「Charge」 突き進め
「Be basic」 自分の信じる基本に忠実に
「Be passionate」 情熱的であれ
Trent Messecは、グロービス経営大学院の卒業生だった。先日、脳腫瘍で亡くなった。
その3週間前に、私は彼のベッドサイドに立っていた。
言葉は聞き取りづらかったが、意識ははっきりしていた。
グロービス生や卒業生、そしてグロービス・コミュニティ全体に、何か伝えたいメッセージはないかと、私は聞いた。出てきたのが冒頭の3つの言葉だった。
病床の男の口から、それらが出てきたことに戸惑い、私は呆然と立っていた。
「Charge」とは…攻める、攻撃するというニュアンスを含んでいる。
死に直面した者にとって、「生を与えられながらそれを攻撃的に活かさない人」は、もどかしくて仕方なく感じられるのだろう。彼は私を見て、そう思ったのかもしれない。
Trentは「Charge」を補足して、さらに、こう言った。
「To move forward」 前に進め
拳を握りしめて、それをグイっと前に押し出した。それが彼との会話の最後になった。
人間はなぜ、挑戦的な人生を生きようとするのだろう。
振り返ってみると、9か月で7本の「にんげんノート」を書いた。
7人のにんげんたちが、それぞれの人生を生きる中で何かのターニング・ポイントを迎え、そして新しい挑戦へと足を踏み出している。まさに、その瞬間を描きたいというのが、私の意図だった。
東日本大震災をテーマに限定したわけではない。しかし、書き始めてみると、7人全員が、東日本大震災を契機に、大きく人生が変わる経験をしていた。
話を聞き、その情景に思いを巡らし、文字に起こしているうちに、涙が止まらなくなったことも少なくない。
実は、前回の「ある牛飼いの覚悟」を書いた後、新しい「ノート」を書けるイメージが持てなくなった。それだけ、酪農家の阿部俊幸氏の話は私にとって衝撃的だったし、心が痛んだ。
にんげんが生き、そして死ぬということの重みが心にのしかかり、軋んだ。筆を執る気になれなくなっていた。
Trentの言葉を受けたのは、そんな時だ。
死を身近に感じた時、人は「生」を全力で燃やそうとするのかもしれない。その瞬間に人生は強い光を発する。
その光を、私は伝えたい。
そんな気持ちで、今年も「にんげんノート」を書いていきたい。
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