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あなたのことを皆が本当によく知っている? -透明性幻想

投稿日:2011/02/09更新日:2019/08/15

問題です

以下のAさんの考え方の問題点は何か。

「部長に今度のプレゼンのプレゼンターに指名されたけど嫌だなあ。オーディエンスは、それほど親しい人間はいないとはいえ、少なくとも顔は知っている人間ばかりだ。当然、自分のリスクを取りたがらない性格とか、優柔不断さも知っているだろう。しかも、今回の提案内容は、件の新規事業を見合わせるという内容だ。提案内容そのものは妥当だと思うけど、自分のような人間がプレゼンをしたら、『やはりAは臆病だな』なんて思われてしまって説得力がないんじゃないだろうか。自分の評判もまた下がりそうで嫌だなあ」

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解答です

今回の落とし穴は、「透明性幻想」です(英語ではIllusionoftransparencyと呼ばれます。「透明性の錯覚」などと訳されることもあります)。これは、他人は自分のことを実際以上によく知っている、あるいは逆に、自分は他人のことを実際以上によく知っていると思いこんでしまう思考バイアスです。

本ケースでは、それほど親しい人がいないにもかかわらず、自分の弱点を皆が知っているはずだから、それがプレゼンの良否に影響を与えてしまうのではないかと過剰に心配しています。実際には、Aさんが思っているほど、他人はAさんのことをよくは知らない可能性の方が高いものです。部長があえてAさんをプレゼンターに指名したのは、そんな背景からかもしれません。

ちなみに、この透明性幻想は、ポジティブな内容についても、ネガティブな内容についても過剰な方向に働きやすい性質があります。つまり、自分が長所だと思っている点は、他人も高く評価しているはずだと過剰に思い込んでしまいます。逆に、自分が弱点だと思っている点については、他者の見る目はかなり厳しいと思い込んでしまいます。Aさんのケースは、後者に当てはまります。

前者(ポジティブ)のケースも、しばしば好ましくない結果をもたらします。たとえば、自分は論理的だと自認している人がいたとします。そうした人は、多くの場合、「○○さんの話はいつも筋が通っているなあ」などと言われるケースが多いでしょう。

全く知らない人を相手にする場合はまだいいのですが、このタイプの人が、知人を相手にすると、「彼らは当然、自分が論理的なことをよく知っていて、高く評価しているはずだ」と思い込んで接してしまいがちです。

そして、たまたま論理展開のミスやファクトの不備を突かれると、必要以上に動転してしまったり、ミスを指摘してきた相手に対して「あなたに何が分かる!」などと攻撃的になってしまったりします。自分の予測と現実のギャップにうまく対応できないわけです。

このギャップは別の形で現れることもあります。上記はどちらかと言えば強気なタイプの人の反応ですが、弱気なタイプの人の場合、自分の長所が相手にあまり評価されていないと分かると、逆に自信を失ってしまいます。

たとえば、元気さには自信のある人が、相手にあまりそれを評価されないと、自分の長所に疑問を持ってしまい、元気を失った喋り方になってしまうというパターンです。これではますます悪循環(バッドサイクル)に陥ってしまうでしょう。

透明性幻想は、冒頭に述べたように、自分の他人に対する認知にも表れる現象です。人間は、どういうわけか、「彼/彼女のことはよくわかる」という根拠のない自信を持ってしまうのです。

こうした錯覚が好ましくない結果をもたらしやすいのは、直にコミュニケーションをとっていない相手のことを、伝聞や見た目だけで「よく知っている」と錯覚するような場合です。おとなしいと思っていた相手が、実際に密に仕事を一緒にやる段になると、実はとげとげしい性格だった、というケースは珍しくありません。

いずれにせよ、特に、常日頃コミュニケーションを密にとっていない相手の場合、実際の自分と他人の認知、あるいは、他人の実態と自分の認知にはギャップがあると思って慎重にことに臨む必要があるのです。

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