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【速報】G1@Clubhouse51「『科学×ジャーナリズム』コロナ禍で考える、科学をどう正しく伝えるのか?」高橋祥子×大隅典子×瀬尾傑×安部敏樹×堀義人

投稿日:2021/03/21更新日:2021/03/26

昨日、3月20日22:00 ~23:00に行われたG1@Clubhouse51の内容のポイントをご紹介します。

テーマと出演者

テーマ:「『科学×ジャーナリズム』コロナ禍で考える、科学をどう正しく伝えるのか?」

出演者:高橋祥子(ジーンクエスト代表取締役)、大隅典子(神経科学者/東北大学副学長)、瀬尾傑(スマートニュースメディア研究所所長)、安部敏樹(リディラバ)、堀義人

発言のポイント

※上記出演者のご了解を得たうえで、記録、公開しています。

1) コロナ禍における科学×ジャーナリズムの現状

・かつて、子宮頸がんのHPVワクチンについて一部メディアが「副作用の疑いがある」といった報じ方をした結果、皆がワクチンを避けるようになってしまったことがある。これはバランスを欠いた悪い報道の例だった。今回のコロナではどうか。アンケート調査の手法に関して批判されたメディアはあったし、報じ方もまだ不十分な点はあるが、今のところ抑制的だと感じる。ただ、テレビはいまだセンセーショナルな伝え方になりがちだし、ワクチンとの関係が認められたわけでもないのに「接種後に亡くなった方がいる」と、両者を結びつけるかのような報道もある。

・イギリスでも「新三種混合ワクチンによって子どもが自閉症になる」といった論文が『ランセット』という権威ある医学誌に載ったことがある。これはフェイクだった。「きっとそうなんじゃないか」と思いたい人たちがいて、それで科学者のほうも研究費を取るためとか、いろいろな背景があって論文を捏造してしまっていたというケースだ。従って、メディアだけでなく科学者も誤った方向に進んでしまう危険性はあるのだと思う。コロナについても、ある海藻の成分にウイルスの増殖抑制効果があるという話が大学のプレスリリースになったが、実際にはA型インフルエンザウイルスを使った研究だったため、同リリースも取り下げられたということがある。

・メディア側の課題が一番大きいと考えているが、科学の側にも情報を受け取る側にも問題はあると思う。たとえば、HPVワクチンの情報を受け取る側として最もダメだったのは厚労省の対応だった。メディア側がろくでもなかったのはたしかだが、厚労省は科学的に正しいと分かっていたにも関わらず、推奨を止めてしまった。結果として、今でも無償で摂取できるが、自治体によるロジスティクスの整備も進まず、日本のHPVワクチン接種率は世界的に大変低い状況となっている。

・子宮頸がんの前段階となる「前がん病変」はすでに日本で増えている。メディアと、その声に過度に配慮した厚労省、そしてメディアに踊らされた国民のせいで、一定数の若い女性がこれから亡くなるということだ。この責任は誰が取るのか。一番大きな責任は煽ったメディアにあるし、その罪は極めて深い。ただ、厚労省も、正しい情報を持っていたにも関わらず、ある意味で拗ねてしまったようなところがある。「皆がそんなに言うなら(推奨を)止めますよ」と。これも情報を受取る側のリテラシーとして罪深いと思う。

2) 日本のサイエンスコミュニケーションにはどのような課題があるか

・ビジネスも絡んでいることが話を一層ややこしくしていると感じる。コロナについてもワクチンで儲けたいという人はいて、それで株価が動いたりする。日本のコロナ感染者数は多い国々と比べて桁が2つほど少ない。そこにどんな背景があるのかということで、BCG接種との関係等について発信していたが、BCGはワクチンのように儲からないこともあり、日本では検証されそうにない。そういう部分でも商業主義が科学に影響を与えてしまっているのだと思う。

・経済的なサステナビリティは研究部門にとっても不可欠だ。今はそれが難しくなっているがゆえに、お金があるほうになびきやすくなってしまっている面があると思う。メディアも同じ。しっかりとインプットをしながら記者を育てていく必要はあるが、それにはコストがかかる。それを支えられるほどの体力は、右肩下がりの新聞や雑誌、あるいはテレビにもない状態だ。

・もともと日本のジャーナリズムは科学やデータに強くなく、どちらかというと社会部的な取材を得意としていたようなところがある。過去には水俣病や薬害の報道で、「まず被害者の声に耳を傾ける」ということをしていたと思うが、そうした過去の成功体験に基づいているのかな、と。それと、新入社員はOJTで育てていて、アカデミックな教育を行っていないから、専門知識の部分が弱い。海外では修士を持っていたりしてアカデミズムに近いジャーナリストも多い。

・たとえば統計についても「頻度主義なのかベイズ主義なのか」といった程度の理解ぐらいはメディアもしておいて欲しいが、日本の報道はそういうレベルにない。P値が何かも分からないようなリテラシーでテレビ番組を制作するから、本当にアホな統計データを番組内で提示しちゃったりする。だから、生放送で「その数字は出しちゃだめですよ」といった指摘をすることも多かった。伝えようとするメディアが理解しないまま数字やグラフを出すというのは本当に罪深いことだと思う。

・特に2020年はプレプリントの論文が大量に出たことで、誰も検証していない論文をメディアが取り上げ、あたかも通説のように報道してしまって混乱が生まれるケースもあった。プレプリントにも功罪あるが、「科学×ジャーナリズム」という観点では問題をさらに難しくしていると思う。

・多くの人は科学者と科学システムを区別できていない。科学システムが素晴らしいのはラディカルな立ち位置を持つ科学者たちが“殴り合い”をした結果、「勝ち残った人間が正しい」という仕組みになっているところ。素晴らしいのはそのシステムであって、科学者がどれだけ正しく判断できるかという話とは別だ。ところが、多くのメディアは科学者の言うことがおしなべて正しいと思っている。それは違う。それぞれ個別の立場でラディカルに意見を戦わせる科学者の言うことを、一般の人々が真に受けるべきではない。

3) 科学ジャーナリズムをより良くしていくために必要な取り組みは?

・昨年は、お医者さんや医療系ジャーナリストが所属する(一社)メディカルジャーナリズム勉強会と共同で、メディア向けの勉強会を開催した。そうした場で専門家の知識を皆で共有する仕組みが大事になると思う。また、科学側の知識や経験を持つ人を記者にすることも重要だと考えている。

・博士課程を修めた人やポスドク出身の方がメディア側に入ることがあればいいなと、私も思っている。ただ、これまでは理系の人々が文章を書く指導をまったく受けてこなかった。教養科目を解体する流れもあり、そもそも高校で理系を選択する時点から国語や英語が疎かになっていくし、大学でも教養は1年しかやらずにすぐ専門分野に入ってしまう。だから、言葉で伝えるというジャーナリズムにおける柱の部分で力がつかない。

・もうすぐ第6期の科学技術基本計画が立ち上がるが、今はそこに人文社会系も取り入れていく形になりつつある。そうすれば異分野の方々とも今以上にコミュニケーションできるようになると思う。その辺は今まで以上に大切な能力となっていくので、科学者、あるいは科学の道に入っていく方々にはもっと意識してもらいたい。

・SNSで発信する研究者が増えてきたことも重要だと思う。以前、メディカルジャーナリズムに関してSNS調査を行ったところ、Twitterではコロナ関係のフェイクニュースが時間の経過とともに減っていく傾向が見られた。東日本大震災の頃とは違う動きだ。専門家によるファクトチェックが入りやすくなり、間違った情報が淘汰されやすくなっているのではないかという仮説がある。逆に、今はどちらかというと閉じた空間であるFacebookのほうがフェイクニュースは広がりやすい。

・フェイクが最も多いのはInstagramだと、研究者のあいだでは言われている。反ワクチン運動もInstagramから生まれた。ただ、アメリカではそれが早い段階で問題視され、関連ハッシュタグが禁止になったりしたのに対し、日本ではしばらく規制が入らなかった。それで、不安感や孤立感を抱く母親たちに「HPVワクチンは危ないよ」という言葉をかけ、コミュニケーションを通して人々の孤独感を埋めていくような構造でフェイクが広がっていった。日本のFacebookやInstagramがその辺で対応しはじめたのは、ここ2年ぐらいの話だ。それで劇的に変わったが、いかんせんプラットフォームが日本発でないから規制が遅れてしまう。

・医者は個人の体を直す専門教育を受けた方ではあるが、公衆衛生や感染系の専門家ではない。けれども、テレビ等で「クリニックの現場で発熱外来を見ていますが、そこは問題ないです」なんて医者に言われてしまうと、なんとなく正しい話のように聞こえてしまう。だから、メディア側は「公衆衛生と医学は何が違うのか」といった話から理解する必要があると思う。

・メディアが両論併記の病にかかっていると感じる。どちらかに寄った言い方をすると居心地が悪くなるようだ。でも、右翼と左翼といった話ではないし、科学的に妥当な話と不正確な話を並べたうえで、まるで双方に分があるかのように伝えるのは、むしろ公正さを損なっていると思う。また、たとえば副反応についても「因果関係は分かりませんが」という一言を添えてくれるだけでだいぶ変わるのだけれど、とにかく影響力のあるテレビがどうにもならないと感じる。

・朝8~10時までのテレビ枠なら数億~10億でスポンサーを取れる。正直、「取りたいな」と思う。それで地上波からていねいにサイエンスコミュニケーションを重ねていけば、時間はかかるが視聴率等の数字も上がる。そうした活動に理解のあるスポンサーがいれば制作陣は好きにできる。地上波は政治家もすごく見ているので。

・科学ジャーナリズムについては、科学も、あるいは科学者も、「間違うことはある」ということを認めていただいたうえで、一緒に良くしていくというスタンスで見てもらえたらと思っている。

・情報を受け止める側のリテラシーも大事だ。メディア情報に限らず、あらゆる情報について、ある種のクリティカルシンキングができるよう、本来であれば教育にリテラシーのプログラムを加えて欲しいと思っている。

G1@Clubhouse51「『科学×ジャーナリズム』コロナ禍で考える、科学をどう正しく伝えるのか?」高橋祥子×大隅典子×瀬尾傑×堀義人

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