CEOこそがプラットフォームの優劣の源泉 

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プラットフォーム今年9月発売の『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』から「卓越したデジタル・プラットフォームはリーダーシップなしには生まれない」を紹介します。

「プラットフォーム」は特にGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazonの頭文字を取ったもの)を始めとするインターネットビジネスの世界で言及される概念ですが、通常の企業においても良きプラットフォームを構築し、データを活用しやすくすることは、コスト削減や新商品開発につながる重要なインフラとなります。ここでのポイントは、プラットフォームは往々にしてこんがらがったものになりがちであり、それでは社内外に対して価値を生み出すことが難しくなるということです。

では、こうした混乱を避け、良きプラットフォームを構築する責任は誰にあるのでしょうか?前線ではCIOが指揮を振るうかもしれませんが、その最終責任は、結局はCEOに帰属します。CEOの強いリーダーシップがあるからこそ、社内的にも社外の人間から見ても使い勝手の良いプラットフォームが生まれるのです。これはトップダウンのリーダーシップ抜きには進みません。GAFAの一角を占めるアマゾンですらかつてはこの問題に苦労し、トップのジェフ・ベゾス氏のリーダーシップが必要だったという事実は、良きプラットフォーム構築の難しさを雄弁に物語ります。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

卓越したデジタル・プラットフォームはリーダーシップなしには生まれない

卓越したプラットフォームは、意思決定者に明確な情報を提供する。高度なデータ解析と新しいデジタルサービスの基盤ともなる。効率的で機敏であり、常に新しいデジタル変革の方法を提供する。

しかし、卓越したプラットフォームは簡単には生まれない。複雑化した企業では、プラットフォームは一度に複数の方向に成長する傾向があり、庭に雑草が生い茂るように、コピーや、勝手な手直しや、派生的なものが生まれる。一方で、良いプラットフォームは美しい庭園のように常に注意が払われ、雑草が抜かれ、害虫は排除され、美しいデザインに整えられている。顧客や業務についての見解を統一するには、強力なトップダウンのリーダーシップが必要だ。

ITリーダーは、プラットフォームの形成に力を発揮できる。例えば、デジタルビジョンを、それを実現できるようなテクノロジー・プラットフォームのビジョンに書き換えられる。アーキテクチャレビューなどの管理ツールを構築し、雑草を根こそぎにして、プラットフォームを正しい方向に動かすことができる。また、テクノロジー向けの資金の供給方法を調整して、適切な方向に成長を後押しできる。例えば、インテルのIT部門は、同社のアーキテクチャの方向性に沿ったプロジェクトについては、その優先順位を高めている。また、ビジネス部門による要請は、それが同社の標準に基づいていれば、そうでないものに比べて資金が供給されやすい。

しかし、ITリーダーがビジネス慣行に変化を迫る力には限界がある。一般的なCIOには、強力なビジネス部門の責任者の行動を変える力はほとんどない。ここで出番となるのが、企業のトップに君臨する人々だ。パージュ・ジョーヌのCEOであるジャン=ピエール・レミーは、紙ベースの電話帳のためのシステムに関して、その更新に資金を提供するのをやめた。P&Gのデジタル王と言われるフィリッポ・パッセリーニは、より前向きな方法をとっている。ビジネス部門の責任者に次のように約束しているのだ。彼の率いるグローバル・ビジネス・ソリューションズは、購買、人事、およびその他のプロセスのコストを10~30%削減できるが、それは各部門が彼の決めた標準的なプロセスを使用する場合に限る、ということだ。

プラットフォームの問題は、従来型の大手企業だけに起こるわけではない。デジタル企業として誕生したアマゾンでも、プラットフォームに関する問題が発生した。2002年、急成長とイノベーションが進む中、アマゾンの強力なプラットフォームは、レガシー・スパゲッティと標準から外れた設計の蔓延に苦しみ始めたのだ。

そこで、CEOのジェフ・ベゾスが問題を解決するために、トップダウンのリーダーシップを発揮した。ベゾスは、あらゆる新規開発は非常に明確化された設計ルールに従わなければならない、という強い指示を出した。そして、この指示を伝える文書を、次のような警告で締めくくった。「これを守らなかった人は誰であろうと解雇される」。ベゾスはその後、上級幹部に権限移譲し、この指示が確実に守られるようにした。その後数年間で標準化の文化は進化し、プラットフォームも発展した。10年以上経った今、アマゾンのうまく構築されたデジタル・プラットフォームは、ますます拡大し続けるオンライン販売を支えている。また、電子書籍のキンドルやビデオ配信などの新しいビジネスモデルも可能にしてきた。アマゾンはまた、グラウドベースのインフラサービスを他社に販売し、社内のプラットフォームを製品に変えている。

あなたのプラットフォームでも同じことが起こる可能性がある。医療保険会社は、医療保険請求のプラットフォームを活用して、薬の処方や医薬品の動向に関する解析をベースとした製品を開発している。中国の物流会社は、以前からの販売プラットフォームで見出したトレンドをもとに、地域ごとの需要予測を行い、それを販売している。ボーイングが「未来の航空会社」を実現する中で、同社のプラットフォームは多くの企業にまたがるものとなって豊かになり、新しい情報をベースとしたサービスや製品を見つけていくことができる(第4章を参照)。しかし、適切なプラットフォームやスキルを開発するにも、それらを整合させ続けるにも、またそこから創造された機会を生かすにも、リーダーシップが必要となる。

(本項担当翻訳者:許勢仁美 グロービスファカルティ本部主任研究員)

『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』
ジョージ・ウェスターマン、ディディエ・ボネ、アンドリュー・マカフィー (著)、グロービス (翻訳)、
ダイヤモンド社、3,024円

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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