藤原和博が語る!「希少性の高い人材」になるためにはキャリアの3歩目で思い切りジャンプしよう!情報編集力を高める「つかみ型自分プレゼン術」も大公開!

本記事は、あすか会議2019「リーダーに必要な視点・発想・考え方」の内容を書き起こしたものです(後編) 前編はこちら>>

藤原和博氏(以下、敬称略): それでは今から「情報編集力」を高めるゲームを紹介しますね。今日の講演終了後からすぐ使えるような道具を渡しておきたいと思います。それが「自分プレゼン術」です。

情報編集力を高める「つかみ型自分プレゼン術」

自分のマインドを処理脳から編集脳へ変えようというときは、自分のプレゼンを練習するといいというお話です。皆さんは、これからも数限りなく、相手と初対面というシーンを経験しますよね。そういうときは、ほぼ名刺を渡しちゃうと思うんですよ。すると、渡された相手は脳の中で情報を処理します。それで、「あ、この会社のこの役職の人ね」で終了。皆さんのキャラは伝わりません。もったいない。でも、人間には動物の脳が残っているから、実は最初に出会ったとき相手が敵か味方かを裏で判断しているんですよ。味方だと考えてもらうのは何回か通ったり会ったりしてからでいいんだけど、その最初の段階で敵だと判断されるのは、これから経験するすべての出会いにおいて損です。逆に、敵だと判断されなければ話も通りやすくなる。そのための練習がすごく大事なんですね。

というわけで、出会った相手にすぐ名刺を渡すのでなく、自分のキャラのなかからどこかを切り出して相手に渡すということをしてもらいます。自分が一番分かっている「自分のキャラ」という土俵で、自分という情報をどんな風に編集して渡せば相手が和んでくれるか。その練習を今やってもらいます。誰かと組んで、2人で「つかみ型」の自分プレゼン術を練習しましょう。一番強力な例は僕が最初にやったやつですね。「教育界のさだまさし」という、一般的に知られていて、しかもイメージが悪くない人。 実際、素晴らしい人なんですが、「さださんに似ている顔」という資産を僕は持っているから、これをいじるだけで皆さんが和んでくれたわけです。

和んでくれる顔という貴重な資産を持っている人は、どんな講演でも100人に1人ぐらいの割合で見かけます。自分で顔をいじると、だいたいウケる、または和んでくれるという人、指さないから手を挙げてみて。あ、いますね。一応断っておきますが、相手も知っていることが大事ですからね。この会場が小学生で埋め尽くされていたら、僕はさだまさしさんの名前は出しませんよ。小学生はさだまさしさんを知らない可能性があるから。知らない人に「似ているだろ?」って言った途端に引かれて終わり。二度と話も聞いてもらえません。

あと1つラッキーなのが、上か下の名前がすごく複雑だったり読みにくかったりする人。たとえば武者小路とか西園寺とか伊集院とか、なんだか由緒正しそうな読めない名前が一番いいですね。小中学生の頃は困ったと思うけど、大人になればそっちが勝ち。それを読んでみせたうえで、「山口の萩市には3軒しかいなくて東京に出てきたら1人だけでした」とか、「この縄という字は『火縄銃』から来ていて、どうも、ひいひいひいおじいちゃんが種子島から云々」とか、そういう物語をちょっとかませるといいと思うんです。根も葉もない嘘だと詐欺になっちゃうけど、ちょっとネタがあるなら盛っていいです。演出して名前をうまく利用して語ればいいと思うんですね。

それともう1つだけ。自分のキャラを切り出してウケる自信のない人は、自分に縁の深い人を出す。たとえば「弟が来年のオリンピックの水泳で~」みたいなことを言ったら「ええ!?」ってなるじゃないですか。「もしかしたらチケットもらえるかな」とか。あるいは、犬を飼っている人には犬の話がすごくウケる。「ドーベルマン3頭飼っています」って言う人は絶対敵にしたくないですよね。「妻がドーベルマンです」って言うともっとウケるんだけど(会場笑)。とにかく、そういう演出はあっていいので、この場で2人で組んで自分のキャラを編集してください。すごく基礎的な編集力の発揮です。パッとやって相手が和むかどうか、1回試しください。15秒で。それでウケなかったらもう一度。でも3回はやめておいて。3回やってウケないと傷ついちゃうと思うから(会場笑)。というわけで、1人30秒だから1分で終わると思います。壮大な自分プレゼン合戦です。3、2、1、はいどうぞ。

相手の「つかみ型」自分プレゼンに大変なインパクトを受けて「今日眠れそうもない」という人は? あ、いるじゃないですか。これは練習すれば絶対上手くなりますから、今日から練習してくださいね。どう練習すればいいか。今日から初めて会った人に、とにかく何かかます。何か言う。それでウケなかったら、しらっと名刺を渡す(会場笑)。これでいいんです。失うものはないですよ。たまにしつこいやつがいるのね。「あの、すいません、さっきのはなんだったんですか?」って。そうしたらね、クールに「忘れてください」と言えば大丈夫(会場笑)。ここまで、情報編集力を鍛えるワークをやりました。皆さんの情報編集力は現時点ですでにぐっと高まっています。

分かると思うけど、先ほどの逆三角形で言えば左上の情報処理力が頭の回転の速さで、右上の情報編集力が頭の柔らかさですね。頭の回転が速くて頭が柔らかい子のことを、「頭がいい子」というわけです。大人でも一緒です。というわけで、その両方をバランス良く磨いて欲しいという話でした。

プレゼンとは「相手の頭の中」にある世界観を編集すること

さて、プレゼンについては私のYouTube動画でも特によく観られている箇所があって、今日はそれを生で見てみたいという人もいると思うので少し解説しますね。プレゼンは、説明(Explanation)とは違います。なぜ僕が「自分プレゼン術」という表現を使うかというと、自己紹介とは違うから。自己紹介とは、「自分はこういう人だ」という自己認知を、起承転結まではっきりさせたうえできれいに解説すること。ただ、そんな風にして自分の頭の中にあることだけを直接解説するというのは、パワポのようなツールを使おうと何をしようとプレゼンとは言いません。なぜなら、自己認知が相手に伝わっているかどうかというのはまったく別の話だから。相手の脳の中にどのような像が結ばれたかをまったく気にせず、自分の話に終始している人っていますよね。それはExplanationに過ぎません。

一方、プレゼンというのは相手の頭の中でやることなんです。先ほど「さだまさしさんを知らない人に『教育界のさだまさし』と言っても通用しない」と言いましたよね。これ、すごく大事なことです。人は、自分の世界観のなかにあるものが編集されたときに初めて納得できるんです。そういうことが分かっているなら、プレゼンのなかで本来はヒアリングにヒアリングを重ねること。プレゼン時間が30分だとしたら、うち28分を使って、どんな要素が彼または彼女の世界観のなかにあって、何が好まれ、何が嫌われているかといったことをインタビューするんです。僕だったら、そのあと最後の2分間を使って、相手の世界観のなかにある要素だけを編集してプレゼンをします。分かりますか?「プレゼンとは相手の頭の中に映写室で映写をする感覚なんだ」ということに気付いてもらえたらと思います。これはね、5万円ぐらいの価値がある(会場笑)ということで、非常に大事な話をしました。

100万人に1人の「希少性の高い人材」になるための方法

では、ここからは「情報編集力」をキャリアと人生にどう役立てるかという話をします。この話はホリエモンやキングコングの西野君もすごくPRしてくれています。大ヒットしている西野くんの『魔法のコンパス 道なき道の歩き方』でも、今からお話しすることがメインの考え方として書かれています。会場には組織に属している人も独立して事業を営んでいる人もいると思いますが、今からお話しするのは、ここにいるすべての人に、100万人に1人の希少性のある人材になってもらいたいという話です。100万人に1人というのは、だいたいオリンピックのメダリスト級。メダリスト自体は無理だけど、メダリスト“級”なら、100万人に1人の希少性をゲットすれば可能です。だから、それをどうやってゲットするかという話をしたいと思います。100万人に1人というのは「1世代に1人のユニークさ」とも言えますね。

ここで「キャリアの大三角形」という図をご紹介します。

まず、皆さんの多くは20代で社会に入りますよね。会社に入れば配属があります。で、それが経理でも営業でも広報でも、約1万時間の練習を積めば1つの仕事はマスターします。これ、だいたい常識ですよね。1万時間というと、1日3時間徹底的に集中すれば3時間×365日で1000時間だから、それが10年。もう少しかかるかな。でも、1日6時間集中してその仕事に突っ込めるなら5年ですよね。というわけで、だいたい5~10年かければ1つの仕事はマスターできるというのは、ここにいる人たちが全員経験している真実じゃないかと思います。このように最初のキャリアとなる左足の軸を固めるというのは、もしかしたら事故のようなものかもしれません。会社で配属されてその仕事をやるということですから、最初は嫌だったかもしれない。

僕だってそうです。リクルート入社当時の配属希望は皆と一緒ですよ。「企画開発を!」なんて言っていました。でも営業に配属されて「ええ!?」なんて思いつつ、最初の3年から5年は朝から晩まで営業とプレゼンをやっていた。だから営業とプレゼンが僕にとっては最初の左足の軸です。で、その次ですが、だいたい皆さん、いろいろなところにピボットすると思うんですね。営業から営業企画だったり、広報から宣伝だったり。これだってもしかしたら偶然であって、会社の異動でどこか地方の工場へ行くなんていう話になるかも知れません。これがもう1つの軸足ですね。この右足の軸をどう固めるかは人それぞれだと思いますが、これも1万時間ほどかければ100人に1人ぐらいの存在になれる。5年から10年やれば絶対100人に1人にはなれる筈ですよ。1万時間というのはそういう目安です。

キャリアの三角形で大事なのは「3歩目」をどこに踏み出すか

ここまでが「キャリアの三角形」の底辺となる左足と右足の軸の話ですね。で、たとえば20代では営業で1/100になったのち、僕は27歳から37歳までリクルートでマネジメントをやりました。だから右足の軸はマネジメント。これも10年くらいかかったけどリクルート流のマネジメントが身に付いたと思う。ここでも1/100になれば、1/100×1/100で1万人に1人になれるわけです。ただ、問題はそのあと。皆さんも、ほとんどが1歩目の軸はできていますよね。2歩目ができている人もいるでしょう。でも一番大事なのは、その次の3歩目をどこに踏み出すか。ここの掛け算が見事にできると大変な付加価値がつきます。

それがしょぼい人は、右も左も軸足はできているんだけど、怖いから近いところに3歩目を置いちゃう。それで、なんとなく近くの関連会社に出ちゃったりするんです。でも、そうすると3歩目によってできあがる三角形の面積が広がりません。その三角形の面積こそ希少性の高さなんです。それが広がると希少性が高まって皆さんへの「引き」が強くなる。いろんな人が力を貸してくれるようにもなります。そうして関連する多くの他者から力を得たほうが、エネルギーがたくさん流れ込むようになるから、皆さんの夢やビジョンが実現しやすくなります。

安心してください。僕も今、偉そうなことを言っていますが37歳から相当迷いました。2つの軸はできていたけど、3歩目をどこへ踏み出すかという段階でいろいろなことがあった。それで海外に出たこともあります。何かを見つけに行ったんですよね。そのあと帰国してから40歳で会社を辞めました。それでも3歩目は見つからず、そこから7年ほどかかった。だから僕は37歳から47歳まで、3歩目をどこに踏み出すか試行錯誤していました。定まったのは47歳のときです。そこから一気にジャンプした。ホップ・ステップ・ジャンプです。なぜか。30代のうちに2つの軸で1万人に1人になって、それで僕は「これで2000~3000万の年収は得られるかな」みたいな感じで会社を出ちゃったんです。最初はそれで良かったんですよ。でも、あとから考えてみると、リクルート出身の若いやつで、営業・プレゼンとマネジメントができるという人はきっと次々出てきますよね。さらに、たとえば英語も中国語も話せる帰国子女とか、プログラミングもできるIT系とか、そういうのが出てきたら僕の価値はどんどん漸減していきます。

そういうことが見えていたから、近場に踏み出すのではなくて「どこか遠くにジャンプしなきゃダメだな」と。それで公教育の分野を選びました。それで、当時は10人中9人に「リクルート流の営業・プレゼンやマネジメントでは通用しないんじゃないか」と言われましたが、やってみたら通用しちゃった。それで5年間校長を務めた結果、公教育でのマネジメントができるようになった。しかも、ドラッカーが分かっている非常に稀有な、100人に1人の希少な校長になることもできちゃったわけです。この掛け算が効いているから、今日まで僕への強い引きが切れないでいるという感じなんですよ。

では、皆さんにとって3歩目のジャンプは何なのか。それが今日の一番大事な課題です。すでにイメージはあると思う。「自分は今2歩目まできているけど、3歩目はこうじゃないか」と。これ、ジャンプとは言っていますが、必ずしも今勤めている会社を辞めなくてもできることはあると思うんです。自己申告で希望が通るような、個人の思いに対して投資が行われるような会社なら、会社にいたままジャンプできますよね。もちろん、会社を出て起業するとか、仲間とコミュニティをつくってまずは土日だけでやってみるとか、いろいろなやり方があるんでしょう。それを、先ほどブレストした仲間にちょっと語ってみてください。これはブレストというより、「自分はこういう立場で、今こういう風にやろうと思っている」ということを語るだけでいいです。照れずに話してみてください。3、2、1、はいどうぞ。

ここでは例を2~3つ示します。たとえばグロービス経営大学院学長の堀(義人)さん。住友商事のサラリーマンがグロービスをはじめただけなら、ここまでにはならなかったんじゃないかと、失礼ながら僕は思うんです。でも、やっぱり彼が10年以上前にはじめた「G1サミット」というイベントがすごかったわけですよ。今、日本を動かしている、それぞれの業界を革新しているリーダーが100~200人集まっている。そういう人たちの集まりだから僕もすごく惹かれる。この3つ目の軸はかなりのジャンプだったと思いますが、10年続けたから今は大変な力になっています。もちろんグロービスとしても今後「アジアNo.1になる」とか「世界No.1になる」という夢はあると思うんですが、やっぱり現在の三角形がトラス構造の一番根っこにあると思うんですよね。

ホリエモンはどうでしょうか。14歳の頃から久留米の天才プログラマー少年と言われていて、東大在学中はオン・ザ・エッヂという会社を興してIT企業の社長になりました。でも、そういうことだけやっていたら今のようになっていませんよね。でも、彼はそのあと不幸な事件で収監され、そこで一念発起して徹底的に本を読み込んで、ある種の世界観というか、哲学をきっちり固めた。そうして出所してから書いた『ゼロ: なにもない自分に小さなイチを足していく』という本は、もう哲学書だと思うんですよ。だから今は会場の皆さんも、何かの事象があったときに「ホリエモンだったらなんて言うだろう?」って、すごく聞いてみたいと思うようになっていませんか?

 キングコングの西野君もそう。吉本興業の芸人ですが会社を持っていますよね。そこで仮想通貨の実験をしたり、自分が稼いだお金で面白いチャレンジをたくさんしている。さらに絵本作家としても今すごく伸びてきています。近著の絵本は30万部以上売れた。アートがわかる絵本作家であり、芸人であり、かつ会社の社長でもある。落合陽一君もそうですね。研究者であり、プログラムも8歳頃からやっていたみたいです。さらに自分の会社をつくって、眼球の機能を使ったディスプレイ関連の特許なんかも今は持っている。そしてアーティストでもある。

そんな風にして3つの軸を30代から40代ぐらいまで固めるということです。そのトラス構造から50代以降は高さを出して立体化・3D化する。それで僕は今、ラオスで義務教育を受けることができない子どものための学校をつくっています。もう11校目になりますが、10校目のときは西野君を連れていって協力してもらったりもしました。そういうトラス構造を最初につくり、面積を広げて希少性を大きく高めたら、そのあと40代・50代・60代と50年ぐらい続く人生を、ピラミッドを築くように立体化するという人生イメージができるんじゃないですか。

どんなチャレンジでも「産道を通る時の恐怖」以上に怖いことはない

では、最後に今までの講演で語ったことのない話をして終わりたいと思います。皆さんに聞いてみたいことがあります。「3歩目はジャンプしろ」と言われても、これ、怖いじゃん。僕も先ほど「公教育の現場に飛び込んだ」と簡単に言ったけど、最初の入学式のときなんて子どもたちに見つめられて足が震えましたよ。大人なら2000人いてもぜんぜん怖くないけど、子どもに「こいつ大丈夫かな」「信用していいのかな」「今度の校長もつまんないやつじゃないだろうな」みたいな(会場笑)、そんな感じでまっすぐ見られると怖いんですよ。本音の目線だから。だから恐怖があった。それで、「その恐怖をどう乗り越えたんですか?」ということをよく聞かれます。だから皆さんにも聞いてみたいんですね。「正直、起業したりして3歩目を踏み出すのは怖いな」と思っている人は拍手くれる?(会場全員拍手)ですよね。そういう風に恐怖を感じるというのはすごく大事なことなんです。

でも、ここである写真をちょっと見て欲しいんです。

胎児のレントゲン写真です。ここにいる人のすべての人は、その昔、こういう状態だった。忘れているだけです。卵で産み落とされて鳥に育てられたっていう人、いないですよね(会場笑)。ここにいる千数百人の全員が母親から産み出されている。その状況を思い出してもらいたいんですよ。羊膜に羊水が入っていて、海の中を漂うような感じだった。では、そのあと何が起こるか。陣痛が起きて皆さんが排出されます。英語ではDeliverですね。このとき、どれほど怖かったか。だって母親の中ではすべての衝撃が和らげられ、外界のことはまったく気にしなくて良かったわけじゃないですか。そこからまったく知らない、体験も見聞きしたこともない世界へ押し出されるんです。そうして、いきなり光が当たってきて、うわっと肺呼吸がはじまって「おぎゃあ」と泣いたわけです。そこで取り上げてくれた人が母親か父親かも分からない。そういう、ものすごい恐怖が産道をくぐるときにあったわけです。

人間というのは歴史上、直立歩行するようになってしばらく経っていますから、実は産道のある骨盤のところが狭くなっているんですね。だから赤ちゃんは回転しながら出てくる。自分でそれを分かっているんです。何を言いたいかというと、皆さんが今まで経験したすべてのなかで、この体験が最も恐ろしかったはずなんです。この恐ろしさを超える体験なんてないんじゃないかと思います。違いますか? だから、どんなチャレンジでもこれ以上怖いことは絶対にないし、これ以上危ないこともないんですよ。それをぜひ思い出してもらえたらと思います。どうもありがとう(会場拍手)。

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