地頭力アップのカギは、あいまいな問いに対する“概算”にアリ
まずは上記のクイズに注目してほしい。一見したところただのクイズだ。しかしこうした「答えのない問い」から答えを導き出すことにこそ「考える力の本質がある」と細谷功氏は話す。
「例えばこのクイズに解答するために、1日に作られるピザの総量から、世界中で食べられる枚数を割り出すことを思い付いたとします。するとまずは、ピザが作られている場面を(レストラン、宅配、自宅……)と、一つ一つ挙げていくことになります。しかし、そうすると『もれなく』場面をリストアップすることが非常に難しくなります。この原因はアプローチの設定にあります」
ここでいうアプローチの設定とは、1日にピザが作られる場面という「供給側」から答えを導き出そうとしたことを指す。
「そこで視点を変え、アプローチの方法をピザの供給側から需要側(人口一人あたりの消費量)に転換してみる。世界人口をピザの消費量によって、1.よく食べる人、2.たまにしか食べない人、3.まったく食べない人の3種類にセグメントして考えてみます」
その考え方の道筋を表したのが図1だ。
図1:世界中で1日に食べられるピザのセグメント
「このように『答えのない問い』に対する答えを“考える”とき、まずはあいまいな問いを有効な選択肢に分類し、具体的に把握します。今回の問題でいえば、世界消費量というあいまいなモデルをピザの消費量別に分類することで、具体的な数字に落とし込んで概算することが可能になりました。ここで重要なのが、モデルとその分類に『もれ』も『だぶり』もなく、『全体から』とらえられるかどうか。答えのない問いに答えを見つけるときには、まず設定したアプローチがその3点を満たしているかどうかを確かめましょう。その上で自分が持つ最低限の情報を基に仮説を立て、算出ロジックを組み立てて概数を求めるのです」
仮説思考を使えば、仕事の効率は飛躍的に向上
こうした仮説思考力は、ビジネスシーンでも応用が可能だという。
例えば企業向け経理ソフトウエアを販売している営業マンが、初めてのクライアントを訪問した際、ソフトを導入した場合の投資対効果を聞かれたとしよう。このような状況で、仮説思考を活用しないAさんと活用したBさん、それぞれの質問への対応と商談の行方をシミュレーションしてみたい。(図2参照)
図2:クライアント先での商談
活用しないAさんの場合だと、クライアントが求める情報をその場で提供することができず、商談は成立せず終わってしまう。しかし、活用したBさんの場合だと、とっさに仮説思考を応用することで、クライアントとのリレーションが築けることが分かるだろう。
「ただこのBさんに関しても、訪問前から『商談で何を聞かれるか』を想定し、訪問先に関する基礎情報を集めておけば、より精度の高い答えを出せたはず。仮説思考は、唐突な問題提起に対してだけでなく、事前の情報集めに対しても応用するべきです。こうしたケースは、初めての人と会うときのやり取りや、自分が主催する会議の設定に臨んだ場合にも当てはまります。仮説を持って会議に臨み、そのための情報収集を事前に行っておくだけで、会議の生産性は劇的に変わってきますよ」