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ゴールデンウィークに読みたい書籍5選――2024【MBA教員がおすすめ】

投稿日:2024/04/26更新日:2024/06/07

この連休は、読書でリフレッシュや新たな発見をしてみませんか。グロービス経営大学院の教員が、このゴールデンウィークに読みたいオススメの書籍をご紹介します。これまでの長期休暇にオススメの書籍シリーズはこちら

旧来の慣習や発想法を打破する「エンジニアの思考法」

推薦者:嶋田 毅(グロービス経営大学院 教員)

本書は、マイクロソフトでプログラマーとして働く著者が、ハイアウトプットで知られるシリコンバレー、シアトルの一流エンジニアの仕事術についてまとめたものである。エンジニアの方はもちろん、価値創造を期待されるホワイトカラーのビジネスパーソンにとっても非常に役に立つ示唆が満載だ。

たとえば「基礎の理解に時間をかける」「最重要なこと1つに集中する」「時間を固定してできることを最大化する」「マルチタスクはやらない」「失敗に寛容になる」などは説明されればその通りなのだが、ほとんどの日本企業ではあまり実践されていないのではないだろうか。同様に本書で指摘されている、事前の検討や発売時の完成度の高さなどに時間をかけすぎる日本的ビジネス慣習や発想法こそが生産性を落としているという点も、多くの人にとって耳の痛い事実であろう。

「IT業界、しかもGAFAM クラスだからそれでやれる」という側面も確かにあるが、それでも本書で紹介されている思考法をうまく取り入れることができれば、多くの人の生産性は上がるはずだ。IT用語が少なからず出てくるので、その分野に全く疎い方は多少読み通すのに骨が折れるかもしれないが、やはり読むに値する1冊である。

『世界一流エンジニアの思考法』
著:牛尾 剛 発行日:2023年10月23日 価格:1,760円 発行元:文藝春秋

読書は人生の「ノイズ」なのか?

推薦者:平野 善隆(グロービス経営大学院 教員)

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 という本書のタイトルを目にしたとき、「そりゃ忙しいからでしょ」と思う方も多いだろう。
長時間労働、または仕事と家事育児に追われていたら、なかなか本が読めない。そんな日々を過ごしている人も多いかもしれない。ただ、長時間労働は遡れば明治時代からあった話だし、忙しくて本を読めない割にはスマホでゲームをしたり、SNSは見ていたりするのではないだろうか?

本書は、明治から現代までの読書と労働の歴史を考察しながら、我々にとって読書がどのように位置づけられてきたかをまとめたものである。
明治時代からのベストセラーを辿ると、例えば『西国立志編』『出家とその弟子』『坂の上の雲』などが挙げられる。これらを時代背景や労働観と照らし合わせてみると、修養、教養、娯楽、自己啓発、ハウツー取得など、さまざまな目的をもって位置づけがされてきていることにも合点がいき、面白い。

では、現代において読書はどのような位置づけなのだろうか?
本書では、現代における読書は「ノイズ」なのだと言う。そして最初の問いに答えると、居心地の悪いノイズを除去するためにスマホゲームなどに走ってしまうというのだ。

ただ、ここで浮かぶ大事な問いは、「ノイズは、除去すべきものなのか?」ということだ。本書終盤の『読書は人生の「ノイズ」なのか?』という章では、章題について考察しながら、この問いにも答え、そしてノイズと向き合う意味を教えてくれる。

ゴールデンウィーク前半に本書を読み、どんなノイズと向き合ったら面白そうかを考えながら本屋や図書館に行ってみよう。すると、あなたの人生を豊かにする素敵な本に出会えるかもしれない。

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
著:三宅 香帆 発行日:2024年4月17日 価格:1,100円 発行元:集英社

協力によるゆたかな世界を実現するための経済活動を探る

推薦者:江上 広行(グロービス経営大学院 教員)

公共善エコノミー」は、ドイツやオーストリアを中心に市民運動となっている、競争よりも協力をベースとした、資本主義でもコミュニズムでもない「第3の道」といわれている新しい経済活動を示す概念だ。
公共善というと”公共”が行政などを想起させるためか、ちょっと固く聞こえるかもしれない。しかしドイツ語の原題であるGemeinwohlökonomieを直訳してみると、「ともにゆたかな経済」というようなもう少しやわらかいイメージになるのだそう。この「公共善エコノミー」の取り組みや理念について、ほぼ初めて日本に紹介したのが本書である。

日本とドイツはともに長寿企業が多いという共通点があるが、その理由のひとつには、企業を人間が作り出したモノとしての「創造物」ではなく、それ自体に命がやどる「いきもの」として扱うからという説がある。
「公共善エコノミー」とは、人間やそれをとりまく自然や社会、つまり「いきとしいけるもの」がともにゆたかな世界を実現するための経済活動なのだ。こういってしまうと、空想のお花畑のようだが、この本ではそれを実現するための社会・経済・行政そして企業経営のありかたが実践レベルで記述されている。例えば包括的な価値評価である「公共善決算」という枠組みなどが紹介されていると言えば、その具体性が伝わるだろう。

この本は、日本のビジネスリーダーが、競争をベースとした市場経済システムの呪縛を超え、「人間尊厳」や「信頼」「協力」を大切にする経営へと転換する道標になるに違いない。

『『公共善エコノミー』人と地球を優先する経済システム』
著:クリスティアン・フェルバー 翻訳:池田憲昭 発行日:2022年12月15日 価格:2,860円 発行元:鉱脈社

コンペで勝ち抜けずに悔しい思いをした経験はありませんか?

推薦者:太田 昂志(グロービス経営大学院 教員)

コンペで連続失注し、悔しい思いをした経験はないだろうか。私にはある。

営業職として奮闘していた時代、連戦連敗が続き、壁にぶつかった。当時、藁にもすがる思いで営業本を読み漁ったところ、ある書籍と出会い、状況が好転した。それが、今や累計発行部数9万部を超える大ベストセラー、『無敗営業』シリーズだ。本書はその『無敗営業』の著者である高橋浩一 氏による新著である。

営業本と聞いて、抵抗感を覚えた方もいるかもしれない。多くの営業本は、卓越した”勘とセンス”を持つ敏腕営業パーソンの経験談になりがちだ。しかし、本書は違う。営業1万人・お客様1万人 = 2万人への調査という膨大なデータから、科学的なアプローチで営業における「急所」を解き明かしている。本書は営業としての「指南書」であり、その体系的な学びは誰でも現場で再現可能だ。

ここで、せっかくなので、ネタバレにならない程度に、本書の学びをおすそわけしたい。

例えば、皆さんが営業で提案を終えた後、お客様から「検討しますのでお待ちください」と言われたとしよう。このとき、どう対応するだろうか。そこは「持ち前の関係構築力で……」というと、それこそ勘とセンスが試される領域だ。

本書は、こうした場面を「検討しますの仮面」と表現し、お客様の仮面を外す武器として「商談終盤の10ヶ条」を紹介している。そのうち一カ条だけ紹介すると、「今ここに時間を使っている理由」を聞いてみると良いという。例えば「わざわざお時間をいただいているのは、なぜでしょうか?」と問いかけ、反応によって次の手がかりを見つけるのだ。その後の話の持って行き方は、是非、ご自分の目で確かめていただきたい。

本書は、高橋氏のセールス研究の集大成でもある。この春、営業職としてデビューする新人はもちろん、営業経験豊富なプロフェッショナルの皆さんにも、是非とも手に取っていただきたい一冊だ。

『営業の科学 セールスにはびこるムダな努力・根拠なき指導を一掃する』
著:高橋 浩一 発行日:2024年4月11日 価格:2,420円 発行元:かんき出版

リベラルアーツで磨く、「無難な言葉」に逃げない人間力

推薦者:田尻 史明(グロービス経営大学院 教員)

「私は無宗教です」

異文化においてあなたが自身の宗教を語る時、安易にこう答えていないだろうか。グローバル化がさらに加速する時代においてこの言葉の持つ意味は深く、かつ危険である。
私たちの文化は悠久の歴史の中での自然との対峙や生活の知恵として育まれた様々な宗教的概念とは切っても切り離せない。「無宗教」とは神の存在を否定し、神をも恐れないという倫理上の危険概念として受け止められることは世界において常識と言っていい。あなたが神社のお守りや仏像を粗末に扱うことに躊躇や良心の呵責を感じるのであれば、あるいはお墓や神社で手を合わせることがあるのであれば、あなたは決して無宗教ではない。

では、改めてあなたは自分の宗教観と、そこから連綿と派生する自らの哲学を語れるだろうか。語れないから「無宗教」という一見無難な言葉を口にしているのではないだろうか

ビジネスロジックやフレームワークは、学ぶことで皆が身につけられる共通知見であると言っていい。一方でビジネスとは熾烈な生存競争でもあり、ゆえに皆と同じでは勝てない。
他と違っているからこそ勝てるというのがビジネスの真理であるとすれば、世界の宗教と哲学を知ることはリーダーの素養の1つであると断言できる。世界を知る教養は人を魅きつけ、宗教と哲学を語れることは多様な人と組織をマネージする力の糧となり、世界対応のコミュニケーション力やチームビルディングにも生きるはずだ。

そこで本書である。本書は、日本生命のロンドン現地法人社長や国際業務部長を経てライフネット生命を起業した出口治明氏によって、古代ギリシアから現代に至る哲学者と宗教の変遷が体系化されている。哲学者や宗教学者ではない実業家でもある著者のフィルターを通した一連の造詣の深さは、ビジネスパーソンとしての在り方を探究するにあたり大きな示唆になるに違いない。
哲学や宗教の知見に留まらず、リベラルアーツがもたらす豊かな創造性とその汎用性をも感じることの出来る1冊。

『哲学と宗教全史』
著:出口 治明 発行日:2019年8月8日 価格:2.640円 発行元:ダイヤモンド社


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