ラグビーワールドカップの衝撃映像技術をスタジアムの客席でも?「5G」の威力

今回のラグビーワールドカップは、日本代表が初めてベスト8へ進出するなど、大きな興奮を巻き起こしました。10月20日の日本対南アフリカ戦の地上波テレビ中継は、日曜夜のゴールデンタイムという絶好の時間帯も相まって平均視聴率は41.6%。サッカーの2018年W杯決勝トーナメント「日本対ベルギー」が夜中に30.8%、野球の2017年WBC準決勝「日本対米国」が平日昼間で20.5%と比べても、破格の高視聴率を記録したと言えるでしょう(数値はいずれも関東地区、ビデオリサーチ社調べ)。

単に日本代表が勝ち進んだからというだけでなく、今回じっくりと試合を観戦して、改めてラグビーそのものの魅力を知ったという人も多いのではないでしょうか。そんな体験を盛り上げるのに大きく貢献したのが、迫力満点の映像技術の数々です。

例えば、スクラムを組むところをほぼ真上から撮影したシーン。あるいは、ペナルティキックを蹴る際に、キッカーの真後ろから広角でゴールポストまでを捉えたシーン。これらは、フィールド上空に張ったケーブルを移動するSkycamと呼ばれるリモコンカメラによるものです。

また、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)という際どいプレイのビデオ判定の様子が、主審のピンマイクと画面分割によって視聴者にもリアルタイムで共有されるのも新鮮でした。極めつけは、キヤノンが今回技術提供した「自由視点映像生成システム」です。これによって、グラウンドの中で自由自在に視点を動かしながらプレーを捉えることができました。

これらの映像技術を見るだけでも最近のテクノロジーの進歩をひしひしと感じますが、今のところはこれらを見ることができるのはテレビ(あるいは映像編集後でのネット上)においてです。

実際にゲームが行われているスタジアムでは、大画面スクリーンこそありますが、見たい場面をもう一度見せてくれるスローVTRも精細なズームアップも望めません。そうした観戦体験をしたいならテレビ観戦(あるいはせいぜいライブビューイング)、生観戦はそうした体験を捨ててでも、フィールドの空気や観客の応援なども含めた現場のライブ感を味わうためのもの、そんな棲み分けがあります。

しかし近い将来、スタジアムの観客席に居ながらにして、手元のタブレットやスマホで見たい場面のスロー再生やズームアップ、さらには自由視点映像までも見られるようになるかもしれません。その決め手と目されているのが「5G」の技術です。5Gとは、第5世代移動通信システムのことを指します。2019年現在使われているのは4G(第4世代)で、これをさらに進化させたものという意味です。5Gの特徴は、「超高速」(データの通信量が大きくなり動画の受信が容易に)、「低遅延」(情報伝達のリアルタイム性が高まる)、「多接続」(多数の端末が同時に利用できる)とされています。

既に、一部で実験的な試みは開始されています。
(昨年の例:https://www.au.com/5g/article_2_sports_image/
 今回のラグビーW杯でも同様の企画がありました:https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2019/07/26_00.html

これが実用化されますと、スタジアムやアリーナ、あるいはライブビューイング会場でのスポーツ生観戦の体験価値が大きく向上し、興行収入アップが見込めるだけではありません。

撮影・通信設備に加え、座席数自体の増設や、ゆったりくつろいで見られるボックス席の増設といった投資も必要になるでしょう。また良いプレイを何度も楽しむために、ゲームの進行を止める頻度を増やすよう、ルールにも影響が出るかもしれません。5Gの及ぼす影響はもちろんこれだけに留まるものではありませんが、スポーツエンタメビジネス界が大きなビジネスチャンスを迎えるのは確かなようです。

【参考図書】
『テクノベートMBA 基本キーワード70』
グロービス、嶋田 毅 (著)、PHP研究所
1620円

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