今、日本に持ってきたら面白いかもしれない、たとえば私が目をつけているのは、アーユルヴェーダ。世界最古の医療といわれるアーユルヴェーダをスリランカで勉強しようと思って、今、学校に日本で通いながら、今週末取材に入るんですけれども、そういった「今、日本にもってきたら面白そうだな」みたいなヒントも転がっている。ぜひ、有給休暇をとって、ぜひ旅してください。家族とかもあると思いますけど。
松林氏:で、もう1個質問にあったんですけれども、「いろいろ発信をしていくと足を引っ張る人がいるんじゃないか」っていうような質問も出てきてい、「ネガティブコメントが出たときにどう対応しているのですか」っていう質問が来ていたんですけれども。
安藤氏:ああ、なるほど。大丈夫です。そんなネガティブコメントめったに来ないです。たとえばですけど、私、これもはっきり言っちゃいますけど、そんな心配しているうちはネガティブコメントつくほど影響力もたないんで、社会に。杞憂ですって言います。わかります?ブログがなんだ、数百人読んでいるぐらいの人、誰もそんな注目しないですもん。でも逆に、本当にそこでバッと出る人は考えていません、そんなこと。私はそこまで影響力あるか知らないけど、少なくとも自分は考えたことがなかった。あとで慌てましたけどね(笑い)。「やべえ、やべえ、やべえ」って、「めっちゃついてるじゃん」みたいなのはありましたけど、それよりも、私、「情熱は恐怖を圧倒する」っていう言い方をしているんですけど、ネガティブな視点も、それはあります、人間だから。それはわかる。でも、それよりも発信したい何かがあるか、伝えたいものがあるかどうかだと思うんですよね。なんで、それを心配しているうちは大丈夫、ブレイクしません(笑)。すいません。
松林氏:ということで、質問者、よろしいですかね。では、ご質問、コメント、何でもよろしいんですけれども、いかがでしょう?みなさんのほうから、せっかくなんで。
質問者A:お話の中で「3つの人間性の力がはじめて揃って上手くいくよ」というところがあって、僕は上の人から引っ張ってもらう力っていうのを意識しないようにしているんです。意識した瞬間にエゴが出たり、自分らしさを失ったり、そういったものが出やすいと思うからです。だから、そういう感情があったときにむしろちょっと距離を置いたり、自分の意見をしっかり言わないとぜんぶ流されてしまう感じがあるんですけれども、安藤さんがそのような場合に何か意識しているようなことがあれば教えていただきたいと思います。
質問者B:先ほど、ぜんぜんまわりの人に理解してもらえないつらさっていうの、何となくわかるような気もするんですけど、かたや、すごいグロービス的にポジティブで、経営者の人も自分の提案が8割方提案されたらたぶんだめで、みんな否定するから逆に燃えるみたいなのもあったりもするんですけど。そこをどうやって乗り越えられたっていうか、つらかったとこをどういうふうに乗り越えたのかなというのを教えていただければと思います。
質問者C:抑うつになって「7つの習慣」をやってこうとした中で、いちばん最初にマイナスの習慣を見直すというところがあるんですけれども、それをやるのも嫌だっていう自分があったんじゃないかと思うんですけども、それでもやろうと思ったきっかけというか、勇気というか、そのへんのポイントというのを教えていただければと思います。
松林氏:ということでまとめると、上から引っ張ってもらうときの心のあり方っていうのと、否定すると燃える人がいるときの対処法っていうのと、マイナスをプラスの力に変えていくっていったときの、いちばん最初のきっかけが何かという。
安藤氏:わかりました。まず最初の質問なんですけれども、おっしゃるとおり「自分よりもちょっと経験があるな」とか「この人すごいな」っていう人に対して気後れする感情が出たり、もっというと「この人と仲良くなりたい」とか「見てほしい」ってことでいろんな感情が出るのは当然のナチュラルなことなので、その対処法というよりは「そういうものだ」ということでいいと思います。とはいえ、その感情があるために前に進めない、たとえば「距離を今回はとってみよう」とかっていうと、やっぱり関係は進んで行かないので、自分としては結構ここは心うんぬん以前に、自分の中ではたとえば「今月はこの人を食事に誘う」とか、「何人と仲良くなる」とか、セミナー講師の方とかだと「お昼に誘う」とか、「その人の著書を読んで感想を書く」とか、そういった小さな行動から、むしろ感情を抑えるために行動によって越えた感じがします。
2つめの辛かったことの乗り越え方っていうのは、これだけでも1時間ぐらい話せることなので、それこそ水平方向の力でいう、志を同じくしている友人に支えてもらったこともありますし、あるいはひとりで何回も部屋の中で泣いて、それでも自分がフリーになって実現したい世界っていうのを考え続けてやったのもあります。あとは、自分が今でもよく覚えているんですけども、しばらく休眠アカウントだった自分のFacebookを復活させたのがちょうど5年ぐらい前なんですね。あのころの私は送信ボタンを押すのもこのぐらい手が震えました、本当に。私がこれまで「安藤さん、何やっているの?」っていう質問が怖くて逃げ続けて、否定されるのが嫌で、「私はこんなふうに考えている」「こんなことをやっていきたい」っていうのを言えなかった。でも、それをFacebookに書いて送信ボタンを押すときは本当にこんなに震えたんですね。思い返せば、ひとつひとつ感じたことや、かけられた言葉や、ひとつひとつの行動が、いつの間にか不安を大きく越えていたんじゃないかなと思っています。
3つめの「7つの習慣」のマイナスの習慣はおっしゃるとおりで、これは非常に嫌な作業で、おそらくそれ以前の自分自身も、マイナスの部分に目を向けなかったからこそ、いろんな行動が空回りしたり、人といい関係を結べなかったり、会社の先輩から怒られても、それを反省せずにまた同じことを仕事で繰り返したりしていたと思うんですね。簡単にこれは本にも書いていることなんですが、にっちもさっちもいかなくなったからです。会社を休職して、当時仕事が結構忙しくて、お金をすごい散財していたんですね。恥ずかしいんですけど、キャッシングまでして、あんなにお給料よかったのに、ブランド品を買いまくっていたんですね。人間関係は最悪でしたし、恋人にも去られて、ぜんぜん何も自分の身の回りがなくなって、すってんてんになった状態で会社を休職する、しかも精神的に病んでしまうっていうことがあって、「今ここで自分を本気で変えなければ、私は5年経っても10年経ってもきっとこのままだ」っていう危機感が26歳当時に強烈に襲われたことは大きかったです。裏を返せば、そこまで追い込まれなければ自分は変えられなかったんだなと思います。
松林氏:ありがとうございます。何人かの読者が「感情日記を見てみたい」っていうリクエストがあったんですけど、見せられるようなもんじゃないですかね。自分の感情を吐き出すという。「テメー!」とかっていう感じで書くんですか。
安藤氏:当時はそうでしたよね。「あの人の言ったことが許せない」とか、「ふざけんな。自分のことをバカにしないでほしい」とか。「テメー!」とかっていうのも、そういうことをズラズラズラズラ書いてましたよね。でも、最近もありましたよ。誰かに対して向けたことではないんですけれども、「自分が本当にこのままでいいんだろうか」とか、「自分が信じていることっていうのは本当に正しい道なんだろうか」とかあります。
松林氏:「ネガティブなことを書くと、それに引き寄せられるんじゃないか」っていう人もいたみたいなんですけれども、そこはどうなんですかね。吐き出しちゃったほうがいい?
安藤氏:はい。私は“ポジティブ教信者”っていうのがいちばん危険だと思っていまして、本当は心の底で不安があるのに「ありがとー!」とか「感謝感謝!」っていうのが、わかります?「顔晴(がんば)ります」って、顔が晴れるって書く、あれ、もう本当ズタズタにしてやりたいぐらい腹が立つんですよ(笑)。「おまえは何もわかってない!」みたいな。そういうおかしなジレンマがたぶんポジティブ教信者をつくり出すと思っていて、不安がある、怒りがある、これは当たり前のことで、それを吐き出してしまってはじめてリセットされると思うんですよ。プラスっていうのはゼロになって始めて生まれていく。マイナスのところでプラスプラスにしようっていったって、「どんだけ足し算すればいいんですか」って話ですよね。
質問者D:私はジョン・キムさんも好きで結構本を読むんですけど、すごく雰囲気が似てるなあと思っておりまして。力が上手に抜けてるというか、力強いんですけども力が抜けていて、自分も心地よく過ごしながら、まわりの人も気持ちよくさせていけるようなコツというか、どういう心構えで日々を過ごしておられるのかっていうところをお聞かせいただければと思います。
質問者E:今日はありがとうございました。先ほどの感情日記のことをお伺いしたかったんですけど、どっちかっていうと負の感情を日記に書いて吐き出されてる、今のお話をお伺いするとそういうふうに受け止めたんですけど、プラスの感情も書かれて、プラスもマイナスも含めて安定化させられてるのか、マイナスのほうだけを吐き出して心を安定化させてらっしゃるのか、そこらへんをもう少しお伺いしたいなと思って。
質問者F:お伺いしたいのは、マイナスの習慣をやめるっていう話の、「習慣がマイナスである」っていう判断をどうやってされたのかっていうのを具体的に教えていただければありがたいです。
質問者G:教えていただきたいのは、今日のお話で、やっぱり個人のところから最初のところに入るんですと、この7つの習慣を組織の中で広めたり、定着させるために何か工夫というか、そういうものはありますか。
安藤氏:まず、「力が抜けている」というところ、ありがとうございます。これは、ただ、私は自分が力が抜けている人間だとはまだ思えてないんですけど、逆に私が非常に力の入っていた人間だったからだと思います。数年前の発言とか自分で今読むと、「私、何と戦っていたんだろう」って思うんですよ。でも、カメラを前にするとすごい挑戦的な発言をしてしまう自分がいて、面白いですよね。でも、やっぱりそういう自分を非常に見つめまして、この数年間。特に2年ぐらい前からかな、テレビに出るのもそのころからやめて、自分のことをすごい考えたんですね。もう1回いろんな人に学びを請おうと思って新しい勉強を始めたのもちょうど2年ぐらい前からなんですけど、やっぱりフリーになって、運よくまわりの人のおかげもあって仕事はすごくいろいろできて、でも、自分自身がものすごい力が入っていた、ぜんぜん自然じゃなかったっていうところを認めたときに力が抜けた感じがします。でも、力が入っていることっていうのは悪いことではなくて、よく「力を抜いてください」っていうのは、1回こぶしをグッと握りしめた人でなければ、力を抜いたときの感覚ってわからないですよね。それと同じで、私もずっと何と戦ってたわかんないけど、ずっと戦っていたんですよ、何者かに対して。そういう時期があったからこそ抜くことができたっていう。それだったのかなと思います。
次の「負の感情とプラスの感情」でいうと、今まさにプラスの感情をかなり書いています。ただ、もともとプラスの感情を書こうとしたわけではなく、負の感情をかなり出し切ったからこそ、一度リセットされまして、そこからはプラス・プラス・プラスになっていく。たとえば、ずっと仕事に関してストレスとプレッシャーが非常にこの数年あって、好きな仕事をやっているのにあんまり楽しくなったり、発信がすごく義務に思えてきたり、自分がどう見られたいかっていうところにまず頭がいったりして、「なんか自分らしくないな」っていうのがあったんですね。そういった迷いとかつらさみたいなものをぶつけて、かなり吐き出したときに、はじめてSNSとの付き合い方、たとえば1日3時間オフラインにして、ちょっと自分を楽にしてあげるとか、あるいは自分の仕事に対しても、迷いを認めたからこそ、来るもの来るものを少しありのままに受け止められるようになったりっていうので、ようやくプラスがすごく出てきたかなと思っています。
次の「習慣」なんですけれども、習慣それ自体にはプラスもマイナスもないですよね、本来。早寝早起きみたいなプラスの習慣があれば、一方で遅寝遅起きのような習慣になっちゃってるもの、要は惰性で続けているものも含めてあるなっていうふうに思いました。7つの習慣を読んだときに私はそうやって考えたんです。それが暴飲暴食だったり、人との付き合いがいいといえばあれでしたけど、ほぼ毎日のように人と会食を入れていたりする。なので習慣を自分の中でプラスとマイナス両方があるものだって捉えたときに、まずは自分の中でマイナスの習慣を見極めて、それをひとつひとつ潰していこうと。
質問者F:聞き方が悪かった。マイナスをどうやって判断したのかが知りたいんですよね。
安藤氏:ああ、なるほど。たとえば遅寝遅起きや、暴飲暴食や、あとは長続きしないっていうことは明らかにマイナスですよね。あとは、本当だったら輝いている人から学べたかもしれないのに、その人になくて自分にあるもの、たとえば「あの人より、私、給料いいし」とか、やっかんだりするようなのも、これ、人付き合いのうえでのマイナスの習慣だなと。かなりそういったものが私の中にはあったので、習慣には、繰り返しますけど、マイナスのものもあるなと。じゃあ、それをひとつひとつ潰していこうっていうようなプロセスを踏んだという感じです。
安藤氏:「組織の中で広めていくこと」、これはコヴィ博士流にいうと影響力の輪っていうこと、また、インサイドアウトということにつながっていくと思います。本には書いていませんが、前提の2つのキーワードです。つまり、相手を変えるのではなく自分がまず変わること、つまりはご自身が「7つの習慣」の実践者となって、まわりにいい影響を与えていく基点になることっていうのが大事なんじゃないかなと思います。少なくとも私は自分のチームとか、自分のまわりもいろいろいるんですけれども、私自身が変わること、私的成功の部分にものすごい時間をかけました。
質問者H:ありがとうございます。出版業界で雑誌の制作をしている者なんですけれども、第2の領域のことに関してひとつお伺いしたくて。まわりではフリーランスになる方とかフリーランスの方はたくさんいるんですけれども、やっぱりそれまで本業でやってきたひとつのことを武器にしてフリーランスで仕事をするという方がほとんどだと思うんですけれども、その中で2つめの領域を育てたとしても、それを融合させて新しく仕事をすることって、すごく自分の道を切り拓いていかなきゃいけないこととかになると思うんですけれども、自分の「これだ!」と思ったときに、「道がないけど切り拓く!」みたいなうえでコツみたいなのがあったら教えていただきたいなと思いました。
質問者I:お話を聞いていた中で、最初のマイナスの習慣を見直すところからどんどん自分の行動を変えていくっていうふうな、これまでのことをお話しされてたんですけども、すごく情熱的に行動に移されているところと、それを冷静に自分で自己分析をされているところと2つあるかなと思って、「情熱的に」っていうところは非常に理解したんですけど、どういうふうに逆に「冷静な自分の目」で、さっき松林さんがおっしゃったような客観的に振り返られてるのかっていう、どういうふうにされてるのかっていうのを教えていただきたいです。
安藤氏:道を切り拓こうとして生きているわけではないんですけれども、先ほど申し上げたように、自分が「これだ」と思った道を歩み続けていくには、不安もあるし、戸惑いもあるんですけれども、やっぱり自分の人生なんで、手綱を自分で握り続けるっていうことを毎日考えているような気がします。たとえば私が今アーユルヴェーダに魅せられて、すっかり虜になって、これから毎月のようにスリランカに行くことになると思うんですけども、そうやってアーユルヴェーダの学校に通ったときに、「安藤は次はセラピストになるのか!?」って。今年は船の仕事を何ヶ月かやったんで、「安藤は船乗りになったのか!?」とか、いろんなヒソヒソがあると思うんですけど、でも、それはそれとして、もちろん人の目を気にしないわけじゃないんですが、それよりも自分がどう生きるかっていうことに集中することですよね。「来年よりも今のことを考え続ける」っていうのもそこにあって、結局、最終的には意思の力がすごく大事なんじゃないかなと思っています。すごいシンプルなんですけれども、そう思っています。
で、最後の話なんですが、これは本を読んだり、日記を書いたり、いろんなメンターを会社員時代からもったりすることにひとつ答えがあるような気がしています。先ほどの「マイナス習慣をなぜ」っていう方の質問にも被ってくるんですけれども、子どものころから私、本を読んでるときに自然と「主人公はこう考えている、小説であっても、私はこうだ」っていうことをいつも対比させて考える癖があって、実は「7つの習慣」を最初に読んだときに思ったのは「私、真反対だな」と思ったんです。要はコヴィ博士のいう成功法則の真逆を生きているなって。でも、それはたぶん普段からわかりやすい失敗を繰り返しているっていうのもあるかもしれませんけど、やっぱり日記を書いたり、物事を考えたり、1人の時間を結構もっているからこそ身に付けることができたのかなとは思います。と同時にメンターを含めて人の力を借りている部分も大いにあるので、ぜひ伴走者と一緒に頑張っていただきたいなと思います。
松林氏:最後にみなさんに、安藤さんよりラブコメントをパーッと振りかけていただきたいと思うんですけれども。
安藤氏:あるメンターが「3年から5年あれば人は大きく変われる」っていうことを最近私に言ってくれたんですけども、この26歳のいちばんどん底期が10年前ですが、でも、つい5年前までは私はまだ仕事も1個もなくて、お金もなくて、仲間もこんなにいなくて、理解者なんかもってのほかでぜんぜんいなくて、本当に迷いと不安と、「私、いったい何したいんだろう?」って毎日首をかしげながらずっと生きてきました。でも、その後、私自身もフリーランスの仲間だったり、同じ夢を追いかける人たちと出会って、それこそサードプレイスとなるようなコミュニティを得て、一緒に走っていく仲間を見つけたときに、力強くいろんなことをできるようになった気がします。上の力も、下の力も、水平方向の力もすごく大事なんですけど、何よりもやっぱり夢を同じくする仲間ってのが本当にかけがえがなくて。私、本当に思うんですよ、あの頃の不安やつらさみたいなのを、今、抱きしめたくなるぐらいに貴重なもんだったなあって。それはそれで、今また新たな不安やつらさもあるんですけれども、やっぱりあのときの、本当に布団ひっかぶってブルブル震えて「私、どうなっちゃうんだろう。お金もないし、どうしよう」っていう日々ってもう戻ってこなくて、そのときのあの思いってかけがえがないなって思うんですね。みなさんもきっとそれぞれいろんな感情があって、それを認め合える仲間がいるっていうことはすごく貴重な経験だと思うので、ぜひ頑張っていただきたいなと思います。
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