本書『グロービスMBA エグゼクティブ・マネジメント入門』を読みながら、私は、国内外を問わず多くのリーダー育成の現場で繰り返し目にしてきた「リーダーシップの壁」を思い出していた。
リーダーシップ・パイプラインが示す「二つ目の壁」の正体
リーダー育成の分野では、「リーダーシップ・パイプライン理論」(参考:英治出版『リーダーを育てる会社 つぶす会社』)において、人はキャリアの中で二つの大きな転換点、すなわち壁に直面するとされている。
一つ目は、初めて部下を持つとき。そして二つ目が、より大きな部門や組織を任されるときだ。
本書が真正面から扱っているのは、まさにこの二つ目の壁である。
この二つ目の壁の難しさは、単なる仕事の範囲の拡大ではない。
自分がこれまで専門としてきた領域を超え、必ずしも得意ではない分野についても意思決定を行い、事業を前に進める責任を負う点にある。
戦略、組織、人材、財務、テクノロジー。
これらを「専門とするスタッフのポテンシャルを引き出し」、すなわち、彼らの知見や判断材料を最大限に活かしつつ、「最終的に自分が判断する」立場になる。
この転換を乗り越えられる人と、そこで成長が止まってしまう人との差は、想像以上に大きい。
「何を知っているか」以上に問われる、実務家のための判断軸
私自身も組織を率いる立場になったとき、この壁を痛感した。
自分の経験則や成功体験だけでは通用しない局面が次々と現れる。
その経験は、グロービスの海外拠点立ち上げや拠点長としての現場において、より一層鮮明になった。
そのとき問われるのは、「何を知っているか」以上に、「何を理解し、どう判断できるか」だった。
本書は、その問いに対して、実務家の視点で極めて誠実に向き合っている。
特に本書の特徴は、「ヒト・モノ・カネ+α」という経営の全体像を、部長・エグゼクティブという現実的なポジションから整理している点にある。
理論を網羅的に並べるのではなく、「このレベルの経営者にとって、どこまで理解しておくべきか」という実践的な線が引かれている。
CASEと理論を往復しながら、自分ならどう判断するかを考えさせる構成は、現場で孤独に意思決定を迫られるエグゼクティブにとって、大きな支えになるはずだ。
グローバル水準の経営力を支える「学びへの投資」
海外のエグゼクティブを見ていて、もう一つ強く感じることがある。
それは、この二つ目の壁に差し掛かったタイミングで、自ら学びに行く人が非常に多いということだ。
1〜2年休職してMBAや修士号、時には博士号を取得し、十分な学びを経たうえで次の役職に就く。
日本ではまだ少数派かもしれないが、この学びへの投資の差が、長期的には経営力の差として表れているように思えてならない。
そうした意味でも、本書は、経営の壁を越えるうえで最低限押さえておくべき視座と知識を、一冊で確認できる貴重な書である。
すべての答えを与えることを目指した本ではない。
しかし、自分が今どの壁の前に立っているのか、そして次に何を学ぶべきかを静かに問いかけてくる。
エグゼクティブとしての次の一歩を考える多くの方にとって、本書は、自らの現在地を確認し、次に進むための確かな足場を与えてくれるはずだ。
ぜひ手に取っていただきたい一冊である。
『グロービスMBA エグゼクティブ・マネジメント入門』
著:グロービス経営大学院 監修:嶋田毅 発行日:2026/2/11 価格:3410円 発行元:ダイヤモンド社





















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