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人間はなぜ、挑戦するのだろう

投稿日:2016/01/11更新日:2019/08/30

「Charge」  突き進め

「Be basic」  自分の信じる基本に忠実に

「Be passionate」  情熱的であれ

Trent Messecは、グロービス経営大学院の卒業生だった。先日、脳腫瘍で亡くなった。

その3週間前に、私は彼のベッドサイドに立っていた。

言葉は聞き取りづらかったが、意識ははっきりしていた。

グロービス生や卒業生、そしてグロービス・コミュニティ全体に、何か伝えたいメッセージはないかと、私は聞いた。出てきたのが冒頭の3つの言葉だった。

病床の男の口から、それらが出てきたことに戸惑い、私は呆然と立っていた。

「Charge」とは…攻める、攻撃するというニュアンスを含んでいる。

死に直面した者にとって、「生を与えられながらそれを攻撃的に活かさない人」は、もどかしくて仕方なく感じられるのだろう。彼は私を見て、そう思ったのかもしれない。

Trentは「Charge」を補足して、さらに、こう言った。

「To move forward」 前に進め

拳を握りしめて、それをグイっと前に押し出した。それが彼との会話の最後になった。

人間はなぜ、挑戦的な人生を生きようとするのだろう。

振り返ってみると、9か月で7本の「にんげんノート」を書いた。

7人のにんげんたちが、それぞれの人生を生きる中で何かのターニング・ポイントを迎え、そして新しい挑戦へと足を踏み出している。まさに、その瞬間を描きたいというのが、私の意図だった。

東日本大震災をテーマに限定したわけではない。しかし、書き始めてみると、7人全員が、東日本大震災を契機に、大きく人生が変わる経験をしていた。

話を聞き、その情景に思いを巡らし、文字に起こしているうちに、涙が止まらなくなったことも少なくない。

実は、前回の「ある牛飼いの覚悟」を書いた後、新しい「ノート」を書けるイメージが持てなくなった。それだけ、酪農家の阿部俊幸氏の話は私にとって衝撃的だったし、心が痛んだ。

にんげんが生き、そして死ぬということの重みが心にのしかかり、軋んだ。筆を執る気になれなくなっていた。

Trentの言葉を受けたのは、そんな時だ。

死を身近に感じた時、人は「生」を全力で燃やそうとするのかもしれない。その瞬間に人生は強い光を発する。

その光を、私は伝えたい。

そんな気持ちで、今年も「にんげんノート」を書いていきたい。

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