フレームワーク思考の新しい意義とは?

フレームワーク(枠組み)を用いて情報を整理し、意味合いを考えるという「フレームワーク思考」については、ビジネスパーソンに必須の思考スキルとしてこの数年ですっかり定着した感があります。

これまで実際にフレームワークを用いて考えるのは、ある特定の経営課題について考えるためか、あるいは自己のスキルの開発かというように、比較的身近な場面が多かったのではないでしょうか。たとえば市場環境を分析するための「3C」や、業界の魅力度を評価する際の「5つの力分析」といった定番フレームワークや、「ピラミッド・ストラクチャー」のような自身の思考をまとめるツールなどがよく使われます。

これに対して、近年、より俯瞰的、全体的な視野でビジネスを構想するためにも、フレームワークが必要とされてきています。

なぜ、フレームワーク思考が必要なのか?

そもそも、フレームワークの意義について改めて整理してみましょう。フレームワークとは、あるテーマ(イシュー)について取り組むときに何を考えるべきなのか(何を押さえればそのテーマについてしっかり適切に考えたことになるのか)の論点を網羅し、それら論点の位置づけを「見える化」したものと言えます。

「見える化」によって、まず、考えるべき要素の抜け漏れを防ぐことができます。複雑なテーマに取り組む際は、ともすると考えるポイントが偏り、見落としが生じがちです。フレームワークで考えるべき要素を予め網羅しておき、その「枠」を埋めることによってそれを防ぐというわけです。

さらに、他者と共同してテーマを考える際に、論点を整理しコミュニケーションを円滑にするというメリットも大きいです。ビジネスシーンでは、1人で考えるだけでなく上司、同僚、取引先等、さまざまな立場の人と共同して考える場面も多いですが、フレームワークを用いることで論点があちこちに飛ぶこと無く建設的な議論を進めやすくなります。また、練り上げた構想を周囲に説明する際にフレームワークがあると分かりやすいという点も無視できません。

こうしたメリットを持つフレームワークは、必ずしも「5つの力分析」のような経営学的に確立された分析ツールとは限りません。トヨタでは社内の提案を「トヨタ流問題解決」のステップに従って、A3の用紙1枚にまとめるようにしていることが有名ですが、このような「関係者が意味合いを了解している共通の枠組み」であれば十分に有用なのです。

特に最近は、他者と共同して考える際のコミュニケーション・ツールとしての重要性が高まっています。1つは、オープン・イノベーションに代表されるように、1社の中だけでなく複数の関係者と共同する機会の重要性が増していることです。

オープン・イノベーションとは、企業が新技術や新製品の開発に際して、社内外を問わず広く技術やアイデアを結集してイノベーションを促進することを指します。このとき、将来の経営方針や、社内の技術をはじめとした経営資源などについて、関係各者間でしっかりと認識を共有しておく必要があり、そこでフレームワークがあれば大いに役立つことは想像に難くないでしょう。

別の動向として、近年、大手の上場企業を中心に「統合報告書」の作成が定着しつつあることも挙げられます。統合報告書とは、主として投資家に対し、企業が長期的に価値を創造するプロセスの説明を目的としたものです。企業の長期的な価値創造プロセスを説明するとなると、理念や目的、外部環境の機会とリスク、経営戦略、活用できる社内外の経営資源などを、それぞれの関係性を含めて俯瞰的に把握することが必要となります。

このように、経営の全体像を俯瞰しつつ、考えるべきポイントをおおよそ網羅し、さらにポイント相互の関係性も掴める、そんな思考が求められる場面が増えているのです。

すると当然、そうしたニーズに応えるフレームワークも求められてきます。長尾講師が連載コラムで提唱している「ビジネスデザインロードマップ」などはその一例です。

また、昨年公開され、内閣府が普及啓発を行っている「経営デザインシート」があります。

次回は、この「経営デザインシート」の中身をもう少し詳しく掘り下げてみます。

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