ベンチャー×地域の“破壊的”イノベーションが日本を変える[1]
高島宗一郎氏
高島宗一郎氏(以下、敬称略): 今回のパネルディスカッションは、地方創生に向けた新たな市場としての地域をテーマに開催します。
ベンチャーの皆さんが素晴らしい製品を生み出した、もしくは素晴らしいサービスを考え出した。そうすると、次に、それを実際に使っていくフィールドがないといけないわけですよね。そのフィールドを「地方」と定義することで、「地方創生を進めていこう」というのが本日の提案です。
しかし、単純に地方をフィールドにするといっても、東京でつくられた製品やサービスをただ地方に持ってくるだけでは地方創世にはなりません。地方創生の本質は、地方にどれだけ仕事ができて、地方がどれだけ生き生きとできるかです。
そんな中で、今日は国の立場から、小泉内閣府政務官をお招きしています。それから、市長として現場もあずかってらっしゃる鈴木市長と、実際に地方の資源を磨き上げたり、ストックを生かしたりする事業を実際に実施しているベンチャーの皆さまもお招きしています。
それぞれの立場からお話をしていただき、どう日本を再興させるかを考えていきたいと思います。
まずは国の立場として、「地方創生における仕事とは」「地方に期待することとは」という話を、小泉内閣府政務官に伺いたいと思います。
小泉進次郎氏
小泉進次郎氏(以下、敬称略): 改めまして、こんにちは。まず私のほうからは「地方創生って言葉は聞くけれども、具体的に何?」という話をさせていただきます。
その前に、皆さんに質問です。この中で今、自分が住民票を置いているところの人口を言える方って、どのくらいいますか。
高島: えっ? みんな、わからんの?
小泉: いや、僕、いつもこれ聞くんですけれど、皆さん知らないっていうのが現実なんですよ。
高島: はあー。
小泉: おそらく知っている人は1割もいないですよ。
ちなみに私の住民票があるのは神奈川県の横須賀市ですけど、人口は40万6000人。日本全国1723市区町村中、43位です。隣の選挙区の三浦市は人口4万6000人で、1723位中555位です。
皆さんにも、このイベントをきっかけに、スマホでもいいので、あとで自分が住んでいるところの現実を調べて知ってもらいたい。そこから始まるのが地方創生だと思っています。
小泉: 地方創生というのは、すごく簡単に言ってしまうと2つのことです。
1つは東京一極集中をやめるということ。2つ目が、日本全体の人口減を食い止めるということ。この2つを地方創生の目的だと考えてもらって差し支えないと思います。
東京一極集中をなぜ変えていかないといけないのかについて話す前に、東京一極集中の現状がどうやってできているのかを話します。
まず、地方に2つの「流出」があります。1つ目は、地方の若い人たちが高校から大学に進学するときに起こる、地方から東京への流出。2つ目は、地方の大学を出た若者が東京で就職をするときに起こる流出です。この2つの流出の結果、若い人たちが地方から減っていく。
つまり、地方では若い人が出ていってしまい、そのまま戻らないから人口が減っていくんです。ところが、東京は東京で、47都道府県で出生率が最低。つまり、地方から人が集まって来ることで人口がもっている。
だから、人材の供給源である地方の人口が減少してしまうと、東京の持続可能性もなくなる。つまり、若い人が流出し、東京に一極集中していく現状が、日本全体の人口減に直結しているのです。
今後、地方に対して何も手を打たなければ、今1億2000万人いる人口が2100年には4000万人に縮小してしまいます。だから、この状況を変えなければいけない。
そのためには、都市から地方へという人の流れをつくっていくことで出生率も上げなければなりません。さらに、「東京がすべてじゃない」という、新しい発想をもつ人が増えなければなりません。
そのために、政策資源を投入していこうというのが、マクロな見地からの地方創生です。
小泉: 地方創生のために、国に何ができるか。1つは、おカネの支援。税金で新しい交付金などを配分します。
次に、人の支援。今までなかなか人材が送り込まれなかった、人口5万人以下の比較的小さな規模の町にも、霞ヶ関の官僚や学者、民間のシンクタンク研究者などといった人たちをマッチングして送り込んでいきます。
最後に、情報の支援をします。具体的には、地方経済分析システムの「RESAS(リーサス)」の提供。一般の方でも閲覧可能なデータベースです。
どういった情報が閲覧可能かというと、一番税金をその自治体に納めている企業はどこか、そして一番雇用を生んでいる企業はどこか、観光客が来ているとしたら、どこに最も長い時間滞在しているのか、人口流出があるとしたら、どこの自治体に引っ越してしまっているのか、流出している人の世代や性別──。今言ったことを、すべてデータで提供します。
このデータを自治体がどのように活用できるか。一例を挙げると、企業が市内・市外・県外、何社と取引をしているかがRESASでわかる。市内で材料調達から製品づくりまでして、それを市外に売って外貨を稼いでいる地元企業を特定し、応援していく流れをつくることも考えられますよね。
このように地場産業を強くして、市の税収を上げ、それをより質の高い行政サービスとして返していくという好循環を生むことができる。
これは結構、革命的なことだと僕は思っています。今までのまちづくりは、ちまたで言われる「KKO」、つまり“経験”と“勘”と“思い込み”で行われていると言われていました。
しかし、RESASのデータが自治体にだけでなく、一般市民にも公開されるようになると、地方議会や自治体の緊張感も高まる。「なぜこの政策をやっているのか」「なぜこの補助金を使うのか」といった説明責任が問われるからです。
さらに、毎年データが更新されますから、効果のない政策や補助金が明らかになり、無駄遣いの解消にもつながります。つまり、より説明責任の高い、クリアな政治ができるようになる可能性があるのです。
このようなエビデンスに基づいた政策を打って、どこまで「東京から地方へ」の人の大逆流を起こすことができるのか。これが、これからの地方自治体に問われていることだと思います。
→ベンチャー×地域の“破壊的”イノベーションが日本を変える[2]は8月11日公開予定
※開催日:2015年4月29日