堀: ということで、今日は会場の皆さまにも声を挙げていただこう。G1には「批判よりも提案を」「思想から行動へ」というルールがある。そこで、「こういうことをやるべきだと思うし、自分はやっていく」というコメントを皆さんからいただきたい。(34:59)
会場A: 我々はグローバル人材の積極的登用を企業戦略に掲げている。また、日本人の方々に関しては、力のある方々が大きな責任を負うぶん、より大きな報酬を手にするということをシンプルに実現したい。しかし、まず外国人の雇用に関してはビザ取得までの期間が国によってまったく違う。グローバルに通用する高度なスキルがあっても3~4カ月待たされるのがざらだ。また、身元保証を私がしてあげないと国が許してくれないということもある。さらに、法律上の婚姻関係ではない夫婦の形が海外では増えているけれど、その場合は奥様にビザが下りず、ご家族で来日できないというケースが実際にある。あと、日本人の雇用に関して言うと、不利益変更の制限がある。より頑張っている人により多くの給料をあげたいと考えているが、そうでない方の給料を落とそうと思うと、恐らく1年間で10%程度しか、双方の合意がなければ落とせない。雇用の面ではそういう部分が非常に苦しく、そういうところを変えていきたいと思っている。(35:26)
会場B: 世界展開を見据えた規制およびルールづくりによって、日本の産業界に大きな波及的効果がもたらされると思う。まず、日本のルールや技術標準で世界をリードでき、多くの市場を巻き込むことができそうな分野に関しては、徹底的に同分野の産業生態系を世界に広めて欲しい。一方、日本がどちらかというとフォロワーで、たとえば欧米の仕組みで戦っているところが世界では多い分野に関しては、世界最大の市場を真似る。で、彼らの体系をそのまま日本に入れて欲しい。それができると、日本企業は日本市場と世界市場で対応を分ける必要がなくなり、同一のコアコンピタンスや似たような戦略で両方の市場を攻めることができるようになる。そういう考え方に則って、規制改革を進めるという大方針を最初に立てることができたら、いろいろなことが整理しやすくなるし、結果として日本企業のグローバル展開にかかるコストを大きく下げることにもつながると思う。(37:24)
たとえば自動車業界で言うと、今はヨーロッパもアメリカも日本も、アジアにさまざまなルールを持ち込もうとしている。そこで日本はどちらと組んで、そのルールをアジアのスタンダードにしてしまうのが良いのか。そこで勝ちやすい連合をつくると、アジアに日本市場と近いものを持ち込んで戦いやすい環境をつくることができると思う。逆になんらかの仕組みを海外から学んで導入しても、日本の都合で改変を重ねれば重ねるほど、結局は日本市場がユニークなものになってしまう。で、日本企業はその対応に追われてしまうと。従って、「どうせ導入するのなら、基本は丸ごと導入してください」というやり方にしてはどうだろうか。(39:19)
堀: 規制改革会議の場では海外のルールもかなり参照しているのだろうか。(40:33)
宮内: 私の認識では、「日本はもっと自由化しろ」という圧力というか要望が、アメリカとEUからかなりあった。「日本が独特のルールを設け過ぎていて非関税障壁になっている」と。だから、私がやっているときはUSTR(アメリカ合衆国通商代表部)にあたるようなところの話をずいぶん聞いていたし、できるだけ要望を聞くように努力はしていた。ただ、そこは日本の壁のほうがはるかに強く、なかなか動かない。(40:52)
堀: 一方では国内で規制を設けつつ、グローバルスタンダードを意識して海外からも声を挙げてもらうということをかなりやってこられたと。(41:35)
宮内: これは、どちらかというと規制改革の話よりも、行政指導や産業政策の話に近いと思う。きっちりした規制があるわけでなく、なんとなく業界がそのルールをつくって皆が従っているようなケースだ。規制という壁でどんと止まっているかというと、そうでもない。見えるようで見えない壁だと思う。(41:47)
会場C: 羽田空港の拡充が必要だと思う。第5滑走路をつくって24時間化することが、恐らく東京そして日本の国際化にもつながる。ただ、そこで竹中先生も別セッションでおっしゃっていた通り、夜中に住宅地の上を飛べない等、いろいろな規制がある。そこを何らかの形で突破していくことが必要ではないか。「少数の犠牲の上に成り立つ」という言い方は非常に良くないのだけれど、原発と一緒だと思う。日本経済にとって何が大事かという大きなビジョンのなかで進めなければいけないことをぜひ進めていきたい。(42:23)
会場D: 一番身近な規制は大きな組織のなかにあると思う。会場には改革をしていこうとする経営者の方が多いと思うが、やはり一番の抵抗勢力は社内にいらっしゃる方々ではないか。歴史ある大きな会社ほどその傾向が強いと感じるが、そこで怯まず、潰れず、強いリーダーシップを発揮することが大事だと思う。そうした社内抵抗勢力に志半ばで破れてしまう人は多いと思うが、会場の皆さま方とともに僕自身は強い心を持ってやっていきたい。そこで、社内の抵抗勢力と戦っていくためのヒントや心構えがあればご示唆をいただきたい。たとえば、ある事業から撤退する、あるいは事業を売却するとなれば、当然ながら同事業部にいる人たちは止められたら困ってしまうということで、必死に再建プランを描いたりすると思う。(43:23)
宮内: 社風のようなものが重要だと思う。歴史を振り返ってみても会社は同じことをやっておればどんどん削られていくものだから、新しいことに次々とチャレンジしていかないといけない。そういう雰囲気が社内に脈々と受け継がれていなければ、何かを変えることに抵抗が出るのではないか。私は社内でも、「朝会社に来て机に座ったとして、昨日の続きはするなよ」と言っている。「新しいことをしてくれ」と。昨日の仕事のやり方は、昨日の世の中でベストだった。「でも、今日は世界が変わっているよ」と。だから今日のベストを改めて探さないといけない。また、ここでいらんことを言うのが私の癖だけれど、毎日同じことをしなければならないのは役所の戸籍係だけだと。世の中は毎日変わっているわけだから、会社だって変わらないといけない。そういう雰囲気を会社のなかにつくっておけば、少しずつ抵抗も薄れるという気がする。(45:07)
それともう1つ、羽田拡充や外国人雇用の提言に関して申し上げたい。日本の問題は、法律にきっちりと書いていなくても担当の行政当局で裁量行政できる余地が非常に多い点だ。昨今は海外からの観光客が増えたというけれど、日本がいきなり魅力を増したわけじゃない。ビザの発給をかなり緩くしたら来るようになっただけだ。では、ビザの発給を緩くするというのは誰が決めたのか。法律が変わったわけではない。これは法務省入国管理局の裁量行政だ。なんとなく、「世の中や政府が観光立国と言っているからビザを緩くしよう」と。(46:33)
羽田の問題も同じだ。私も航空自由化については議論を重ねた。当時、運輸省は「飛行機の発着は何分かに1度しかないから、これ以上は増やせない」と言っていたけれど、海外の事例を調べたらその倍ぐらい出入りしている。で、それを言うと今度は「都市の上を飛んでいる」とかなんとか言う。それで、こちらもありとあらゆることでやって、最終的には発着回数が猛烈に増えた。結局、空港は近隣住民から文句を言われないほうがいいと考えて、飛行機に乗って動きたいというお客様のほうを向いていない。そんなふうに、日本では供給者の論理が行政を掴んでいて、そこに最大の裁量を働かせている。規制改革というのは法律を変えていく作業だ。しかし、法律に寄らない部分、なかには法律にまったく書いておらず、準拠する法律がないのに行政指導をやっているようなケースがある。その辺についてもずいぶんやり合った記憶がある。(47:40)
堀: 裁量行政が多いということは、逆に言えばビザ緩和のような形でポジティブに変えることもできるというお話だと思う。「法律のどこに書いてあるんだ? 書いていないならやれ」という形で進めることもできると感じた。秋山さんはどうだろう。裁量行政をポジティブに変えてくような方法論や成功体験が何かあればお伺いしたい(49:03)
秋山: 裁量行政とコインの表裏になるような話だけれど、省庁の方に、「こういう課題があるので、これを解決したらどうか」という規制改革の提案をすると、よく返ってくる決まり文句がある。「いやいや、法律や制度のうえでは今でもできるんです」。それなら、なぜ現実がそうでないのか。まずは宮内さんがおっしゃったような、裁量行政という範囲内のさじ加減によってできなくなっている部分がある。これが1つ。(49:27)
それともう1つ。それを突破してでもなんとか進めようとするプレーヤーが少ない。どちらかというと行政の裁量権を忖度するような形で、「いや、やっぱりできない」と。それを理由にしてチャレンジしないという部分がいまだ多いと思う。なぜか。たとえば国家戦略特区におけるいろいろな提案のなかで、「これを変えてくれたら我々はこういう新しいチャレンジします」といった提案はいただいている。でも、その一方で同じチャレンジを規制改革にまったく寄らず、すでに実現している方が世の中にたくさんいらっしゃる。そういう方に、「なぜそういうことができるんですか?」と伺ってみると、そこは知恵と工夫と努力でその方々なりに突破口を見つけ、イノベーションを起こしていらっしゃるわけだ。これも重要な事実だと思う。(50:06)
堀: 実は、グロービスは小泉内閣時代、構造改革特区で株式会社のまま大学院になった。竹中さんや宮内さんによるご尽力の賜物だと思う。ただ、グロービスは当初懐疑的で、「本当にできるのか?」と、最初は手を挙げなかった。しかし、先になったところに聞いてみたら「プロセスを含めて非常に良かった」と言う。また、文科省もそうした方向に賛成しているという声を聞いた。それで株式会社のまま大学院になり、その後日本で初めて株式会社から学校法人に転換しという経緯がある。(51:13)
そうした経験から申し上げると、文科省に関しては前向きだと感じる。ほとんどのことについて「問題ない」と。現行規制の範囲内で、かなりの部分に関して前向きに対処していただけた。だから僕は文科省の行政に関してまったく不満はない。また、グロービスでそういうことができるのなら他の大学も、たとえば教授会で意思決定する部分を減らせばいいじゃないかと思っていた。結局、法律上は可能であっても文科省の行政と関係ない抵抗勢力がいて、それによって変わっていない面がある。(50:20)
また、そうした行政の裁量範囲は現在すごく減っていて、特に安倍政権になってからは、あるいは下村大臣になってからは文科省の考え方も相当変わって前向きになっていると僕は思う。従って、行政に不満があった場合は声を出していただいたほうが良いと思う。「この部分を変えてくれ」という声があれば、恐らく変わっていくことは多いという気がする。本来であればそれを変えることでテコの原理のように大きく変わるものがあるのに、それが知られていないというケースは多いと思う。だからなおさら、「この部分を変えていこうじゃないか」といった声を挙げていきたいと思う。(52:38)
会場E: 私はエネルギー業界で21年間、日本のエネルギーを少しでも安くしようということでコツコツやってきた。で、昨今のエネルギー政策に関しては既得権益もかなり打破されてきた部分はあるが、それによって末端では電気代が1.3~1.4倍になっている現実もある。もちろんそこには原発停止も大きく影響している。ただ、それ以外にもFIT(固定価格買取制度)をはじめとしたさまざまな政策のなかで、なにかこう、大きな権益同士の争いになっている気がする。要するに、末端の電気代が上がることと既得権益を打ち破ることはイコールなのかというのと、私は少し疑問を持っている。その意味では、今後さまざまな既得権益と戦っていくうえで、「本当の受益者にとってプラスになっているか」という視点を一つの軸にしていただければ、さらに日本の電気代が下がる方向になると思う。(53:29)
会場F: 今年6月に「フォーブス ジャパン」編集長となるまでの27年間、投資会社で資産運用に携わっていた。私としては、日本は資産運用を大きな成長産業に位置づけたほうがいいと考えている。実際、お金をたくさん持っている国だから。しかし、今はそのように位置づけられていない。本来なら各省庁が握っているGPIFもKKR(国家公務員共済組合連合会)もPAL(地方公務員共済)もすべて一元化して投資庁をつくったほうが良いのだろうが、恐らく今の日本の官僚システムでは難しいと思う。そこで次善策として、金融庁という名前を金融投資庁に変えることを提案したい。名前を変えるだけだけれど、金融庁という、いわゆる金融行政を管轄するポリス的発想から、「育てる」という発想に変わると思う。(56:03)
会場G: 「既得権益は男性である」というのが私の結論だ。お子さんがいらっしゃる女性をネットワーク化するというお仕事をしているが、そこで多くの問題が起きる。たとえばお子様が病気になってしまったお母様が何かの打ち合わせを欠席すると、お客様は大変怒る。「なぜ子どもが熱を出した程度で打ち合わせに来ないのか」と。でも、ご本人が風邪を引いて休むぶんには怒らない。「なんなんだろう」と思う。結局、今の日本の社会および企業システムは極めて男性的な価値観に基づき運営されているというのが、私が経験のなかで感じたことだ。そのことを少し念頭に置くだけでも大きな結果に結びつくと感じる。(57:13)
堀: 別セッションでご登壇した八木(洋介氏:株式会社LIXILグループ執行役副社長人事総務・法務担当)さんも、「男ばっかりだな」と(笑)。G1経営者会議は来年から、執行役員以上というご招待の条件を女性に関しては少し緩和し、部長職までお呼びしたいと思っている。皆さんの会社で今後伸びていくと思われる部長職以上の女性がいたらぜひ紹介して欲しい。本会議の女性参加率は3割を目標としたい。(58:33)
会場H: 労働人口がこれから劇的に減っていくというのは日本の根本的問題だ。従って、103万円および130万円の壁を崩すといった政策によって女性が働きやすい社会にしていかなければいけない。外国人の方々に関しても同じだ。我々は現在、技能習得労働制度というものと真剣に向き合っている。日本のコンビニで働けば世界最高レベルの接客を学べるし、発注業務も学べるし、システム的にICTを使いまくる。従って、「これは明確な技能習得だ」ということで、なんとか外国の方々がもっと入ってくるような形にしたい。ここは具体的アクションを伴って、相当ドラスティックなことをやる必要があると思うし、僕の立場としてもやっていかければいけないと思う。(59:16)
堀: 現在、安倍政権でも配偶者控除撤廃の議論はあるけれど、ものすごい抵抗がある。また、僕は経済財政諮問会議のなかに設置された、日本の50年後を考える「選択する未来」委員会に入っているが、外国人労働者の問題はそこでもかなりタブー視されている。今は(議題に)入れるよう何度も言っていて、それで入るかどうかは分からないけれど、とにかく、もっとグローバル人材が日本へやってくるようにしないといけない。そこで頑張っただけ人がぼろぼろになってしまうことのないよう、玉塚さんにもぜひ声を挙げていただきたいと思う。(01:00:19)
会場I: 私は今子どもを育てていて、妻もフルタイムで働いているが、奥さんもフルタイムで働いている経営者はどういうことになるか。子どもが熱を出して、しかも10時から会社の運命を決めるような会議があって、しかも保育園に預けることができないというケースが出てくる。従って、女性の社会進出を本気で考えるのなら、男性の育児をどのように考えるかという議論も不可欠だと思う。女性経営者やフルタイムで働く女性がいることを念頭に、夫婦による子育てを企業や社会がどのように支えていくのかと。そういうことを、もっと真剣に議論する必要があると思う。(01:01:22)
会場J: 女性の活躍推進がテーマとなった午前中の別セッションではとても良い議論になったと思う。安倍総理も明確に宣言していただいているし、企業でも男性の育児休暇取得等がすごく増えている。その意味ではポジティブなメッセージが多く、「この領域では岩盤も打破できるのでは?」といった思いがある。ただ、企業の現場では別のことを感じる。経営者の方々は大変ポジティブだし、女性たちも頑張ろうとしている。ところが、その中間にあたる、いわゆる現場の管理者の方々がなかなか動かない。女性たちには「分厚い粘土層」と言われているけれど、その粘土が水の浸透を妨げ土壌を重くしているという問題意識がある。だから私も第一線の男性管理者にはいろいろとコーチングをしたりしているが、現場はいくらでもエクスキューズする。営業5人のうち1人が女性だったとき、「それで目標にいかなかったら誰が責任を取ってくれるんですか?」なんて言ってきたりする。私は、「これからは女性社員をうまく活用できず、女性部下がすぐ離れていくようなマネージャーは能力がない」というふうにコーチングしているが、その辺についてぜひご見解をお伺いしたい。(01:02:40)
会場K: 世の中の変化とともに、賃貸業界における貸し手と借主の力関係が大きく変わってきた。実際、我々が使っている法律は「明治につくられたのでは?」というほど古く、いつまでも借りるほうが弱くて守られている。ただ、これほど少子高齢化と人口減少が進むと借りてくれる方も少なくなっていく。そう考えると「本当の弱者はどちらなのか」と。最近は、都心から少し離れたら貸し手のほうが弱者という感じになってきた。もしかしたら、その辺の法律整備が必要ではないかと思うし、そこで我々も一生懸命戦っていきたい。(01:05:06)
堀: では壇上に戻って最後に改めて宮内さんと秋山さんにお知恵をいただこう。これまでの提案を聞いてお感じになったことをぜひお聞きしたい。(01:06:17)
宮内: 規制改革の話から少し外れるが、先ほどご指摘のあったエネルギーに関して少し。「既得権益者ができているのでは?」というお考えのようだけれど、エネルギーというのは大変難しい問題だと思う。今はエネルギーに関して、CO2を出すか出さないかというクリーンさ、価格、そして安全という3つの要素でトライアングルができているように思う。恐らく原発には安全性に関する疑問があり、さらにコストがよく分からないと。何万年、どこにどうやって埋めるのかという話になると止まってしまう。ただ、一番安いのは石炭火力だけれども、それではCO2が増えてしまう。そうしたトライアングルをどう解決していくか。「我々はその3つのうち、どれを優先するんですか?」と。汚い空気でいいのか、安ければいいのか、あるいは一応安いと言われる原発を怖いけれども動かすほうがいいのか。そうした選択のなかで、皆さんに気迷いがあると感じる。そこをはっきりしないといけないのではないかと、お聞きしながら思った。(01:06:38)
あと、女性の問題については世の中が変わり始めたと私は思う。日本は欧米に比べて少し遅れたかも分からないけれど、ここは若い世代が動かしていけば変わるだろう。企業経営者とすれば、男女差別をして利益が増えるならいくらでもやりたい。でも、そんなことはまったくない。差別してプラスになるなんてあり得ない。だから女性にぜひ働いてもらいたいというのは企業経営者として当たり前の話だ。あと、私が言うのも変だが、労働力にもう1つ、「老人パワー」を加えていただきたい。皆、70歳ぐらいまではだいたい元気だ。それをもう少しうまく活用して女性プラス老人パワーということにすれば、労働人口減少も止まるのではないかという気がする。(01:08:25)
それと、元に戻って規制改革のお話をもう1つだけ。安倍さんが内閣を挙げてやりたいとおっしゃれば、やれる。何を規制改革すれば良いかも10年前の答申見ていただければ分かるし、それで日本は変わる。従って、もう「なんとか会議」を設けてたくさん議論するという必要はまったくない。「政治家がやる」と言って実行すればそれでおしまい。でも、それをやらない。本当に不思議だと思う。(01:09:28)
秋山: 私は宮内さんに初めてお目にかかったとき、規制改革に関して、「いやあ、もっと政治にリーダーシップを発揮して欲しいです」といったことを申し上げ、宮内さんにたしなめられたことがある。「政治家がダメだからこういう仕事があるんだよ」と。そういう意味では、決して政治家の方を否定する意味でなく、やはり人のせいにせず自分たちでできることをやっていかなければいけないというふうに思った。(01:10:02)
で、今日は、特に宮内さんがお話ししてくださった過去からの流れ、今自分が目の前で見ている風景、そして皆さんのご提案から感じたことがある。本セッションのタイトルは「岩盤規制」となっているけれど、今残っている課題は、どちらかというと陳腐化した社会・経済システムを変えていくことだと感じる。もちろん法律を変えるべき部分もある。ただ、今はワークしなくなっている社会・経済システムに関して、壊すべきものは壊し、新しいルールなり仕組みにつくりかえていくことが必要な時期に来ているのではないか。そう考えると、先ほどの女性活躍推進という課題をはじめ、自分たちが向き合わなければならないのは、実は「内なる岩盤規制」のようなものではないかとも思う。自分、あるいは自分たちの組織のなかにある岩盤規制“的”なもの、あるいは過去のしがらみをどう乗り越えていくかが大事なのかなと、改めて感じた。(01:10:39)
そこで1つだけ。では、壊すというところは良いとしても、どうやってつくっていくのかという議論に関して、別セッションで素晴らしいお話があった。ローソンの玉塚社長がビッグデータの取り扱いについておっしゃっていたのだけれど、実はニーズもあってテクノロジーもあるのに、社会的コンセンサスが未成熟という面がある。だから、企業としてどこがOBゾーンでどこがフェアウェイかがはっきり分からない、と。つまり予見可能性が非常に低いので手が出せないものがたくさんあるというお話だった。で、それに関して、「試しに特区でOBゾーンをつくってみてはどうか」と。熊谷(俊人氏:千葉)市長もいらしたので、そういう議論になった。まさにこういう議論のなかから新しいものが生まれ、実際の行動となって前例になり、成功事例になって横へ広がっていくのだと思ったし、そういうことができたらいいなと感じた。(01:11:44)
堀: 私は以前、ダボス会議で世界のリーダー達と会って、「次は日本のリーダーに会おう」と思い、中曽根元総理にお会いしたことがある。すると彼は、「自分がやりたかったことができなかった」とおっしゃっていた。日本の最高権力者が5年もかけてできなかったことがあると。そのお話を聞いて、僕は「政治家のパワーというのは実はあまり強くないのでは?」と思い始めた。で、中曽根元総理になぜできなかったのかを聞くと、「世論が付いて来なかったから」とおっしゃる。それなら世論を変えていくのは誰かということを考えなければいけないと思う。マスメディアか。そうじゃないと思う。ここにいる一人ひとりが声を挙げていくことで世論を変えるべきだ。それで政治家が動きやすくなってくる。ただ、財界はそこで、宮内さんがおっしゃる通り、黙ってしまう。そのほうが得だから。でも、黙ってしまうことで、激しく騒ぐマイノリティの既得権益者が得をしてしまう。そうした現状を考えると、やはりもっと声を挙げる必要があると思うし、そんなふうにして世論を変える努力をすることで新たな道が生まれるのだと思う。(01:12:49)
そういう意味で、今日は「岩盤規制」というタイトルだったけれども、会議の場でも変えていかなければいけない。宮内さんや秋山さんのように孤軍奮闘しながら、友達を失いながら、社会そして日本のために働いていらっしゃる人がいるのなら、その人たちが動きやすくなるように声を挙げていくべきだ。近くでそっと「頑張ってね」と声を掛けるだけじゃなく、オープンな場で応援したい。そのための場が今はインターネット上にもある。今日はNewsPicksの梅田(優祐氏:株式会社ユーザベース代表取締役共同経営者)さんや佐々木(紀彦氏:同社執行役員「NewsPicks」編集長)さんもいらしているが、たとえばNewsPick上で意見を言うことで世論が変わっていくことも僕は実感している。あるいはブログにも書いたりしているし、今は「100の行動」という形で何をやるべきかを明確に発信している。それを「フォーブス ジャパン」で取りあげていただいたりもした。そのうえで、世の中をどう変えたいかということを、こうした場でオープンに議論していけばいいと思う。タブーも一切気にせず、自分が正しいと思うことをどんどん言う。そうしたことを進めていくことで世の中が変わっていくと思う。それでは、宮内さんと秋山さんに盛大な拍手をお願いしたい。そして貢献してくださった会場の皆様、本日はありがとうございました(会場拍手)。(01:14:09)