夏の甲子園大会の西東京代表に早稲田実業高校が進出することが決まった。最大の注目は、清宮幸太郎選手。父親は、早稲田大学の名ラガーマンで、現在トップリーグチームの監督を務める清宮克幸氏だ。高校1年生にして恵まれた体格から繰り出す打撃は、プロのスカウトをも唸らせる。甲子園でも清宮フィーバー間違いなし。
清宮選手に集まる注目を、マーケティングのフレームワークであるブランド・エクイティで検討してみよう。ブランド・エクイティとは、ブランドの価値を「ブランド認知」「ブランド連想」「知覚品質」「ブランド・ロイヤルティ」の4つの要素から検討し、定量化するものだ。
清宮選手の場合、特に効いているのはブランド連想だ。「あの清宮の息子」「名門早実の主軸」といった要素があるから、ここまでのフィーバーにつながった。そして、大きなニュースになったことでブランド認知も高まった。知覚品質に相当する野球の実力は、まだ粗削りながらも高校1年生としては突出した高水準にある。
最後のブランド・ロイヤリティについてはこれからの楽しみだ。例えば、長嶋一茂氏の場合は、父・茂雄氏のファンの多くを引き継いだと思われる(残念ながら、肝心のプレー品質が追いつかなかったが…)。清宮選手の場合はどうだろうか。ラグビー清宮のファンがベースボール清宮に引き継がれるのかどうか。そんな視点から観察してみるのも面白い。
ちなみに、二世がよく活躍する分野として政治家という仕事がある。政治家二世の場合は、地元における知名度は抜群、ブランド連想も「あの○○先生の息子/娘(あるいは孫)」と極めてストレートに選挙民に響く。そしてブランド・ロイヤルティも、「先代の先生にはお世話になったし、官庁等とのパイプも太いから」ということで高くなりやすい。知覚品質は、最初は低いかもしれないが、4期、5期と周りのサポートを得ながら当選回数を積むに従って、徐々に向上していく。
スポーツの中にも、F1のように二世が活躍しやすい競技はあるが、これは競技人口の少なさと、スポンサーの得やすさなどの特殊な事情によっている。
野球は競技人口が多い上に、最終的には本人の実力と努力でしか結果を残せない。一時期は高かった斎藤佑樹選手のブランド・エクイティが急降下した点からも分かるように、アスリートとして結果を残し続けないと高いブランド・エクイティは維持できないのだ。
ところで、ブランド・エクイティは特別な人々にのみ応用できるるフレームワークではない。「個」が大事といわれている昨今のビジネスシーンにおいて、皆さん自身のブランド・エクイティは十分に高いだろうか? ぜひご自身のブランド・チェックをしてみていただきたい。