マーケティングの再現性を決めるのはリサーチ

リサーチ手法

先日改訂・発売になった『改訂4版グロービスMBAマーケティング』から「リサーチ手法の選択」を紹介します。

マーケティングリサーチは、マーケティング施策の立案や効果測定、あるいは方向転換の際の根拠として必須のものですが、必ずしも多くの企業で適切に実施されているわけではありません。よくある失敗例は、(1)すでに結論ありきでアリバイ的にリサーチをやってみただけで、リサーチ結果の都合の良い部分しか使われない、(2)リサーチの目的や意図が曖昧なため生産的なアウトプットが出ない、(3)リサーチの意図などは共有されているものの、サンプルの抽出や質問内容などが不適切で、正しい回答が得られない、(4)リサ―チ手法の組み合わせが不適切で費用対効果が低い、(5)リサーチの業者選定や、実施の際に不手際があり、良い結果が得られない、などです。

リサーチ1つとってみても落とし穴は多数あり、再現性高く的確な意思決定をするためには、そのすべてを回避する必要があるのです。今回はその中でも最後の2つについて触れます。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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リサーチ手法の選択

リサーチ手法の選択も、結果に大きな影響を与える。

一次データの収集方法は、サーベイ法(調査票を用いる)、コミュニケーション法(面接する)、観察法(対象者に直接回答してもらうのではなく、その行動を観察する)に分けられるが、質問の量や長さ、正確さ、サンプルの特徴、時間、費用、調査員の管理などの点でそれぞれ一長一短がある。例えば訪問面接では、調査員が面接時に柔軟な対応ができるというメリットがあるが、実施地域は限られ、費用も時間もかかる。調査員のトレーニングも必要だ。インターネット調査の場合、場所・時間の制約が少なく、短時間で結果を得ることができる。費用も比較的安く、デジタルデータで入手できるのでその後の処理もしやすいが、もとから対象者に偏りがあり、本人確認がしにくいなどのデメリットがある。

したがって、予算、時間(納期)、サンプル規模、調査項目(質問の量と深さ)などを勘案しながら、最も効率の良い方法を選択しなくてはならない。実際のマーケティング活動では、企業イメージやブランド調査のときにはサーベイ法、探索型リサーチのときにはグループインタビューやデプスインタビュー、パッケージやデザインの評価には会場テストというように、目的に応じて複数の手法を駆使することになる。

なお、グループインタビューやデプスインタビューで個人の深層心理に迫る場合は、モデレーター(調査においてインタビュアーやファシリテーターの役割を果たす人)による場の雰囲気の作り方、質問の巧みさといったプロフェッショナルスキルが特に重要になり、リサーチの結果を大きく左右する。調査票を作るよりもはるかに現場での対応が難しいのがインタビュー調査である。質問の仕方によっては回答を誘導してしまいかねないためだ。本来は対象者から引き出したかった言葉をモデレーターが言ってしまった瞬間に、その調査結果は使えないものになってしまう。モデレーションも、専門知識の必要な技術であり、素人の手には負えない。プロフェッショナルなモデレーターの存在も、調査会社選定の重要なポイントである。

(本項担当執筆者:武井涼子 グロービス経営大学院教員)

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