テーマと出演者
テーマ:「コロナ禍の小売サービス・飲食の現状と未来」
発言のポイント
1) コロナ禍における飲食・美容・小売(生花)・観光の現状
<飲食>
・帝国データバンクによると昨年2月からの1年間でコロナ関連の倒産は1,000件に達したという。飲食業界を個別に見ても、ロイヤルホールディングスさんが160億の資本支援を受けたり、ヴィア・ホールディングスさんが事業再生ADRを申請したり、コロワイドさんが子会社の株を売り出して140億円を調達したり、上場企業だけでも大きな動きが続いている。
・居酒屋業界の売上は2019年比で6割あれば良いほうと言われる一方、昼食が強いところは比較的ダメージが小さい。回転寿司チェーン店の大手3社さんもマイナス幅はあまり大きくない。最も大きな影響を受けているのは総合居酒屋のチェーン店さんだ。ひどいところは2019年比で3割とか。また、地域としては都心が厳しく、郊外はそれほど悪くない。たとえば八王子や本八幡等、電車で都心から1時間ぐらいのところは売上がそこそこ戻ってきている。
・一律6万円の時短営業協力金は小規模店舗にとって非常に大きい。10~20坪なら坪単価が高くても固定費をかなり賄えると思う。しかし、50坪以上の大型店は固定費だけでも相当な負担が続く。大きなチェーンは雇用も大きい筈だが、そこが救われていない状況だと感じる。
・当社はオフィス街の店舗も多く、こちらは宴会を禁止している企業さんも多いので需要が完全になくなった。居酒屋で飲むのは不要不急の1つとされているようだ。ランチ自粛の議論に対するサイゼリアさんの反発はすごくよく分かる。先日の緊急事態再延長も「え!」という感じだった。オープンするか否かの判断はぎりぎりまで保留していたが、食材がなければ商売にならないので、その準備自体は進めていたからだ。
<美容>
・当社は今ようやく2019年比で80%ぐらいに戻ってきた。リピーターのお客様による売上が多かったからこそやってこれた部分がある。しかし、4月8日から5月まではまったく営業できなかったし、およそ2ヶ月のあいだ売上がゼロというのは地獄だった。ただ、そのあとの6月以降は業界としても徐々に戻っているところが多い。
・美容業界は2極化している。先日ネイル業界で倒産が相次いでいるとのニュースもあった。融資を受けられなければ倒れてしまう会社は多いと思う。我々も生き延びるために17店舗を閉めた。ニューヨークでも7年続けてようやく成功しかけていたが、ああいった状況だったので5月に完全撤退した。辛い思いもしながらリストラを進めつつ、なんとか今年2月末を迎えている。
・我々もオフィス街の店舗はリモートワークで来店が減っている一方、郊外型はご自宅が近いということで来てくださるお客様が多い。この構図は今後もニューノーマルとして大きく変わらないように思う。
・メンタルヘルスでも苦労は多い。アクリルのシールドをして手袋もメガネも付けて接客を行っているが、それでも不安に思うスタッフが離職したりして日々悩んでいる。男女で問題を括っているわけではないが、今は現実問題として社会全体で女性の自殺が増えているとも聞いているし、メンタルヘルスは最大の問題の1つだ。
・当社は減資をする前まで中堅企業だったので雇用調整助成金は75%。家賃支援給付金もチェーン展開しているところは上限がきつく、当社は600万に留まる。持続化給付金は200万が上限だった。もちろん、いただけるだけでも有り難いが、何十~何百店舗も展開している会社さんは相当厳しいと思う。あとは、税金と社会保険の一部も1年間の支払い猶予をいただいたので、そこは救われた思いだ。いずれにせよ、一律支援ということで大きな会社ほど厳しい状況にある点では、飲食業界の皆さまと同じ状況だと思う。
<生花>
・ブライダルや冠婚葬祭向けは大変な状況にあるが、当社のビジネスは自宅用が中心。切花も卒業式や送別会といったギフト需要が落ちたものの自家需要は増えた。それがギフトの落ち込みをカバーして、全体でも2019年比で105%増となっている。「家に観葉植物等を置きたい」という方も増えていて、こちらは同140%、さらにオンラインでは同180%に達した。外に出れないぶん「家のなかにお花や緑が欲しい」という方が驚くほど増えている。
・ただ、今は生産者さんが減っている。今年は台風の影響等で壊滅的な打撃を被り、生花をやめて野菜や果物づくりに転換した方が増えたためだ。今は輸入しようにも世界的にコンテナが不足している。その結果、現在の市場価格は過去5年で最高値になった。ちなみに、当社はロンドンで百貨店に入っているが、百貨店自体が閉まっているので売上はゼロ。逆にパリは路面店が好調だ。需要は旺盛なので店舗を開けられるかどうかがポイントになっている。
<観光>
・第1波では壊滅的状況だったが、それ以降はGo Toにも牽引してもらっていたし、11月頃は業界として希望に満ち溢れていたと思う。多くの事業者が2019年を超える状況だった。しかし、再び緊急事態宣言が出てGo Toも止まり、今はまたネガティブな影響を受けている。ただ、2019年比で95%減といった状況だった第1波と比べると、2回目の宣言下ではマーケット全体でも50%減ぐらいに留まっている。
2) 見えてきた新たなビジネスの可能性と未来
<飲食>
・当社もテイクアウトとデリバリーには対応していて、こちらは分母がもともと小さかったので昨対で200%に伸びた。ただ、今は繁忙期ということもあり、当社売上全体に占める割合は3%前後に留まる。最近はデリバリーやテイクアウト向けということで、キッチン1箇所で複数ブランドに対応する店舗も増えてきた。デリバリーでは分からないが、たとえば居酒屋さん1店舗で「焼き肉の○○」や「唐揚げの○○」の看板も兼ね、多様なブランドを展開していたりする。
<美容>
・いくつか可能性は見えてきた。事業ポートフォリオとしては、やはり物販ECがコロナ禍でも強いので、今までECとリアルで1対15前後だったものを1対8ぐらいにしたいと思っている。また、今は美容業界全体が大きく変化している。アイメイクやスキンケアは売れているがリップは売れていない状況だ。また、お客様は基本的に通販で買うので、今後はパーソナライズとホームメンテナンスが鍵になる。さらに言うと時短も重要になるため、接客を中心とする当社でも時短を軸にしたメニュー開発をしたりしている。
・接客に関しては、今後はロボット化でスピードを早めていくような方向と、今まで以上に丁寧な接客を行うことで、当社の理念にもある「お客様の日常のストレス解消」をさらに突き詰めるような方向の2つに分かれると思っている。将来的には両方を押さえていかないといけない。
・現在の状況は日本のサービス業が変わるチャンスでもあると思う。これまで日本の美容業界やマッサージ業界は、世界一品質の高いサービスをすごくリーズナブルに提供してきた。ただ、それが過当競争や格安競争につながっている。かつては1時間1万円前後だったマッサージが4,000円や3,000円になったりしていて、自分で自分の首を締めていたように思う。そうした競争からの脱却を皆が目指さなければいけない。
・当社は、ジェルネイルやネイルオイル等、サロンで扱う製品をすべて自社でつくっていて、今はそれを全国の個人ネイリストさんのサロンにも卸している。自社サロンを閉めていた時期もこちらが売れていて、そこで救われた部分がある。これはB2スモールB。個人ネイルサロンさんは各地域でしっかりとお客様の支持を獲得していて、需要はコロナ禍でもそれほど落ちなかった。自社でも店販はしているが、今後は卸をさらに拡大させたい。
3) 社会に訴えたいことや、政府に期待すること
・給付金や支援金については公平性を高めていただきたい。もともと月商100万に届いていない個人事業者の方も、今は一律で6万×30が支給されるため月180万の給付金を得ることができている。この辺は申告を基準にしたうえで、そこから漏れた方を個別に助けていく形のほうが納得感があるように思う。
・政府が濃厚接触者の定義をもっとしっかり掲げるべきではないかと思う。1メートル以内でマスクを取って15分以上話すのが濃厚接触者の定義。それを避けたマスク会食であれば感染を増やさずに飲食店は救えるのではないか。今はただただ「飲食店が」と言っているだけのような状態でロジックも曖昧だから、20時過ぎも営業するお店が出るのだと思う。緊急事態延長で総理が謝るという話でなく、明確なロジックのもと、マスク会食等で飛沫感染を防ぐ方向でしっかり話をしていくべきだと思う。
・生花業界は農水省との絡みが多く、いろいろと予算は設けていただいている。ただ、生産者を守るのなら需要を増やすことからはじめないといけないのに、そのための販促で農水省の予算を使うのはNG。「農水の予算は生産者向けに使うように」と言われてしまう。第1走者から第4走者までバトンが伝わることで業界全体が活性化するわけだから、融通を効かせて省庁の垣根を超えた予算の使い方ができればと思う。
・今は観光業でも廃業が増えているし、事業者様からは「心が折れた」との声が数多く挙がっている。3月7日まで耐えようと思っていたが、結局ゴールポストが動いて、緊急事態宣言もよく分からないまま延長されて…。マラソンでいえば40km時点で「実は50kmでした」と言われ、「もう棄権しようかな」と。誰が悪いという話でもないが、ぶつけようのない怒りがあるというか、何を信じていいのか分からない状況だ。この辺はG1メンバーとしてしっかりと声を挙げていく必要もあると思う。
ディスカッションに参加してくださった皆様