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東京一極集中を変えるなら徹底的に!地方も自立を!

投稿日:2015/05/21更新日:2021/11/30

"関西の時代" 新たな国づくりに向けて果たすべき役割とは[4]

※前回はこちら

秋山:では、そろそろQ&Aに入りたいが、ここで改めてG1サミットにおける3つの行動指針を確認したい。今、事実関係についてはフロアで共有できたと思う。そうであれば、たとえば東京一極集中を、自分たちがどのように動くことで変えていくことができるのか。政治が一極集中にしてきたのであれば、それに対して政治や民間で、あるいは両者で連携して何ができるのかという提案とともに議論を進めたい。また、思想よりも行動。「こういうアクションを取れば、こういう結果につながるのではないか」と。また、一人ひとりがリーダーとしての自覚をする。この三つの精神に則って、残りの時間、ぜひ皆さまから積極的なご発言をいただきたい。まずは冒頭で質問なのか提案なのかを一言おっしゃっていただいて、そのあと簡潔にお話しいただければと思う。(58:28)

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会場(宋美玄氏:産婦人科医・性科学者):提案になる。今は東京に拠点を移しているが、以前ただの臨床医だった私はあるときから情報発信を始め、今は本を出版したりレビのコメンテータをしたりしている。ただ、東京でないとそうした活動が成り立たない。関西は全国への情報発信が東京と比べて少なく、出版社の数も少なければ放送局も地方限定だったりする。インターネットで全国へ発信する方法はあるが、編集者やライターといった方々が関西では圧倒的に少ない。だから、たとえば関西の大手企業にそうした出版部門やサイト運営部門を持っていただけたらと思う。優れた文筆家の方は関西にも大勢いらっしゃるが、普通の人々が関西から全国へ発信できるような機会を大きな企業につくっていただけたらと思っている。

会場(堀義人氏):質問と提案になる。政治が中央集権と一極集中が進めたことに対して、知事会としてはどのように考えていて、どういった行動を取ろうと思っていらっしゃるのだろう。また、来年のG1サミットでも道州制をテーマとしたセッションを持とうと思っている。ぜひとも皆さんに参加していただいて、あるべき姿を議論してもらいたいと感じた。

会場(更家悠介氏:サラヤ株式会社代表取締役社長):西村先生と前原先生のお立場は近いように感じたので、改革はぜひ仲良くやっていただきたい(会場笑)。ちなみに最近は、たとえば大阪の道頓堀に夜11時頃行くと外国の方がたくさんいる。これはビザの発給条件の緩和等が影響しているのだと思うが、つまりそうしたことを早くやっていただければ人は集まるという話だと思う。大阪や関西が最も繁栄していた時期は、敦賀・舞鶴から大阪まで一つの経済圏になっていた。従って、そこは環日本海的発想で政治的にも平和な環境をつくっていただき、そこにビジネスのビジョンを入れていただくことが大事になるのだと思うので、それをご提案したい。

会場(星野佳路氏):地域連合や道州制に関して、壇上の皆さまは地方分権も含めて賛成だけれども政治的なハードルが高いとのお話だった。それは、具体的にどういったハードルになるのだろう。逆に言えば、我々のような事業者や企業家が、地方でどういった行動を取れば道州制に賛成している政治家の皆さまを後押しできるのかということをぜひ教えていただきたい。

会場(辰巳琢郎氏:俳優):これからは道州制が相当大きなテーマになると思うが、そこで反対している相手がよく見えない。なんというか…、程度の差や政党の違いはあったとしても道州制には皆さん賛成だと思う。そのなかで、「道州制はあかん。東京一極集中にすべきや」と、声を大にしている人間がいるのならもっと炙り出してはどうか(会場笑)。そういう人たちともっと戦う方法がないのかなと感じた。

秋山:では、各質問への答えも含めて御三方から締めのコメントを一言ずついただきたい。

前原:何が重要かというと、まず、憲法には地方自治ということが書かれている。中央集権というのは明治政府から続く流れだけれども、もちろん憲法には地方自治ということが明記されている。従って、道州制の立法に向けては当然ながら基礎自治体や中間自治体の意向を聞かなければいけない。

たとえば、今は国と地方の法定協議機関というものができた。で、私もそこに何度か出たことがあるけれど、そこではたとえば市町村会の会長と知事会が対立することも多い。それで、まったく意見が異なるためにまとまらない。それで、たとえば国の出先機関の委譲という問題すら前に進まないことがある。簡単に言うと、「市町村会として分権を進めて国に頭を下げるのはいいが、知事に頭を下げるのは嫌だ」と。そういう話が本当に多い。くだらない話だ。ただ、それぞれの役所がその権限を握っているので…、最終的には政治の意思だと思うが、先ほどからお話している通り、これはすごくハードルの高いテーマ。政治側で「これをやるんだ」という相当強い意思を持たない限り、実現できないようなテーマだと思う。少子化や財政の問題も同じだけれども、そうした喫緊の問題があるなかで道州制の問題もやっていくのは相当難しい。従って、まずは先ほどからお話をしているように、広域連合を進めていく。そのうえで具体的なテーマを実現することが国民の理解や意見の集約にも役立つと思う。

民間の方々もそういうテーマをぜひ…、まさに観光では星野さんがやってこられていることだけれども、それ以外のテーマでも、しっかりと広域連合でやるべきだというような民意があれば、状況や環境の整備は進んでいくと思う。

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西村:恐らく日本は、まだ新興国のようなイメージでずっとやっているのだと思う。新興国モデルから抜け出せない。たとえば中国では上海や深センに集中投資して、新しいことを進めている。すべての都市に対してそれができないから、どこかに集中させていくわけだ。日本の場合も、高度成長期は東京を中心としながら、太平洋ベルト地帯で阪神まで新幹線を通し、東名を通して、そこを一番の軸として発展させてきた。それから地方をやろう、と。その1点集中でやっていく新興国モデルから、今も恐らく抜け出せておらず、山田知事が言われるように今も東京から考えてしまう。

実際、地方創生ということを東京が言い出すのも変な話だ。川上村の村長からすれば、「自分たちはもうやっとるわい」という話になると思う。隠岐島だってそうだ。島外から高校生が何十人も集まっている。「もう自分たちでやっとるわい」という話だと思う。ただ、まあ、国から何か支援してもらえるんなら、もらえるものはもらおうという発想になる。結局、国から言われる前に地方がやるのは当たり前。淡路島は淡路島で特区をやったり、いろいろやっている。国にも頼みに行くけれども、頼みに行くという発想自体が間違っているわけで、「自分たちでやれよ」というのが基本だ。

だから、今は矛盾したようなことを言っているけれど、国として地方創生というのは大事なテーマになるけれども、地方は自らやりましょうということだと思う。で、東京は東京で、東京中心の新興国モデルという発想から抜け出さなきゃいけない。で、地方にはどんどん自由にやってもらう。特区ではいろいろご迷惑かけているようだし、知事のご発言に関しては私も「その通りや」と思う。まあ、それはまた確認しておくが、いずれにせよ、どんどんやっていく。道州制も進めたらいいと思うし、自由にやらせる。特区はその走りで、さきがけとしてやっていくという話だと思う。

あと、宋さんのご指摘だけれども、関西でベンチャーを起こそうとしたりしたとき、そのインフラがないわけだ。支援する人材が少ない。編集者も国際弁護士も少ない。ただ、企業には余剰人員がいると思う。良い人材に関してはなかなか余っているともいえないと思うけれども、大手のP社やS社のような電機メーカー中心に、仰山いらっしゃると思う。そうした特定分野でずっと仕事をしてきた人たちを、単なる早期退職の対象者にしたりするよりは…、あるいはサムソンに引き抜かれたりするよりは、地域で技術の支援をする会社に行ってもらうというのもあると思う。あるいはそういうベンチャーを応援するインフラやコンサル的なことができるのなら、そういうところはぜひ応援をしたい。関西には人口の集積も企業の集積も大学の集積もあるのだから、そこで応援する体制を皆でつくれば、ベンチャーでも出版でも、もっといろいろなことに新しくチャレンジできると思う。ぜひ、皆で発想を変えながら関西を発展させていきたい。

あと、もちろん前原さんと仲悪いということはありません。同い年だし(会場笑)、超党派の勉強会でご一緒することも多い。従って、一緒にできるところは一緒になって、ぜひ前を向いて進んでいきたいと思う。

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山田:道州制について知事会でどうしているかというと、とにかく「まな板の鯉が暴れないようにしている」状態だ。要するに、我々知事会は道州制が議論されるとき、それ自体に「〇」「×」はつけない。そのうえで、良い道州制になるよう、そして悪い道州制にならないように意見を言うということを徹底している。知事会のなかでも意見は分かれてしまう。道州制で州都が来ると思っているところの人は賛成(会場笑)。で、州都が来ないと思っているところは皆反対。違うのは佐賀と山梨ぐらい。そういう風にはっきり色分けされている。そんな連中がものを言ったってまとまらない。だから、我々は道州制の検討委員会をつくり、「良い道州制になるようにだけ意見を言おう」と。自分の利害関係で知事会から発言するということは、私はさせていない。

で、それぞれの地域が動いていて、関西の場合はご存知のように関西広域連合をつくった。実は、これには長い歴史がある。橋下さんがつくったものじゃない。山田、太田(房江氏:大阪府知事)、そして井戸(敏三氏:兵庫県知事)の3人で合意をしたものだ。そのあと、大田さんが橋本さんに代わったので改めて山田、橋下、井戸でやった。そこで、橋下さんは「道州制だから広域連合なんて…」と言っていたが、「そんなところにはすぐ行けないでしょ」と。まず関西で一緒にどこまでできるかを見る必要がある。それでダメならそれを踏まえて次のことを言うのが論理的な筋だ。

道州制にすればすべて良くなるなんていうことはないし、道州制にもいろいろある。今まで、地方制度調査会でもたくさんの意見が出てきた。6~7つの「大」道州制もあれば、17ぐらいの「中」道州制という意見まである。だから、私は「それなら一番現実的なのは京都と滋賀が合併することだ」と。「それもかつての道州制案のなかにある。そこで一番大切なのは、大きなところが均衡を取って小さなところに配慮を示すことだ」と言った。それをしない限り道州制はできない。「たとえばアメリカの州のように経済と政治を分離して発展の均衡を取っている。そういうことをやっていかないとダメです」と。そうしないといつまで経ってもまとまらない。単に強いものが弱いものを潰すような形でやっているから話が進まない。道州制にするなら一番人口のあるところは「止めます」と言って、逆にどちらかというと人口の少ないところに州都を持ってきましょうと宣言すること。それをしてくれるなら本物だ。そうでなければ、単なる自分たちのための政策にしかならない。関西で最も財政の状態が悪いのは大阪だ。いつも言っているが、「京都は財政いいですな」と。「一緒になったらそのぶん使わせてもらいますわ」(会場笑)というのがあるうちは、「やっぱり…、ちょっとね」と。

たとえばシンガポールの人口は500万で、デンマークも550万。兵庫県と同じ大きさなのに、シンガポールはあれだけ発展していて、デンマークも世界一幸福度の高い国と言われている。だから、500~600万あれば大抵のことはできる。80万や100万では無理だと思う。問題なのは、何がそれを防いでいるのか、だ。道州制によって大きくして力を付けるのはいいけれど、そのとき防いでいるのは何か。日本ではマスコミから何から何まで東京一極集中だ。アメリカであれば、サンフランシスコには「サンフランシスコ・クロニクル」「サンフランシスコ・エグザミナー」、ロサンゼルスには「ロサンゼルス・タイムズ」、シカゴには「シカゴ・トリビューン」、ニューヨークには「ニューヨーク・タイムズ」がある。でも、日本ではすべて東京に一極集中している。テレビもそうだ。だから、道州制をやるならマスコミもぜんぶ変えていって、本社機能はぜんぶそちらに移転させる。そういう思い切った道州制をやったとき、初めて良いものになるのではないかなと思う。(会場拍手)

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秋山:このテーマについては来年3月に予定されているG1サミットでも引き続き議論していきたいし、その際は改めて壇上御三方にもご協力をいただきたい。今日は本テーマに相応しいパネリストの皆さまに、大変お忙しいなかでご参加いただいたこと、改めて感謝申し上げたい。ありがとうございました。(会場拍手)

※開催日:2014年10月18日、19日

講演者

  • 西村 康稔

    衆議院議員

    1962年10月15日生まれ、54歳。神戸大学附属明石中学校、灘高校、東京大学法学部卒業。通産省入省後、米国メリーランド大学院で国際政治経済を学び修士。1999年、通産省環境立地局調査官を最後に退官。2003年衆議院議員総選挙において初当選。2009年、自民党総裁選立候補。2012年に4期目の当選を果たす。この間、外務大臣政務官、党政務調査会副会長、党改革実行本部副本部長、影の内閣経済産業大臣などを務めるとともに、議員立法で「海洋基本法」「宇宙基本法」等を制定。現在、自民党において「日本・AU(アフリカ連合)友好議員連盟」事務局長などを務めるほか、超党派の「新世紀の安全保障を確立する議員の会」事務局長、「日本・インド友好議員連盟」事務局長等、要職も多数。著書に、『繁栄か衰退か 岐路に立つ日本』(プレジデント社)、『新(ネオ)ハイブリッド国家 日本の活路』(スターツ出版)、『リスクを取る人・取らない人』(PHP研究所)、『国家の生命線』(PHP研究所)などがある。
  • 前原 誠司

    衆議院議員

    1962年、京都市左京区に生まれる。京都大学法学部に入学、恩師である故・高坂正堯教授のもとで国際政治を専攻。大学卒業後、1987年に財団法人松下政経塾 第8期生として入塾。1991年、京都府議会議員選挙に左京区から出馬、28歳で初当選を果たす。1993年第40回衆議院議員総選挙における初当選以降、現在まで7期連続当選中。民主党代表を経験、民主党政権期に国土交通大臣、外務大臣、国家戦略担当大臣等を歴任。現在は、民主党行財政改革総合調査会長を務める。専門分野は「外交・防衛」「徹底した行政改革」「住民参加型分権社会」。座右の銘は「至誠 天命に生きる」。趣味はSLの写真撮影。
  • 山田 啓二

    京都産業大学 理事・法学部法政策学科教授 前京都府知事

    昭和29年4月5日、兵庫県洲本市生まれ。東京大学法学部卒業後、昭和52年自治省(現総務省)に入省。和歌山県地方課長、国際観光振興会サンフランシスコ観光宣伝事務所次長、高知県財政課長等で内外の地方自治を現場で体得。自治省行政局行政課課長補佐、同理事官で地方分権の制度を担当。その後、内閣法制局第一部参事官では、政府の憲法解釈の答弁づくりや法律解釈にあたり、平成11年京都府総務部長として京都府に赴任。京都府副知事を経て、平成14年4月から京都府知事。現在4期目。全国知事会会長。

モデレーター

  • 秋山 咲恵

    株式会社サキコーポレーション ファウンダー

    1994年株式会社サキコーポレーション創業。デジタル画像処理技術を応用した産業用自動検査ロボットメーカーとして世界市場でブランド確立。2018年社長退任。 ソニー株式会社、日本郵政株式会社、オリックス株式会社、三菱商事株式会社社外取締役。国立大学法人奈良女子大学工学部客員教授(起業論)

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