今年5月発売の『MBA 言語化トレーニング』の「Part1 Lesson3 反論にあらかじめ備える」の一部を紹介します。
何かを主張する際には根拠が必要となります。その根拠は「柱」のようにバランスよく主張を支えるものであることが好ましいです。
ただ、時には自分が想定していなかった反論が出ることもあるものです。それ自体はある程度まで仕方がない部分もありますが、毎回「その点については検討していませんでした」となってしまっては、「考えが浅い人間」「視野が狭い人間」などのレッテルを張られてしまい、信用を失う可能性が高まります。
あらかじめ相手の反論を予測して備えることは、論理思考力を高めるだけではなく、信頼の獲得にもつながるのです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、PHP研究所のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
『予期せぬ反論』を予想する方法
どのような主張であっても何かしらの反論はあるものです。すぐに反論に答えられる場合はまだいいのですが、それが難しい場合は、あらかじめ出てきそうな反論を予想し、それをつぶすように論理展開を組み立てておくと、慌てることがなくなります。
また、あらかじめ反論を予測することで、主張とその根拠をより的確に準備し、弱点を補強することができます。これは結局、主張をより説得力のあるものにすることにつながります。
たとえば、会社でフレックスタイムを導人すべきという主張をするシーンにおいて、そのメリットだけを述べるのでは説得力は高まりません。おそらく、「生産性が低下しないか」あるいは「チームワークを阻害するのではないか」という反論が出ることが予想されます。それを予想したうえで、事前に研究論文や他社事例などをリサーチしておくとよいでしょう。フレックスタイム制度は、適切に運営すればむしろ従業員の満足度と生産性を高めること、あるいはチームワークに悪影響を与えないことを示すことができれば、説得力は大きく増します。
なお、「予期せぬ反論」を予測する方法として、次の方法があります。重要なシーンほど、こうした事前の備えが役に立ちます。
- 可能であれば第三者に事前に相談し、フィードバックをもらう
- 生成AIに「極端な反論を考えて」とプロンプトを与えることでヒントを得る
- 相手の立場や個性を勘案したうえで、その人が「言いそうなこと」を予想する
- 自らを反対者に見立てて、自分の意見を論破するならどこを攻めるかを考えてみる
相手の視点を考慮し、それに対して根拠を準備することは、視野が広く思慮深い、あるいは誠実であると周りから一目置かれる可能性を高める効果もあります。これは結局、相手からの信頼を得ることにもつながるのです。
(演習問題と回答例をごらんになりたい方は本書をご覧ください)
『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』
著:グロービス 執筆:嶋田 毅 発行日:2024/5/22 価格:1,870円 発行元:PHP研究所