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キャッシュフローの定義: お金の流れを可視化せよ

投稿日:2016/06/18更新日:2021/10/25

『グロービスMBAファイナンス』の第2章から「キャッシュフローの定義」を紹介します。

ファイナンスでは、収益性の判断等は基本的に会計上の利益ではなく、キャッシュフローを用いて行います。会計上の利益は、会計方針の変更などによって操作することも可能だからです。それに対して、キャッシュフローはある意味ごまかしの効かない数字です。仮に減価償却の方法を変えて減価償却費を減らし、利益をかさ上げしたとしても、その分、たな卸資産が増える結果、結局は運転資本が増加し、キャッシュフローは変化しません。企業活動の実態が変化していない以上、当然とも言えることですが、多くの人はどうしても会計上のP/L、B/Sの数字にとらわれがちです。ファイナンスでは常にこのごまかしの効かないキャッシュフローをベースに考えるということは強く意識してください。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

キャッシュフローの定義

事業の経済性を評価するためのリターンの概念として、キャッシュフローが最適であるとファイナンス理論は考える。キャッシュフローとは、文字通りキャッシュの流れのことで、企業活動の結果入ってきた現金(キャッシュイン)から出て行った現金(キャッシュアウト)を引いたものである。キャッシュフローを計算する場合、取引ごとにキャッシュの出入りをカウントして計算することはしない。通常は、純利益を基準にして、必要な項目を足し引きして求める。

キャッシュフロー(CF)の定義には若干のバリエーションがあるが、最もよく使われている定義は次の通りである。

 

それでは、財務諸表の数字を使って実際にキャッシュフローを計算してみよう。以下のようなP/LとB/Sから2008年度のキャッシュフローを求める。

 

CF=純利益+減価償却費-投資-Δ運転資本、であるから、各項目の数値をP/LとB/Sから求めていけばよい。まず、純利益はP/Lを見れば、8であることがわかる。

減価償却費は、ここではP/Lでもわかるが、B/Sで求めることもできる。それは、減価償却の累計額の差額を見ればよい。2007年度のB/Sにおける減価償却の累計額である7に2008年度に発生した減価償却費を加えたものが2008年度の減価償却の累計額である17になっている。したがって、減価償却費は10である。

投資はB/Sから求められる。投資をすればB/Sに投資金額が固定資産として計上される。ただし、固定資産は減価償却費の分だけ減額される。そこで次の関係が成り立っている。

2007年度の固定資産(Net)+2008年度の投資額-2008年度の減価償却費
=2008年度の固定資産(Net)

ここではその関係が簡単にわかるように、固定資産をNetとGross (=減価償却費を控除する前の数字)に分けている。そうすると、Grossの差を見ても、投資金額が13であることがわかる。

運転資本の変化は、2007年と2008年の運転資本を求めて、その差額を計算すればよい。

2007年度の運転資本=売掛金+たな卸資産-買掛金=20+30-40=10
2008年度の運転資本=25+40-42=23
運転資本の変化=23-10=13

運転資本が13増加したということは、その分キャッシュフローは減ったということである。

以上から、2008年度のキャッシュフローは次のようになる。

CF=純利益+減価償却費-投資-Δ運転資本=8+10-13-13=▲8

ここで計算のやり方とともに認識すべきことは、CFの計算にはP/Lと2年分のB/Sが必要だということである。

(本項担当執筆者: グロービス・エグゼクティブ・スクール講師 山本和隆)

次回は、『グロービスMBAファイナンス』から「現在価値の考え方」を紹介します。

https://globis.jp/article/4478

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