若い人でも資金を集めやすい時代「3年以内に起業しよう」~DMM亀山×Gunosy福島×ジーンクエスト高橋×セガサミー里見

本記事は、G1カレッジ2018「『テクノロジー・経営』における創造的破壊とは?~100の行動2.0~」の内容を書き起こしたものです。(全2回 前編)

1

里見治紀氏(以下、敬称略):会場にいらっしゃる学生の皆さんは「ジェネレーションY」と「ジェネレーションZ」が混じっている世代かと思いますが、まさにデジタルネイティブの第二世代ですよね。壇上には第一世代(高橋氏と福島氏)がいて、気付いたときにインターネットがありました。でも、皆さんは気付いたときにスマホがあったという時代に生きている人たちです。そこで、まずは壇上の皆さんに最近注目しているテクノロジーを伺ってみたいと思います。

今、注目している「テクノロジー」「ベンチャー」とは?

福島良典氏(以下、敬称略):今はブロックチェーン専業の会社もやっていまして、僕としてはブロックチェーン周りで重要になってくる技術にかなり注目しています。ただ、たぶん今日はその話をしてもほとんど参考にならないので、何を話そうかなと思っているんですが、とにかく一番注目しているのは「ブロックチェーン」です。

高橋祥子氏(以下、敬称略):私はゲノム解析の会社をやっているんですが、なんといっても「ゲノム編集」ですね。最近は、ついにゲノム編集された人が誕生したという発表の報道もありました。会場の皆さんは分野が違うかもしれませんが、今、ゲノム編集というのは皆さんも含めて誰でもできるような簡単な技術になってしまっているんですね。アイデアや発想次第で、何かに応用しようと思えば誰でも使えるものになっています。

それを使った起業も海外ではかなり増えてきました。これまではバイオベンチャーというと年配で専門家の偉い方がやっていたんですが、今は若い人がどんどん起業しているというのがホットなところかなと思います。

亀山敬司氏(以下、敬称略):俺が注目してるのは『NHK スペシャル』だけです。どうせ分かんないんでね。『クローズアップ現代+』とか観て、儲かりそうなやつにだけに目をつけてる(会場笑)。テクノロジーなんていうのはそれで十分。それで「そろそろAIが儲かりだした」ってなったら、その分野を真似しにいって稼ぐという感じです。

里見:六本木にawabarという立ち飲みバーがあるんですが、そこにしょっちゅう亀山会長がいらっしゃるんです。そこでいきなりピッチをはじめる人たちもいるんですが、それで会長が「いいよ」となれば出資してもらえるかもしれないという。

亀山:そうそう。とりあえず酒が飲めるからね。飲まして手なずけておこうかなと思って。やっぱり若いやつのほうが今どきのテクノロジーを分かってるから。さっきの話の通りで、子供の頃からスマホがあったりするし。でも、俺たちはもうギリギリ。「最近はなんとかスマホ触って頑張ってます」っていう感じよ。だから俺にテクノロジーを教えたかったらawabarに来てください。

里見:会場は起業家志望の方が多いそうなので。

亀山:本当に?起業家志望の人は手を挙げてみて?…おお、結構多いんだね。

里見:最近のトレンドはというと、これまでは重厚長大な会社をテクノロジーでディスラプトしようという話が多かったんですが、今はそうやってディスラプトしている会社を、さらにディスラプトしようなんていうベンチャーが出てきた。第一次ベンチャーを、さらに新しいベンチャーがね。そういうトレンドが世界的にかなり来ていると感じます。

たとえばシェアリングエコノミーということでシェア自転車がバッと流行ったわけですけれども、今、海外ではシェア自転車がディスラプトされはじめているんですね。海外で流行ってきたのは電動スクーター。日本では原付免許が必要で、かつヘルメットをかぶってナンバーをつける必要があるから流行らないんですが、海外ではおおいに流行り出しています。そんな感じで、何か注目しているベンチャーですとか、テクノロジーを使ったサービスはありますか?

高橋:私が話すとすべてゲノム系になってしまうんですけれども、今はたとえばゲノムデータをシェアするベンチャーなんかが出てきています。自分のゲノムデータを解析して、それが売れたら自分にもインセンティブが入るといったモデルです。それがうまくいくかどうかはまだ分からないんですが、そんな風に、すでにあるデータを新しい仕組みで使うというところは結構増えていると感じてます。

里見:今までの分野に新しいエコシステムが入ってきて、新しいビジネスが立ちあがっているという。

高橋:いろいろな分野が融合しているな、と。もともと生命科学というのは生物学のバックグラウンドを持つ人ばかりがやっていて、なんというか…、閉じられた世界だったんですね。でも、今はゲノム情報も各種生体分子情報もデータ化しているので、そこで他分野の知識をどう活かすかという話になってきている。それで、特に情報系の人が入って来ていると感じます。

亀山:今みたいな話を聞いても、俺はちんぷんかんぷんなんだけどさ(笑)。でも、たとえば最近は終活みたいなことをしている東大生の会社を買ったりしているし、今までITやテクノロジーが関係なかったような業界に注目してるわけ。そういうところで今みたいなバイオとかITとかAIを採り入れてやっていこう、みたいな。

年寄りたちもね、そろそろ仕方なく考え出したわけよ。何とかしないといけないって。だから、みんながそういうところで「俺ならAI分かりますよ」とか「ブロックチェーンなら任して」とか、難しい言葉を口に出しておけばだいたい採用してもらえるから(会場笑)。もちろん実際にできたほうがいいんだけど、皆、そういうところに飢えてるから。まあ、今どきのテクノロジーの話じゃないんだけど、テクノロジーを分かった風にして頑張ろうって話で(笑)。

ただ、そう考えると、あんまりテクノロジーの細かいところを理解していなくても、「今この辺が流行ってる」というのを組み合わせるだけで、十分に昔の業種を新しくできるというのはあるかなと思う。そういうところに注目していますね。

俺が今考えているのは、たとえばAIに過去のデータを入れて、それでお墓参りに行ったら亡くなったお父さんが出てきて、「お前も元気になったなぁ」なんて語りかけてくれるようなサービス。音声なんかも記憶させてね。それを月額サービスにしたら、もう絶対に解約できない。それでずっと課金できるんじゃないかなって考えたり(笑)。そういうのが出てくるんじゃないかと思います。

テクノロジーが発達しても「儲かるビジネス」は昔と変わらない

2

福島:最近注目している会社は、TrustToken(トラストトークン)というところです。たとえば僕は、実は信託銀行や弁護士事務所のビジネスが、ブロックチェーンで置き換わる最初の領域なんじゃないかと思って注目しています。世の中の多くの人はテクノロジーというと、すごく先端のほうに行きたがるんですよね。ブロックチェーンなら「どうやったらスケーリングするの?」とか、AIなら「ディープラーニングだ」とか。でも、そこを追ってる人は、ビジネスや経営という面ではそんなに儲かってないんです。

本当に儲かっているのは、誰もが使うゲートウェイをつくっているようなところ。だから、たとえばブロックチェーンによって金融が変わって、それによって皆が何かにアクセスしようというとき、誰もが必ず使うものって何かということを僕はすごく考えています。しかも、あとから引っぺがせないもの。リバーシの四隅ってひっくり返せないじゃないですか。かつ、盤面が大きければ大きいほど、四隅を押さえたときに獲ることのできる陣地が広くなる。そういう場所を探すというか。今の亀山さんのお話じゃないですけれども、テクノロジーも理解はしていないといけないんですが、どこまで理解するかというのは自分のなかで線を引いておかなければいけない。

そのうえで経営は経営で考えると、実は儲かるビジネスの内容というのは昔からそんなに変わっていないという面があるんですよね。だから、そこがテクノロジーで置き換えられるとき、何を押さえておかなければいけないのか。そういうところを今はすごく考えているし、そういうビジネスに注目しています。シェアリングもそう。自転車というのは置き換えられないように見えて、実は電動スクーターのほうが今は利回りもいいし、実際のところ置き換えられちゃっているわけで、「別にリバーシの四隅じゃなかったね」と。ただ、たとえばAirbnbのほうは置き換えられていない。それはどういうことなんだろう、と。一見すると同じに見えるけど、何が違うのかといったことをすごく考えています。

3

高橋:新しいテクノロジーが出てきたとき、皆、勉強するじゃないですか。その勉強の仕方はいろいろあると思うんですが、おおまかに言えば「概念の理解」「流れの理解」、そして「影響の理解」という3つなのかなと思っているんですね。

「概念の理解」というのは大枠を理解することですけれども、一番大事なのはその流れと影響を理解すること。その意味では、ブロックチェーンでもゲノムでも「結局はどんな影響を与えるのか」ということを理解していくといいのかなと思います。亀山さんはかなりそこを割り切ってやっているのかなと感じますけれども。

亀山:俺、四隅を押さえるの得意よ!四隅だけ。分かんないままでも、はじめから置いとくみたいな感じだから(笑)。

若い人でも資金を集めやすい時代「3年以内に起業しよう」

4

里見:事前にお話をしていたときも、今は起業するチャンスが増えているというか、「起業しやすいよね」という話になっていました。VCにお金が集まっているし、シードに特化したVCさんも増えてきましたから。その点、壇上の御三方は起業家として、IPOした方もいれば、大手グループに入った方もいれば、上場はしないけれども儲かっているという方もいるわけですが、たとえばアベノミクス以前と最近で、起業家の方々の動向に何か変化を感じたりしてしますか?

亀山:プレゼンだけ上手なやつが増えてきたっていう(会場笑)。ぶっちゃけ、ちょっと調子に乗っているところがあるよね。今は結構お金が出やすくなっているわけ。それで、さっき言ったみたく「若いやつに投資しないと」なんてことを俺なんかが適当に言っていると、投資家はみんなその気になって「やっぱり金出したほうがいいかな」なんて思うようになる。

でも、口だけの若いやつも結構多いわけよ。売り手市場って言い方も変だけど、さっき出てきているようなキーワードをちょっと並べるだけで、今は金が集まりやすい面は実際にあると思う。そこに実があるかどうかが問題なんだけど、チャンスを手に入れやすいのはたしか。

ただ、そこで「僕ラーメン屋やります」とか言っても誰も金を出してくれないじゃない。だから「衛星で撮ったデータをAIで分析して収穫量を増やして、それをIoTでカバーします」みたいな、よく分かんないことを言ってるとさ、なんだかすごい農業に思えるじゃない?(会場笑)同じ農業でもそんな風に言うと注目される。

だから、会場のみんなはスマホを当たり前のように使う世代なんだから、そういうところを武器にして、農業でも漁業でもいいから新しい業界に割り込んでいくと面白いかなって。プレゼンだけがうまいやつは増えたけど、そういう世の中だから波に乗っていこう、と。(この流れは)あと3年ぐらい続くから、3年以内に起業しようということで。

福島:今はすごく景気がいいのと、VCがファンドレイズしちゃっているということがあるから、「お金を出さなきゃいけない」みたいな状況で、すごく集めやすくなってるというのは僕がやっていた頃も感じていました。Gunosyは上場する前、最後の調達としてKDDIから14億のラウンドをやったのですが、当時はそんなラウンドの調達をする会社は存在しなかった。だから「日本で未上場の会社が10億を集められるんだ」なんて騒がれたんですが、それが2013年の話です。でも、今なんてもう100億調達なんていう話もあるじゃないですか。

一般的な感覚からすると、100億の調達を正当化するなら上場時は何千億もつかなきゃいけない。ということはキャッシュフローで見ればいいとは思うんですが、キャッシュフローだろうが営業利益だろうが、実ビジネスで数百億ぐらいのキャッシュが回っていないと、そんな時価総額は普通に考えたら想定できないし、正当化されない。でも、ある種バブルのときは、そうじゃない理由で正当化される瞬間があるから、それは上手く使ったほうがいいと思います。

それともう1つ。僕はソフトウェアがすべての世界を食っていくということをすごく意識しています。たとえば農業で「世界一おいしいナスをつくります」と言ってみても、たぶん投資家の方はピンとこないですよね。でも、今は何が起こっているのか。昔はメディアとアドぐらいしかなかったのが、今はめちゃくちゃ広い領域で起業のチャンスが増えている。つまりソフトウェアでコントロールできる範囲が広くなっています。金融にせよ農業にせよ、付加価値がリアルなところでなくソフトウェアにどんどん寄ってきている。

だから若い人はそっちを上手く使ったほうがいいと思います。ソフトウェアって、基本的には大きな設備投資がいらないし、何千人もの組織でやるというよりは1~2人の天才を集めて、そこに思いっきりレバレッジをかければいいから。最終的には組織もつくっていくんですが、はじまりは1~2人。だから、僕が今大学生ならそういうところを狙うと思います。逆にメディアやアドは正直言って飽和しているから、逆張りをした方がいいかなということも感じますね。

「実態での経験」より「インターネットにおける経験」の方により大きな信頼が生まれる

5

里見:たとえば、皆さんはスマホネイティブ世代と言いましたけれども、皆さんのさらに10歳下はキャッシュレスネイティブ世代になると思うんですよね。「もう現金なんか使ってないよ」と。この分野では日本が圧倒的遅れています。中国・韓国は90%以上がキャッシュレス化しているのに日本は20%ちょっと。今はPayPayがローンチして、今度はLine Payなんかが出てくるという段階で、使う側とすれば「誰か早くドミナントを取ってくれよ」なんて思うんですが。

皆さんは中国の「芝麻信用」って聞いたことがありますか?アリババのAlipayから発生したシステムで、「この人のスコアは○○です」と、人にスコアを付ける。それで、そのスコアが何かの基準以下なら、それを基準とするサービスを利用することもできないわけです。極端な話、特定の基準以下ではお見合いにも参加できなかったりして、そのうち結婚もできなくなるなんて言われているほどです。

逆に言うと、それで中国人の民度がすごく上がってる、と。点数を上げたいから借りた傘は返すし、ちゃんと列にも並ぶし(笑)。そういう社会になっているということなんですが、今後は日本でもキャッシュレス社会が実現すると思います。そこで、どんな社会になって、どんなサービスが出てきて、あるいは生活にどんな影響が出てくると想像していらっしゃいますか?

高橋:そういう監視社会というのは…、幸せな社会なんですか?と(会場笑)

亀山:それって基本的には独裁国家にぴったりの仕組みなんだよね。で、今後もいろいろな国が権力集中型みたいになったりしているなかで、どうしてもそういう方向になってくる。

その点、日本は中国に比べるとなかなか広がらない。人権とかプライバシーとか、そういうものがかなり重要視されるから。中国は早いんだよね。バッと一気にやっちゃう。だから、そういう部分では日本がまだマシかなと思うけど、それでもいくらかはそういう方向に、徐々になってくのは間違いなくて。だからこそ渋谷で裸になって車に乗っかって「わー」なんてやっていると、カメラ15台ぐらいで追いかけられて捕まっちゃう。アレ、昔はなかなかなかったよね。

しかも、SNSなんかで「あ、あいつ知ってる」なんていうことで一気に名前が広がったりする。国家の監視というよりはSNSで皆が監視し合ったりしている。でも、逆に言うとそれが信用にもなるわけよ。俺も誰かと取引しようかどうかというとき、たとえばFacebookでつながっていればそれを見たりする。それで、「あ、あいつの友達なんだな」なんてこともすぐ分かるから、その顔ぶれを見て「じゃあ、会ってみようか」って。そんな風にして信用を見ているというのがある。分からなければ、その友達にどんなやつかを聞いたっていいしね。

逆に言えば、そういうなかで悪いことをすると一気に広がっちゃう。

だから信用の担保になるということで、ITのなかでは詐欺や裏切りみたいな酷いことが比較的起きにくいという、良いところもあるんだよね。それを国家に握られたりするのがちょっと厄介っていうことかな。

高橋:今のお話もそうなんですが、これまで信用というのは人と人の対面で担保される部分のほうが大きかった。でも、どちらかというとインターネットでつながっている人の方が信用もあるなんていうケースが今後は出てくると思います。SNSでもそうです。リアルで1回名刺交換した以降はまったくコンタクトがないという人より、1回も会ったことのない人のほうがSNSを通して信用できるということもあります。

そんな風に、実態での経験よりインターネットにおける経験のほうにより大きな信頼が生まれる、ということはあると思っていて、それはお金でも同じだと思っています。今まで物理的に認識していたお金から物理的なものがなくなると、概念から理解していくという方向になるんだと思います。

里見:Uberなんて、まさに相互評価サービスのはしりですよね。相互評価で点数が低い乗客は迎えに来てくれない、みたいな(会場笑)。

亀山:いいところもあるよね。「食べログ」なんかで美味しいところがみんな分かるようになった。それで、今までなら立地がいいだけで流行っていたような店が流行らなくなって、場所が悪くても皆が美味しいと思う店は流行ったり。だから良い面も悪い面もあって、その辺のバランスが難しいんだけれども。

このあいだフランスに行ってきたんだけど、あっちは無料でエンジニアを育てる「エコール42(フォーティートゥー)」っていう学校がある。でも、やっぱり無料だと資金が回らないわけよ。それで俺が考えているのは、その学校でプログラム等を学んだやつらは卒業してから収入が増えるから、そいつらに寄付してもらうということ。それで、寄付したやつのことは情報として公開もしていこう、と。そんな風にして、無料で教育を受けて卒業していった人間が学校を支える。奨学金とかじゃなくて善意でね。それで、たとえばGunosyみたいな会社を立ちあげてどかんと稼いで10億寄付するやつもいれば、100万だけ寄付するやつもいたりするわけだけど、彼らは情報が公開されれば皆から「いいね」がもらえたりする。それで「この人、ちゃんとやってるな」なんて思われることが、また評価になっていく。そんな風に、オープンにして行動自体を皆に見せていくことで、なんというか…、資本主義の次の世界みたいな、映画の『ペイ・フォワード 可能の王国』みたいな世界ができたらいいなと思ったりしています。

キャッシュレス社会の本質を見極めると「ビジネスチャンス」が見えてくる

福島:ちょっと違う話をしてみようかと思うんですが、「今、誰と誰が戦っているか」という視点で考えてみると、銀行とインターネット企業が戦っているんですよね。キャッシュレス社会は、誰が進めようとしているのか。中国だとアリババとテンセントがありますが、彼らはインターネットから染み出してきました。彼らは広告やメディアではめちゃくちゃ稼いでいますが、一人ひとりのデータやトランザクションをすべて取れるようになったとき、「銀行が今なんのビジネスをしているか」ということをすごく研究したほうがいいと思うんですよね。

キャッシュレスにする一番の理由は何か。偽札が流通しないからというのと、もう1つ。ビジネスをやっている人は分かると思うのですが、たとえば「広告を受注できた」といったって、支払いが2ヶ月後だったりすることは多いわけです。店舗のビジネスならキャッシュでもらえますが、クレカだと支払いが1か月後なんてことが往々にしてあります。

銀行が何で儲けているのかというと、「それを引き受けてあげるから金利を抜くよ」と。そういうビジネスなんです。あと、銀行のP/Lなんかを見ていると、特に日本では顕著ですが、今は運用手数料より取引手数料のほうが高い。皆さん、銀行って利回りで稼いでいるという風に考えているんじゃないかと思いますが、実際には皆さんがお金を引き出すときに稼いでいるんです。でも、それが奪われる。AlipayやWeChatPayからすれば「そんなところで手数料を取らなくたって、データをすべて持っているんだから俺たちのほうがもっと良い利回りでできるよ」となります。それで今は銀行対インターネットビジネスの究極的な戦いが行われているという話なんだと思います。

で、そういうなかで(機能やサービスとして)いろいろと足りないパーツが出てくると思うんですよね。「これが足りない」「あれが足りない」と。そういうものを先回りしてつくっておくと、たぶんそれをメルカリやヤフーが買いたくなったりする。あるいはアリババが日本でその領域へ進出しようと考えたとき、「ここのパーツが足りないから買おう」なんていう感じになる。キャッシュレス社会については、そういう見方もあるのかなと思っています。

皆、「個人間送金のサービスをつくりたい」とか、「Alipayみたいなサービスをつくりたい」とか、そういうことを言うんですが、本質的にそれはつくれません。なぜなら、アリババやテンセントのように、ECやメッセンジャーのような巨大サービスを持っていないと成り立たせることができないというのがキャッシュレスのサービスだから。そうではなくて、「彼らが欲しがるものは何なのか」「彼らが倒したいものってどこなんだろう」といった視点を持つと、見え方もかなり変わってくるのかなと思います。

里見:現金を維持するのって、すごくお金かかるんですよね。ATMにお金を追加するだけでもセキュリティの怖いおじさんがやって来るとか。あるいは、うちはゲームセンターも経営しているんですが、百円玉が貯まるんです。それをズタ袋に入れると10キロ以上して、それを夜間銀行に持っていくアルバイトの方も大変なんです。キャッシュレスになればそういうことをしなくていい。すぐ簡単に送金できます。

福島:安全にできますよね。

亀山:そうなるとガードマンの仕事がなくなっちゃうんだよね。

里見:ディスラプトされちゃうんですよね。

亀山:だから、そこで「それによって何がなくなるか」という話の想像はできるよね。手数料の話だけじゃなくて融資でもそういうところがある。たとえば、アマゾンは自分たちのところに出店している業者に向けて、融資に力を入れると思うんだよね。アマゾンからすれば自分たちのところで商品が売られているんだから、売り上げがすべて分かる。もう担保をとっているようなものだよ。

支払いはアマゾンだと何週間かかかるわけ。それを先に払ってあげる、というか「融資してあげる」という名目の先払いみたいなもんかな。だから絶対に取りっぱぐれがない。そういう手堅い融資先を銀行は知らないわけよ。その点、一個人からも必ず回収できるという情報をアマゾンは持っている。となると、もう銀行とかに頼らなくてもアマゾンの資金でできる。

本当は売った日に即払ってやればいいのに、「何ヶ月後に払います」なんて言っといて、それで貸すっていうセコい考え方なんだけどね。でも、ある意味、それが金融ビジネスのとっかかりになる。融資もそういう風になっていく。だから、今後は情報を持っている人たちが融資していくということが、メルカリからとか楽天からとか、いろいろと出てくる感じになるかな。

里見:これから何が流行っていくか分からないんですが、たとえば飲食店ではどの決済手段を用意するかということが重要になるわけです。そこでキーになるのは恐らく決済手数料。現金なら100%もらえますが、クレジットカードなら、カード会社にもよりますが3~7%ぐらい取られちゃう。でも、それが「EdyやSuicaなら何%」なんていう話になるわけです。そこで何を選ぶか。ただ、それがクレジットカードに紐付いている限り、絶対にクレジットカードの決済手数料以下にはなりません。その点、Origamiなんかはやっと銀行とつながりましたけれども、AlipayやWeChatPayは最初から銀行口座に紐付いているし、しかも決済手数料で儲けるつもりがないから一気に安くなって普及しているわけですね。

今、日本では決済で儲けようと考えている人たちがやっていて、どうしても手数料を取ろうとしているから、そこが現状より下がりません。そこがもう少し下がってくるとね。あるいは、現金を扱う店舗は盗まれるリスクですとか、アルバイトの方が無くしちゃったりするリスクもあるわけで、実は現金ってコストがかかる。だから、その辺が解決するとキャッシュレス社会が一気に進むのかなと思います。

亀山:どっかが一定のシェアを獲ると、あとは放っておいてもその後どうとでもなるわけよ。値上げすればいいだけだから。DMMだってセガサミーだって、たとえばGoogleでゲームなんかを出すと3割持ってかれる。何もしないで3割だよ。でも、AndroidとiPhoneにプラットフォームを押さえられてるから、そこに出すしかない。それで今は30%だけど、「来月から40%にするよ」って言われたって俺たちは逆らえないからね。

だからこそ、どうやってプラットフォームを取るか、皆が考えてる。それがもう無理なところは相手のプラットフォームで踊るしかないわけだけど、自分たちでつくることができるところはつくろう、みたいな考え方になるかな。(後編に続く)

RELATED CONTENTS