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日本は秩序を維持し、普遍的価値を重視せよ~東アジアの外交戦略

投稿日:2015/06/12更新日:2019/04/09

外交政策研究所代表・宮家邦彦氏×衆議院議員・柴山昌彦氏×Center for American Progress・Glen S. Fukushima氏×東京大学准教授・川島真氏
G1サミット2015
第8部 分科会B「東アジアの新たなパワーバランスと日本の外交戦略」

中国の台頭などによる東アジアのパワーバランスの変化に対して日本のとるべき外交戦略とは?力による現状変更が行われようとする中、普遍的価値の体現、米国とのさらなる関係強化、歴史的認識への有効なアプローチなどによって、秩序の維持をはかることを説く。現状維持のため、パワーバランスの変化を生みだす多くの要素にどう対処するか、グローバルな視点から考察する。(肩書きは2015年3月20日登壇当時のもの。視聴時間1時間15分36秒)。

柴山 昌彦氏
衆議院議員
Glen S. Fukushima氏
Center for American Progress Senior Fellow
宮家 邦彦氏
外交政策研究所代表
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
川島 真氏(モデレーター)
東京大学大学院総合文化研究科
国際社会科学専攻(国際関係史担当) 准教授

【ポイント】
・現在は、日韓の同盟関係がほころび、中国とのつきあいが非常に難しい局面。日本の戦略は、法と人権の秩序を第一義に、国際的な活動と連帯する原理原則をうちだすこと。また、力による現状変更の動きなどに対して、目に見える形で待ったをかけること(柴山氏)

・アメリカの今のアジア政策について。一つに、日本の自民党官僚と経済界の、アメリカの民主党との関係の弱さが問題。二つに、アジア系アメリカ人の力が強まり、外交政策に対しても多大な影響があることへの認識が必要。三つに、歴史問題に関する対応(フクシマ氏)

・オバマ政権のアジア政策における6つの構成要因は重要。1. 二国間における同盟の強化。2. 台頭しているアジアの国との関係強化。3. 既存の多国間機構との関係の強化。4. 貿易と投資の強化。5. 安全保障上のプレゼンスの強化。中国を念頭においた、二国間の同盟条約がない国との関­係強化。6. 民主主義と人権の拡大(フクシマ氏)

・世界の動きは、グローバルなパワーシフトによって、民族主義と旧帝国主義的な発想が合体したものになる可能性がある。力による現状変更が行われようとする中、日本は今の秩序を維持し、普遍的価値を体現することで生き残る必要がある(宮家氏)

・現在の国際政治のルールは、自由・民主・法の支配・人権・人道という普遍的価値。この普遍的価値で説明できないことに勝ち目はない。勝つため、生き残るための知恵を身につけるべき(宮家氏)

・アメリカと共同歩調をとり既存勢力を維持する上で、日米・日中関係が大事。普遍的価値の重視は日米関係の重視につながり、パワーバランスを重視すると、台頭する中国とどう向き合うのかが問題。東アジアのみならず、中国系アメリカ人の台頭や、よりグローバルな動きも見なければならない。グローバルに、あるいは東アジア内で、あるいはよりミクロな視点で日米中関係をどうとらえて、どう向き合うのか(川島氏)

・親米派VS親中派として政治の世界が語られる。安部総理が親米派で、アジアに強硬な主張をするというステレオタイプがある。日本がこのステレオタイプで進むと、日本のアジアへの強硬的な動きに対する懸念が広がり、強大化する中国に対する同盟関係として対応していくべき日・米・韓の連携がうまくいかなくなる。日本は、保守的なメンタリティーを一面でもちつつ、中国や韓国、ロシアとの関係構築を行うことが必要(柴山氏)

・中国の外交は五カ国と国境を接していることもあってグローバル。日本は、中国との衝突、歴史遺産にもとづく争いをいかに避けるかがポイント。この20年ほどは、衝突をさけることで友好とすべし。国際社会の一員として立場ある責任を果すべきことを中国に説く一方で、海洋国家の同盟を結び、東アジアの現状を維持する(宮家氏)

・日米中関係については3点。1. 日本の現状維持のために、中国の新しいアプローチに対応する柔軟性が必要。2. 歴史問題と普遍的価値観について。韓国とアメリカ、中国が歴史認識を共有しているが日本は異なるという議論にどう対応するか。3. 英語で理論的に説明できる人材の育成に対する努力不足(フクシマ氏)

・中国の発想はものすごいが、本当に実現できるのかが重要。日本は、西欧とアジアの文化との折り合いをつけてきたが、中国にそのプロセスはない。そういう対話ができれば、東アジア全体のグローバル化に資するのではないか(宮家氏)

・間違いなく力が増加する中国に対して、価値観と利益を共有する日米が協力し、ケースバイケースで案件を検討する。もっとも重要なのは、日本がアメリカに理解してもらう努力。日米の対話、ディスカッション、交流が必要(フクシマ氏)

・日本は、対外的交流や外交的主張や政策の情報を発信する努力が必要

・中国との関係については、経済的相互依存もあるものの、普遍的価値を伴わなければプレッシャーをかけることも必要。歴史問題は、今の戦後訴訟・国益の問題に大きな骨となってつきさる。現在の国益に関わる問題として発信すべき(柴山氏)

・東アジアのパワーバランスの変更を考える新たな日本の外交戦略では、かなり複雑な方程式をとかなければならない。日米同盟や日米韓・日米豪等でさえも変数になりうる時代の中で、もう片方の大きな変数である中国をどう見るかということが重要(川島氏)

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