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機関投資家が国内回帰

投稿日:2015/02/26更新日:2019/04/09

(2014年2月25日付け日経産業新聞の記事「VB経営AtoZ」を再掲載したものです)

起業家の質向上を評価

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2013年、日本におけるベンチャー・ファンドの設立総額は前年の6倍以上の2000億円近くに膨らんだ。興味深いのは、大企業が設立するコーポレートベンチャーキャピタル(VC)や年金基金を含め、「日本の投資家」が「日本のベンチャー」へ投資枠を増やしていることだ。従来、日本の機関投資家はベンチャー投資に関しては海外偏重で日本は二の次だったが、ここに来て、本国回帰の流れが生まれている。

当社が昨年末までに組成した「グロービス4号ファンド」には100億円強のリスクマネーが集まったが、その過半は日本の機関投資家を中心としたジャパンマネーで占められた。米国、欧州、アジアの有力年金基金や金融法人といった海外機関投資家が圧倒的だった以前の状況からすると、隔世の感がある。

リーマン・ショック以前、欧米の親日的な機関投資家にとって、「日本×巨大市場×先端技術×グローバル成長」というキーワードを備えた日本のベンチャーは魅力的に映った。そうした企業を中心にポートフォリオを組んだ我々は、海外の自治体や企業年金、大学基金などから出資を受けることができた。

ところが、日本の機関投資家の反応は真逆だった。和製ベンチャーに不信を抱き、国内VCの投資収益率の低さに不満を持っていた。それが、4号ファンドでは海外勢が躊躇(ちゅうちょ)し、日本勢が積極的に出資を決めるという逆転現象が起きた。私の肌感覚では、海外勢に「日本×先端技術」という戦略が響かなくなった。以前は当社チームへの信頼をベースに投資を決めてくれた投資家もあったが、今回は一回休みという感じだ。

そんな中、日本勢が積極姿勢に転じた背景にはいくつかのポイントがある。まずは起業家の質の向上だ。ある国内有力投資信託のマネジャーは「十数年前に比べると、経営センスを持った若い起業家が出てきている」と話す。VCも成長した。ITバブルやライブドア・ショック、リーマン・ショック、東日本大震災という苦難を突破してきた経験や身につけた底力が高く評価され始めている。

さらに、昨年ごろから「トラックレコード(投資実績)」が明確に出てくるようになってきた。IPO(新規株式公開)が増加。ベンチャー関連のM&A(合併・買収)も目立つ。日本のメガベンチャーがスタートアップ企業の買収で成長スピードを上げるといったことが起こり始めた。

しまうまプリントシステム(東京・渋谷)は当社の投資先だったが、カルチュア・コンビニエンス・クラブのグループ会社となり、ネット写真プリントサービスを展開している。米グーグルのようなグローバル企業が日本のベンチャーを買収する例もある。企業価値で100億円を超えるような案件が出始めている。

日本の大企業も動き始めた。投資先、買収先、事業連携先として、日本のベンチャーを成長の糧とする取り組みが加速している。こうした変化が同時並行で起こり、日本のベンチャー・エコシステムがつながり始めたと見て、大手の機関投資家がいよいよ投資方針を見直すに至ったと言える。

自国のベンチャーの将来性に着目し、投資する――。そんな当たり前のことが当たり前に行われるフェーズに入った。成果を出していけば、海外の投資家も戻ってくるに違いない。

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