「リーダーは企業買収が自らの組織の現在および将来の戦略にどのような影響をもたらすかについて思いを馳せなければならない」と、ダーデン経営大学院副学長のジェイ・ブルゴワ教授は語る。このメッセージは、東京・丸の内にある日本工業倶楽部でこの度開催されたDarden-GLOBIS共催セミナー「多角化と企業買収による戦略的成長」と題したケース討議の場で発せられものである。
ブルゴワ副学長のケース討論にはグロービスの受講生をはじめ、ダーデン校卒業生、新規参加者など多彩な顔ぶれが揃った。さらに同校経営幹部教育プログラムCEOのデイビッド・ニューカーク氏による経営幹部教育の将来像に関する講演にも多数の参加者が集った。今回のイベントの受講者は、戦略やリーダーシップの課題に関して意見交換を行っただけでなく、企業買収を成功に導く上で何が必要かについても結論を見出した。
ブルゴワ副学長の討議はさまざまな経営上の課題に触れるものであった。同副学長によれば、リーダーは初めてメッセージを組織に届ける際、その戦略がいかなるものか、組織構成員に対して明確な形で伝達する必要があるという。さらに、組織は過度な多角化を行ったり、成長そのものを自己目的化したりすることのないよう注意を払う必要があり、その意味から、企業買収は明確な戦略を念頭において実施するべきものである、と強調した。
さらに同副学長は、組織は自らの戦略を常に再評価し、どういったビジネスを行うことが企業にとって本当に意味があるかを判断しなければならないと語った。たとえ利益をもたらしているビジネスであっても、ビジネスに十分な戦略的意味がなければ売却しなければならないこともある。このような因子を考慮することを怠った組織は、将来の成長が阻害されるというリスクにさらされ、不必要な費用による圧迫を受けるか、明確な方向性を失って苦しむことにもなりかねない。
討議では受講者からも多くの意見が出され、およそ90分間続いた。この討議は、グロービス、ダーデン経営大学院の双方が導入している優れた学習法、ケースメソッドのやり方を示す好例にもなった。また終了後、受講者は相互のネットワーキングを熱心に行い、この日のテーマに関して得たことをさらに深く学ぼうとしていた。
このケース討議に先立ち、デイビッド・ニューカークCEOが基調講演を行い、管理者層への経営幹部教育の将来的役割の見通しについても受講者の洞察を深めた。ニューカークCEOは、原材料のみならず、知識や情報といったものまでもが簡単に手に入るものとして商品化されていることから、組織は人的資産を(何よりの競争優位の源泉として)将来に向け、最大限活用していかなければならないと語った。最良の人的資本ネットワークを構築する組織が将来において成功する確率が高いというのがニューカークCEOの見解だ。さらに、リーダーとして自分自身の強みと弱みの両方をさらに深く自覚する必要性についても触れた。