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みんなで乗り越える力を ――『チームレジリエンス 困難と不確実性に強いチームのつくり方』

投稿日:2024/07/11

新規プロジェクトの立ち上げ。順調に見えたはずなのに、想定外のトラブルが続出する。納期は迫る。焦りとプレッシャーが渦巻く中、チームメンバーは不安を隠せない。

そんな状況下で、あなたはリーダーとして葛藤する。「なんとかしなければならない。私が頑張らなければ…」

困難を「一人で」乗り越える時代は終わった

困難に直面したとき、リーダーが問題解決の責任を負うべきだと思うのはごく自然なことだ。しかし今の時代、強いリーダーシップだけで困難を乗り越えるスタイルは、限界を迎えつつある。 

不確実性と困難がますます増している現代だ。個の力だけで現状を打破するのはもはや難しい。だからと言って、チームで問題解決に当たろうとすると、うまくいかないこともある。特にストレスの高い環境下では、責任を誰かに押し付けたり、組織や社会のせいにしたりと、逃避的な行動に走ってしまいがちだ。結果、状況はさらに悪化し、解決が一層困難になることもある。

こうした悪循環から抜け出すためにはどうすればよいのか。その鍵は「チームレジリエンス」にある。 

チームレジリエンスとは、チームが「困難」から回復したり、成長したりするための能力やプロセスのことをいう。これからの時代、困難を乗り越えるためには、リーダーの「個の力」だけでなく、チーム全体で困難に立ち向かえる「チームレジリエンス」が必要だ。

ともに乗り越える力「チームレジリエンス」をどう発揮するか

変化の激しい環境において、チームレジリエンスはますます重要になってくる。では、チームレジリエンスを発揮するには、どうすればよいのだろうか。

 本書では、国内外のさまざまな研究論文に基づき、3つのステップを紹介する。①困難に対処し、②そこから学び、③被害を最小化する、というステップだ。

一見するとシンプルだが、いざ実践しようとすると、思い通りにいかない難しさがある。それは、それぞれのステップで”罠”が存在するからである。 

例えば、「①困難に対処する」ときにありがちなのが、「困難を解決可能な課題に落とし込めていない」という罠にハマってしまうことだ。

あなたも過去、こんな経験をしたことはないだろうか。プロジェクトが佳境を迎えた矢先、主力メンバーが突然チームを去ってしまう。代わりの人材は確保できず、残されたメンバーは目の前の膨大なタスクに追われる。そんな中、予期せぬトラブルが発生し、チーム内で意見が対立。メンバー間でギスギスした雰囲気が蔓延し、話し合いもそこそこに、焦燥感に駆られてとにかく目の前の問題に対処する。深慮浅慮な対応を繰り返すうちに、状況はさらに悪化していく――。 

こうした場合の対処法として、本書ではビジョン、成果目標、プロセス目標を整理し、課題を設定することの重要性を説いている。具体的には、最終的に何を達成したいのか(ビジョン)、いつまでにどんな状態を目指すべきなのか(成果目標)、そのためにはどんなプロセスを経て成果を得るのか(プロセス目標)、を整理した上で、解くべき課題を定義することが重要だと述べている。これは、問題解決のアプローチで重要視される「分解」の考え方とも一致するポイントだ。

このように、本書はチームレジリエンスという捉えにくい概念を理論面から整理しただけでなく、現場で実践可能なアプローチへと落とし込んでいるのが特徴と言える。

困難を乗り越えたいと願うすべての人へ

本書の「おわりに」では、著者のチームレジリエンス研究にかける想いが語られている。その言葉に、私も大いに共感した。 

物事を前に進めるには、目指す将来像を決め、計画を立てることが重要だ。しかし現実は、想定外の壁にぶつかり、思うようにいかない状況の方が多い。計画通りに事が運ぶことの方が稀である。

私も過去、リーダーとして任されたプロジェクトが思うようにいかないことがあった。何とか立て直そうと孤軍奮闘したが、頑張れば頑張るほど、リーダーへの依存傾向は高まる。当時、やっとの思いでプロジェクトを完遂できたが、バランスを失った心身を回復させるまで数ヵ月要した。 

大小問わず、こうした経験はリーダーなら誰しもあるだろう。もしかしたら今まさに、その状況にいるかもしれない。そのとき、著者の次の言葉は共感を呼ぶ――「目指す方向を探すことも大切だけれども、うまく行かないときにそこから立ち直り、前に進んでいく力はそれ以上に大切」だ。

思い通りにいかない世の中だからこそ、困難にぶつかっても立ち直る”しなやかさ(=レジリエンス)”が必要なのだ。 

本書は、困難を乗り越え、前に進もうとするすべての人に向けた応援歌であり、逆境に直面した際の指針となる示唆に満ちている。


チームレジリエンス 困難と不確実性に強いチームのつくり方
著:池田 めぐみ、安斎 勇樹 発行日:2024/5/31 価格:1,980円 発行元:日本能率協会マネジメントセンター


レジリエンスやチームマネジメントについてもっと理解を深めたい方はこちら

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