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社内起業or独立?10の質問で適性をチェック

投稿日:2016/01/08更新日:2019/04/09

このまま会社に残って、社内新規事業にチャレンジするか。それとも思い切って独立起業すべきか・・・

仕事に対して高いモチベーションを持ちながらも、これまで雇われ身分で大組織の中でキャリアを積んできた人であれば、過去に一度くらい独立起業を考えたことがあるかもしれません。ベンチャー経営者の成功談はよく耳にしますが、企業内新規事業のリーダーの名前が表に出るケースは少なく、実際にどんな人が社内起業に適しているかの情報は驚くほど少ないものです。筆者は長年、大手企業の新規事業開発の仕事をしながら、スタートアップの立ち上げも多数関わってきたこともあり、この手の悩みを抱えた方がしばしば相談にいらっしゃいます。

もちろん簡単に答えが出る話ではありません。私がアドバイスするにあたっての観点も、ご本人の置かれた環境、持っている資質、モチベーションの源泉など多岐にわたります。皆さんも以下の10の質問のうち、自分に幾つ当てはまるかを数えてみてください。

1. 現在勤めている企業の経営陣が、強い危機感を持っている
2. 自分自身が(やる気さえ出せば)実際に新規事業を手掛けられる立場にある
3. 職場が変わる度に、仕事のスタイルも臨機応変に変えてきた
4. 上司に反対されながらも、自分のアイデアを貫き通した経験が何度もある
5. 嫌いな相手、いったん関係がこじれた相手とも一緒に働ける
6. 権力を笠に着るのは嫌いではない
7. 事業で資金ショートしたトラウマがある、もしくは借金するのに抵抗がある
8. 家族や友人に「身の安定」や「将来の夢」を主張しなければならない、もしくは主張するのが面倒くさい
9. 自分の肩書や経歴を見映えよくしたいと思う
10. 自社の成長が最大の関心事で、プロダクトや技術へのこだわりは少ない

いかがでしょう?上記のうち、目安としてYesの項目が6つ以上ある方にはイントレプレナー、すなわち現在の会社に残って新規事業にチャレンジをするようお薦めしています。各項目に関して、少し補足説明しましょう。

1. 現在勤めている企業の経営陣が、強い危機感を持っている
2. 自分自身が(やる気さえ出せば)実際に新規事業を手掛けられる立場にある

これらは社内起業に取り組みやすい職場環境かどうかを問うものです。社内起業に意欲を燃やす若手やミドルの方から、「新規事業に対してトップが消極的なのですが、どうしたらいいか?」という相談を時々受けますが、私の回答はいつも「本気で新規事業をやりたいなら、転職しましょう」です。新規事業は一人の力では決して成しえず、必ず経営陣を含めた組織戦の様相を呈します。そして社内的なパワーを十分持たない若手やミドルが、経営陣に影響を与えて社内の危機感を醸成していくのは、大変な労力と時間を要します。意欲と能力のある人材には、そうした調整プロセスで力を浪費するのではなく、即勝負できる場(独立、もしくは新規事業に積極的な企業への転職)で実力発揮して欲しいものです。

事業開発とは縁遠いポジションにいる人が自分のアイデアを事業化していくのも、多難な調整プロセスを越えなくてはなりません。新規事業公募のような制度が現在の会社にないのであれば、やはり独立や転職によって別の場で事業創造に取り組むことをお薦めしています。

3. 職場が変わる度に、仕事のスタイルも臨機応変に変えてきた
4. 上司に反対されながらも、自分の主張を貫き通した経験が何度もある

社内起業に成功した人に多く見られるのが、いわば「軽々しい伝道師」タイプです。新規事業では、既に成功しているコア事業での「習慣」を放棄し、新しいビジネスモデルに整合した「習慣」を再構築すべきだと言われます。その意味で、過去の成功体験に引っ張られずに「仕事のスタイルを臨機応変に変えられる」ような、いい意味での「軽々しさ」が、新規事業には適しています。ただし新規事業チームには、コア事業から常に同調圧力がかかりますから、「伝道師」のように、周囲に反対されながらも「自分の主張を貫き通す」強靭さも、同時に必要です。スタートアップでもこうした資質は求められますが、コア事業の「習慣」に引っ張られるような問題は少なくとも回避できます。「身軽さ」と「自己主張の強さ」の両立に自信がない人には、社内起業はお薦めしません。

5. 嫌いな相手、いったん関係がこじれた相手とも一緒に働ける
6. 権力を笠に着るのは嫌いではない

社内起業の成功には、コア事業部門や本社機能部門とうまく折り合いをつけながら、彼らの経営資源を自チームに引っ張ってくる政治的手腕が不可欠です。ゼロから関係構築できるスタートアップに比べ、長年組織勤めをしていると、相性の悪い人物や過去に揉めた人物が社内に多少はいるものです。またスタートアップでは、ある程度の規模までは創業者が人材採用に関与して、働きたいと思う相手をこちらが選べますが、社内起業の場合、通常は会社側の都合で人選されてしまいます。必ずしも自分と相性の良い人材ばかりが集まってくるわけではありません。こうした苦手な人物とも折り合いをつけていけること、かつ自分の意に沿わないメンバーとも協働できることが、社内起業で成功するための資質の1つです。

また経営資源を他部門から新規事業チームに引っ張ってくるには、経営幹部に後ろ盾となってもらう必要もあります。権力の威を借りるのに抵抗がある人には、社内起業は向かない仕事でしょう。

7. 事業で資金ショートしたトラウマがある、もしくは借金するのに抵抗がある
8. 家族や友人に「身の安定」や「将来の夢」を主張しなければならない、もしくは主張するのが面倒くさい

当たり前のことですが、スタートアップの経営者は結果責任をダイレクトに問われます。一方、社内起業の場合は、実行プロセスでの責任を果たしている限り、結果が出なかったからと言って厳しく処分されることは通常ありません。

また良いか悪いかはさておき、企業内新規事業のチームリーダーが株主や債権者からのプレッシャーを直接感じることもほぼありません。スタートアップは、投資家の目を日々意識しながらの経営ですから、そのストレスに耐えられない人は独立すべきではないでしょう。

加えて、プライベートの環境も考慮する必要があります。まだまだ世間には「独立起業=大胆な決断」と特別視する人も多いため、独立を決断すると家族や友人から「生活は大丈夫か」とか、「どんな夢を持っているのか」といった質問攻めに遭い続ける人もいます。周囲の理解を得にくい、かつそれがストレスになる人は、やはり独立起業は避けた方が無難でしょう。

9. 自分の肩書や経歴を見映えよくしたいと思う
10. 自社の成長が最大の関心事で、プロダクトや技術へのこだわりは少ない

仕事へのモチベーションの源泉が何か、仕事の選択において何を重視するか等も、考慮したい点です。世間的に名の通った企業の名刺を持っていることに誇りを感じるか、誰も知らないベンチャーでも「自立した環境」に心地よさを覚えるか。むろんどちらが正解というものではなく、本人の価値観次第です。そして「大企業での肩書は捨て難い」と心の底で思っている人には、やはり独立起業は向いていません。理屈では「そんなことはない」と自分を説得できても、心で吹っ切れていない場合、浮き沈みの激しいスタートアップの環境は、本人にとって毎日が苦行のようになってしまいます。

また人事ローテーションを行っている企業の場合、せっかく社内新規事業を立ち上げても、数年もすれば強制的に人事異動させられます。この時に「自社の成長に貢献できた」という達成感を覚える人もいれば、「自分が愛している製品/サービスを奪われた」という喪失感を覚える人もいます。前者のタイプの人にこそ、社内起業はハッピーなキャリア選択だと言えます。

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