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新刊「人生の座標軸」堀義人 —個人のアタマ (2/6)

投稿日:2014/04/03更新日:2019/04/10

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「心」の次は「アタマ」だ。自分の頭を鍛えなければいけない。僕は世界へ出て行って、たとえばダボス会議でスピーチを行い、多くのリーダーと意見をぶつけ合っている。そこで自分はどのように考え、どのように自分の主張をきちんと通していくか、きちんと考えなければいけない。当然ながら、政治、経済、テクノロジー、ファイナンス等々、さまざまなことを知って、それを自分なりに解釈していく必要もある。

そうした「アタマ」の部分に関してお話しすると、僕は「能力」という言葉でグロービスでも説明している。では、能力を鍛えるということはどういうことか。僕自身に5人の子供がいるし、「どうすれば自分の子供達あるいはグロービス受講生の能力が高まるのか」と、常に考えていた。それで脳科学や教育学といったさまざまな分野の本を読んだ結果、能力は繰り返しの反復練習によって開発されることに気が付いた。誰であっても繰り返しやっていけば、能力は必ず上がる。それが僕の結論だ。

僕の子供達も皆、生後9〜11カ月のあいだにどこかのタイミングで歩きはじめ、その後、次第に日本語を喋りはじめていた。そして何歳かで囲碁をはじめた訳だ。そこで個人差はあるものの、繰り返し反復練習を行うことによって皆が能力を上げていった。今は水泳もやらせているのだが、あるとき北島康介選手がグロービスへいらしたとき、どうすればオリンピックで2大会連続金メダルを獲得することが出来たのかを聞いたことがある。「科学的トレーニングをしていたのですか?」と。すると、「繰り返し、ひたすら泳いだだけです」と仰っていた。能力を高めるためには、繰り返し反復練習を行う必要があるということだ。

能力開発は「どこに時間を使うか」が重要

神様は公平なことに、全員に同じ時間を与えている。1日は24時間、1年は365日で、誰もが生きた年数だけその時間を与えられている。能力開発は反復練習という話になると、それは時間の関数になる。従って、どの能力を高めるために時間を使うかが重要になる。自分が高めたいと思う能力に集中していけば、絶対に良くなる。生まれ持った才能も多少は関係するかもしれないが、それを除けば、基本的には高めたいものに集中することで能力は高まっていく。その代わり、時間がボトルネックになるので欲しくない能力は捨てていく。そんな風にして頭を鍛えていく。

僕は、「60歳のときにこうなっていたい」という姿を描いていた。で、「グロービスをアジアNo.1の経営大学院にする」と決めていたが、そのためには僕自身がアジアNo.1の学長にならなければいけない。「ではアジアNo.1の学長ってどんな人だろう」と考えて、必要な要件をリストアップした。文章能力が高く、英語力もあり、しっかりとプレゼン出来て、オリジナルな考え方が出来る、等々の要件だ。また、ベンチャーキャピタルとベンチャー、そしてビジネススクールの教育に関する知見に関しても負けないようにする。そんな風に、自分なりにリストを書き出した。

そうやって30年計画で能力を高めていく訳だ。そのなかで僕は毎年元旦、その年の目標設定を行っている。時間があるときにそれを読み返して自分がやっているかどうかを見ながら、その努力が習慣化するようにしている訳だ。ときには「億劫だなあ」と思いつつ、自分で決めたのだからということで自分自身をプッシュしている。そうして1年が終わったとき、その目標を達成出来たかどうかを確認する。そこで出来ていなければ「来年もやろう」と決めるし、出来ていればさらに上方修正していく訳だ。

時間は限られているから「やらないこと」を決めるのも大事

ただ、時間は限られているから、やらないことも決めないと時間が足りなくなる。従って、「やること」と「やらないこと」を明確化し、それらにプライオリティをつけて時間を捻出していく。たとえば僕は中国語を勉強していない。それは、言語を学ぶというオプションと、たとえば「考える力を高めていく」ということを比較したうえで決めた。言語はコミュニケーション手段だが、今の僕はそれよりもコンテンツ、つまり中身を高めることに時間を使おうと決めた。とにかく自分で選ぶことが出来る訳だから、選んだものに関しては高める努力して、目標の姿に持っていかなければいけない。

さて、次は「体」だ。これも本当に大事だと思っている。今、僕は水泳をやっている。昔から体を鍛えるために泳いだりはしていたのだが、「鍛えよう」と思っているだけだと目標設定が出来ない。ジムに行っても、何かこう…、燃えない。「まあ、鍛えているから大丈夫だ」といった程度の曖昧で漠然とした目標設定になってしまっていた。だから自分のなかで今ひとつ、「やろう!」という気持ちにならなかった。

目標設定を変えたら水泳が楽しくなった

しかし、あるとき「体を鍛えよう」から「ジャパンマスターズに出場しよう」という目標設定にした。水泳をやっている方なら分かると思うが、ジャパンマスターズは水泳マスターズのなかでも甲子園のような大会だ。で、これだけは毎年出場しようと決めたのだが、そうすると大変だ。個人メドレーで出場していて、バタフライ、バック、平泳ぎ、自由形をやる。200m泳がなければいけないし、相当練習をする必要がある。それで出場してみたら、やはりタイムはボロボロだった。ただ、10年連続でジャパンマスターズに出場するとメダルが貰えるという。それで今度は、「じゃあ、何があっても10年連続で出場しよう」という目標設定になった。出場すること自体は目標設定としてかなり簡単だ。タイムの目標設定は厳しいかもしれないが、10年連続出場ということなら可能かなと思い、それで今は毎年頑張っている。

ただ、そうすると今度は「もっと速いタイムを」という欲が出る。ジャパンマスターズには年齢区分があり、8位以内はメダルが貰える。それでメダルが欲しくなった。で、42歳で初めて出場し、44歳まではまったく歯が立たなかったものの、45歳になって年齢区分が一つあがった瞬間に初めてメダルを獲得した。去年は年齢区分がまた一つあがって4位になった。嬉しかった。たまたま名古屋開催だったからで、東京近郊ではもっと多くの選手が出場するからなかなか勝てないが。それで次は「週に3日泳ぐ」という目標設定にした。そうこうしているうち、今度はトライアスロンに出場していた友人から「一緒にやらないか?」という誘いを受けた。それで、マラソンと自転車は膝や腰を痛めそうなので、「スイムのスペシャリストということなら」と、1500mのオープンウォーターで出場することにした。それで1500mの練習をしなければならなくなった。

そんな風にして、鍛えること自体が目的だった状態から、目標に向かう過程の副産物として体を鍛える状態になった。そのプロセスを楽しみながら、だ。今はスノーボードもはじめている。水泳は上半身の鍛錬ばかりになりがちだが、スノーボードでは足腰が大事。それで春夏秋のオフシーズンには山登りもはじめた。スノーボードではグランドトリックが好きだ。今は180(ワンエイティ)が出来るようになってきて、本当に楽しくなってきている。僕にとっては楽しいと思うことだけをやるというのがすごく大切だ。ジムでマシンを相手に鍛えていても楽しくない。トレッドミルも楽しくない。

最大のエンタテインメントは頭を鍛えること

「アタマ」を鍛えるのは楽しい。人生最大のエンタテインメントは学びだと思う。「分からなかったことが分かる」、「昨日よりも今日、今日よりも明日のほうが賢くなり、スピーチもさらに上手くなる」等々、出来なかったことが出来るようになるのは大変な喜びだ。僕自身は享楽的な遊びもたくさんしてきたが、それらは何かこう、面白みがなくなって飽きてしまう。しかし学んで能力を高めると、たとえば、それまでは箸にも棒にも掛からないということで無視されていた場でも少しずつ、「あ、この人、たいしたものだな」と一目置かれるようになる。ダボスの地域会議やキーノートスピーチ等で登壇出来るようになったら、本当に嬉しいと思う。まだそんなことは出来ていないが、ゆくゆくはメインステージで、まあ、安倍総理のようにはいかなくても、パネリストとしてでも良いから登壇したい。そのためには皆が聞きたいと思うようなことを英語で、しかもオリジナルな発想で話せるようにならなければいけない。影響力を高める必要もある。

能力を高めていくと、色々なことが楽しく感じられる。以前は文章を書くことや話すのも苦手だった。しかし、能力を高めていけば、たとえば書くことも楽しくなってくる。すべて楽しみながらやれたらいいなと思うし、僕はそれを実践しているつもりだ。心を平静にしながら、頭を鍛えていく。それを習慣にして、さらに水泳やスノーボードを通して体を鍛えている。それらをすべて、楽しみながらやっているという状態だ。

写真撮影:東洋経済新報社・尾形文繁

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