前回は、論理的に考え「議論すべき論点」を洗い出す方法として、「テーマ自体から考える」方法を説明しました。この考え方はファシリテーターとして訓練する必要はあるものの、難易度が高いため、何らかのパターンや「型」が考えられないか?ということになりました。今回はここを考えていきたいと思います。
フレームワークを利用する
まず考えられるのは、よく使われる「既存の論点のセット」を覚えておき、その時のテーマに合わせて用いる、つまり「フレームワーク」を活用するという方法です。ビジネスにおいて何らかの判断をする上で押さえるべきポイント・論点について、先人の知恵を活用しようというわけです。
【代表的なフレームワーク】
ビジネスで用いられる代表的なフレームワークとして、たとえば以下のようなものがあります。
・事業環境分析の3C:
市場(Customer)/競合(Competitor) /自社(Company)
・事業環境分析のSWOT:
強み(Strength)/弱み(Weakness)/機会(Opportunities)、脅威(Threats)
・マクロ環境分析のPEST:
政治・法律(Political) /経済(Economic) /社会(Social) /科学技術(Technological)
・マーケティングの4P:
製品(Product) /価格(Price) /プロモーション(Promotion) /流通(Place)
・顧客の購買過程のAIDMA:
認知(Attention)/興味(Interest)/欲求(Desire)/記憶(Memory)/行動(Action)
・ビジネスシステム(バリューチェーン) :
開発/生産/マーケティング/販売/物流/サービス
・製造・調達での要件のQCD:
Quality/Cost/Delivery
・人材評価・育成のSWマトリクス:
能力(Skill)/やる気(Will)
もしくは、より汎用的な論点の立て方として、
・メリットは? デメリットは?
・重要性は? 緊急性は?
・長期的には? 短期的には?
・必要性は? 実現可能性は?
・質的には? 量的には?
・スピードは? クオリティは?
・制度面では? 運用面では?
・効果は? 効率は?
・選択肢は? 判断基準は?
・目的は? 期待成果は? 手段は?
などといったものもあります。
フレームワークの落とし穴
こうしたフレームワークは便利なものですが、落とし穴もあるので注意が必要です。よく見かける誤りとしては、
・何を考えるためのフレームワークか?をよく理解していないため、そこで議論すべきことと
フレームワークがマッチしない。このためかえって思考・議論が混乱する
・既存のフレームワークを使うことで安心し、また囚われてしまい、さらに具体的に論点を考えることを
やめてしまう
などです。フレームワークをたくさん列挙して紹介している書籍も多いですが、たくさん覚えているだけでは使い物になりません。よく理解せずにフレームワークを用いるのは大変危険、かつ有害ですらあります。
たとえば、SWOTという大変に重要なフレームワークがありますが、適切に使われていない例をよく見かけます。これは外部環境・内部環境の様々な事象を「何が機会か?何が脅威か?」「何が強みか?何が弱みか?」という方向から【判断・解釈】するための視点であり、ある事象がそのまま「機会」「強み」と【分類】されるものではありません。また「ある環境変化は、ある強みを持った企業には機会になるが、ある弱みを持った企業には脅威になる」といった具合に相互に関連しているものです。にも拘わらず、外部環境・内部環境の様々な事象をそのままSWOTに当てはめて整理している例をよく見かけます。結果、適切な解釈が導けず、なんとなく情報を当てはめただけに終わってしまいます。
ビジネスにおける実際の議論で論点を押さえて適切に考えるためには、フレームワークを無批判に用いるのではなく、
・フレームワークの意味を深く理解する。
具体的には、以下を十分に理解し、具体的に説明できるレベルまで理解する
−何を考えるときに使うのか?
−背景・前提となる考え方・原理は何か?
−そのフレームワークの限界は何か?
−様々なフレームワークは相互にどういった関係にあるのか?
・フレームワークをそのまま論点にするのではなく、「大きな見落としを無くすためのチェックに用いる」
「フレームワークを出発点にしても、必ず自分の頭で論点を考える」
といった姿勢を持つことが重要です。
前回の「テーマ自体から考える」のは難しく、また「フレームワークを活用する」も落とし穴が多いとなると、どうすればよいのでしょうか?次回はさらにそこを考えていきます。そして、汎用的な「考える型」を紹介したいと思います。